私の大切な妹に何してるの!!   作:便利屋68のアルバイト事務員

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 とうとう評価者数が5人を超え、透明ランキングから出禁を食らってしまいました。

 ⋯⋯アロナのミスでした。
 私のガチャ運、そしてそれによって招かれた全ての受入済み生徒。
 結局、天井にたどり着いて初めて、もう1天井必須だったことを悟るだなんて⋯⋯。


 前話でアツィルトの光を2000度超と表記していますが、現実準拠の場合おそらく1400〜1500度程度になると思います。しかし、キヴォトスではあらゆる物質に宿る神秘の効果で耐久性が上がっているという設定で、キヴォトスの鉄は2000度では溶けないということにさせてください!!
 きっと岩は1500度くらいで溶けます!!(現実なら800〜1200度くらいで溶けます)
 珪砂も1900度以上で溶ける!!(現実なら1700度以上)


第4話 暁を包む天使の揺りかご

 数分前まで爆音と銃声が絶え間なく鳴り響いていたアビドス砂漠。

 しかし、今はただ1人の呼吸音と金属塊にぶつかる砂の音のみが存在していた。

 シエルの放った全力の攻撃(EXスキル)はビナーを捉え、その大部分を消し飛ばした──訳では無かった。

 ビナーは被弾の直前に砂中深くへと潜り逃走。潜りきらなかった体の一部を対価に、見事シエルから逃げおおせて見せたのだ。

 

「残念、逃げられちゃった」

 

 今まで一度も使った事のなかった全力攻撃。無敗という経歴による慢心。そして何より、“己こそキヴォトスにて最強”という傲慢な自負。

 それらを大部分とした要因により生じた須臾の間隙。

 シエルがこの世に生を受けてから17年と数ヶ月。仕留めるつもりで戦った彼女にとって、初めての敗北とも言える結果だった。

 己の傲慢が産んだ失態。戦闘において無敗という経歴に付けられた初めての黒星。

 平静を装う彼女の胸中には、静かに憤怒が宿っていた。

 

 自切された蜥蜴の尻尾のように⋯⋯否、まさに強大な敵から逃げるために残されたビナーの終端。鯨の尾羽(おば)にも似た金属の塊。それを成したシエルを称えるように、あるいは逃走を許した事を嘲笑うように、日の暮れた砂漠へと影を落としていた。

 

 

 

 無意識に怒りが現れていたのか、金属の塊に指の跡を残し⋯⋯指を食い込ませながら引きずっていく。

 ゲヘナ自治区からシエルを運んできたオフロードカーは消滅してしまったため、シエルの移動手段は徒歩のみ。

 とはいえ、たとえ車が残っていてもビナーの尾羽を車で牽引するのは困難。ただでさえ砂というスタックしやすい不安定な足場で、重たい荷物を牽引するなど不可能な話なのだ。

 時間をかけて成果を持ち帰るか、成果を捨てて楽に帰るかの二択。残念なことに、ビナーのミサイルによって選択“肢”ではなくなってしまったが。

 

 歩き始めてどのくらい経ったのだろうか。戦闘終了時は薄暗くなり始めていた空が白み始め、地平線の向こうから太陽が砂漠を赤く照らしだす。

 9月という時期の日照時間から概算して、歩いた時間は約11時間半。重たい金属塊を引きずっていたこと、砂漠という歩きにくい環境であることから考えると、現在のアビドス高校まであと半分といった距離であった。

 

「はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯。今、半分くらいかな⋯⋯? 眠い⋯⋯」

 

 端的に言おう。シエルは今にも寝落ちしそうだった。

 

 普段から規則正しい生活を心がけているシエルだが、今回はそれと真っ向から反するような時間を過ごしている。

 昨日の朝食はともかく、移動中ということもあって携帯食糧で済ませた昼食。オフロードカーと共に消えたため食べていない夕食。そして、普段なら寝ている時間を大幅に超過し、徹夜で歩き続けて今に至る。

 砂漠であることも考えれば、一般的には死の危機に瀕していると表現してしかるべき状況である。

 だがしかし、シエルは一般的では無い。日中の気温が30度を超え、夜間の気温が1桁まで下がる砂漠だろうと死の危機に瀕することは無く、慣れない徹夜により瞼が落ち始めるだけだった。

 

 何が彼女を⋯⋯彼女の身体を突き動かすのか、器用にも歩きながら眠るという離れ業を始めたシエル。

 まるで右脳と左脳を交互に眠らせるイルカや渡り鳥のように、むしろ寝ながら泳ぎ続けるマグロのように、コクリコクリと眠りながら歩き続ける。

 閉じきった目に前など見えていないはずなのに、ブレることなく真っ直ぐに、市街地を目指して。

 実は眠っていないのでは? と疑わしく思えるかもしれないが、シエルは確実に眠っている。なんせ、光輪(ヘイロー)が消えているのだ。

 キヴォトスにおいて、意識の顕在化たるヘイローはその人物に意識があるかどうかを判断する上でとても重要だ。ヘイローが消えていれば意識はなく、ヘイローさえあれば意識がある。

 たとえ眠っているように見えても、ヘイローが見えていればそれは狸寝入りと判別できる。

 

 ⋯⋯つまり、ヘイローが消えて(完全に眠って)いるにもかかわらず、シエルは重たい金属の塊を引きずりながら、確りとした足取りで歩いているのだ。

 

 

 

⋯⋯ーい、起きて〜。

「⋯⋯ハッ! 太陽が反対側にいる⋯⋯寝ちゃってた!?」

「こんな重たそうなもの引きずりながらよく眠れたね? おかげで道がボロボロになっちゃったよ〜」

 

 疲れからか、グッスリと多めに眠ったシエル。

 その甲斐あって(?)か、アビドス高校へと徒歩で帰って来ることに成功していた。

 

「⋯⋯わーお。道路の再舗装っていくらくらいかかるんだろう。いくら払えばいい?」

「そうやってポンと大金出せるあたり、まさにトリニティのお嬢様って感じだねぇ⋯⋯」

 

 かなりの皮肉が籠った一言である。

 借金の返済に日々苦しむアビドスの生徒として、軽率にポンと大金を出せる事に対する複雑な心境の現れだった。

 

「そうだなぁ⋯⋯。詳しく確認はしてないけど、砂漠からだと距離も距離だし⋯⋯10億円くらいかな?」

 

 当然、そんなことは無い。

 アスファルトの再舗装にかかる費用は1m²あたり3500〜4000円ほど。現在使われているアビドスの道路で、シエルが傷をつけたのは約20km分程度。

 片側1車線で幅が3.5m。それが両側で7m。20kmをmに直して2万m。費用を多めに見積って1m²あたり4000円だとしても、その合計は5億6000万円である。

 差額にして4億4000万円。およそ倍だった。

 

「なるほど⋯⋯わかった。迷惑かけちゃったのはこっちだし、後で請求書を送っておいで。これ私の住所だから」

「ちょ、ちょっと待って! 10億だよ!? そんなポンと払えるような額じゃないんだよ!?」

「まあ、確かに軽くは無いけど⋯⋯払えないかと言われたらそうでも無いかな」

「うへ。⋯⋯そっか。ごめん、10億はさすがに嘘。多分その半分よりちょっと多いくらいかな? タチの悪い嘘言っちゃってごめんね。せっかくお菓子とかくれたのに、嫌なことしちゃった」

「⋯⋯あー、うん。なるほど。そんな嘘ついちゃうくらい追い込まれてるんだね」

 

 シエルはアビドスに借金があることに思い至る。

 砂漠化を止めるための施策。それが失敗したということは、大金を投じたがそれを回収出来なかった=多額の負債を抱えたということ。

 それを行った当時の生徒会の事など分かるはずもないが、現在の様子から相当な額なのは明白。

 先程の嘘から推察すれば、少なくとも億単位なのだろうとも。

 

「ホシノちゃん、今まですごく辛かったでしょ?」

「っ⋯⋯!」

「太陽の傾き的に、今は午後5時くらい。大抵どこの学校でも下校時刻だから、校門の鍵を閉めて戸締りをしているホシノちゃんが最高学年。違う?」

「⋯⋯うん。そうだよ」

「でもホシノちゃんさ、私と同じ2年生だよね? 3年生が居ないのは不自然だし、元々聞いてたホシノちゃんの⋯⋯『暁のホルス』の性格とはあまりにもかけ離れてる。今の口調とか仕草ってさ、もしかしなくても⋯⋯()()()()()()3年生の先輩の真似だよね?」

「⋯⋯」

 

 シエルの言葉の後、周囲の空気が一変した。

 まさに一触即発。今にも爆発しそうな大量のダイナマイトを地雷原に投げ込んだような、数瞬後には周囲を巻き込んだ大爆発を幻視させる緊迫した空気。

 シエルが、ホシノの地雷を踏み抜いたことの証左だった。

 

「突然だけど、アビドスの砂漠化は頻発する大規模な砂嵐によって進行してきたよね? でも、元々そんな砂嵐が頻発するような場所に人が集まるわけ無いし、キヴォトスで最大規模の学園になんてなれるわけがない。つまり、砂漠化を進行させた砂嵐は割と最近⋯⋯多分だけどここ100年以内に発生するようになった」

「⋯⋯だから、何?」

「そんなに焦らないで。私は今回、その真相を確かめに来たんだけど⋯⋯あなたの先輩もきっと、そうしたんでしょ?」

 

 ホシノは答えない。

 ただただ鋭い目付きで、話をするシエルを睨みつけている。

 

「砂漠化が進む原因は砂嵐。でも、あまりにも砂嵐が発生する頻度が多すぎる。だからそれを確かめようとして⋯⋯そのまま「違う! ユメ先輩はまだ⋯⋯っ!」残酷なことを言うようだけど、いくらヘイローを持つ生徒とはいえ、無補給で生きられるのはせいぜいが3日か4日。ましてや砂漠なんて環境じゃ、更に短くなるよ。あなたの言うユメ先輩が砂漠に行ったのはいつ? 昨日や一昨日じゃないでしょ?」

「それ、は⋯⋯」

「多分数ヶ月くらい経ってるんじゃない? それだけ砂漠でさ迷ってたら、私でもミイラになる。もしかしたら高温すぎて蒸発した可能性もあるけど」

「⋯⋯バカにしてるの?」

 

 もちろんシエルは本気で言っている。

 シエルが無傷で受け止めたビナーの熱光線(アツィルトの光)だが、多くの生徒ならば致命傷も有り得る攻撃である。

 ホシノやシエルならばともかく、小鳥遊ホシノ(暁のホルス)の話に埋もれるような生徒が耐え切れるような、そんな生易しい攻撃ではない。

 それが意味することはすなわち──

 

「──摂氏2000度を超える熱光線。あなたの先輩は、それに耐えられるほど強かった?」

「は? 2000度って⋯⋯そんな、の⋯⋯」

「私が持ってきた“これ”の持ち主⋯⋯名前は知らないけど、多分あれが砂嵐の原因じゃないかな。熱光線も撃ってきたし、砂漠がガラス化してたし、確実だと思うよ?」

「あ⋯⋯。うぁ⋯⋯、ユメ、先輩⋯⋯!」

 

 再認識させられた事実に耐えきれなくなったのか、泣き崩れるホシノ。

 原因を作ったシエルはと言えば、ビナーの尾羽を離し、泣き崩れたホシノをあやす様に抱きしめ始めた。

 

「辛かったね。認められなかったんだよね。もしかしたら、喧嘩別れみたいになっちゃったのかな。謝りたかったのに、謝れないままだったんだよね。いっぱい泣いていいんだよ。今は後輩も居ないから、今だけは、ただの小鳥遊ホシノに戻っていっぱい泣こう⋯⋯ね?」

 

 少女の泣き声を包み隠すように、六翼の天使が作った羽毛の繭。

 月明かりに照らされたそれは、どこか揺りかごのようにも見えた。




 ホシノの地雷を全力で踏み抜いて泣かせる作者はきっとサイコパスなんだと思うよ。おじさん泣かせるとか、この作者人の心とかないんか?



 ところで、一体いつから──























































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