「す、すみません!!隊長にこのような無礼を...」
「いや、気にするな。ちょっと着いて来てくれ」
「...?」
突然の隊長のお出ましに兵衛左衛門は気づかずうっかりタメ口で答えてしまった事を謝罪するが、ルイスはあまり気にしていないようだった。兵衛左衛門はエイダンと別れ、ルイスの言う通りに着いて行くとこの基地にどこにでもあるごく普通の訓練部屋に着いた。
「そういえばあの時の敵大将戦、圧勝でしたね。総戦闘能力もずば抜けて高い数値化でしたし」
「当然だ。あの程度の敵で俺が負けるはずがないからな。あと1つアドバイスしておくが、総戦闘能力はあまり過信しない方がいいぞ。敵のステータスをほとんど可視化してくれるものだが、もちろん数値上では表せない部分も多々ある。敵の固有の能力とかな。過信して死んだ奴らを何人か見ているし、あくまでも目安程度に考えた方がいい」
「...了解です」
兵衛左衛門はがっつり数値の事を信用していたので、隊長の助言がなければ今後の防衛戦でどうなるかわからない。その事に兵衛左衛門は冷や汗をかいた。
「早速本題に入るけど、先程の集会の通り副隊長からお前が専用武器無しにエネルギー弾を放ったと報告が入ってね」
「それは副隊長のご報告通りですが...」
「実はこれが出来るのは俺が知る限り、俺、第3部隊分隊長、そしてお前しかいない」
「!?」
兵衛左衛門はてっきり才能と言われても隊の2割くらいは出来そうな感覚だと思っていたが、予想していたよりも大きく希少な能力と知り驚愕した。
「突然だが今ここでスーツを装着して武器も出してくれないか?」
「___?」
隊長の言われた通りに兵衛左衛門はスーツを装着、武器である斧を起動した。
「よし。今スーツに自身のエネルギーが循環してるのはわかるか?」
「循環...?」
兵衛左衛門は自身の体に感覚を研ぎ澄ませると、僅かに血液や体液ではない、「何か」が流れていることに気付いた。
「隊長...これが...」
「そう。それが俺の言っていた『エネルギー』だ。正確には本来ある生命エネルギーをスーツによって活性化した物だな。実はこれを自覚するにはある程度の隊員にまで成長しないとわからないんだが、たった1戦で、しかも入隊して1日で自覚できるなんてやはり俺が見込んでいた通りだ。次はそのエネルギーを斧に流し込むようにしてそのまま斧を振ってくれ」
兵衛左衛門は言われた通りに体内で循環しているエネルギーを斧に流し込むように操作し、そのまま斧を振るうと、刃の部分から斬撃が飛び出し、壁に当たって爆せた。
「すごい...エネルギーを操作するとこんなことが...あれ?なんだか武器無しでエネルギーを放つよりあまり疲れないような気が...」
「そう、お前の気付いた通り武器を伝って放たれたエネルギーはスーツのみで放ったエネルギーよりエネルギー消費がかなり少ない。さらに武器を伝れば才能ある無しは関係ないからな」
「ということはつまり、スーツのみでエネルギーを放てば効率が非常に悪く、戦いでは推奨されない戦法ってことですか?」
「大正解だ。もしどうしても使わなきゃいけなくなった時は、切り札みたいな感覚と思っていた方がいい」
「わかりました!」
「第35期生は今はお前より強い隊員が何人かいる。しかしお前は将来必ず化けると見込んでいる。期待しているぞ」
「___ッ!ありがとうございます!」
スーツを解除して「失礼します!」とすこし気合いの入った挨拶で兵衛左衛門は退出した。少しすると扉の開き、誰かが訓練部屋に入ってきた。
「お前が入隊したての隊員に直々に指導するなんて、随分とあの隊員を気にいっているみたいだな。」
「...!なんだガンナーか。聞き耳を立てていたとは性格悪いぞ」
副隊長のガンナーは笑いながら「悪い悪い」と言ってルイスへと歩み寄った。
「あの大戦から2ヶ月、お前が隊長に赴任して今後がどうなるかと不安だったが、どうにかなるみたいだな」
「おいおい、まるで俺が隊長不向きみたいな発言じゃないか。失礼だぞ?」
「だって普通隊長が自分の部隊を持たずに単独で活動するなんて、先代である2代目、初代隊長でさえそんなこと無かったぞ」
「このスーツが10年前に実用化された新生対人戦闘部隊の歴史は浅い。たまにはこんな隊長が居たっていいんじゃないか?」
「全く...強さに反してお気楽な奴だ...」
ルイスがにやりと笑いながら返し、ガンナーはその発言に苦笑した。2人の少年のような笑いが、この広い訓練部屋に響き渡った。