イノセントDays   作:てんぞー

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決めた事

 ―――喫茶店翠屋に踏み込む。落ち着いた店内とは裏腹に、店内に踏み込んで、迎えてきたウェイターの男と目があった瞬間、体は動きを止め、全身に雷が走ったかのような衝撃を受ける。相手もおそらく同じことを感じ、そして考えているのだろう。目の前に立つウェイターの男が動きを止め、そしてまるで凍ったかのように動きを止める。互いに一ミリたりとも一切動くことなく見つめあい、そして無言のうちに―――握手を交わす。

 

「Two?」

 

「うむ。あと日本語は喋られるから気にしないでくれ」

 

「そうか、よし、あそこのテーブルが開いている、使ってくれ―――ちなみに俺達は初対面だ」

 

「な、仲がいいな」

 

 ウェイターの男とサムズアップを向けあいながらそのまま示された席へと座り、アインスと正面から向き合うような形で座る。直ぐにメニューを持ってきた小さな少女がやって来る。ごゆっくり、と頭を下げながら言うと、足早に少女が去って行く。先程の男や、店のカウンター部分の向こう側にいる男と同じ髪色をしている辺り、家族でやっているのだろうと思う。ともあれ、メニューをアインスへと渡しながら言う。

 

「いやいや、悪い悪い。アレ一目見ただけで何らかの武術をやっているって解るからね。で、相手が出来る、と解るとちょっとは嬉しいもんだよ」

 

「うーん、私には解りにくい感覚だなぁ……たぶんシグナム辺りだったら共感してくれるんだろうな」

 

 シグナムのことは解らないが、クラウスや自分辺りであれば間違いなく強者センサーの様なものは発動する。一目見れば体の重心等が解るし、足運びだって訓練している人間ほど特徴的なものになって来る。あまりにも染みついてしまうと常時、武術用の足運びになってしまうほどに。自分やクラウスがそういうタイプだ。意識してはいないが動きを”効率化”している。たとえば足を前に出す時は音を殺した上で筋肉に負担がかからない事を意識してたりで。他にも肉の付き具合とかもある程度は見れば解る。

 

「今の彼は凄いぞぉ。体に必要な肉を極限まで減らして体を軽くしているだけじゃなくて、効果的に絞っている。見た目は細身だが痩せているんじゃなくて圧縮しているから、見た目以上に凄い事になってるぞぉ」

 

「やっぱり君もそういう話は好きなんだね」

 

 そりゃあ、そうだ。自分は男の子だし、

 

「小さい頃から男であるならば何よりも強くなきゃならねぇ、かっこよくならなきゃならねぇ、って風に爺さんに教育されていてなぁ。いや、ホント面白い爺さんだったよ、ウチの爺さんは。なんつってもロマンを再現する為だけにガキの頃から俺に付き添って何時も意味不明な特訓してたわ。まぁ、その結果俺が変に強くなったり、そーゆーのに敏感になったり、とまあ色々あるんだけど」

 

 アインスからメニューを受け取り、軽くメニューを見る。あらかじめここは飲食物の持ち込みが許可されているのは知っている。なんと言ってもアインスの手料理だ。それを食べない訳がない。あとはそこに見合うような食べ物、そしてデザートがあればいいのだ。ここ、翠屋へとやってきたのはそういう部分が目的だ―――あとはゆっくりできる空間、というのもある。

 

 オーダーを取ろうとすると、先程メニューを持ってきた子がやって来る。ゆっくりとオーダーを伝えると、それを一生懸命女の子は反復し、メモし、駆け足でそれを伝えに行く。その姿に小さく笑みを浮かべながら、アインスへと向き直る。

 

「まあ、そんなわけで俺の原点っぽいとこはウチの爺さんにあるのさ。男なら一番を目指せとかなんとか良く言ってたなぁ……懐かしいわ」

 

「話を聞く分には凄い愉快なお爺さんに聞こえるけど、一体全体どういう人だったんだい? 割と破天荒だというのは伝わって来るんだけど」

 

 そうだなぁ、とアインスがランチボックスを取り出し、それを並べている間に思い出してみる。自分の爺さんがどんな人物だったのかを。

 

「―――キチガイだったなぁ」

 

「あ、あぁ、うん」

 

「冗談だよ。まあ、戦時経験者だよ、ウチの爺さん。元海軍とかっても言ってたなぁ……良く昔の話をして、戦争のたびに海外へ飛んでヒャッハーしてたって自慢してたわ。まあ、やっぱり言葉として表現するなら破天荒ってのが一番あってるのかもな。実際それ以外に表現のしようがないし。まあ、俺が生まれる前の話はそこまで知らないから俺の経験での話になるけど―――まあ、山籠もりが基本だったなあ。長期の休みとかまず荷物ほぼ皆無で山の中で生活させられてたわ。おかげで変なサバイバル知識が付くわ、野生動物と格闘するハメになるわ……途中から俺も犠牲が必要だって覚えてティーダを拉致るようになってな? それで爺さんを山の中で殺そうって発想に至ったんだ。あの爺さん絶対頭おかしいって」

 

「続きを聞くのが怖くなってきたんだけど」

 

「いや、特にオチはないから大丈夫。結局二人がかりでもボコボコにされたってだけの話だから。まあ、んでそれで悔しくなったから強くなろうとして爺さんに乗せられて……こうやって今の俺が出来上がっている訳だなぁ」

 

 アインスが目の前に料理を並べる―――二段重ねの弁当箱には様々なおかずが詰め込まれている。それを一緒に食べる為のごはんもちゃんと一緒に用意されており、店の方に頼んだ紅茶も丁度良い所でやって来る。おそらくタイミングを見計らっていたのだろうと憶測しつつも、アインスの用意した昼食を食べる。

 

 ―――相変わらず、うめぇなぁ、これ。

 

 冷凍食品ゼロ、全てが手作りだというのだから驚きだ。ミニハンバーグ、から揚げ等の定番から始まり、きんぴらごぼうなんて珍しいものまで入っている。率直にそのおいしさをアインスへと伝えつつも、気になるのはこのレパートリーの豊富さと腕前だ。アインスが八神家の厨房を任されているならある程度解るが、

 

「それにしてもアインスはほんとこういうの上手だよな。一体どこで習ったんだ?」

 

「あー……八神家の皆が元々血のつながりのないバラバラの集まりだという事は知っているよね?」

 

 それは知っている。はやて本人が教えてくれたことだからだ。グレアムという老紳士が裏から援助していて、そして八神家は彼が集めた人間の集まりだとかなんだとか。確かそんな感じの話があったはずだ。

 

「私は元々はドイツの方の出なんだ。妹のツヴァイと一緒に両親と暮らしていたんだけど、とある事件で両親が亡くなってしまったんだ。親戚に家財や土地を持って行かれてどうしようもなくなってしまって……父の友人のグレアムさんを頼る事にしたんだ。その時は会ったこともないから、ほとんど他人同然の状態だったんだけどね、こうやって助けて貰えて、日本にやってきたんだ」

 

 まあ、とアインスが言葉を置く。

 

「どこにでもある不幸な話だよ。ただそのまま不幸な話、で終わらせるのが私は嫌だったんだ。だからまだ十か十一のぐらいこっちへ来たんだけど、そのままで終わりたくはないからね、必死に色々と勉強したんだ。恩返しをするにはどうしたらいいのか、って。必死に料理や家事を練習したりして、色々勉強もしたんだけど……社会人として大成してくれるのが一番の恩返しだ、って言われてしまったんだ」

 

「世の中悪意ありゃあ確かな善意もあるって話だな」

 

「うん、そうだね。そしてそういう善意に救われている人は意外といるものなんだ。偽善だ、自己満足って言っている人はいるけど、やらぬよりはやる善、とも言うしね。こうやって助けられたように誰かを助けられれば一番いいんだろうけど……現実的ではないからね」

 

「ま、そこら辺は自分のペースで、ってやつだろうさ。しかし、そうか、目標かぁ……」

 

 アインスはしっかりとやりたい事、なりたいものを見ている。それに比べると自分はどうなのだろう。やはり惰性で生活している様にしか感じられない。クラウスはアレはアレで考えているし、ティーダもなんだかんだで未来に関しては一番考えているタイプだ。その中で、自分だけがちゃんと考えていない。そう思うと、一人だけ仲間はずれな気がして、何故だか物凄く、寂しくなってくる。歩いている時の会話で決着は―――つかない。そう簡単に考えを変えられるほど柔軟な生き物であるつもりは一切ない。

 

 だが、まあ、夢は特にないが、それでも短期的な目標であれば一つだけ、存在している。いや、数か月中には決着をつけたいと考えている事だ。それを成し遂げることが出来ればとりあえず、日本に来た意味を完了させることが出来る、と個人的には思っている。そう、それだ。忘れてはならない。過去からの後悔を引きずって生きているのだけは男らしくない。男であれば向き合うべきなのだ。だから、

 

「何か、目標はあるんだ?」

 

 そりゃあ、まあ、と言葉を置いて、期待しているアインスの表情に軽く溜息を吐いてから、小さな笑みを浮かべて、答える。

 

「―――ちっぽけなプライドの話だよ」

 

 

                           ◆

 

 

 ―――後悔というものは常に人生に付きまとう。

 

 デートは最後まで平和に、問題なく終わる。夜、寮の部屋に戻る頃には既に部屋は暗くなっており、ティーダは眠っている。軽く息を吐き出しつつ、ちゃぶ台の上に置いてある煙草の箱とライターを取り、部屋の外へと出て行く。割と遅い時間に帰ってきたこともあって、既に寮内は静けさに満ちている―――起きている者はいるだろうが、配慮してか音を立てるものはいないだろう。それに倣う様に静かに廊下を抜けて寮の外に出る。

 

 やはり、辺りは暗く、そして寂しい。ある程度光があると言っても、もう既に夜中であり、外をうろつく様な馬鹿はあまりいない。少なくとも寮の前でうろうろする様なのは自分一人ぐらいだ。ただ、同時に自分の中で整理したい事もある、と思っている。

 

 だからこの静けさは良いかもしれない。

 

 そこで持ってきた煙草を咥え、そして火をつける。煙草をこうやって吸うのは本当に久しぶりになる。前に吸ったのは何時頃だろうか、と思い出そうとする。とりあえずグランツ研究所の子供たちに悪影響を与えない様にと、十八、十七頃から吸い始めてた煙草をやめたのは覚えている。だから大凡、一年ぶりだろうか。とりあえずそれぐらいなのだろう。

 

 だから吸って思い出す。

 

「不味ぃ」

 

「―――そりゃあそうだろ。だってお前、一度だって煙草を美味しく感じた事ないだろ」

 

 後ろに振り返ると、そこには何時の間にかティーダの姿があった。その片手の動きは寄越せ、と煙草を指差している。特に言い争いするつもりもなく、煙草とライターを渡すと、ティーダも付き合って煙草を吸い始める―――この男、息が臭くなるとかという理由で煙草を嫌がっていた筈なのだが、付き合いは良い。

 

 横に来て、たばこを吸い始めるその姿を眺める。

 

「お前、寝てたんじゃねぇの」

 

「寝てたよ一応。ほら、今もパジャマ姿だろ」

 

 確認するティーダの服装は寝間着、パジャマ姿だ。それも自作の者で、”シスコン魂”と日本語で書かれてあるものだ。姿を見るに、此方が帰ってきたのに気付いて起きてしまったのだろう。少しだけ、申し訳ない気持ちになるが、煙草の糞不味い味を堪能しているとどうでもよく感じてしまう。そう、どうでも良く感じる。

 

 煙草は決して美味しくない。ゲロを吐きそうなほどに不味い。ならなんで吸ってるのか、と言われると、

 

 ストレスを感じたいから、なのだ。自分の気持ちを、体を、押さえつけたいから煙草を吸うのだ。そうやって自分にプレッシャーをかけるのだ。そういう風にダウンな気持ちに入りたい、そういう事が人にはあるのだ。そしてそれは、自分にとっては今だった。

 

「んで?」

 

「んだよ」

 

「デートだよ。こんな時間に帰ってきたって事はなに、一発やってきたわけ?」

 

「やらねーよ。そこまでサカってねぇし。飢えてないし。なんて言うか……周りに良すぎる女がいるとホント困るな。自分がどうしようもなく惨めに思えるわ。どうあっても釣り合わないってそう思えるぜ。解るだろ……こう、なあ?」

 

「はっはっは、ご愁傷様」

 

 で、という風の視線をティーダが此方へと向けてくる。煙草を吸っている理由を誤魔化せなかった。だからため息を吐きながら煙草を少しだけ吸い、それを指でつまんで口から離す。不味い。不味いが……おかげで毒を吐ける、そんな気がする。

 

「いやさ、デートの途中でさ、将来の夢とか目標の話をしてたんだけどさ、それでちっと思い出しちまったんだよなぁ、俺らの中学とか高校の頃。覚えてるか―――って言う必要もねぇよな。忘れられるわけねぇもんな、俺らの青春。よほどの大馬鹿野郎じゃなきゃ今までやってきた特大の馬鹿を忘れられるわけがねぇもん。俺は忘れろって言われても絶対忘れられないぜ」

 

 目をつむれば鮮明に思い出す事が出来る。人生で最も無茶をしていたあの時期を。

 

「あの頃の俺は―――俺達は無敵だった。いや、そう信じてたんだ。俺やお前が組んで、出来ない事はなにもない。俺達は絶対に負けないって。そう信じてたんだ。クラウスを誘った時も、クラウスと喧嘩した時も、ずっとずっと、そう信じてたんだ―――そしてさ、それが永遠に続くものだって思ってたわ。あぁ、そうだったらどれだけ良かったの。中学、そして高校。今なら言えるわ。あの頃の俺は、現実なんて何も見えてなかった。夢に熱狂するばかりでちゃんと考えてなかったんだ」

 

 少しずつ経験して、覚えて、変わって行く。

 

「あの時……クラウスぶん殴ったりぶっ飛ばした時さ、あの時もそうだったんだ。俺達は正しい。俺達は無敵。俺とお前で組んで、絶対負ける事も失敗する事もありえねぇ。山猿爺さえにも俺達は勝ったんだ。だったらこれ以上負ける理由は存在しないって。だから、あの時は楽しかったわ。本気で殴って、考えられる手段全部やって。最後の最後でボロボロになって笑って」

 

 そして―――聞いてしまった。おそらくこの世で最も正しい言葉を。クラウスが言ってしまい、そして自分が一生後悔するハメとなってしまった言葉を。

 

「―――生まれた事が間違いだった、か」

 

「あぁ」

 

 クラウスはそう言った。クラウス・イングヴァルトは生物として生まれてくる事を間違えた。いや、生物そのものとして間違えている。だから決して生まれるべきではなかった。クラウス、ヴィヴィオ、オリヴィエ、彼、彼女らの存在は明らかに”バグっている”としか表現できない。あるいは芸術、と誰かは評価するかもしれない。あるいは兵器、進化、新しいカタチ―――と。だが総じて、たった一つの共通点は外れている、という事に尽きる。

 

 あるべき人間という存在から大きく外れている。

 

 故に生まれるべきじゃなかった。生まれてくる事、そのものが間違いだった。それをクラウスは言って、認めてしまった。それを後押ししてしまったのは自分とティーダ―――いや、自分だ。クラウスを倒すために使ったのは、人を一人殺すだけなら十回も殺せるような手段と量だった。なのにクラウスは最後の瞬間まで倒れる事はなかった。しかもまだ生きてる。明らかに人間という部類からは外れすぎている。二人がかり、あらゆる手段を行使された上でのギリギリの敗北。それを受けてクラウスは理解したのだ。自分が理解させてしまったのだ。

 

 自分は間違っている、と。

 

「―――俺、それを聞いた時さ、納得しちまった。あぁ、そうだ。こいつは生まれてくるのを間違えてるなって」

 

 だけど、

 

「駄目だろそりゃあ。そこだけは納得しちゃ駄目だろよ、おい。そう言ったのは友達なんだぜ。友達がそう言ったんだから殴って訂正させなきゃ駄目だろうよ、おい。んで解るまでぶん殴り続けなきゃ駄目だろうが。……だけど、……だけどよ、俺、納得しちまったんだわ、クラウスのその言葉に。あぁ、そっか、やっぱりこいつ生まれてきたことがそもそもの間違いだ……って。納得しちまった事に理解して、本気で死にたくなった」

 

 人生で初めて本当に惨めな気分になったと思う。本当の意味で取り返しのつかない事をしてしまった、と思った。恥ずかしくなった。死にたくなった。そして吐いた。

 

 それを今日、アインスと話していて鮮明に思い出してしまった。なんでもない話だった。

 

 だけどアインスは眩しすぎた。

 

 自分には、ちょっとだけ、辛すぎる。

 

 少なくとも過去を振り切れていないような馬鹿の手には余る。

 

「だからコクられたけどフっちまったわ。……あーあぁ……勿体ねぇ事したなぁ……」

 

 本当にもったいなく、そして悪い事をした。断った時の表情は忘れられない―――当分、顔を合わせる事すらできる気がしない。それでも決して間違ったことはしていないと思う。自分は、自分の思う様に生きてきた。そして今もそうだ。だからこれ以上簡単な方へ逃げる訳にはいけない。

 

「前々から思ってたけどさ、損な性格をしているよね。端的に言えば馬鹿だよ、馬鹿。普通ならそっこでコマして彼女にでもするだろうに」

 

「馬鹿野郎、解ってるだろ、ちっぽけなプライドがあるんだ―――なんだかんだ言ってそれをどうにかしなきゃ何もできないんだよ。夢も、女も、やりたい事も、何もかも引っかかってるもんをどうにかしてからだよ」

 

 馬鹿な奴、とティーダは言うが、その言葉が笑い声を含んでいるのはバレている。だからそれに応える様に、笑い声を含みながらうるせぇ、と言い返してやる。自分的にも本当にもったいない事をしていると思う。だけど、過去の後悔をどうにかしない限りは永遠に道化を演じたまま何もすすめられずに終わる。そんなのはかっこ悪い。何よりも納得も満足もできない。それは絶対に許せない。

 

「で、やるの?」

 

「やるわ。超やるわ。ケツに火が付いたわ。終わるまで止まらねぇーわ」

 

 それは、

 

「―――クラウスにあの言葉を否定させる」

 

 その為に必要な事は、

 

「あの馬鹿と一対一で、ハンデなしで、正面から殴り合って屈服させる」

 

 現実的に考えれば不可能だ。恵まれすぎているクラウスを倒す事なんて、今でも本気で鍛えている自分でも無理だ。だが、それを可能とする場所が存在する。たった一か所だけ、それがなせるところがある。

 

 ブレイブデュエルの世界、そこであればクラウスの武器を、肉体という兵器をほぼ同レベルにまで制限できる。

 

 あとは肉体以外の面でのガチでのぶつかり合いになる。肉体的差異がなくなるからこそ言い訳が通じなくなる。純粋に肉体以外の、育て上げた全てをつぎ込む必要となる。その領域であれば、俺達は対等だ。

 

 そう、一対一でクラウスを倒す事によってあの言葉を否定することが出来る。普通に生まれてきて努力を重ねた男に打ち破られることによって、クラウスが間違っている、という言葉を否定できるのだ。なんでもない男が、祝福された男を凌駕する。それで漸く、天才も何も、努力すればどうにかなると、そう特別なものではないと、胸を張って言える。

 

 生まれてきた事が間違いだなんて、あってはならない。

 

 そんな事を言わせてはならない。

 

 特にそれが友達ならば。

 

「決着は―――」

 

「―――相応しい舞台で」

 

 月末の第一回グランツ研究所主導、チャンピオンシップで。

 

「もう、後悔は終わりにしようぜ」




 女神をフる糞野郎の回。女よりも友情。

 ストーリーやプロット書いてて注意するのがギャグとシリアスの比率。どちらかが長く続きすぎると飽きてくるから、飽きない比率を探すのが重要とか。シリアスの合間にちょくちょくネタが入るのも話の途中で飽きない配慮とか。

 というわけで第一部・完

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