東方外来録 博麗の神主の幻想入り 作:ロッド
あれから数日後。レイは人里で買い物をしていると、大量の野菜を風呂敷包んで背負っている妖夢を見掛けた。見るからに落ちそうな状態なのだが、声をかけていいのか悩む。
(やっぱり、声かけた方がいいかな?)
すると、妖夢の真後ろから馬車が迫ってきた。流石のレイも危険と感じたため、妖夢に叫んだ。声に反応して宙に浮いた妖夢は、そのまま馬車が通り過ぎると、地面に降り立った。
「ふぅ…馬車に気づきませんでした。助かりました…レイ君。」
「それにしても…沢山野菜買い込んだんだね?1週間分くらい?」
「ははは……1日分です。幽々子樣から野菜スープを望まれたので…」
妖夢の乾いた笑い声に、レイは唖然としている。大量の野菜を1日で消費すると知ったら、誰でもそうなるだろう。
「……………大変なんだね。」
「毎日してるので…」
レイは困っている表情をしている妖夢を見て、何も言えなくなってしまった。
「そうだ!今日…良ければなんですが…白玉楼に来てもらえませんか?幽々子様が興味を持たれたらしく。」
「それは別に構わないけど…問題があるよ。」
「問題?」
レイは空が飛べないことを妖夢に話した。それを聞いて、少し考え込んでいる。空が飛べないとは、思っていなかったようだ。
「手を繋いで、連れていくのは可能だけど、沢山のこれはどうしよう。」
「その大量の野菜は、結界で収納出来るけど…どうする?」
「結界で!?」
レイは4本の針を取り出して、地面に四方に突き刺して、結界を構築する。すると、先程買っていた肉が結界内に出現した。妖夢はレイの結界術に無言になっている。驚いてはいるようだが…
「これなら、大丈夫だよね。」
「レイ君は何者なの?」
「結界術が使える普通の人間だよ。」
「結界術が使える時点で、普通の人間じゃないよね!?」
妖夢に突っ込まれたレイは、風呂敷を妖夢から預かると、結界で収納した。背負って飛ぶ必要が無くなったので、レイにお礼を言っている。
「白玉楼に行きましょう。飛ばないと行くことが出来ないから、私の手を握ってね。」
「う、うん。わかった…」
レイは妖夢の手を握ると、慣れるために妖夢はゆっくりと浮いて、怖くないかレイを見る。
「……大丈夫?」
「今のところは…大丈夫。」
宙に浮くのは、この幻想郷では初めてのことなので、感覚が慣れない。レイが平気であることがわかると、安心した妖夢はゆっくりと上に飛んで、白玉楼に向かっていく。
「…………高いね。」(少し怖いかも…)
「空を飛んでる人なら、すぐに慣れるから。」
「僕…空飛べないから。」(先代樣とユカリに鍛えてもらったのにな…)
少し落ち込み気味のレイに気づいた妖夢。握っている力を少しだけ、痛くしない程度に強くする。
「……どうしたの…妖夢さん?」
「悩んでることがあれば、相談してね。」
「………………ありがとう。」
暫く飛んでいると冥界に通じる穴を発見して、通り抜けると着地した。地上と違い、冥界は雰囲気もそうなのだが、かなり異質のためか、レイは警戒してか薄い結界を張っている。
「ここが冥界だよ…大丈夫?」
「……なんとか。」(やっぱり、冥界は慣れないよ。この幻想郷では初めてだけど…)
生者は基本冥界には訪れない。死者が閻魔の裁判を受けて、転生するまでの間、この冥界で待つことになる。
妖夢の案内で、白玉楼に到着したレイ。庭を見て目を奪われている。
「……綺麗な…庭。」
「ありがとう。毎日、庭の手入れしてるから…」
妖夢はレイの言葉に、少し嬉しそうにしている。
白玉楼の建物に入り、一瞬迷いそうになりながらも、幽々子のいる部屋に到着した。
「和室が沢山あって、迷いかけたし…幽霊?も沢山いたね。」
「私もその類いなんだけど…」
妖夢の半霊がレイに、お辞儀の仕草をしている。
「………別の意思が宿ってたりして。」
「私の分身みたいなものだから、たまにね。」
室内に入ると、幽々子が書き物をしていた。閻魔に提出するための報告書を書いている。幽霊の管理は、幽々子の仕事なので月1で、報告書を書いているのである。
「幽々子樣…ただいま戻りました。」
「お帰りなさい…妖夢。貴方がレイね?紫からいろいろと聞いてるわよ?」
「紫さんから…どんなことでしょうか?」
「………外来人くらいかしら。私が興味を持って、貴方を連れてくるように命じたけど…」
幽々子は書き物を終えると、妖夢に夕飯の準備を命じた。レイは結界から風呂敷に包まれた大量の野菜を取り出した。
「レイ君はゆっくりしてね。幽々子樣から話があると思うから。」
妖夢は台所に向かったのだった。