「―――で、勝敗はどうしようか」
地下へのブレイブデュエルエリアへと八神堂の面子と、グラップラー三人衆が消えて行く。残されるのは自分、そしてはやてだけになる。自分よりもイストの方が社交的な性格だ―――人を引っ張ったり、賑やかにするのはアイツの方が遥かに得意だ。自分の領分は面倒な部分の話し合いや考える事だ。だからはやてと残る。はやては子供ながら、その中身は割と成熟しているし、公私はしっかりと分けているからこういう話題も大丈夫だろう。
「勝敗って私らとティーダの兄ちゃんらとの勝負の事やよな」
「そうだねぇ。知ってる通りに僕とイストはお店側の存在だけどクラウスとオリヴィエちゃんは違うからね」
「解っとる解っとる、そっちは配慮するで。つまりプロレスするんなら兄さんら相手の時にせいって話やろ? まあ、見た感じクラウスさん? はシグナムとガチでぶつかりたそうにしているからそのままでええとして、後はどの面子を誰にぶつけるか、って話やね。三時半ぐらいまで待てばヴィータも参戦できるんやけど」
「まあ、それまで待つ理由が少なすぎるからね。とりあえず馬鹿は馬鹿同士で戦わせる事として、ちょっとした提案だけど一対一を二回、そうしたらタッグマッチを一回、最後にチーム戦で一回って感じでどうかな? 正直個人戦を四回もやるとエキシビジョンとはいえダレる部分があるからその前にタッグ、チームって形でテコ入れする感じだけど」
「悪くはないと思うで。じゃああとは誰と誰を当てるか、んで勝敗をどするかって話になるね。……ぶっちゃけ三:一での勝敗はどっちも避けたい所やし」
はやての言葉に頷く。エキシビジョンである以上勝敗が出るのは確実だが、この結果が圧倒的であると困る。もし此方側、もしくは相手側、片方がボロ負けすると客からは”弱い場所”という認識が生まれ、別の所へと客が流れてしまう―――現在の客数からいうとそう言う事が起きると非常に困るのだ。だからなるべくトータルで勝利数はイコールで終わる様に調整したいのが本音のところだ。つまりは、ある程度のプロレスで押し通す必要がある。
「ちなみに僕もイストも負ける事に関しては拘りはないから」
「こっちでは勿論私もだけど、シャマルとザフィーラもそこらへんのプロレス付き合えるで。ちなみにシグナムとヴィータは予想を超えたガチ勢で暇があればシミュレーターで乱入設定を入れて遊んどるからな。プロレス以前の問題やわ」
「まあ、店員としては駄目だけど、プレイヤーとしては正しい姿勢かもしれないね。となるとまず一番最初にぶつかるであろう馬鹿二人をそのままにして、僕かイストがタッグで組まないように気を付ければいいね。それでなら勝敗調整が楽だし。いやぁ、こういう話をしてると社会の暗黒面を覗き込んでいるようで実にドキドキするなぁ」
「兄さん中々腐っとるなぁ……」
「特攻系馬鹿が多い身内だからね、必然的に僕がこっち側を楽しむ様になって来たんだ」
「楽しんでるんかい」
まあね、と言ってからふと思う―――これはチャンスなのではないだろうか。イストはあんな事を言っていたが、個人的には物凄く気になっている事がある。それは勿論、オリヴィエ・ゼーゲブレヒトの事だ。アレは間違いなく天性の怪物である事は間違いない、そう確信している。ジャンルはクラウスとは似ているが違う。クラウスやイストと違って自分には才がない。だからこそ客観的にあの二人、そして新たな一人を見る事が出来る。だから断言する。
地雷は早めに踏んで爆破起動させておこうぜ。
ちなみに処理は相棒に丸投げする。頭の中でイストがド外道が、なんて叫んでいる気がするがそれに関してはガン無視する。役得だぞオラ、喜べよ、みたいな感じに。美少女の地雷解体なんだから実際に喜ぶべきである。ちなみに自分は面倒な女はノーセンキューなのである。女は多少面倒な方が可愛いとか言っているイストに関してはドン引き、女なんて本気出せば蟻のように群がって来るとか言っているクラウスに対しては倍でドン引きである。
「個人戦でクラウスとイスト、タッグで僕とオリヴィエ、後はチーム戦で総合的な流れを見て見るかなぁ……」
「ん、了解したで。個人戦ではこっち、リインを出してみるか。なんだかんだでリインが色気づいとるから面白いリアクションが見れそうだわ」
あぁ、なんというか……彼女の好意は実に解りやすい。視線とか、意識とか、そう言うものがどちらへと向けられているのかを追えば良く解る。アレ、気付いているのだろうか。いや、多分気づいている。気付いているうえで無視している。腐れヘタレめ。さっさとコマせ。
と、思ったところで、地下へと通じる扉が開き、そこから赤毛の相棒が現れる。
「単刀直入に言うとクラウスとシグナムが我慢できずシミュレーターを使って戦闘開始しようとした」
「まだ開店前や……!」
「開店前だからシミュレーターは稼働していないからそこで一旦諦めて……」
「諦めて?」
「木刀バーサス素手のガチ戦闘がだなぁ……」
「流血沙汰になる前に止めろ―――!」
「愉快な友達持ってんなぁ……」
否定はしない。
◆
―――そこからクラウスとシグナムを抑え、拘束してから数時間が経過する。そのころには八神堂はオープンになり、そして遠征イベントの話を聞いていたブレイブデュエルのプレイヤー達が八神堂地下のデュエルスペースへとやって来ている。準備が完了するとあまり話を聞かないままシミュレーターに乗り込む姿を見て、そして馬鹿のままの友人を見て苦笑する。馬鹿だなぁ、こいつ、と。馬鹿をそこで放っておき、ステージから観客席へと視線を向け、やるべきことに集中する。
◆
「―――慣れたものだな、この感覚も」
シミュレーターが稼働し仮想現実に降り立つ。今頃”外”ではティーダ辺りがMCをしているのだろう、あの茶髪の小さな少女―――名前思い出せないので狸、と命名しておこう。多分二人でMCをしているのだろう、割と人としての”タイプ”が似ている感じがしていたし。まあ、それは自分には関係のない話だ。何せ自分はそういうタイプではない。もっともっと馬鹿で、そして更に馬鹿。そうであるべきなのだ。そしてそう思ったからそうなった。
「うむ、本日も絶好調」
腕を組んで視線を持ち上げる―――フィールドは廃墟都市ステージ、崩れた建造物が、遮蔽物が多いステージだ。自分の様に一個も魔法系スキルを持ち込まない者にとっては手頃に投げる事の出来る石材がたっぷり落ちていた非常に戦いやすいステージとなっている。まあ、そこら辺は感覚的な部分だが、必要となったら何時の間にか勝手に投げているだろう。何時もそういう感じだし。
「武装形態」
そう口にするのと同時に、服装がバリアジャケットへと、そしてステータスがリライズに使用したR+のものへと変わる。相も変わらず体が一気に別物の様に強くなる感覚は面白く感じる。普通の人間であればこれはまた慣れるのに時間がかかるだろうが、自分に関しては”強すぎる事に慣れている”のでまったく問題はない。今日もフルスペックで体を動かすことが出来そうで良い。それで充分だ。
「しかし、エキシビジョンマッチか。ふむ……バイト代を貰っているのだから最低限少しは見栄えの良い事をすべきなのだろうか? いや……待て……? 俺の様な超絶イケメンがかっこいい動きを取ってしまったらこれは来場している観客の心を奪ってしまうのではないか……!?」
言ってから動きを止め、周りへと視線を向ける。
「……」
もう一度視線を回りへと向ける。
「……ツッコミが来ない」
少しだけ寂しい。馬鹿一号と馬鹿二号がこの場にいればまず間違いなくローキックか何かが飛んでくる何時もの流れになる。愚妹がいたとしても間違いなく何らかの物理的ツッコミが来るものだが、こうやって一人の時はボケてもツッコミが帰ってこないから寂しいものだ。いや、勿論一人でいる事に対する寂しさではない。芸をやったことに対するリアクションが帰ってこない事に対する寂しさである。だがちょっと待て、よく考えてみよう。
「リアクションが帰ってこない……否定されない……それ、即ち我が勝利……!」
これにて全世界に対してクラウス・イングヴァルトがイケメンである事が認定された。自分がイケメンすぎて辛い。
「……」
チラ、と周りを見るがやはり誰もないし、リアクションもない。解りやすく廃墟の上に立って姿をさらしているが、未だにシグナムの姿を見えない。大体ダイブと同時に戦闘開始なので別にダイブ直後に奇襲してきても問題はない。というか奇襲、暗殺、狙撃、砲撃とか別に問題はない。寧ろ手段を択ばない姿勢には感動すら覚える。尊敬する。そういう手段をもって全力で相対するという事は少なからず倒そうという気概があるのだ。なんとなく得意だからという理由で正面から来られても困る。
故に、
開幕必殺とか実に好みだ。
体を横へズラすのと同時に凄まじい衝撃と音、熱が横を抜けて背後へと向かうのを感じ取る。数瞬後、背後で爆破の音が聞こえてくる。間違いなく必殺の類なのだろう。攻撃が放たれた方へと視線を向ければ、弓を構えた甲冑姿のシグナムの姿が見えた。完全に気配がなかったものだが、攻撃されるその瞬間まで解らなかった。見事な隠形―――現代人にそれを求めるのは実におかしな話かもしれないが。
「うむ、実に見事な隠形、見事な一撃。実に天晴だな。しかし欲を言うのであれば今の一撃で仕留めに来るぐらいの気概が欲しかったな。”この程度なら避けれるだろう”なんて弱気の姿勢ではなく”当てて殺す、避けても殺す”ぐらいの殺意が欲しい」
「成程、話に聞いた通りのキチガイか……しかし納得は行く。強さを求めるには通常の枠のままでは飛び越えられない、そういう事か」
「然り。しかし何よりも―――俺は強い。俺は王者だ。だから避けられる。俺は強いから手段を選べられる。好きに戦える。だがな、貴様は弱い。だから手段を選ばざるを得ない。そして俺はそういうのは好きだぞ。実に心躍る。手段を選ばずに血走った眼で襲い掛かって来る姿は何時だって俺の心を熱くする。あの日の情景をまるで思い出す様だ」
まあ、と言葉を置き
「そのヘボ矢では俺を殺せはしないがなぁ!!」
―――基本的に、敵は煽れるだけ煽る。対戦の基本である。挑発と煽りは基本技能だ。それを交えて視線をシグナムへと向ければ、それを受け止める様に笑顔を浮かべている。弓を構え、そして矢をしっかりとつがえ、引いている。それはまっすぐ此方へと向いている。笑顔を浮かべるシグナムが言葉を届けてくる。
「―――ならば宣言しよう、私は貴殿に勝利すると。貴殿が最も得意とする短期決戦、その土俵で貴殿を完全に敗北させ、勝利させる。私はそう宣言しよう」
「ほう」
それは……良い。実に面白い。楽しみだ。三対一、二対一、そんな風で敗北する事はブレイブデュエルを始めてから何度かあった。それもそうだ、現実とは違ってレアカードやメタスキルを使って戦えば確殺する事は可能なのだから。だが同じ土俵、それも一対一という条件で勝利すると宣言してきた相手はブレイブデュエルを始めてからだと―――初めてだ。なんと愉快な事だろうか。女が正面から勝利すると宣言しているのだ。
つくづく舐めてくれる。
だが良い、それも楽しい。馬鹿なのでわかりやすい方が良い。その方が絶対に楽しめると確信している。そして女から宣言された以上、男にはそれを受ける義務が存在する。故に構える。左半身を前に向ける様にして、左手を前に、右手を後ろに。視線はまっすぐ、矢によって吹き飛ばされ消え、見通しの良くなった廃墟の上。そこにいるシグナムへと接近し、そして一撃―――一撃を叩き込めばそれで勝利出来る。
何度もやったシチュエーションであり、慣れた状況でもある。
一射目の速度、威力、そして相手の力量を”感覚的”に測り、そして己との力量差を計算する。馬鹿ではあるが、こういう事に関しては脳が働く。つくづく都合の良い体だと思う。次のどの動きを取ればいいのか、覇王流限定でそれが既に組みあがっている。口の中でさて、と言葉を転がしてシグナムの存在を睨む。構はどうだろうか。意識の仕方はどうなのだ。構に技術はあるのか。見てそれらの事を判断し、そして笑みを殺す。良い相手だ、と。
「―――さて」
スキルカードは、パッシブアクティブ含めて一枚もセットしていない。
チュートリアルを抜けばたったの一度も頼ったことはない。
自然発動するASを除けばBSにすら頼ったことはない。
己の技術のみを頼りにどこまで行けるのかを試すのは―――実に面白い。
こんな面白いものを紹介してくれた悪友二人には感謝しなくてはならない。
おかげで、自らを鍛え、そして全力を探せる場所を見つけられた。
「誘われたからには乗るしかあるまい―――強者の特権だ」
殺した笑みを浮かべ―――そして動いた。
そりゃあ商売なんだからある程度のプロレスがあるに決まってるじゃないか。
エキシビジョンはR+までの制限。SRとかはロケテスでのランク決め大会とかの時じゃないかな。
はやて(11) 色気や食い気よりも金
シグナム(20) 最近くっころネタが持ちネタになった
アインス(20) かわいんす
シャマル(21) 人妻と思われるせいで男が寄らない
ヴィータ(10) シグナムとはやてがちゃんと嫁に行けるか不安でならない
※何度も言っていると思うけど原作の年齢がペドすぎるのでロリ勢全体的な年齢の引き上げがあります