あれは何かの悪夢かしら……?。
自室にて白咲中三年三組の学級委員長滝嶋結子はかつての親友藤沢彩菜の豹変具合に動揺し恐怖していた。
特にスポーツも何もやっていない華奢な彩菜がその身体で楓の雁首を直接掴み宙に持ち上げたのだ。
彩菜の性格からして行動もそうだがその際の言動も有り得なかった……。
彼女は結子が所属するバレー部の活動や勉強により真莉達から受けてたイジメの相談を受ける筈が多忙で彩菜と会えなかった。
その際彩菜は酷く傷ついたが……結子も親からもっと成績を伸ばせと言われていたり切迫詰まってて四面楚歌の彼女に『じゃあ友達辞めましょ!』と啖呵を切った愚かな思い出がある……。
それ以来彩菜はクラスで孤立無援となり生きながらにして死んだような感じだった。
だのに今日の彩菜は何だ。
人が変わったように狡猾さと底の知れぬ恐ろしさを備えて実際にクラスメイトに『大義名分』を作らせた上で逆襲してあろうことか千鶴を自分の配下にしてしまったではないか。
事故のショックなのか?。
あの温厚な彩菜があんなに狡猾な人間に変貌するなんて。
そう言えば大輔が詩織を刺した時も彩菜が近くにいたと言う……。
あれは一体何だ?。藤沢彩菜の皮を被った化け物か……?。
―――――試してみる価値はあるわ。
結子はスマホの彩菜の番号を自分が突き放した時以来久方ぶりに押した。
4コール程で「もしもし」と少々気だるそうな口調で彩菜は電話に出た。
「久しぶりだね。彩菜……」
『久しぶりね結子。で、何故私に電話して来たの?。何を企んでるの?』
やはり結子の睨んだ通り想定の答えと全く違う。
普段の彩菜なら少し怒り気味に『今更なんのよう!?』とか動揺し『話せて嬉しい…』とか言う筈なのに今の彩菜からは結子に対する感情や興味を全く微塵も感じない。
あるのは自分の邪魔にならないかの不信感と敵意だけのようだ。
「貴女本当に彩菜なの?」
『おかしな事を聞くわね。あんた達三年三組に虐げられていた藤沢彩菜本人よ』
「私が知る彩菜は……もっと優しかった筈だけど」
『時が経てば人は変わるのよ。大胆な人間が冷静になったり逆もまた然り。って言うかあんたこんな時間に電話掛けてきたんだから私に謝ると本の少し期待してたけど謝る気もないのね。時間の無駄だわ。無駄無駄』
「待っ…!」
彩菜は一方的に電話を切った。
この事により結子の抱いた疑念はより確信に近づいていく。
あれは藤沢彩菜ではなく彩菜の格好をした化け物だと。
オカルトじみてるがこの考えが一番しっくり来る。
「私が取るべき行動は私の愚かな行いにより孤立させてしまった彩菜を陰ながらサポートする事だった。だけど彩菜もクラスの風紀を乱すなら……敵と見るしかない」
嘗ての友達が疎遠になったと思ったら今度は敵に……。
誰が敵であれ結子は護るしかない三年三組を。