OP:新世界/南條 愛乃
翌朝、乃亜は昨夜の事を皆に話す。
当時同行していたジュリウスとゼロツーは既に知っている為何も言わないが、他の仲間達は驚いていた。
「まさか、そんな事があったなんて・・・」
マキナの言葉に他の仲間達も頷く。するとカサネが言った。
「よく無事だったわね?」
カサネの言葉に乃亜は答える。
「ああ、運が良かったよ」
乃亜の言葉にイチゴが口を開く。
「でも、これからどうするの?」
その問いに答えたのは乃亜だ。
「・・・皆、俺の話を聞いてくれるか?」
乃亜が話し出したのは自分の前世の事。
乃亜の父親は高名な政治活動家だったが、裏では無関係な人々から資金を搾り取ってきた悪徳政治家だった。
当時幼く、テレビのアニメや特撮ヒーローに憧れていた乃亜にとってはそれはまさに悪の所業。
当然許す事など出来なかった乃亜は父親の書斎から汚職の証拠を持ち出し、マスコミに情報を流した。
だがその事を察知した父親は、口封じの為に乃亜を殺そうとしたのだ。
その時は警察の到着が間に合い乃亜は事なきを得たが、何と汚職の関係者には警察上層部の人間も居たとの事。その事を知った乃亜は、警察を頼る事をやめ自力で父親の悪事を暴く事にした。
そしてついに証拠を集め、父親を死刑にまで追い込む事が出来た。
しかし、そんな乃亜を待っていたのは母親からの罵声であった。
「お前は狂ってるわ!」
母親の言葉に乃亜は絶句した。自分が正しいと信じ、父親の悪事を暴いた結果がこれである。
乃亜は母親の言葉を聞いて愕然とした。自分は間違っていたのか? そんな疑問に答える者は誰もいない。そしてそのまま母親は自宅で首を吊って自殺した。
その後、乃亜の父親と繋がっていた警察上層部の人間や検察官も汚職が発覚し軒並み逮捕となった。そして父親も死刑となり、乃亜は無罪となった。しかし、それでも乃亜の心は晴れず罪の意識が消えた訳では無い。
「・・・」
乃亜の話を聞いていた仲間達は黙り込んでいる。そしてしばらくした後、最初に口を開いたのはジュリウスだ。
彼は真剣な表情で言う。
「お前は何も間違えていない」
その言葉に続いてイチゴも言う。
「そうだよ、ノアは正しい事をしたんだよ!」
そんな2人の言葉に他の仲間達も続いた。
「私もそう思うわ」とカサネが言い、「ボクもだよ!」とゼロツーが言う。そしてそれに同調するかのようにミアが、
そして最後にウリエルが言った。
「私も貴方が悪いとは思わない。きっと、主神様もお許しくださるわ」
その言葉を聞いた瞬間、乃亜の中で何かが吹っ切れたような気がした。
実際、人が人を裁く事は御法度だが、法の番人であるはずの警察や検察は自分達に利益があると分かれば喜んで悪党に手を貸す。そんな現実が乃亜には許せなかった。
そしてそれは今も変わらない。だからこそ、乃亜は戦う事を決意したのだ。
「皆、ありがとう」
乃亜の言葉に仲間達は微笑む。そして彼等は改めて決意した。自分達が目指すのは自らの正義の為に戦う事であると。
たとえ誰からも称賛される事はなくとも、自分達が信じる正義を貫く為に戦うのだと。
それから数日後、乃亜達はロサンゼルスからサンフランシスコへと移動した。
目的はレイナの株取引の傍らで集めた情報を元に突き止めた今回のジュエリー盗難事件の主犯であるカリフォルニア州最大規模のマフィア組織、ロックフェラー・ファミリーだ。彼等はサンフランシスコを中心に活動している犯罪組織で、麻薬取引や密売等様々な犯罪に手を染めている。
そして今回の事件も恐らくその組織の関与が疑われていたが、警察内部にも組織の手が及んでおり、証拠が掴めずにいたらしい。
しかし、レイナの情報網によってその情報を掴む事に成功した乃亜達は早速行動を開始した。
まず最初に行ったのは情報収集だ。ロックフェラー・ファミリーは主にサンフランシスコを中心に活動しているが、その拠点は複数存在する。
そこで乃亜達は手分けしてそれぞれの拠点を下調べする事にしたのだ。
まず最初に向かったのはサンフランシスコにあるロックフェラー・ファミリーの拠点の一つ、ダウンタウン地区にある建物だ。その建物は表向きは普通のオフィスビルだが、実はロックフェラー・ファミリーのアジトの一つだった。
乃亜達は気づかれないようオフィスの天井裏の換気ダクトから侵入し、オフィス内の様子を写真に収める。当然シャッター音は厳禁だ。乃亜達は慎重に天井裏を移動し、オフィス内の様子を写真に収めていった。すると突然一人の女性が部屋から出てくる。彼女はそのままトイレの方へ向かっていったようだ。
女性はしばらく戻って来なかったが、その間に他の仲間が周囲の状況を確認する。どうやら周囲に人はいないらしい。
そこで乃亜は天井に穴を開けるとそこから飛び降りて女性の背後に着地した。そして素早く女性の口を塞ぎながら拳銃を突き付けると耳元で囁くように言った。
(動くな)
驚いた女性は暴れようとしたが、その前に乃亜が首を締め上げ気絶させる。命は奪ってはいない。
悪党には容赦はしないが極力命を奪う事は避けるように。それが乃亜のポリシーだった。
気絶した女性を縛り上げると、仲間達が天井裏から降りてくる。そして彼女達は手早く女性の持ち物を調べる事にした。すると彼女のバッグの中からジュエリーの入ったケースが見つかった。どうやらこの女性はロックフェラー・ファミリーの一員らしい。
乃亜達はその女性の両手両足に手錠を掛け、口に猿轡をするとトイレの個室に閉じ込める。そしてそのまま放置してその場を後にした。
次に乃亜達が向かったのは女性の荷物を調べた際にメモ帳から判明したベイエリアにあるもう一つのアジトだ。ベイエリアにあるこちらの倉庫の方は先程のオフィスのアジトよりも大きく、ロックフェラー・ファミリーの本部らしい。
建物の周りには見張りが数人配置されており、中には数十人もの人間がいるようだった。
どうやら一筋縄ではいかないようだと判断した乃亜達は一度作戦を練り直す事にした。
しかし会議の途中で焦れたゼロツーやICEYからの意見もあり、作戦の決行は今夜。内容は武力による直接的な制圧だ。乃亜は仲間達の意見を聞き入れつつ、作戦の決行時間や各班の役割分担などを決めていく。
そして夜になり、乃亜達は行動を開始した。まず最初にレイナが株取引の片手間に集めた情報を元に、マキナがロックフェラー・ファミリーの部下に変装して潜入。そして他の仲間達は外で待機し、合図があったら突入する手筈となった。
作戦決行の夜、マキナはロックフェラー・ファミリーの倉庫内に潜入する事に成功した。
倉庫の扉の影では乃亜、ICEY、優利、ゼロツー、イチゴ、ウリエルが。屋根の上にはジュリウス、ミア、カサネ、ガブリエルが待機している。
レイナはカメラに痕跡が残らない様にハッキングを担当している。
そして数分後、作戦開始の合図が送られてきた。それを確認した乃亜は仲間達に合図を出すと一斉に突入した。
ロックフェラー・ファミリーの構成員達は突然の侵入者に驚きながらも銃を構えるが、そんな彼等に対して乃亜達は容赦なく発砲していく。
銃撃戦の後、倉庫内には静寂が訪れる。
翌日、警察による現場検証が行われた。その結果、倉庫内にいた人間は全員逮捕。逮捕された者の中にはロックフェラー・ファミリーのボス「ジャクソン・ロックフェラー」もいた。
そしてこの銃撃戦を切っ掛けにロックフェラー・ファミリーのアジトに警察の強制捜査が入り、ファミリーと繋がっていた警察官も逮捕された。
これによりロックフェラー・ファミリーは致命的な打撃を受け、事実上壊滅したのだった。
その後、レイナはハッキングの腕を遺憾なく発揮。ロックフェラー・ファミリーに関わっていた政治家や警察上層部の人間を次々と告発していった。その結果彼等は次々と逮捕されていき、世間を騒がせた窃盗事件と警察の汚職事件も解決へと向かう事となる。
そしてこの事件をきっかけにカリフォルニア州では不正な金の流れや賄賂等が無くなり治安が改善されつつあったという。しかしその裏には法の番人の加護を受けのさばる悪党を許さない者達の存在がいる事を彼らは知る由もないだろう。その後、乃亜達はしばしの休息期間。ロックフェラー・ファミリーから奪った金は低所得層街に住む人々に配る事にした。
どうせ不当な理由で貧しい人々から吸い上げたカネだろうという乃亜からの言葉を受け、彼らは金を配って回った。
その翌朝、人々は家の玄関に札束で一杯になったバッグが置かれているのを見て驚く事になるのだが、それはまた別の話。
乃亜達の拠点のホテルにも変化はあった。
何とマキナが手を出していた会社の株が大当たり。莫大な富を手に入れたのだ。
その為資金的余裕が生まれた乃亜達はホテルの地下に訓練設備を設ける事にした。次の戦いが何時訪れても対応出来るようにだ。
当然街中に作る為に人々の不安を煽らないよう防音・遮音仕様にする予定だ。その分掛かる金も馬鹿にならないが、そこは必要経費と割り切る事にした。
必要経費と言えば手に入れた物はまだある。
車だ。
ロックフェラー・ファミリーのアジトを制圧した際、乃亜達はファミリーの車を手に入れた。年代物の古い車でガタも来ているがかえって都合が良いだろう。
旧車は現代の車と違いハイテクな電子制御は使われていない。それは言い換えれば外部からの電子攻撃の影響を受けないという事。つまり、ハッキングの対策には打って付けという訳だ。
全部で5台。車を手に入れた事で移動手段の幅が広がり、行動範囲も広がった。
ロックフェラー・ファミリーと関係者の一斉検挙から1ヶ月後。ここしばらくは大きな事件の気配も無く、拠点ホテルで寛ぐ乃亜達。
仲間達が各々の時間を過ごしている中、乃亜は自室で新聞を読んでいた。新聞には連日ロックフェラー・ファミリーの関係者が逮捕された事が報道されている。その中にはジャクソン・ロックフェラーの名前もあった。彼は逮捕されて以降、取り調べに対して黙秘を続けているらしい。
(やれやれ)
乃亜は溜息を吐きながらそんな記事を読み終えると新聞のページをめくる。
次のページには日本の事が書かれていたがその記事に違和感を覚える。
“日本の治安、8年連続世界一位”
“平和の象徴、「
どうやら日本の首都、東京で建設中の延空木という電波塔が完成間近らしい。
しかし日本の電波塔と言えば東京タワーと東京スカイツリーのはず。治安に関しても乃亜が覚えている限りの日本は確かに世界的に見ても治安は良い方だった、それでも1位という誇れる数字ではなかった記憶がある。乃亜は新聞のページをめくり、他の記事も確認する。やはりどの記事にも日本の治安の良さが書かれていた。
(一体どうなってるんだ?)
疑問に思いながらも乃亜はアメリカにいる自分達には無関係と割り切りその事について深く考える事はしなかった。
そこへウリエルが乃亜の部屋に入り知らせて来た。
「聞いてノア。レイナが貴方にって日本行きの飛行機チケットを取ってくれたわよ?」
「え?」
ウリエルから話を聞いた乃亜は驚いた。まさか日本行きのチケットが取れるとは夢にも思っていなかったからだ。しかし、レイナからの好意を無駄にする訳にもいかないので行く事にした。
「お前が日本へ行っている間の留守は任せてくれ」
しかしジュリウスはそう言って真っ先に日本への同行を辞退。
「良いのか?」
「構わない。別の世界の物とはいえお前の祖国で過ごせる貴重な時間だ。大切にしろ」
ジュリウスの言葉に同調する様に他のメンバーも留守は任せて欲しいと言った。
「皆・・・」
乃亜はその心遣いに感動し、レイナから日本行きの飛行機チケットを受け取る事にした。
しかしそれでも自分1人だけ行くのに申し訳なさを感じ、乃亜はレイナに尋ねた。
「レイナ。流石に俺1人だけってのは申し訳なさすぎる・・・。追加でチケット取れないか?」
するとレイナは少し考えた後、笑顔で言った。
「分かった。追加でチケットを手配しておくから安心して」
その後、レイナは追加の分の日本行きの飛行機チケットを手配した。
数日後、日本行きの便に乗る為ロサンゼルス国際空港に到着すると乃亜達は預ける荷物を預けゲートへ向かう。
尚、追加で取れたチケットは3枚。つまり乃亜の他に3人が同行するという事になる。
ジュリウスは既に日本行きを辞退した為に残りのメンバーで相談した結果、乃亜に同行するのはウリエル、カサネ、イチゴとなった。
「ノア!」
ゲートへ向かう最中、後ろから声を掛けられ乃亜が振り返ると、ジュリウス達が見送りに来ていた。
「ジュリウス。留守は頼んだぞ?」
「ああ、任せておけ」
乃亜の言葉にジュリウスが頷くと他のメンバーも頷いた。そしてカサネは見送りに来たのが照れ臭いのかそっぽを向き、イチゴとウリエルは笑顔で手を振っていた。そんな仲間達に見送られながら乃亜達はゲートを潜る。
こうして乃亜達3人は日本へ。残りのメンバーは拠点で留守番という事になった。
「さて、行くか」
飛行機に乗り込んだ乃亜はこれからの事に思いを馳せるのだった。
ED:トリカゴ/戸松 遥、市ノ瀬 加那、山下 七海、早見 沙織、石上 静香
Crossover Database
ジュリウス・ヴィスコンティ/【
ミア・カルンシュタイン/【
カサネ・ランドール/【
天翔 優利/【出会って5秒でバトル】
ゼロツー[Code:002]/【ダーリン・イン・ザ・フランキス】
イチゴ[Code:015]/【ダーリン・イン・ザ・フランキス】
マキナ・中島/【マクロス
レイナ・プラウラー/【マクロス
ウリエル/【モンスターストライク】
ガブリエル/【モンスターストライク】