FREAKS 作:メヤニ
「ハヤマ先生、一つ報告上がってきました」
都内某所の施設にてタブレットを片手に部屋へ入ってきた男は開口一番そう言った。ノックもなしに入ってきた者に対して、先生と呼ばれた眼鏡を掛けた男性は一切不快な様子も見せずに顔を綻ばせた。
「どこからですか」
「九州からのものです」
ハヤマは視線を空に泳がせながら記憶を辿る。
「九州、たしかケース8ですね」
「はい、便宜上犬型と呼んでいたものですが、今回の報告では大型の六足のものが現れたとのことです」
「六本足、もはや犬とは呼べない造形ですね」
スーツの男がタブレットに読み込まれた文書に目を通しながら行う報告に、レンズの奥の目が楽しそうに歪む。しかしすぐに、ふと湧いた疑問が口を出た。
「大型が出たということは生存者はいなかったのでは? よくそんな断定的な報告が出てきたものだ。衛星映像のアクセス許可でも出ましたか?」
「いえ。・・・・・・生存は二人です、大型の討伐も完了されています」
続けられる報告にハヤマの眉間に皺が寄る。
「本当ですか。たしかその地域はまだ県からの自衛隊への要請は出てなかったはずですが」
「討伐者は地元の猟師のようですね。といっても四人中二人が死亡、一人は意識不明。討伐に成功したのはおそらくこの意識不明になっている男性だと思われます」
男はタブレットを操作して、映像データを組織内で共有されているデータベースへと移した。
「唯一無事だった男の持っていたのスマートホンで撮られた映像です。所有者が大型に遭遇して、最初の犠牲者が出るところまで確認できます」
「素晴らしい収穫ですね」
ハヤマはデスクの上にあるディスプレイに目をやり、マウスを数度操作し映像を開く。しばらくそのモニターに見入っていたがやがて視線を離した。
「・・・・・・あぁ、ここで逃げてしまったわけですね、勿体ない」
映像ファイルを閉じるとため息を一つ零す。
「それで意識不明の一人は?」
「もちろん支部の方で保護が完了しています、命に別状はなさそうですが・・・・・・」
男の含むような言い方に、ハヤマは無言で先を促す。
「変異が確認されました。今の所、体表が硬化する、という程度のものですが、血液検査のための注射器が使い物にならないと」
「・・・・・・なるほど、ありがとうございます。本当に、とても良い報告を聞けました」
ハヤマの言葉を聞くと、スーツの男は一礼して扉に手を掛け部屋を後にする。そのドアの横には『特殊生物及び変異人類対策室』と文字が並んだプレートが掲げられていた。
とりあえずプロローグ染みたものはここまで