「ようやくまともに会えたな、ノア」
目の前にいる彼・・・ジュリウス・ヴィスコンティはそう言って笑みを浮かべると“彼”・・・神無月 乃亜に手を差し伸べた。だが乃亜はその手を握ろうとはせずただ呆然としているだけだ。するとジュリウスは少し困ったような表情を浮かべると言った。
「・・・どうした? 俺の手を取らないのかい?」
ジュリウスの言葉に乃亜は慌てて手を差し出しジュリウスに起こしてもらうがその表情はどこか困惑したままだ。そんな様子に疑問を抱いたのかジュリウスは首を傾げると口を開いた。
「どうしたんだ?」
彼・・・乃亜が困惑するのも当然だ。
ジュリウス・・・ジュリウス・ヴィスコンティはゲーム【ゴッドイーター2】及び【ゴッドイーター2 レイジバースト】に登場するキャラクターだ。その容姿は【ゴッドイーター2】のパッケージイラストにも描かれている。
そんな彼が今、目の前にいる事が乃亜には信じられなかったのである。
(いや待て落ち着け俺!)
混乱する頭を何とか落ち着かせようとするが上手くいかないのか乃亜はすぐにでも発狂しそうなほど混乱していた。だがそれでも必死に冷静さを保ちつつジュリウスに尋ねた。
「な、なあ・・・ここは何処なんだ?」
「ん? ああそうか、君はまだ混乱しているんだな。だが心配しなくていい。すぐに慣れるさ」
ジュリウスはそう言うと乃亜の手を引き路地の出口へと案内する。そして彼が外に出るとそこには都会の街並みが広がっていた。その光景を見た乃亜は思わず感嘆の声を漏らすが、やがてある事に気付くと再び困惑した表情を浮かべた。
(あれ?ここ・・・日本じゃない?)
路地を抜け目の前に映るのは日本にもあるようなビル群。しかし看板は漢字や平仮名等ではなく英語だ。
(ここって外国なのか?)
乃亜は辺りを見渡すがやはりどう見ても日本とは思えない。
そしてそんな乃亜の様子をジュリウスは不思議そうに見ていた。
「どうしたんだノア、さっきから様子が変だぞ?」
「・・・なあ、一つ聞いてもいいか?」
「ん?なんだ?」
「ここは何処なんだ?」
乃亜の問いにジュリウスは少し考え込むとやがて口を開いた。
「アメリカだ」
「・・・は?」
ジュリウスの言葉に乃亜は思わず間抜けな声を出す。だがジュリウスはそんな乃亜の様子に気付くことなく説明を続けた。
「信じられないかもしれないが、俺達は今アメリカにいるんだ」
「・・・マジか?」
「マジだ」
ジュリウスの言葉に乃亜は思わず頭を抱える。
(いやアメリカって・・・俺パスポートなんて持ってないぞ? というかそもそもどうやってここまで来たんだよ!?)
乃亜は頭を抱えながら必死に今の状況を理解しようとするが、どうしても理解が追い付かない。そんな乃亜の様子をジュリウスは心配そうに見ていた。
「大丈夫かノア?」
「・・・あぁ大丈夫だ。全然大丈夫じゃないけど・・・」
「そうか、なら良かった」
ボソッと零れる小言を他所に乃亜の言葉にジュリウスは安堵の笑みを浮かべる。そして乃亜は改めてジュリウスに尋ねた。
「それで?これからどうするんだ?」
「まずは紹介したい人達がいる」
「紹介したい人達?」
乃亜の言葉にジュリウスは頷きつつ歩を進める。
ジュリウスに案内され着いたのは川沿いの廃倉庫。
乃亜は廃倉庫を不思議そうに見ているとジュリウスが口を開いた。
「さあ、入ってくれ」
ジュリウスに促されるまま乃亜は廃倉庫の中に入る。するとそこには数人の男女が集まっていた。
・・・しかし、そのどれもが乃亜にとっては見覚えがある。
「みんな、ノアが目覚めた。ノア、彼らは俺の仲間達だ」
ジュリウスの言葉に廃倉庫にいた者達は一斉に乃亜を見る。
銀のように見える綺麗な白髪のショートカットにサイバーパンク風の黒地に青のラインが入った少女【
背中まで届く綺麗な銀のような白髪の少女【カサネ・ランドール】。
黒いロングコートにファー付きの黒い帽子、薄紫のスカートに黒ブーツを身に着けた背中まで届く金髪ツインテールの少女【ミア・カルンシュタイン】。
本来ならジュリウス同様、現実に存在している事はあり得ないゲームのキャラクターの少女達がそこにはいた。
「えっと・・・ジュリウス、これはどういう事だ?」
乃亜は困惑しながらジュリウスに尋ねるが彼は笑みを浮かべるだけで何も答えない。そんな乃亜の様子を見て少女達はそれぞれ自己紹介を始めた。
「やっと、あなたに会えた・・・私は
「知ってると思うけど、私はミア・カルンシュタイン。会えて嬉しいわノア」
「カサネ・ランドールよ。よろしく、ノア」
「・・・え?あ、あぁよろしく・・・」
いきなりの事に戸惑いながら乃亜も自己紹介をする。しかし突然の出来事に頭が付いていかず呆然としていると
「ねぇ、大丈夫?」
「え?あ、あぁ・・・大丈夫だ」
乃亜はそう答えるがやはり困惑しているのかどこかぎこちない。そんな様子を見てジュリウスは笑みを零すと口を開いた。
「さて、まだ来ていない者もいるがこれからどうするか話し合おう」
ジュリウスの言葉に少女達は頷くと廃倉庫の中心に集まる。そして互いに顔を見合わせると頷き合い話し合いを始めた。
(・・・というかこれどういう状況だよ?)
乃亜は困惑しながらも話し合いに参加する。だがやはり状況を理解する事は出来なかった。
「なあ、これからどうするんだ?」
話し合いを終えた乃亜はジュリウスに尋ねるが彼は笑みを浮かべるだけで何も答えない。そんな様子を見て乃亜は小さく溜め息を吐くと廃倉庫の出口へと向かい歩き始めた。
(とりあえず、ここがアメリカの何処か調べてみるか・・・)
そう思いながら歩いていると突然背後から声をかけられた。振り向くとそこにはミアが立っていた。彼女は笑みを浮かべつつ口を開くと言った。
「ねえ、良かったらこれから一緒に食事でもどう?」
「え?いや俺は・・・」
「遠慮しなくてもいいわよ。みんなもいいわよね?」
乃亜が断ろうとするがミアは構わず他のメンバーに尋ねる。すると
(どうしてこうなったんだろうなぁ・・・)
廃倉庫から少し離れた場所にあるレストランで食事をしながら乃亜は心の中でそう呟く。
とはいうがこんな状況で食べ物が胃に入る訳もなく、乃亜は注文したオレンジジュースを口に含むだけ。
そしてただぼうっと店の中を見回しているとあるものが目に留まる。
恐らく店の店主の趣味で飾られているであろうアニメのキャラクターフィギュアだ。
それを見た瞬間、乃亜の頭の中でパズルが組み上がった。
ジュリウス、
全員現実に存在する事はあり得ない上、4人共登場するゲーム作品もバラバラで統一性が無い。
しかし、1つだけ共通する点があった。
それは、
そしてそれを思い出したと同時に乃亜はまた思い出した。
自分はジュリウスと会う前、正確にはバス転落事故で不思議な空間を彷徨い翼の生えた女性と会う前・・・つまりは前世だ。
その時に自分は確かにフィギュアを部屋に飾っていた。そしてそれはジュリウス、
つまり、ここにいる全員が
だが同時にある疑問が湧き上がった。
(じゃあ何で俺の所にいるんだ?)
乃亜は転生した身であり、フィギュアを購入したのも前世だ。それにジュリウス達のフィギュアは膨大な数が前世では放たれていたはず。
自分が買ったフィギュアのキャラクター達だけが今ここに存在している理由が分からないのだ。
乃亜が頭を悩ませていると不意にカサネが口を開いた。
「ねえ、さっきから何か考え事?」
「・・・え?あ、あぁちょっとな」
突然話しかけられた事に驚きながら乃亜はそう答えると再びジュースを口に含む。そしてふと気になった事を尋ねた。
「なあ皆って・・・何でここにいるんだ?」
その言葉にミアと
「俺達は君の
「俺の・・・力?」
ジュリウスの言葉に乃亜は首を傾げる。すると
「そう、あなたは私達に命を与えてくれたの」
「・・・どういう事だ?」
乃亜の問いに
古来より親しみや愛情を込められたり、大切に扱われ続けてきた道具には精霊が宿ると言われている。日本に伝わる
そして
「つまり、俺がお前らに手入れをした結果・・・皆は命を得たって事か?」
「そう。あなたは私達にとって神様みたいなもの」
「・・・いや俺ただの一般人なんだけど」
乃亜の言葉にミアは首を横に振ると言った。
「貴方は私達に新しい世界を与えてくれた。だから私達は貴方に感謝しているの」
ミアの言葉に
(大袈裟過ぎだろ・・・)
そう思いながら乃亜は小さく溜め息を吐き心の中でそう呟くとミアの言葉を否定する。
「いや、俺はただお前らに手入れをしただけだ。別に新しい世界を与えた訳じゃない」
乃亜の言葉にミアは微笑みながら言った。
「それでも私達は感謝しているの・・・ありがとう」
「・・・あぁどういたしまして」
(まあ、悪い気はしないな)
そんな事を考えつつ乃亜は小さく笑みを浮かべるのだった。そして食事を終えた後、店を出た乃亜達はそのまま解散し各々が帰路につく。
乃亜はジュリウス達と別れた後にここがアメリカの何処なのか特定すべく散策を行っていた。
本当は携帯で調べればすぐ分かるであろう事も、今の乃亜の手には携帯が無い為に地道な散策である。しかし、乃亜はそんな散策を楽しんでもいた。
(・・・まあ、こういう気儘なのも悪くないかもな)
そんな事を考えながら乃亜が歩いているとドーナツ屋の屋台前に止まる白黒の車、パトカーが目に留まった。
ドアの部分に書いてあるエンブレムを良く見る。
LAPD・・・
過去に授業で英語を勉強していた乃亜は何とか読み取る事が出来た。
どうやらこのパトカーはロサンゼルス市警のものらしい。つまり今、乃亜達がいるのはロサンゼルス。アメリカ・カリフォルニア州という事だ。
それが分かった所で、突然背後から声をかけられた。
「こんな所で何してるんだ?」
振り返るとそこにはジュリウスが立っていた。彼は笑みを浮かべながら言う。
「もしかして迷子か?だったら一緒に交番まで行こうか?」
「いや、違うから」
そんなジュリウスの言葉に乃亜が答えると彼は笑いながら言った。
「冗談だ」
「・・・ったく勘弁してくれよ」
そんなやり取りをしつつ2人は歩き出す。
そうして2人は廃倉庫に戻ってきたが、そこで乃亜は再びフリーズする事になる。
・・・増えているのだ、ジュリウスに案内され最初にここへ来た時よりも人数が。
ハーフサイドアップに纏めた背中まで届く金髪で黄色のベストに緑のスカート、上に赤いジャージを羽織った少女【
背中まで届くピンク色の髪に赤い角のようなカチューシャを着ける、グレーのスカートとそこから出ている白いシャツ、黒いネクタイ、赤いマフラー、グレーのブレザーを纏った少女【ゼロツー[Code:002]】
顔の右側にかかり気味な青いショートカット、白いシャツに紺のネクタイ、グレーのスカート、黒いパーカーを羽織った少女【イチゴ[Code:015]】
(何で増えてるんだよ・・・)
思わず頭を抱える乃亜。そんな様子を見てジュリウスは苦笑を浮かべるしかなかった。
そんな乃亜の心境を他所に、少女達は乃亜に近付いてくる。
「やっと会えたねノア。あたしは天翔 優利だ。よろしく」
「ボクはゼロツー。よろしく」
「私はイチゴ。よろしくね、ノア」
ジュリウスの言った通り、どうやら乃亜が購入したフィギュアのキャラクター全員がこの場所に集まっているらしい。
彼女達は笑顔を浮かべながら乃亜に握手を求めるように手を差し出す。
「あ、あぁよろしく・・・」
困惑しながらも乃亜は差し出された手を握る。すると彼女達もそれに応えるように乃亜の手を握り返した。
とは言え、乃亜がこの環境に慣れるにはまだ時間がかかりそうだ。
こうして、乃亜の不思議な日常が始まるのだった。
ED:トリカゴ/戸松 遥、市ノ瀬 加那、山下 七海、早見 沙織、石上 静香
Crossover Database
ジュリウス・ヴィスコンティ/【
ミア・カルンシュタイン/【
カサネ・ランドール/【
天翔 優利/【出会って5秒でバトル】
ゼロツー[Code:002]/【ダーリン・イン・ザ・フランキス】
イチゴ[Code:015]/【ダーリン・イン・ザ・フランキス】