0079年1月3日。
地球よりもっとも遠いサイド3はジオン公国をなのり地球連邦に宣戦布告した。あれから20年がたち時代は0098年になろうとしていた。
ジオン公国は0080年頃に地球連邦に敗戦し共和国として再始動していた。ザビ家の末裔であるミネバはそのことによりジオン共和国にいられなくなり0098年のときに18才をむかえようとしていた。
16才の頃から不思議な出会いをはたしていたミネバは木星に逃亡しなければいけなかったがジオン共和国とネオ・ジオン残党の妨害により逃げることができなかった。必死にジオン残党がミネバを護ろうとしたが進展はなかった。
それどころか。ジオン共和国が密かに開発したミネバシステムと共鳴をはたし真王と呼ばれた謎の男が立ち塞がった。理由はミネバを強奪し政略結婚するためだった。
そんなときにミネバは16才で出会ったアナハイムの力をかり真王の魔の手から逃れようとした。アナハイム直属のテストパイロットジェイド・ラグナーが配属された。
ジェイド・ラグナー。
年齢はミネバと同じく18才。少年のときにニュータイプ論を唱えたジオンが嫌いになり自身がニュータイプの素養があるにもかかわらず心を閉ざしていた。元々は地球連邦に所属していたが17才のときにアナハイムに拾われた。アナハイムの狙いはジェイド・ラグナーのニュータイプ能力でありそれ以下でもそれ以上でもなかった。ジェイド・ラグナーも自身の役割を理解し必要最低限の働きはしていた。
そんなジェイド・ラグナーは愛機であるセレスティアルガンダム試作一号機に乗りミネバのもとにきた。ミネバは護送艦ミネルヴァに乗っていた。
セレスティアルガンダム試作一号機。
リガズゥをもとに再設計されリファインガンダムプロジェクトをえて造られたアナハイムのモビルスーツ。独自の技術であるミノフスキーブラストを腰の両側に装着されており重力下でも推進剤なしで宙に浮けた。また宙域でももちろん稼働可能であり脅威の継続力を見せていた。
のちに二機のモビルスーツがロールアウトされる予定だが設計思想が違うため姿が異なっていた。例えば試作二号機はリガズゥをもとにしておりパージする部分をミノフスキーブラスト&サイコミュ化することで何度でも再利用可能となっていた。最後の試作三号機はパージなしで完全可変が可能でありミノフスキーブラストがあれば推進剤なしで飛ぶことができた。この三機にはサイコミュアーマーが装着されておりパージすることでリミッター解除することができニュータイプではなく一般人では限界突破できない仕様となっていた。
いちようニュータイプのジェイド・ラグナーは能力が足りずサイコミュアーマーをパージできないでいた。ミネバシステムと共鳴をはたした者か。あるいは――。
「なんとか言ったらどうなんだ! ジェイド・ラグナー!」
護送艦ミネルヴァに搭乗しているガーデン・モスキーが声を荒げた。なにやらジェイド・ラグナーを睨みつけ風当たり強く当たっていた。聞こえたジェイド・ラグナーはそれでもだんまりを貫き戸惑うことなく艦長を見ていた。
「心を開かせるには怒鳴っていては駄目だ、ガーデン。だがしかし――」
艦長は言葉を詰まらせ顎に右手の平を当て人差し指と親指でなぞっていた。なんの心配ごとがあるのかなんてジェイド・ラグナーにはどうでもよかった。ただミネバの護衛をジェイド・ラグナーに任せてもよいのかを見定めていた。かのジオン公国を支配していたザビ家の末裔であり後継者に相応しいはずだった。今やジオンは三つの勢力に分かれ統一は困難を極めており早急に木星に向かう必要性があった。
「グレイス艦長――」
早くしなければジオン共和国とネオ・ジオン残党が結託しいつミネバを強奪しにくるかが分からないでいた。18才のミネバをもし強奪され真王と政略結婚させられ子供が生まれると厄介になる以外になかった。かの真王はジオン共和国がネオ・ジオン残党を一つにし後ろ盾にしようと企んだがために送られた刺客だった。噂によれば真王はミネバと同じで年齢が18才だったとか。
真王がどうしてそう呼ばれるようになったのか。ミネバシステムと共鳴に成功し真のニュータイプへの素養を見せたことで実在する本物のミネバとの政略結婚の話が出てきた。ジオン共和国の狙いはただ一つ。共栄圏の実現だった。だがしかしそれは真王とミネバが政略結婚をし子供を産むことが大前提だった。
新しい王が生まれれば賛同する者も増えるとの算段でありけっしてふざけた内容ではなかった。いずれはジオンを統率する者であり正当な後継者として育てるつもりだった。そんなミネバは気に病むことはなく遅れてやってきては艦長の名を呼んだ。生まれながらに呪いを背負ったミネバをジェイド・ラグナーは怪訝そうに見つめた。
「あ! てめぇ! なんて顔でいるんだ! 相手はミネバ様だぞ!」
だからだよと言わんばかりにジェイド・ラグナーは厭きれかえった。確かに立場は上かも知れない。でもジェイド・ラグナーにとってザビ家はニュータイプのイメージを悪くした一族だった。そこからジェイド・ラグナーの人生は大きくかわり心を閉ざし誰とも喋らないほどに変貌を遂げていた。思い返せば思い返すほどに睨みの度合いが増していった。
「そのような眼を私は今まで知らないでいた。安心しろ。憎しみを植えつけたザビ家はもういない」
いや。まだいると睨むことをやめないジェイド・ラグナー。困りはてたミネバは真面目な眼差しに切り替えジェイド・ラグナーを見始めた。双方の目線がぶつかりあい場は気まずくなっていた。
「それでもと言い続けた少年が私を変えてくれた。可能性はゼロではない。諦めたりはしない。空という希望を教えてくれたのは母なる地球だ。けっして宇宙からでは知ることのできない。不思議だ、地球というのは」
地球は青いことをミネバは知っていた。だがしかし空が青いことまでは知らないでいた。かつて人類が宇宙に憧れ目指していたころそこには憎しみはなかった。ミネバは冷静に読みとき口にしていた。
「あんたになにがわかる」
初めて発した言葉がとても受け入れられる物ではなかった。ついに我慢が限界を迎えたジェイド・ラグナーは希望の空さえも睨みかえすような目付きだった。全ての元凶であるザビ家にとてつもない執念を発していた。
「私に空の記憶がある限りそれでもと希望は捨てたりはしない! 私にはもう時間がない。だからどうか私を信じてくれ。このとおりだ」
潔くなったミネバはすんなりと頭を下げた。余りの衝撃にジェイド・ラグナーは睨むことをやめ気付いたときには目線を外していた。
「どうやら今回はミネバ様の勝ちのようだな。おい。ガーデン。ミネバ様を安全なところまで案内しろ。それとジェイド君、もう少しでいい。ミネバ様を信じてやってくれないか。確かに変わられたのは事実のようだからな。君もまた変われるといいな。それでは私はこれにて――」
グレイス艦長はそう言い残すと去っていった。いつ襲撃に遇うかが分からない。だからこそに必要最低限に会いにきていた。短い間隔だったがグレイス艦長はジェイド・ラグナーに顔と名前を覚えられた。格納庫から操舵室に急ぎ向かっていた。
「ミネバ様! こんな奴は無視して行きましょう! さ! こちらです!」
ジェイド・ラグナーをガーデン・モスキーは無視するようだった。グレイス艦長に言われたとおりミネバを安全な部屋まで案内しようと口走っていた。
「ガーデン。私は一人で戻れます。それよりもこのお方が迷わぬように説明しながら案内しなさい」
げげと言わんばかりにガーデン・モスキーは一気に冷め上がった。なんせ喧嘩を売った相手を親切にしなければいけなくなったから。ミネバ様と崇めるガーデン・モスキーにとって命令は絶対だった。とくにミネバはこの野郎のことを静かながらに気に入った様子だと判断した。
「ああ?! もうしょうがねぇ! おい! お前! 今日は特別だ! この俺様が説明しながら案内してやるからな!」
嫌気が満々としていた二人。厭きれていたがなんとか波長をあわし喧嘩することなく安心できる案内で始まりを迎えていた。もし喧嘩から暴力沙汰になったら大変だが比較的に大丈夫だと感じ取れた。本当はお前じゃなくてジェイドだと言いたかったが心の中に封じ込めた。
こうしてジェイド・ラグナーの一日は複雑な気持ちで始まった。はたして護送艦ミネルヴァの乗組員たちは無事に木星に行くことができるのだろうか。このときのジェイド・ラグナーたちはまさか追い詰められて木星どころの騒ぎではなくなることを知らないでいた。