東方外来録 博麗の神主の幻想入り 作:ロッド
博麗神社では、毎年恒例となっている夏祭りが開催されていた。霊夢は初めてのお祭りである。人里から来る人達のために、妖怪避けの結界を張っている。
「霊夢。遊びに来たぜ!」
「魔理沙…夏祭りが楽しみなのはわかるけど、興奮しすぎだよ。」
苦笑している霊夢は、冷えたお茶の入ったガラスコップを魔理沙に渡した。
「ありがとうだぜ!暑くて構わん…」
お茶を飲んでいる魔理沙は、敷地内に妖怪がいないことに気づく。この夏祭りには、妖怪や妖精が一人もいなかった。
「霊夢…どうしてなんだぜ?」
「僕は中立の立場でも、人間の味方。昼~夕方までの夏祭りには…人間以外は立ち入れないようにしてるよ。そのために、妖怪避けの結界を張ったんだ…」
「そんな…」
「そうでもしないと、妖怪と人間の争いが発生しちゃう…幻想郷は崩壊するよ。」
人里から人間が来るなか、小鈴と阿求もお祭りに参加していて、屋台に並んでいた。それを見かけた霊夢が声をかけた。
「小鈴と阿求姉ちゃんも、来てたんだね。」
「霊夢は暇そうね?」
「これでも、結界維持をしてるから暇じゃないよ。」
よく見ると霊夢は肩で息をしていて、若干疲労しているのがわかる。結界維持に霊力を使っているため、体力の消費も激しい。
「霊夢君は休まないと…欲しいものがあったら、買ってくるから。」
「……………いらない。欲しいもの…ない。」
霊夢は結界移動術で、その場から姿を消した。小鈴と阿求は霊夢が消えたことに、動揺している。
「霊夢君が…」
「急いで探すわよ!」
森に移動した霊夢は、疲労により座り込んでしまった。だが、地面に座り込むのはよくないので、適当な切り株に腰を下ろした。
(結界維持に限界が…流石に無理。)
疲労の限界で、その場に倒れてしまった霊夢。観察していた紫が姿を現して、霊夢が張っている結界を再度構築した補強した。
(流石の霊夢も限界ね。でも、上出来かしらね。ゆっくり、休息してもらいますか。)
霊夢を隙間で寝室に送り、阿求と小鈴の目の前に姿を現した紫。霊夢の所在を聞かれたため「気分が悪そうだったから、寝室に送った。」と言った。
それを聞いて、安心した阿求と小鈴。紫は霊夢の看病を頼んだ。阿求と小鈴はやるようで、紫の隙間送りをくらった。
寝室で眠っていた霊夢が目を覚ました。森で倒れていたのは覚えているのだが、どうやって戻ったのか記憶がない。
(結界維持の影響で、鈍くて動きにくい。夜ご飯食べないで寝ようかな。)
そう考えていると、台所から阿求と小鈴が料理を運んできた。霊夢は目を見開いて「阿求姉ちゃんと小鈴!?何をしてるの。」と聞いてきたので、料理をしていたことを言った。
「何で…」
「霊夢君は…少し、無理しすぎだよ?少しは休まないと。」
「小鈴の言う通りね。最近は、妖怪退治や無理に修行をしてるらしいわね?紫さんから聞いたけど…」
最近の霊夢の生活を観察している紫は、無理している部分を姉貴分になっている阿求と小鈴に、暴露していたのだ。
「あの隙間妖怪…余計なことを…」
「霊夢君のことを心配してるんだよ?」
「過保護なくらいにね。いつか…壊れちゃうわよ。」
阿求と小鈴に、心配をかけてしまった霊夢は「ごめんなさい。」と少し落ち込み気味に謝った。
「卵粥を作ったわよ。あの時のお礼にね…」
「…………ありがとう。阿求姉ちゃん。」
「あれ…私には言わないの?」
「小鈴は何したの……………冗談だから。その、泣きそうな顔しないで!?」
小鈴の悲しそうな表情に、慌てた霊夢を見て(これは、霊夢君の弱点?なら…)と内心思った小鈴の行動は、霊夢の手を掴んで引寄せると、そのまま抱きついた。
「何、やってるの。離して!」
「霊夢君は、人に甘えたことある?」
「ある……よ。妖怪には…」
急に弱々しくなっている。小鈴に言われたことに、自信持って言葉に言えない。
霊夢は頑張っているが、人里の人間はそれを評価と言うか、霊夢に話し掛けずに無視をしている傾向にある。
「人里の人達は、僕に関心なんかないよ。恒例の博麗神社の敷地内でのお祭りも、場所を借りに来るだけだしね。買い物する時だけは、話し掛けられるけど…」
「そんな…」
「阿求は知ってると思うよ。確か…100年に1度…転生するみたいだし。」
「霊夢はよくそんな…ことを知ってるわね?」
「僕の趣味は読書だよ。勿論、昔の歴史書も含まれる。何代か前の先代様は、稗田家の当主と友達だったらしいけどね。」
霊夢は倉庫にある一冊の本を結界で取り出して、阿求に手渡した。古ぼけている本だが、日記帳らしい。状態が良いのは、結界で保護されているからだ。
「小鈴はこっちを読んで良いよ。この歴史書は鈴奈庵には、無いものだから。既に、チェック済みだから。」
「ありがとう!」
「霊夢…この日記…借りても?」
「稗田家の当主以外が読まない条件でね。」
その言葉を察した阿求は「来週には返すわ。」と言って、借りたのであった。