東方外来録 博麗の神主の幻想入り 作:ロッド
幻想郷の守護者と任命されて数日が過ぎ、博麗神社の境内で掃き掃除をしている霊夢は、今日の修行をどうしようか考えていた。藍からは「無理をしないように」と、忠告を受けているが…
(博麗の力で発現したのは、氷を操る力。10年後には消えるけど…)
右手に力を集中させると、小さな氷の粒が出現したが、直ぐに消滅してしまった。想像力が足りないのか、集中力が長続きしない。
(これは難しいよ。氷を操る力は後回しにして、今日は人里の見回りに行こうかな。)
藍は紫に呼ばれているようで、博麗神社には霊夢しかいない。出掛ける前に自室に行って、試作品で作成した結界符の御札を50枚懐に入れて、人里に出掛けた。
飛んでいけば直ぐに到着できるのだが、霊夢は空が飛べない。修行をやってはいるのだが、その代わりに、結界術の精度が高まっている。
(数日間の修行じゃあ、空は飛べないし。どうしよう…)
人里に到着した霊夢は見回りを開始する。極希に妖怪が人里に来るときがあるため、定期的に見回りが必要になる。妖怪は原則人里に立ち入り禁止になっているのだ。暗黙の了解だが…
(悪さをしなければ、ある程度見逃すけど。藍や橙は人里の人間に認められてるけど、橙は警戒心が高いから人里に行かないよね…)
溜め息をして見回りを続けている。すると、前から大量の本を抱えている少女が、危なっかしく歩いている。本が多いいため前が見えてない。
霊夢は声をかけようとしたら、少女が足を躓いてしまった。素早く少女に近づいて、抱き抱えて防いで、結界符を取り出して結界を張り本を防ぐ。
「大丈夫?」
「あ、ありがとうございます…あっ本が!?」
「大丈夫…汚れてないよ。」
結界から本を取り出すと少女に返した。念のために確認して、傷がないのがわかったようで、安心している。
「一度に大量の本を持ってると危ないよ?」
「う…ごめんなさい。」
「何処まで運ぶの?手伝うけど…」
「鈴奈庵まで…」
本を運ぶのを手伝う霊夢は、少女に案内され貸本屋【鈴奈庵】に到着した。
「手伝ってくれてありがとう。私は本居小鈴。」
「僕は博麗霊夢…よろしくね。小鈴さん…」
小鈴は霊夢の紅白の袴を見て、目を見開いた。
(その表情…やっぱり気づいたかな?)
「人里に来たのは、何かの異変ですか!?」
「…………え?違うけど。」(どういうこと?)
「……霊夢さんは…男の子だよね?」
小鈴は何を勘違いしているのか、霊夢の性別を聞いてきた。どうして、その質問が出たのかを考える霊夢。何となく質問の意味を理解した。
その質問をした理由は、歴代の幻想郷の守護者…博麗の巫女が幻想郷を守護していたからだ。なので、当代の守護者の霊夢の服装に疑問を持ったからだそうだ。
(わからなくもないね。でも、男の服装で…性別の質問?)
幻想郷の歴史書では、歴代の博麗の巫女の1人が男装趣味がある者もいたらしい。
「で、僕が人里に来て、異変だと思ったのは?」
「先代巫女は異変発生時以外では、人里に来ないことが多かったって、お母さんが言ってたから…」
「………そうなんだ。」(先代様!?ちょっとは人里に顔だそうよ!)
小鈴から先代巫女に関する情報を聞いた霊夢は、内心そう思いながら、本棚にある本を眺めている。
「霊夢君は10歳?」
「そうだけど。」(幻想郷の守護者が10年で代わるのは、人里の住人も知ってたね。)
「私は13歳だよ。」
「………そうなんだ。」(何だかイラッてするね。)
イライラしているが、笑みを浮かべて表情を隠す。すると、店内に着物を着た少女が入ってきて、小鈴に声をかけた。
「小鈴。借りていた本を返しに来たわよ。あれ?」
「小鈴さん。また今度ね…」(早く人里の見回りに行かないと…)
霊夢は店内を出て、見回りにいった。小鈴は本を受け取ると確認する。
「阿求…確認終わったよ。どうしたの?」
「あの男の子は?紅白の服装してたけど?」
「博麗霊夢君だよ。当代の守護者らしいけど…」
「博麗…霊夢…この代の守護者は、男の人ね…」
稗田阿求は呟きながら、外を眺めるのだった。