酷く澄んだ青いソラ   作:クエクト1030

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短くて長い一年だったな
変わった事は多すぎて、得たものも失ったものも多すぎる
決めた事もある。目標も出来た
あとは自分で決めた道を歩くだけ。今日もがんばれ、私
───水上静香の日記



第二十一話「余白を彩り新しい1ページを描く」

「授業終わりだ、解散ー」

 

 

 年末年始の時間から少し経って、私たちは日常に戻った。

 いいや、戻ることなんて出来ていない。

 

 帰ってこなかった子、リタイアせざるを得ない子。

 教室は結局、私と、音弥と、春ちゃんの三人だけになった。

 

 白夜ちゃんは実家の方で鍛治に専念するため休学。香くん、甦生くん、降花ちゃんは……。

 

 行方不明のままだったり、すでに命を落としていたり。部位を欠損したり。

 もうまともな日常からは外れてしまった。

 

 呪術界は、強い者しか生き残れない。そういう事なんだろう。

 

 

「静香?ねー聞いてる?」

 

「聞いてなかった。なに?」

 

「大丈夫?今度の休みに三人で出かけようって話してたじゃん」

 

「はぁ。私はいいって言ってるんだけど。」

 

「三人で外出か……」

「うん。いいかも、思い出作りしようよ」

 

「やったー!」

 

「えぇ……」

 

 

 それなら、せめて。

 今からでも、思い出を作ろう。青春の記憶を。

 死ぬまでに生きよう、精一杯。

 

 


 

 

「あはははは!!音弥なにその顔!?」

 

「くふっ……あははっ!無理、耐えられない。こっち見んなー!」

 

「え、何。俺の顔どうなってんの!?」

 

 

 休日、私たちは遊園地に遊びに行った。

 

 この前までの憂鬱さに対して、めちゃくちゃに楽しかった。滅多に笑わない春ちゃんもこの日はすごい笑ってて、私もいっぱい笑った。音弥は言わずもがな。

 

 それに、笑って誤魔化したいという気持ちが私にはあった。

 

 

「ねぇ何食べる?」

 

「やっぱチキンっしょ。私たち金はあるんだし、観光価格ガン無視して食いまくる」

 

「いいね。音弥は?」

 

「賛成〜!あ、ドリンクバーあるかな!」

 

「何する気?」

 

「最強のレシピ作る!」

 

「音弥……やばいの出来ても私は飲まないからね、ゴミ箱じゃないんだから」

 

「大丈夫大丈夫、俺胃袋も丈夫だから!」

 

 

 園内のレストランに入った私たちは好き放題メニューを頼んだ。勿論食べられる範囲で、だけどね。

 

 音弥はつまらない事にちゃんと美味しいドリンクを作ってきた。ソフトドリンクの混合と言っても馬鹿にできない味で、二人して「せっかくなら不味いの作って飲んどけよ」って顔。

 

 

「楽しかったね」

 

「悪くなかった。」

 

「楽しかったーー!!また行きたい!」

 

 

 夕暮れ小焼の遊園地。名残惜しい一日の終わり。

 

 

「二年生になっても、また行きたいな」

 

「何一人白けた空気出してんの?」

 

「不安なんだよ。二人とも強いのは分かってるけど……」

 

「死んで居なくなるのが?」

 

「……まぁ、そう。そうだよ」

「任務中は正直ピンと来なかった。自分のことで必死だから他人の死、居なくなったことなんて」

「でも教室に戻って、三人が居なくなってて」

「怖かった。」

 

「あっそう。なら慣れときなさい」

「私はいちいち悲しむつもりなんて無いから。死んだら死んだでその時。一々悲しんでたら心持たないよ」

 

「俺は悲しかったよ。また皆んなで一緒に勉強したり模擬戦したり……色々したかった」

「でもこればっかりは、しょうがないって受け止めるしかないよ。それが俺たち呪術師の生き方、だから」

 

「……やだなぁ」

 

 

 来年もまた遊園地に三人で遊びに行けるのだろうか。

 

 

「それならアンタ、全員守れるだけ強くなればいいんじゃ無い?」

「化け物なら化け物なりに出来る事なんて幾らでもあるでしょ。アンタのことをどう言おうどう思おうが、そいつらが死ぬのに気を病むくらいなら全員救えるくらい強くなればいいと思わない?」

 

「春ちゃんらしくないアドバイスだね」

 

「はっ。まー私は他人様はどうでもいいからね。自分の責任は結局、自分しか取れないんだから。他人の責任をわざわざ負ってやる必要なんてどこにもないねー」

 

「音弥はどう思う?」

 

「春に賛成!俺も強くなるよ!静香も守って、春も守って、一年生たちも守れるように!」

 

「一年生、そうだね、私らも先輩になるんだねぇ」

 

「なに感慨深くなってんの。」

 

「うるさいな、いいでしょ。最近はちょっとナイーブなの。」

 

「なに、生理?」

 

「違ーう!」

 

「はっ。ま、お互い死なないようにだけ頑張ろっか」

 

「頑張るぞー!おー!」

 

 

 年明けの、私たちの一日が終わった。

 

 それから。

 私は、私たちは。血の滲むような努力を積み重ねた。

 互いに意見を交換し、本気で戦い合い、勉強をして、研磨する。

 

 弓削に渡された等級に相応しい術師へと成り上がった。成り上がってやった。

 

 愛ちゃんは未だにあの研究所に囚われているけど、解析は進んでいてどうにか結界との縛りをそのままに外出する方法模索しているらしい。

 会いにいくと、新しく差し入れてもらった本なりゲームなりにハマっている事を教えてくれる。

 

 明登については来年から私たちの学級に編入するらしい。

 待遇は……悪くは無いってことだから、そこは本当に誠実なんだろう。

 

 私たちとは次元を異にする人だけど、それでも。

 私たちは新しい仲間を守らないといけない。そして、私たちも生き続ける必要がある。

 

 もう二度とあんな思いはしたく無いから。させたくないから。

 

 

 

 これが、私が一級術師に咲くまでの出来事。

 正直、この世界なら何でも無い馬鹿みたいな事に気を立てて奮起してるだけのこと。

 

 でも。

 自分の気持ちには嘘をつかない方がいい。そうすれば強くなれるから。なるための熱量が生まれるから。

 だからどんな単純な理由でもら強くなることは出来た。努力を積み重ねれば、重なるだけ。

 

 まぁ、別に嘘ついてもいいけどね。私もソラさんには嘘つくし。

 だから。

 

 

「とにかく私が君たち一年に言うことは一つ!」

「死ぬ気で特訓しな!」

 

 

 四月。新入生が入ってきて、私たちは去年までの校舎に訪れて。

 そう言って、彼彼女たちをしばきあげたのでした。




 ご視聴ありがとうございました。
 これにて「酷く澄んだ青いソラ」完結となります。

 ごく最近まで体調なりリアルの都合なりで投稿時間もバラバラでしたが、完結だけ出来て心の荷を下すことが出来ました。外伝とか続きは気が向いたらたまーに作るかもしれません。

 重ねて、ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
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