ヒトのDNAとか? あとは身体の組成が呪力のみではないこと、とか?
自分を化け物と考えるのは勝手だけど、もう少し化け物について細かく深く考えてみた方がいいのかもしれない。
2019年9月某日。
私たちは交流会のため、京都に向かった。
東京から京都までは高専所有のバスを使用し、途中途中でパーキングエリアにも寄りながら長時間座り続けた。お尻が痛くなったのは言うまでもない。
「んんーーー、つっかれたぁ」
「とうちゃーーくっ!」
「ふぁ……」
それぞれ疲れた声を溢してバスを降りる。
「おぉ、木造いっぱいある。これがキョート」
遠目に見た所、京都校も東京校と大差ない造りに見える。いや、若干京都校の方が古めかしい造りかもしれない。ボロい、という意味ではなく木造が多いからそのように思う感じ。
東京校の建物はなんだかんだ言って鉄筋を始めとして現代的な建築物もあったから、なんだか新鮮。心身がリセット出来るかもしれない。
「ようこそ呪術高専京都校へ! 僕は京都校一年担当の
「よろしくお願いします」
建物を見ていると、中肉中背の若い男性が階段から降りてきて挨拶される。私たちも「よろしくお願いします」と返事をすると、空街先生はにっこりと笑った。
先生ということは少なくとも補助監督ではあると思うけど、とても気持ちのいい先生だと思う。うちの先生と交換して欲しいかも。
「まずは宿舎に荷物を置いて貰います、案内するので付いてきてくださいね」
空街先生の案内で、私たちは宿舎に辿り着いた。この宿舎とまた木造だけど、壁面を始めとした木材の感じを見るに新築っぽい。経ってても十年以内なんじゃないかな。
「木のいい匂い〜」
音弥くんや香くんあたりはそう言って木の匂いを嗅いでる。正直気持ちは分かる。私も体育館の木の匂いとかすごい好きだった。
「あれ? なんか焦げてる?」
「どこどこ? ……あ、ほんとだ。焦げてる」
降花ちゃんは指差した場所を見ると、宿舎に焦げ跡があった。皆んなで焦げ跡を気にし出すと、空街先生は「あちゃ〜」って顔を手で覆った。
「あ〜、それねぇ……あー、あんまり気にしないで。大丈夫、耐火性はしっかりしてるから」
何か事故でもあったのかな、バーベキューした時にボヤ…とか。
ともかく、私たちはそれぞれ個室を用意して貰ってあって(元々寮に使う予定だったのかも)荷物を安心して置くことが出来た。
皆んなそれぞれ荷物を置き終われば当然部屋から出てきて、宿舎前で駄弁り出した。
「……〜〜〜ぉ〜〜〜〜〜〜」
「ん?」
「何か聞こえない?」
「聞こえるね、なんだろ」
最後に白夜ちゃんが出てきた辺りで、どこかから声? が聞こえる。
「あ〜〜〜……」
その声を聞いた空街先生は全てが終わったような顔をした。なんだろう、嫌な予感しかしない。
「こぉ〜〜〜〜〜んに!!!」
「あっ。」
もっとハッキリ声が聞こえるようになる。すると、後ろの方で白夜ちゃんが何かを察した声を漏らした。
「こぉ〜んに〜〜〜には〜〜〜!!!!!」
雷のように大きな声と共に、女の子が降り注いできた。
女の子は茶の髪色に半袖短パン...というと可愛げがないか。シャツを縛ってお腹を出して、ホットパンツを履いてる。身長は170以上はあるかもしれなくて、筋肉がかなりしっかり付いている身体つき。胸もそこそこ大きい。
「東京校の皆さんこんにちは! 私の名前は
「りんごちゃんこんにちは! 東京校一年生、漆天宮音弥です!」
「よろしく!」
「よろしく!」
りんごちゃんと音弥くんは元気に挨拶して元気に固い握手を交わす。
あぁ…うん、これは…苦手なタイプかもぉ…。
「皆んなの名前も聞かせてください!」
皆んな戸惑いながらもそれぞれ自己紹介をしていく。りんごちゃんは名前を聞くと、その都度その都度その人の手を握ってブンブン振ったりめちゃくちゃ強い力で握手をしてくる。
その様子を見て春ちゃんはそっと姿を消していた。あと白夜ちゃんも。
全員の名前を聞いて握手が終わると、りんごちゃんは「交流会戦楽しみにしてるね!!!」と言って飛び去った。
そう、飛び去った。飛ぶより跳ぶか。地面を蹴ると爆発的な音と共に彼方へと消えていった。なんだその身体能力。
「すごー! もう見えないや!」
「「「……」」」
一人を除いて絶句である。
「あ、あぁ、えっと…あの子はね…」
「醜伏りんごちゃん、苗字の通り十傑一つ醜伏家の子」
空街先生が言葉に迷っていると、白夜ちゃんが戻ってきて代わりに説明をしてくれる。
「醜伏っていうとえーっと、あの…」
「妖怪呪霊精霊エトセトラ。人外の血を取り入れた一族だね」
「りんごちゃんはその中でもかなり強い存在の血を発現させてる子だね」
「代わりに…いや血が関係してるかは分からないけど、性格はあんな感じだけど。」
「嵐みたいな子だね?」
「はぁ…そう。今回は自己紹介と握手で済んだだけマシ。」
「酷い時は熊みたいな力でハグしてくるから」
「ひえ…」
全員(これも一名除いて)の顔が青くなる。
「こ、今回りんごちゃんは力を抑える呪具を使うから、安心してね?」
「棄権するか…」
空街先生がフォローの言葉をかけるけど、だいぶ皆んな尻込んじゃった。
「楽しみだな〜!」
「今の話聞いて、よく楽しみに思えるね」
音弥くんに私は呆れつつ、愛想笑いをする空街先生と知らんぷりする雨宮先生に次の場所に先導される。
「次はどこに行くんですか?」
「運動場だ。そこで京都校の面々と顔合わせだぞ〜」
急勾配な坂に少しうんざりしながら愚痴混じりに質問する。
「運動場かー、京都のはどんな感じなんだろうね」
「似たようなもんなんじゃないか?」
「ザ・京都って感じするのかも〜」
「ザ・京都って何だろうね」
雨宮先生の答えに香くんたちも少し気持ちが軽くなってか、雑談が交わされる。
「確かに東西での違いは気になるかも」
「もしかしたら運動場も全部木製だったり!」
「いやぁ、流石にそれはないんじゃない?」
音弥くんはさっきりんごちゃんとの挨拶…挨拶か? まぁ挨拶をしてからいつにも増して機嫌のいい声をしている。化け物には化け物同士通じ合える点があると言う事なのか。
「もうそろそろ着きますよ」
空街先生が疲れた声で告げると、運動場が見えてきた。
金網に大きな敷地、日陰になる小屋に近くには倉庫。京都校もほとんど東京校とデザインも変わらないのが現実か、と腕を組んで妙な安心感を持った。
「全然かわんな〜い!」
「あはは、ほんとだ」
「まぁそんなもんか?」
「そんなもんみたい。でもある意味完成された設計なのかも...よ?」
「一理ある。」
降花ちゃんが軽く文句を言う。他のみんなは私含めて、まぁこんなもんか。って感じ。
駄弁ってると、私たちが入ってきた入口とは反対側から土を蹴る音、そしていくつかの呪力がやってきた。
「はーい、一年生の皆さん集合ー!」
私たち東京校、そして今やってきた京都校の人たちに、空街先生は集合をかける。私たちはグラウンドのちょうど真ん中あたりに集まって顔を合わせた。その中にはさっきの嵐みたいな子、りんごちゃんも当然混ざってる。
「今回の交流会、交流会戦の相手になる生徒です。お互いに自己紹介をしましょう」
自己紹介の時間と聞いて真っ先に手を挙げたのが二名。
「はい! 漆天宮音弥です!」
「はいはい! 醜伏りんごだよ!」
「さっきはいい握手だったね音弥!」
「ありがとうりんご! 俺、交流会戦すごい楽しみなんだ、よろしくね!」
「全力で相手するよ!」
二人は本日二度目の固い握手を交わしている。
「そっちにも
「俺は
「んあ、
「
「長谷川
「
「……
京都校のりんごちゃん以外の学生に、私たちも自己紹介を返す。
呱々森薊ちゃんは巫女服...をちょっと改造したような服をしていて、霊体の狐を一匹連れてる。式神か術式なのかな。
二条徹くんは細身で長身、170後半くらいはあるのかな。黒髪で高専の服をきちんと着てる。真面目な子、なのかな。
地走東野くんはぼさっとした髪の毛に眠そうな目をしてて、制服も着崩してる。
汐見夜ちゃんはきちっと制服着てるけどなんだか目つきが怖い。ずっと睨まれてるような気がする。白髪で綺麗な肌してるのに近寄り難い。
長谷川豊持くんはかなり身体が大きい。身長だけで言えば二条くんと同じくらいだけど、長谷川くんは横にも大きい。脂肪じゃなくてしっかり筋肉って感じ。この前一緒に任務に行った咬狩先輩より大きい…かも?
辻美織ちゃんは私と同じかちょっと低いくらいかな、おどおどしてる。他の人が個性強めだから癒し枠かも。
最後、燿って名前だけ名乗った子。汐見ちゃんとキツさは似てるけど、汐見ちゃんより少し…殺気立ってる?ような感じ。よりチクチクした雰囲気を感じる。
「交流会なんでもんで、東京と京都で学生同士互いを知る場なわけだ」
「スケジュールとしては、今日はこの後歓迎会を用意してくださってるってんで、そこで皆飲んだり食べたりしてワイワイやって欲しい」
「歓迎会は遅くても15時には終わらせる予定だ。後片づけも一緒にやって、終わった奴から今日は自由時間」
「明日はいつも通り8時半に集合なんだが~」
「明日は、メインディッシュの交流会戦をやる。」
「集合場所は校舎じゃなくてここ運動場だ。それぞれ体操服に着替えて、交流会戦用に封印なりやった得物を持ってくるように」
「飲み物とかはこっちで用意しておくから、各自交流会戦の事にだけ気を配って明日集合するようにな」
「「「はい!」」」
スケジュールを通達される。
歓迎会かぁ、ちょっとギスギスしそうだけど大丈夫かな。心配もあるけど、他校の人とお話出来るのが楽しみなのは間違いない。りんごちゃん…はちょっと遠慮したいけど、薊ちゃんなんかは話しやすそうだし。
後は京都校の皆の等級も知りたい。一年生同士なわけだけど、京都側はどんな感じなんだろう。十傑のりんごちゃんは白夜ちゃんみたいに高そうだけど…。
「それでは~~~!」
「京都東京、呪術高専に願いまして~~~!」
「「「かんぱ~~~い!!!」」」
歓迎会が始まった。
あれから私たち東京校は、京都校の宿舎のロビーって言えばいいのかな、広間っぽい所に案内された。そこにはもうすでに色々と準備がされてて。
「静香ちゃんだったよね〜? はい、子供ビール〜」
「ありがと。ぷは〜。どうどう、髭出来てる?」
「あはは! 出来てる出来てる。白髭がまた一人出来上がったね」
こんな感じで、歓迎会っていうか宴会みたいな感じで始まった。
私も薊ちゃんから渡された子供ビールを飲んでうまい具合に髭を作ってみせた。ただまだ落ち着かないから、無数に並べ立てられてる子供ビールを新しく一本拾って、東京校メンバーの席に戻る。
「あ、静香も来た〜? あ。あはははは! 髭作ってる〜」
「早めのサンタだぞ〜!」
「ふふ、なにそれ〜。あ、サンタさんなら何かプレゼントないの〜?」
「うーん。じゃあ降花ちゃんには面白いアメをあげよう」
音弥くんは髭を見て笑う。普段なら"ノラない"けど、場酔いしたのか私はサンタになった。それに乗った降花ちゃんがプレゼントを求めてきたので、私は降花ちゃんに一粒のアメを渡した。
「なんでアメちゃん持ち歩いてるの〜大阪のおばちゃん〜? いただきまーす……」
「…………んんんーーー??!!!?」
笑いながら"特製"のアメちゃんを含んだ降花ちゃんの口から、炭酸…というか子供ビールが吹き出る。
「ぷはっ! しーずーかーちゃーーーん!?」
「あははは! 降花ちゃんもサンタさんだ〜」
「何それ何それ! 俺にも作ってー!」
「いいよ、はいこれ。」
「いただきまーす」
「………んんんーーー!!!!」
二人して笑って、音弥くんも催促したから同じのを作って渡してあげた。音弥くんも口から炭酸を溢れさせてる。
「んぐっ! あはははは、これ面白い! 術式で作ったの!?」
「そそそ。コップ一杯分くらいのを飴状に圧縮してさ。口に含んで暫くしたら圧縮が溶けてぶわー! ってね。」
自分でも下らないとは思うけど、こういう悪戯に術式を全力で使うのはすごくテンション上がる。誇らしいね。
「静香ちゃん、これ京都校の人たちにもプレゼントしてきなよ。いいサプライズになると思わない〜?」
「いいね。やっちゃおう」
「行く前に何個か作ってってよ、東京校の皆んなにも配ってくる!」
降花ちゃんの提案と音弥くんの催促でせこせこと飴玉を作る。
「ふむ。」
「どうしたの?」
「京都校の人、さっきの自己紹介だとちょっと怖い感じの人いるからサプライズしたら恨まれるかもしれないな、ってふと思ったんだよね」
「あ〜……うーん」
「そうだ、さっき静香ちゃん、薊ちゃんとお話してたよね? 結構良い雰囲気に見えたし、薊ちゃんに試しつつ、これ皆んなにやっても大丈夫かなって聞いてるのはどう?」
「イイね、名案!」
全員分の飴玉を作り終えて、音弥くんにも欲しい分を渡したら薊ちゃんが座ってる座席の横にまた腰をかける。
「お帰り。どう、楽しんでくれてる?」
「うん、おかげさまで。緊張も結構解れてきたしね」
「それは良かった、頑張ってみんなで用意した甲斐があるってもんだよ」
テーブルに広げてある食べ物の内、ピザを一切れ掴んで薊ちゃんはつまむ。
「さっきの子供ビールのお返し、持ってきたから食べてみて」
「なにこれ、飴?」
「そそ。特製の飴なんだよね〜」
「なに、サルミアッキとかぁ?」
「そんな劇物じゃないよ。まぁ劇物言っても私食べた事ないけどさ」
「私も。いただきまーす」
お互いに笑いながら、薊ちゃんは飴玉を口に放り込む。
「ん。あれ、これ子供ビールの味?へーこんな飴あっぶぶぶぶぶ!??!?」
「あはははははは!!! 変な声〜」
味に感心してる傍から口から泡を吹きだす。
「んもーーーー! ちょっと何これ!」
「言ったじゃん、特製の飴だって」
「くっそぉ騙したなぁ〜」
「あははは、いい反応貰いました。」
顔を見合わせて、またお互いにぷっと笑う。
「ねぇねぇ。これ、京都校の人たちにも差し入れしてもいいかな。主に怒られないか心配なんだけど」
「あー、皆んなにも悪戯? いいねいいねぇ」
薊ちゃんはかなり悪い顔をして私の悪戯に賛成する。
「でもちょっと気難しい奴もいるから、そいつらには私から渡すわ」
「気難しい奴って言うと、耀ちゃんとか、夜ちゃんとか?」
「そうそう、やっぱそっちから見ても印象悪かったよねぇ、ごめん」
「まー術師になる奴って大体事情あるもんだけど、この二人も例に漏れず悩み中ってわけで、心の余裕ないみたいなのよね」
薊ちゃんはテーブルからポテトを取って、座ってるソファに深く腰をかけながら、膝に乗っている狐と一緒にポテトを食べる。隣で座ってる私はそっと狐を撫でようとすると、狐は受け入れてくれてふわふわの毛並みを撫でる事が出来た。
「徹と美織あたりは話しやすいから、静香ちゃ…静香でいい? あんたが渡しちゃっていいと思うよ。あぁでも美織は夜と同じ席にいるな」
「なるほどなるほど。豊持くんと東野くんはどう?」
「豊持もいける。いいリアクションしてくれると思うよ」
「東野は…あいつそもそも今ちゃんと参加してるかな、寝てるかもしれない」
二人で苦笑いしながら、私は飴玉を人数分手渡す。
「薊ちゃんありがと。じゃあ"親睦を深めて"来るね」
「どーいたしまして。私も"これ"でいつもツンツンしてる二人をつまんでやる良い機会になったわ」
悪い顔をしてお互い持ち場につく。私は先ず豊持くんがいる席を見回す。すると、ソファに豊持くんと徹くん、それに……りんごちゃんがテーブルを囲んでいる光景を見つける。
くっ……いや、でもりんごちゃんは仲良くしようとしてくれてるんだから、仲間外れは絶対良くない。ここはこの子にもしっかり悪戯しなければ。
「お邪魔しまーす。改めまして、水上静香です。よろしくね」
「長谷川だよ、よろしくね〜。楽しんでる?」
「うん、楽しませてもらってる」
「二条です。さっき薊と話してたよね。あいつは話しやすいでしょ?」
「すごい話しやすくてびっくり。あと狐ちゃんにも触らせてもらっちゃった」
「りんごだよ! 薊ちゃんは可愛い上に頭が良くて優しいからね! おいしそ…けほん。」
美味しそうとか聞こえた…。いや、聞かなかったことにする。
「盛大に迎えてくれたから、個人的にお礼って事で皆んなにちょっとしたプレゼントあるんだ。はいこれ」
「…飴? 東京の珍しい味的な?」
「飴かぁ、バリバリ食べる派なんだけどいいかな」
「いいよいいよ」
「やったー飴! いただきまーす!」
真っ先にりんごちゃんが飴玉を口に放る。続いて豊持くん、徹くんと続いた。
「ん〜美味し ぶくぶくぶく!?!!?」
「ガリガリ。うま…ぶくぶくぶく!!!!?!」
「美味しい、というかこれ子供ビー…え、二人とももぼぼぼぼ!?!!?」
綺麗に三人とも泡を吹く。ここまで綺麗に引っかかってくれるとテレビのコントを見ている気分になる。
「悪戯成功っ!」
「ぷは、何だこれ!?」
「こんな飴が東京にあるの!? 普通に美味しいのが腹立つグッズだな!?」
「あはははは!! 何これおもしろーい!」
うんうん。三人とも本当にいいリアクション。あとりんごちゃんはやっぱり音弥くんと似た反応だったな。何と言うか、好奇心旺盛で色んなことを楽しんで受け入れてくれる。
私は今でこそ場酔いってことで普段より明るくなってる…と自分で思うわけでけど、二人のこういう明るくて人懐っこい部分は見習った方がいいんじゃないかって真剣に考えちゃうな。
「んぶーーー!?!?!」
「けほっけほっ、薊、お前なんだこの飴! ぶった斬ってやる!」
「あっははっはー!悪戯大成功!」
薊ちゃんも上手くやったみたい。ドタバタ騒ぐお互い聞こえる。
「んーーー!?!!」
「ぶふーーーーー!!」
「げほっげほっ、な、何だよこれ!?」
反対方向からは音弥くんの被害者の声が聞こえる。男子三人が犠牲になったか。
「はい共犯者確保〜!」
「は!? へ、え!?」
夜ちゃんが鞘を振り回しながら薊ちゃんを追い回しているのが見えてくると、薊ちゃんは私を捕まえて盾にする。
「お前か…薊にバカみたいな飴を渡したのは……」
「ヒエ」
ゴゴゴゴゴゴと凄まじいオーラを発している。
「ふんっ」
「いったぁ!」
「いった! 私も!?」
「両成敗。」
私と薊ちゃんは、夜ちゃんに鞘で頭をぶっ叩かれる。
「ふん。まぁ…味は悪くなかった。」
それだけ言い残して自分の席に戻っていく。
これは……仲良くなれる可能性ある…のか?
「いって〜。静香ちゃん大丈夫?」
「大丈夫。ねぇ薊ちゃん、あれ実は好印象だったりする?」
「好印象かは分からんないけど、あれくらいだったら鉄拳制裁で許してくれるね、今みたいに。」
「夜ちゃんはおどおどしながら接するより、積極的に話しかけた方が仲良くなれるのかなぁ」
「かもね〜、りんごも話しかけてはうざがられてるけど、嫌ってるわけではないと思うし。そうかも。」
床から立ち上がって、お互いお尻を払ってからソファに戻る。私も薊ちゃんも子供ビールを手に取って、瓶で何回目かの乾杯をする。
「耀ちゃんはどうだった?」
「探したけどいなかった。多分部屋に戻ったと思う」
「そっかぁ…」
「夜より気難しいから、まぁそうなるかって感じ」
「事情あるって言ってたけど、どんな事あったの?」
興味本位で聞くと、また一口飲んでから薊ちゃんは答える。
「んー、私も本人から聞けたわけじゃないけど…」
「耀の家族、呪詛師に殺されたみたいなの」
「元は東京の方に住んでたらしいんだけどね、保護されてから術師の才能もあって、生徒としての方が…んで。東京の方で過ごすよりこっちの方が環境いいんじゃないかって感じで今、らしい」
「空街先生が言う限りは、だけどね」
「呪詛師…」
一人の顔が思い浮かぶ。でも、頭を振ってその顔を振り消す。
キーン、コーン、カーン、コーン。
「あれ、もうこんな時間か」
「お開きだね」
チャイムが鳴る。宴会の終わりを告げる鐘の音だ。
「うーーーーし。じゃあ東京校のみなさん!」
「今日は長い距離の中きてくださりありがとうございました!」
「楽しんでくれたなら良かったです。片付けはこっちでやっておくから、後は部屋に戻ってゆっくりしてね」
「俺らも片付け手伝う〜!」
音弥くんが真っ先に声を上げると、薊ちゃんは手を振る。
「いや、明日は交流会戦だからね」
「そっちはアウェーになるわけだから、せまて休む時間は多く取ってもらわないと、ね?」
「音弥だって楽しみなんでしょ、団体戦」
「むむむ」
的確に音弥くんの的を射抜く。確かに旅行先での負担は馴染まない事もあるし、正直私はかなりありがたい。片付け手伝うべきって思いも勿論あるけどね。
「そう言うわけだから、また明日ね〜」
薊ちゃんはテキパキと京都校の皆んなに指示を出して、片付けをしていく。私たちは明日の交流会戦の言葉をしまって、「ありがとうございました」って挨拶をして、ありがたく宿舎に帰らせてもらった。
寝る身支度を済ませて今日を振り返る。
薊ちゃんを始めとして京都校の人と親睦を深められたこと。
りんごちゃん、音弥くんを見習おうと思った事。
……呪詛師のこと。
最後のはマイナスに思う事だけど、それでも歓迎会だけでも個人的な…成長?はあったのかな。良い視点というか、考えを見直す機会になった。
それに……りんごちゃん、醜伏。面談の時から…安藤との戦いの時から。私に対する向き合い方も、ほんのちょっぴりだけど、勇気を貰えた。
明日はいよいよ交流会戦。私は就寝前に思い浮かぶものを後にして、瞼を閉じた。
道中と歓迎会での疲労で思ってたよりも疲れていたのか、すんなりと眠りに落ちていった。
最後まで見ていただきありがとうございます。
原作では本来交流会戦は二年生から行うものでしたが、今作は生徒の実力を安全な範囲で早く身につけさせる事や、刺激の一つとして一年生でも行うものとしてします。多分作中で触れない気がするので後書きに残させていただきます。