私の大切な妹に何してるの!!   作:便利屋68のアルバイト事務員

2 / 8
 戦闘描写(?)ってこれでいいのかな⋯⋯。


第2話 闇市に舞い降りたクレープの天使

 後輩のアル達に誘われ、便利屋への所属が決まった日から数日。シエルは自前のキッチンカーを走らせとある場所へ向かっていた。

 その目的地とは、どの学園の自治区にも属さないため治外法権がまかり通り、限定生産のレアアイテムや違法薬物、時には命すらも取引される闇市。通称ブラックマーケット。

 キッチンカーで向かうような場所では無いが、そこにはシエルの思惑があった。

 ブラックマーケットは様々な物品が集まるため、それを求めて人も集まる。そしてその人を目当てに、シエルは移動販売を画策した。

 もちろん、治安の悪さならばゲヘナに勝るとも劣らないブラックマーケット。下手をすれば、不良生徒やヤのつく自由業に目をつけられること請け合いである。

 

 キッチンカーを走らせること数十分。ブラックマーケットのとある広場に車を止めた。

 見慣れないキッチンカーに注目が集まる中、たどたどしい手つきで開店準備を進めていくシエル。

 胸元の開けた水色ベースに茶色を重ねたディアンドルに三角巾と、どこか民族チックな服装のシエルが掲げた看板には、デフォルメされたクレープを食べるミカのイラストと共に筆記体でMichael&Luciferと書かれていた。

 

「テメェ、ここがどこのシマか分かってんのか!?」

「ブラックマーケットでしょ? お1ついかが?」

「お1ついかが? じゃねえよ! 許可取ってんのかって聞いてんだよ!」

 

 難癖をつけるのはどこぞのヤクザにでも雇われたのであろう不良生徒。キッチンカーとシエルの両方に銃口を突きつけ、いつでも撃てるぞと脅しをかけてくる。

 

「んー、許可って必要なのかな? ここは治外法権がまかり通ってるとはいえ、どこかの学校の自治区って訳じゃないよね? つまり、公式的には裏組織に実効支配された連邦生徒会管理外の無法地帯。誰かに許可を得る必要は無いんじゃないかな」

「ごちゃごちゃうるせぇな! 邪魔だから退けって言ってんだよォ!!」

 

 怒声と共に鳴り響く銃声。リーダー格の生徒が引き金を引くのにやや遅れ、周囲の不良生徒もキッチンカーを破壊すべく引き金を引いた。

 

 

 

 ──しかし、キッチンカーを蜂の巣にするはずの弾丸は1つとして放たれず、銃声とは異なる音を伴って不良生徒達の銃が爆発した。

 

 

 

『!?』

「ちゃんと毎日整備してる? 銃はきちんと整備しないと、暴発や弾詰まりの原因になるから危ないよ?」

 

 動揺が走る。

 不良生徒はもちろん、その場に居合わせた者達にとっても何が起きたか分からなかった。

 整備不良で弾詰まりや暴発をすることはあるだろう。大事な場面で、不幸にもそれが起きることも有り得なくはない。⋯⋯しかし、それが同時に、それも特定の相手を狙った場合に、()()発生することなどありえるのだろうか? たとえ有り得たとして、それはいったいどれほどの確率なのだろうか。

 どんなにありえない可能性だとしても、確率論に0は無い。しかし、あまりにも0に近い数字は0として扱われるのもまた事実。

 ──すなわち、何らかの干渉があったと考えるのが自然なのである。

 

「それで⋯⋯何の話だったっけ?」

 

 荒事に慣れているはずの不良生徒達が誰1人平静を保てていない中、()()平然と、その光景が当たり前であるかのように振る舞う者が1人。

 ニコニコと擬音が着くような笑顔を浮かべているシエルだ。

 

「テメェ⋯⋯、いったい何しやがった!?」

「何って? ただの整備不良か整備不足でしょ?」

「そんな訳ねえだろ! アタシらだって銃の整備くらいきちんと毎日してるわ!」

「じゃあ整備下手か不良品なんじゃないかな?」

 

 まるで自分は何もしていませんよと言わんばかりの態度。

 ヒートアップし始めた不良生徒が殴りかからんと拳を引き絞った直後、連続した銃声が響いた後に不良生徒達は倒れ伏した。

 

 音の発生源は──()()()だった。

 

 右手に持った短機関銃の銃口からは硝煙が昇っており、嫌でもそれが銃弾を吐き出した直後だと教えてくれる。

 

「整備不良で納得しておけば、痛い思いはしなくて済んだのにね。⋯⋯今言ってもしょうがないか」

 

 シエルが引き金を引いたのは2回。

 1回目は不良生徒達が持っていた銃の()()()1()()()()

 そして、2回目は不良生徒に1()()()()

 シエルが右手に持つ短機関銃(ウェルガン)の場合、連射速度は毎分500発。秒単位に換算するならば約8発。発射間隔は0.12秒。当然銃口を狙って撃つなど普通は不可能。しかし、シエルは卓越という言葉には収まりきらないほどの射撃精度で以て、その不可能を実現してしまった。

 

「お店の前に倒れられると邪魔だなあ⋯⋯。端に寄せておけばそのうち起きるよね」

 

 と、雑に不良達を放り投げて積み上げていくシエル。

 1分もかからずに片付けたシエルは、途中だった開店準備を終え、キッチンカーの中から開店を告げた。

 

 ⋯⋯当然、買いに来る客はいない。

 直前の戦闘により警戒されてしまった点と、コネや宣伝が不十分である点が理由である。

 そも、マーケティングに関する知識など無いシエルが、1人でキッチンカーによる移動販売を行うこと自体おかしいのである。

 

「誰も来ないな。なんでだろう」

 

 第一印象が最悪だからである。

 開店してから数分、数十分、1時間と時間だけが過ぎていくが、依然としてクレープを食べに来る客はいない。

 飽きてきたシエルがミルクレープでも作ろうかな、と考え出した頃、1人の少女がやってきた。

 

「あの、もしかしてシエル様ですか?」

 

 話しかけてきたのは、舌を出したキモかわいい鳥のリュックを背負い、トリニティの制服を着たあどけない少女。

 シエルは知らないが、少女の名は阿慈谷ヒフミと言い、普通の生徒を自称するペロロ狂である。

 

「そうだけど⋯⋯制服的にトリニティ系列校の子かな? こんな危ないところに来ちゃダメだよ?」

「あはは⋯⋯、すみません。それで、シエル様はここで何を⋯⋯?」

「何って、クレープ屋さんだよ? お1ついかが?」

 

 自ら危ないところと称した場所で店を開くシエルに、ヒフミは困惑を隠せなかった。

 

「えっと⋯⋯じゃあチョコバナナスペシャルを1つ」

「はーい。650円用意しておいてね」

 

 開店準備のたどたどしさはどこへ消えたのか、慣れた手つきでバターを塗った鉄板に生地を広げ、ホイップ、バナナ、チョコをクレープ生地で包み込んでいく。クルクルと巻かれた円錐型の菓子は、見覚えのあるクレープそのものだった。⋯⋯しかし、ここで終わるのならばスペシャルの名はついていない。

 アイス屋さんか料理動画でしか見ないような器具*1でバニラアイスをクレープの上に乗せ、チョコペンやクッキーで素早くデコレーションしていく。

 ヒフミにとっては見覚えのある⋯⋯否、毎日愛し続けているキャラクターが完成していた。

 

「わぁ⋯⋯! ペロロ様ですね!」

「おまたせ。チョコバナナスペシャル〜Ver.ペロロ様〜だよ」

「ありがとうございます! シエル様!!」

 

 650円を受け取り、渾身のクレープを渡す。

 自分と会った時よりもテンションが、何より声が大きい事に複雑な心境のシエル。しかし、自分の作ったクレープで喜んでくれるのは純粋に嬉しくもあった。

 

「すげえ⋯⋯何モンだあの女⋯⋯?」

「シエルっつってたよな⋯⋯?」

「どこかで聞いたような⋯⋯まさかっ!?」

 

 他者よりも優れた五感を持つシエルの耳に、何やら自分について知っているような声が届く。

 意識して耳を傾け、言葉の続きを待つ。

 

「聖園シエル。トリニティからゲヘナへと留学した異端児。留学後数日でゲヘナの頂点に立った、ゲヘナの真の支配者!」

 

 全く身に覚えが無かった。

 留学した事についてはともかく、ゲヘナの頂点だの真の支配者だのは全く記憶になかった。

 ゲヘナの支配者は(一応)万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)の議長であり、実力については風紀委員会の委員長がトップのはずである。

 不良生徒と一緒に風紀委員も倒していたとアルから聞いたが、だからといって頂点と言うのは過言だとシエルは思った。

 

「また来ますね、シエル様!」

「トリニティに戻ったらいつでも作ってあげるから、もうこんなところに来ちゃダメだよ?」

「あはは⋯⋯前向きに検討しますね」

 

 シエルは次もブラックマーケットで再会する事を予感した。

 

「すみません、ツナサラダクレープ1つ」

「あ、はーい! 少々お待ちください」

 

 ヒフミのおかげか、それとも時間の関係か。徐々に暇な時間は減っていき、初日だからと少なめに用意した材料は夕方頃に底を突くのだった。

 

 

 

 翌日、薄力小麦粉などの買い出しも兼ね、D.U.の大型ショッピングセンターに訪れたシエル。

 連邦生徒会の管理地域だけあって治安が良く、余程のことがなければ武器を手に取ることも無い。もちろん、武器の携帯そのものはしているが。

 クレープのレパートリーを増やそうかと悩みながら、ウインドウショッピングと買い物を続けて居ると、興味を引かれる噂が耳に入る。

 

「アビドスの──には、砂嵐を──」

「陰謀論じゃーん(笑)」

 

 断片的にしか聞こえなかったが、アビドス、砂嵐、陰謀論という単語から、シエルはアビドスの砂漠化を連想した。

 かつてはキヴォトス最大級の学園だったが、砂漠化の進行とその対策が失敗したことによって、自治区はほぼゴーストタウンと化しているという話だ。

 留学中の身ではあるものの、非常に興味を引かれたシエル。

 時間はたっぷりあるのだから、与太話を本気にしてみるのも面白そうだという結論に至る。

 

 帰宅後にアビドス 陰謀論やアビドス 砂嵐など、オカルトや陰謀論に関する情報を集めるシエル。

 すると、砂嵐の中に巨大な蛇のようなシルエットが浮かぶ写真や、アビドスの砂漠化は人為的なもの!? などのフェイク画像じみたものや、まさしく陰謀論な信頼性の低い情報がいくつか見つかった。

 信頼性は低いものの、共通点から砂漠を進む必要があると感じたが、キッチンカーで進むのは躊躇われたため、コネと財力で砂漠に対応したオフロードカーを用意させた。

 用意してくれた生徒から、返さなくて良いと言われた時に動揺したのはご愛嬌である。

 

「車よし、菓子折りよし、支援物資よし! 一応防塵マスクと防塵ゴーグルも用意したし、スマホも持ったし、もしもの時のためのGPSも用意したから多分大丈夫!」

 

 彼女に留学生の、高校生としての自覚はあるのだろうか。

*1
正式名称はアイスクリームディッシャーという




 アビドス砂漠に存在する巨大蛇⋯⋯いったい何グラマトンの預言者なんだ⋯⋯!?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。