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【魔法名】増やす魔法 国内正規品
目の前で、増やしたお金が消えます。
「消えたのかな?」「完全に消えてますね」
少女と、喋るスマホことシリィは────目を合わせます。
シリィの眼というかカメラは、今日も冷静にこちらを見ています。
お互いの見つめあいにも、嫌気がさし、私は口を開いて、シリィに話しかけます。
「ええっと、効果は5秒ぐらいかしら」
「魔力や、魔法式による問題でしょう」
シリィの分析に少女は首をうなだれます。
お金を増やして大金を得たいっ、そんな思いから買った魔法。
簡単に大金持ちになれると思ったのに、と少女の思いは儚く散ります。
「どうせ、簡単にお金持ちになれる────なんて考えてたんでしょう」
「ゲッ、何のことかしら」
びくっ。少女の声と体の揺れが一致します。
理由は、最近の通販の支出が多いとか、欲しいゲームがあるとかそんなものです。
「ま、魔法の練習のためにお金が欲しいのよ」
「そんな目を泳がせて言われましても……」
シリィからは冷たいカメラ目線を向けられ、少女は話題をそらします。
「だって夢があるでしょっ。無限お金増殖よっ」
「夢というより、欲しいのは楽では」
「うぐっ、浪漫も糞もないスマホね」
むむむと少女の額に皺が集まります。
「全く生意気な────ってあれ」
「どうかしましたか?」
「お金が増やせないなら、この魔法使い道がなくない⁉」
少女は気付いてしまいます。
自分がまた無駄な魔法を買ってしまったことに。
「そんなことは無いですよ」
使いきりのモノなら数秒でも問題ないですし。
数秒だけでも、酸素を増やせば人だって殺せます。
「あんたスマホの癖に、結構物騒な事考えるわね」
「そういうこともできるってことです」
「いや、まあ、そうだけど」
うーん。少女は考えます。
考えますが、特にいい案は浮かびません。
「意外と難しいわね」
「でも考えるのはいいことです。この魔法また危険なものですから」
「危険?この魔法が?」
シリィは意味深に呟きますが、少女は“そう”は思いません。
増やすモノによっては殺人とかできますが、殺すなら他の方法はいくらでもあります。
「う、うーん?」
シリィは真面目に話します。
「増殖魔法って、自分に使うとどうなると思います?」
「自分に?増えた方が5秒後に消えるんじゃないの?」
「そうです。主と同じ人間が5秒後に消えます」
少女は首をかしげます。
自分が消えるわけじゃないのに何が問題なのという視線です。
「消えるのは“コピー”でしょ」
「そうですね。人格も記憶も全てが一緒のコピーです」
少女は手のひらを見ます。
そして気づくのです────
魔法を使って、自分がコピーでない保証などどこにもないと。
自分も相手も、魔法を使った記憶があるのですから。
「その時消えるのは一体誰なんでしょうね」
「ま、まったくく、怖いこと言わないでよっ」
今日は一人では寝れないなと思う少女でした。
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