FREAKS 作:メヤニ
「コアが発生していると考えられるのはこのポイントの辺りだ」
プロジェクターが映す地図の一部を指すハヤマ。そこは大型のフリークスと遭遇した場所の、さらに山の奥へと数キロ進んだ辺りだ。
「コアの数は?」
「確認されている限り一つだ」
ハヤマの端的な回答に、シズクと名乗った少女は顔を顰めた。
「それなら私一人で十分じゃない」
「元々君だけで行ってもらうつもりだったんだ。ただ、丁度よく彼が目覚めたから、研修もかねて同行してもらおうと思ってね」
「お守りをしろってこと?」
ハヤマが補足した内容は、彼女のお気に召すものではなかったらしく、眉間の皺は更に険しくなった。
「君の生存率を上げるためでもあるんだよ。彼は今回の現場の地元民だし、地形を理解しているだろう。きっと役に立つ。それに彼の異能ならよっぽどのことがない限り傷は負わない。お守りされるのは君かもしれないね」
「そこまで言うなら、別にいい。ただ、私は助けないから」
少女の険しい目線は、いつの間にか俺に向いていた。ハヤマとこの少女の仲が悪いのは別にどうでもいいが、それが原因で死にそうになっても見捨てられるというのは困る。
「なぁ、買いかぶりすぎだ。俺はまだ、その自分の異能ってのにも実感が湧いてないような状態だ」
「君のそれは、意識なんかなくても常時発動しているものだ。実感なんて必要ないし、なくてもそのうち嫌でも湧いてくるさ」
俺に対して過剰な期待を改めるようにハヤマに忠言するも、彼はまるで意に介さない。
「あぁそうだ、君にはコアの破壊とは別に頼みたいことがある。もちろん、可能であればで構わないんだが、フリークスを生け捕りにしてくれないか」
「は?」
それどころか、無理難題に聞こえる依頼を追加でしてきた。ハヤマの正気を疑ったのは俺だけではないようだった。少女も胡乱な顔で彼を見ている。
「……本気で言ってるの?」
「十分可能だと判断した。捕縛用のワイヤーや檻、そのほか必要なものがあったら言ってくれ。用意しておくから」
具体的な道具にまで話が及んだ。穏やかな表情でありながらも、その目は笑っていないことから、彼が冗談などで口にしているのではないのだと理解した。
「検体があれば、こいつらの研究も捗るだろう?」
「あんた、マッドサイエンティストってやつだな」
「いや、私は狂ってなんかいない。あくまで組織と仕事に忠実なだけだ。それが人類のためになると信じているからね」
その発言がすでにマッドらしさを感じさせる。内心引きながらも、わざわざ口には出さずに、ハヤマに話の続きを促した。
「付近はすでに地元警察が立ち入り禁止区域として警戒してくれている。死人が出ている分、スムーズに話が進んだようだね」
「……その警察にやらせればいいんじゃないのか、それか自衛隊とか」
つい口を出た愚痴交じりの疑問にハヤマは苦笑しながら言葉を続ける。
「それができない理由はいろいろあるんだが……それは移動中にでも説明しよう。君が知っておくべきことは多いが、まずは……」
「ヤツらの予想される数、あとは地形。用意するものが変わる」
進まない話をじれったく思ったのか、ハヤマの言葉をつなげる形で少女が口を挟んだ。
「そうだね。コアはおそらく一つ、その周囲を縄張りにするフリークスの数は二十程度だと予想される」
「あんなのが二十もいるのかよ」
「現地でドローンでも飛ばして情報の精度を上げるつもりだが、大きく異なるということはないはずだ」
「随分、自信があるみたいじゃないか」
「ヤツらはコアの周辺を縄張りとする。コアの元となる大型が発生しているということは、その縄張りでのヤツらの密度が限界に達していることを示している。今まで私たちが対処してきた例からすると、群れの上限は二十程度だと考えられる」
「なるほど」
ハヤマから簡潔に伝えられる情報から、彼の予測を納得させるに十分のものだと思われた。半ば感心しながら彼の話に頷く。しかし、同行者はハヤマの口ぶりに気に入らないところがあったようだった。
「私たち、と言ったのが気に障ったかな。確かに、フリークスの対処に当たっているのは彼女たち現場の人間だからね」
苦笑いしながらもハヤマは特に気にした様子もなく、スクリーンに映された地形図に注意を促した。
「さて、次に地形についてだ。車両で近づけるのはこの地点まで、あとは二人でコアがあると思われる場所に向かってもらう。これについては、現地の人間である君にも意見を聞きたいんだが」
「……問題ないと思う。そこからなら目的の場所までの勾配もきつくないはずだ」
「なら良かった。ほかに質問があったりするかい」
「……ここは東京なんだよな? 九州まではどうやって?」
「飛行機だよ、これから空港に向かう。小型機だが、すぐに飛ばせるように機体の整備をしてもらっている。まさか苦手だったりするのかい?」
「いや、大丈夫だ」
「それは良かった。たまにいるんだ、飛行機が嫌だから陸路で行かせろっていう人が。……まぁうちの室長なんだが」
俺の回答に安心したようにハヤマは呟くと、プロジェクターの電源を落とした。