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【魔法名】眠さを貸し借りする魔法 国内正規品
鼻歌交じりのキッチン。
宙に浮かぶスマホは、てきぱきと洗い物をこなします。
洗い終えた頃になると、かんかんと階段を下りる音が聞こえてきました。
「主、酷い寝癖ですね」
喋るスマホことシリィは、降りてきた少女に話しかけます。
22世紀なので、スマホは喋りますし、宙にも浮き舞す。
「ね、眠い……」
朝一からそんな事を呟くは主とよばれた少女です。
「また徹夜したんですか?」
「止めるに止めれなくなってぇ」
「まったく、ほどほどにしてくださいよ」
少女は夜遅くまでゲームをしていました。
対戦型ゲームで新シーズンが来たら、ランク上げをするのはゲーマーとして当然のことです。
「シリィィ、食べたらもう一回ねるぅ」
「何ふざけたこと言ってるんですか」
「ええ、今日何にもないじゃない」
「今日は朝からお出かけの日です」
少女は“あーやべ、忘れてた”みたいな目をします。
「ちなみにみんなは?」
「もう出ていきました」
「なら私はどうやって行くのでしょうか?」
「徒歩です」
「うにゃあっ、ころす気っ」
「殺すも何も、徒歩で30分でしょ」
むっきーとする少女。
その眼は、こんなに眠いのに30分も歩けるかァ、というモノでした。
「仕方ないわねぇ、こうなればアレを使うわよ」
「はいはい、いつもの通販魔法ですね」
呆れるシリィは仕方なく、少女を手伝うのでした。
◇◆◇
瞼が閉じかけている少女は、言葉と分らぬ言葉を話します。
その様子は寝落ちしかけの猫の様でした。
「ふにゃにゃにゃにゃ」
「ああ、今日の魔法はコレなんですね」
画面に表示されるは【眠さの貸し借りをする魔法】
「また、変なのを買いますね」
「ふにゃはは、うにゃ」
「眠気マックスなのはいいですけど、魔法はしっかり唱えてくださいね」
「ふにゃああっ────
極彩色の輝きが少女をつつみ、
光りが消えた後には、ぱっちりと瞼を開けた少女がいた。
「完全、復活うううっ」
「近所迷惑って物を考えてください」
「いやいや、シリィっ、この魔法凄いわよっ」
「珍しく使った魔法に肯定的ですね」
「そりゃ当然よ」
少女曰く。眠気が一瞬にして消えたという事。
つまるところコレで無限に作業とゲームが出来るという事。
「いやーつらいわー、自分の才能がつらいわー」
「才能もなにも、クソ魔法買っているだけでは?」
「ふっふっふーん」
何時もなら、スマホを叩き割っているところですが、
今日の少女は機嫌がいいので寛大です。
具体的には既に外に出る準備に取り掛かるほどです。
「主が能動的に外に出る準備を……」
「失礼ね、私だってそんな時もあるわよ」
そんな事はありません。だいたいはシリィが準備しています。
「では早速「チーン、利息です」────あれ、これなんのタイマーかしら?」
少女の目に映るのは、宙に浮く時間表示。
現在は00:30となっているそれから、音は鳴りました。
「……主、今ちょうど一分たちました」
時間表示は00:31となっています。
「これ、魔法を発動してから動いてる?」
「主、今すぐその魔法を切った方がいいと思います……」
珍しく、シリィの真面目な声。
「どういうこと?」
「おそらく、時間がたつたびに利息が付いてます」
「利息って、貸したお金が増えるあれよね」
「それの睡眠版です」
「つまり────」「────貸した眠さが増えているって事です」
少女はほほを引き攣りながらも、魔法の解除画面へ。
凄い形相をしながらも、魔法を切るかどうかを考えます。
「これって、踏み倒せばワンチャン……」
「手違いで全部帰ってきたときに大変な事になると思いますよ」
「でも、このスッキリとした気分を失いたくないもんっ」
「どうせ無かった気分です。おとなしく寝てください」
「うぐうっ」
少女は泣く泣く魔法を切るのでした。
その後、死にそうな顔をしながらも外に出る少女の姿が見られたとのことです。
★☆☆☆☆怖い魔法
2024年〇月〇日に日本でレビュー済み
貸した睡眠が増えるのはやばいと思います。せめて利率は0にして欲しかった。
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