吾輩はセクレタリアトである。スキルはまだない。 作:わさビーフ過激派
長く苦しい戦いを終えた吾輩はそのまま倒れるように眠ってしまい、気がつけば朝になっておった。
「昨日は酷い目にあった」
グシャグシャになった髪をとかして時計を見れば、もう登校時間まで余裕がない。
「時間も無いし、にんじんぱんでよかろう」
適当に掴んだにんじんぱんを5、6個口に放り込み、そのまま咀嚼しつつ学生服に着替えれば準備完了である。
「んってきんふ」
一人でも挨拶は大事である。
授業後、スカウト組はトレーナの元へ、未スカウト組は集団練習に教官の元へ、そして数少ない自由組は好き勝手に動き出す。
もちろん吾輩は自由組である。
「セクレタリアトは、今日はどうするの?」
学園の門を出ようとしたところ、頭の上に小さいシルクハットを乗せたウマ娘に声をかけられる。
「吾輩、今日は石焼き芋の気分である」
「そっか。私はたい焼きの気分かな」
このウマ娘は、少し前にゲレゲレ(愛犬)のご飯を食い尽くした事がマイ・マザーにバレてしまい、罰として土砂降りの雨の中を走り回されてた時、気がつけば隣を笑いながら走ってたヤベーウマ娘である。
その後、トレセン学園でばったり出くわしてからというもの、ちょくちょく話しかけてくるようになった。
可愛く愛しい娘が風邪をひくかもしれないのに雨の中を走らせるマイ・マザーも酷いが、好んで雨の中を走る等、体調管理を甘く見ているとしか思えんし、いざレースの時に体調を崩したら意味がないであろうに。(なおキャロライナ)
まぁ、吾輩生まれてこの方風邪等ひいたことはないけども…
「そうか、では良いたい焼きライフを送るのである」
「そっちも良い石焼き芋ライフをね」
そう言って手を振りながら吾輩とは反対方向へ去っていった。
「シルク・ドゥ・ソレイートも美味いが、KURENAI遙かも捨てがたい…しかしやはり王道のキャロット芋で行くべきか…」
我が家の大蔵大臣(母)が厳しい故、吾輩には一芋が精一杯で、全てを救うことはできぬのだ。すまぬ。無力な吾輩を許してくれ…
「あ、キミ!」
「?」
そんなイモアージをしている吾輩に、どうも声をかけられたようなので振り向くと、どこぞで見たような気がするスーツの男がおった。
「不躾で悪いんだけど、ちょっと時間くれないかな?」
「・・・吾輩これでも未成年故ナンパはご遠慮いただきたい。」
「え、ちょ、違う!トレーナー!アイ・アム・ア・トレーナー!」
焼き芋屋の店主が(塾長みたいな見た目)睨みつけたからか、自称トレーナーは大声で騒ぎ出した。
「トレーナー?」
「そうそうそう!バッチ!ほらバッチ!」
吾輩が確認すると必死に胸のバッチを見せつけてくる。
落ち着いて欲しい。
「トレーナーということはわかった。しかし吾輩今はイモアージ中にて後にして貰えるだろうか。」
「イモアージ?芋味?芋鯵?」
何やら考え出した自称トレーナーは承諾したものとして一旦放置し、再度イモアージに取り掛かる。
やはり神無月スイートは予算的に黒タグかッ!
「毎度あり。お嬢ちゃん変な男には気をつけなよ」
「感謝するのである。しかし、吾輩並大抵のヒトには負けないから大丈夫なのである」
安心院芋を無事救いだした吾輩は、早速かえるべき場所(胃袋)へ送ってやることにした。
うむ、じっくり焼かれたことでコクのある程よい甘みと、パリッとした皮の渋さが口の中で合わさることで、なんか色々あってすげぇ美味いのである。
「あの、素で忘れてどっか行こうとしてないかい?」
「ふんふふーんふ?」
「うん、とりあえず飲み物買ってあげるから食べ終わったら話聞いてくれるかい?」
賄賂というやつであるな。主も悪よのう。
セクレタリアトの外見イメージはドロヘドロの熊井です。