兵衛左衛門達が所属する第35期生がジェンツー隊に入隊して約1ヶ月の時が経った。この間は侵略者が現れず、ひたすらに訓練の日々が続いた。特に入隊したばかりのジェンツー隊員は成長が早く、兵衛左衛門達は平均して2倍程総戦闘能力が増加した。
今日もいつもと変わらない日となるはずだったが___
「今日はついに部隊編成の日か...」
ベットから体を起こし、予定表を見て兵衛左衛門が口にした部隊編成というのは第1〜第4部隊まで存在する各分隊長が第35期生の5人組で構成された40組あるA〜AN班から各10組選出し、その部隊へ組み込まれるというものである。各分隊長を除いた各部隊の戦力差はあまりないが、隊長に特に指示が無ければ分隊長によって戦法が大きく異なる。
「集合時間は訓練の時間と同じだし、いつも通り準備するか」
こうしていつものように準備を行い、朝食をとるために食堂へ向かうために部屋を出た。
「兵衛左衛門おはよ!今日はついに部隊編成の日だな!」
部屋を出てすぐに声をかけられた兵衛左衛門は声のある方向に目を向けると、エイダンの姿があった。
「おはようエイダン。なんだかいつもよりも機嫌がいいんじゃないか?」
「だってそりゃあ今後の隊員生活が大きく変わるかもしれないんだぜ!?わくわくが止まらねえなあ!」
「全く大袈裟な奴だな。はよ飯行くぞ。多分エルダ達ももうあっちにいると思うし」
兵衛左衛門とエイダンは食堂へと向かい、兵衛左衛門の予想通り先に居たエルダ、アイザック、レオの座っている同じテーブルに座った。ジェンツー隊は隊員一斉に食事をとるなどの規則はなく、訓練やその他指示された時間に間に合うようにすれば自由に生活することを許されていた。今日の朝食は鱈の蒸し焼きをメインとした料理であった。
「今日の部隊編成ってそんなに重要なもんなのか?」
鱈をほおばりながら兵衛左衛門が質問した。
「ええ、部隊編成は部隊だけでなく我々にも非常に重要です。なにせ分隊長ごとに大きく戦法が異なってくるので、武功のあげやすさや危険度などが随分変わってきますからね。一番無難なのはやはりガンナー副隊長が務める第1部隊でしょうか。」
「なんで副隊長の部隊が一番なんだぁ?」
早くも食事を終えたアイザックがレオの説明に疑問を抱いた。
「第1部隊は敵勢力の主力部隊と真っ向から戦うことがほとんどですからね。活躍しようと思えばその分だけ活躍できますし、副隊長の実力から危険度も平均くらいと考えています。」
「他の部隊はどうなの?」
エルダが続いて質問に入る。
「武蔵分隊長が務める第2部隊はサイドから中心部へ突撃し、敵部隊のフォーメーションを崩すような戦法を取ります。戦況を大きく変えることができますが、危険度もその分それなりに高いですね。リッパー分隊長の務める第3部隊は敵の後方や深い部分から攻める戦法を取ります。敵の防御を削ぐ戦法なので武功は上げにくいと思いますが、危険度は他の部隊よりはあまり高くないと考えています。ケレイブ分隊長が務める第4部隊は分隊長が先頭となり敵船の真ん中に飛び込むかなり大胆な戦法を取ります。敵勢力の司令部を直接突きに行くような戦法で重要に見えますが、中がどうなっているかは敵によるので危険度にはかなり振れ幅がありますね」
「レオ、ほんとになんでも知っているな...」
元々博識なところはあるレオだったが、まさかここまで物知りだとは誰も思っていなかった。流石あそこまで本を読んでいるほどの情報収集力には長けていると言ったところだろうか。
「そろそろ集合の時間になりそうね。みんな行きましょ」
食事を終えB班一同は集合場所である第35期生が集められた大広場へと向い整列し、ついに部隊編成の発表が行われる時間となった。
「これより、第35期生の部隊編成の発表を行う!各分隊長は前へ!」
ルイス隊長の掛け声と共に各分隊長が前へと並び、各分隊長の簡易的な紹介が始まった。
「対人戦闘部隊副隊長及び、第1部隊分隊長のガンナーだ」
「第2部隊分隊長の武蔵と申す」
「第3部隊分隊長のリッパーだ...!」
「第4部隊分隊長のケレイブだッ!」
ガンナーは初陣の時に聞いた冷静な、武蔵は肝の座っている、リッパーはどこか奥に深みのある、ケレイブはレオの聞いていた通り大胆な雰囲気を感じた。そのままルイスの掛け声と共に各分隊長の後ろにある巨大なスクリーンに各部隊の編成が映し出され、広場はかなりざわついた。
「俺達は____ッ!第1部隊だ!」
兵衛左衛門達の希望通りだった第1部隊への所属に決まり、B班一同は喜びを噛み締めて小さくガッツポーズをした。
「所属部隊を確認した班から順次解散だ。今後の訓練は所属した部隊と共に訓練を行うことがほとんどとなる。それでは今回の集会は以上だ」
「「「ありがとうございました!」」」
第35期生は続々と退出し始め、B班一同も大広場から退出した。
「まさかほんとに第1部隊になるなんて思わなかったぜ!」
「これは初陣の時から副隊長や隊長に目を付けられていた兵衛左衛門のおかげじゃないかしら?」
「本当にでかしたなぁ!兵衛左衛門!」
「これは兵衛左衛門さんに感謝ですね」
「あの時ほんとににただ戦っていただけなんだけど...なんかありがとな!」
B班のメンバーに謎の感謝をされた兵衛左衛門は困惑しつつも、とりあえず希望通りの部隊に入れたことに安堵した。