ヤニカス魔法少女   作:ヤニカス魔法少女って良いよね

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青木アカネ

 

 

「お前さん、このマンション住んでたのか」

 

「ハズミちゃんも同じマンションだったなんてすごい偶然ですね!!」

 

「ちゃ、ちゃんはやめとくれ……こんな見た目でもいい歳してんだ」

 

 

まさかの邂逅に、ファンタズムバレットとブルーフレアは思わずそのまま会話をしてしまう。未だ銃は突きつけられたままだが。

 

 

「で、何でこんな時間にこんな所にいる?補導したほうがいいか?」

 

「いやいや、ここ私の家ですよ!?」

 

「じゃあ入れよ」

 

「…………あははー」

 

「はぁ……一旦、ウチ来るか?知らない仲でも無いしな」

 

 

どうやら理由は言いたくないらしいが、変身していないブルーフレアはどう見ても未成年。ずっと外に放っておけば危険が及ぶかもしれない。ましてや新人魔法少女は規約関連に疎いのでそっちで問題を起こされるほうが困るからだ。

 

 

「ええ!?悪いですよ!!ご家族だっているでしょうし」

 

「オレは一人暮らしだ。後まだ誤解してやがるから言っとくがオレは25歳だ」

 

「え、えぇぇ!?!?」

 

 

ファンタズムバレットの年齢に声を上げて驚いたブルーフレアだが、時間帯なので控えめな声で驚いている。器用な奴だとファンタズムバレットは考えながらも、ブルーフレアの家族に見つかっても面倒なので会話はそこそこに自分の家に連れていく。

 

 

「魔法少女は変身をしている間、()()()()()()()()()()()()()()()()に固定される。名前の通り魔法を十全に使うことができる少女の肉体に変化するということだ。そしてオレは15年間、変身を解いたことがない」

 

「それって、魔力が保たないんじゃ」

 

「いや、変身状態を維持するだけなら魔力は消費されない。だが魔法少女にだって生活はあるだろ?学生がいつもふりふりの衣装を着て学校には行けないし、社会人も同じだ」

 

「じゃ、じゃあハズミty………ハズミさんは?」

 

 

またちゃん付けで呼ぼうとしたブルーフレアに鋭い睨みを効かせながらファンタズムバレットは答えた。

 

 

「んー……まだ好感度足りないし秘密だな」

 

「ここでまさかのお預け!?」

 

「お前さんも自分の事情話してないだろうが。ほら着いたぞ」

 

 

エレベーターが一つ上の階に到着しファンタズムバレットの家に着く。位置的にブルーフレア家の真上だ。

 

 

「お邪魔しまーす……」

 

「来客なんてなくてな、ちょっと汚いが許してくれ」

 

 

他人の家が珍しいのか、緊張気味で中に入ってきたブルーフレアは馴染みのある部屋の作りに少し安堵したらしい。

 

 

「やっぱり作りは同じですよね」

 

「一階上なだけだからな。お前さん夕飯は?」

 

「あ、まだです」

 

「おう。じゃあこれ食っていいよ」

 

「え!?でもこれハズミさんのご飯じゃ……」

 

「冷凍食品あるし大丈夫、ガキが遠慮すんなよ」

 

「ガキって……」

 

 

ファンタズムバレットは自分のために買ったコンビニ弁当をブルーフレアに渡すと冷凍食品をレンジに入れて温め始めた。

 

 

「魔法少女になったのは10歳だが肉体は15歳だ。大体お前さんと同じくらいのはずだぞ?うわ、弁当からあっためりゃよかった。効率わるっ」

 

 

ブルーフレアをリビングのソファに座らせ、自分はカーペットに直に座った。

 

 

「帰りたくなかったら今日は泊まってっていいぞー」

 

「そこまでは、流石に悪いです」

 

「じゃあどうする?この時間に友達に泊めてって言うのか?さっきも言ったが補導される時間だしそうなりゃ親御さんにも連絡が行く。それにガキンチョが困ってるのを見過ごすほどオレも堕ちた魔法少女やってない」

 

「……ありがとうございます」

 

 

内股の膝に握り拳を乗せて肩を震わせながら噛み締めるようにお礼を言ったブルーフレアを一瞥して、温め終わったご飯を取りに行った。

 

 

(家族間トラブル、一応〈千里眼弾〉も併せて使ったけど外傷はないから暴力を振るわれたわけでもなさそうだな。むしろ暴力があったほうが手っ取り早く保護できるから楽なんだけどねぇ)

 

 

効率を重視すると人道が無視されるのはよくあるがそれにしたって思考が外道のそれである。なまじ本人がそれを自覚しているのが余計にタチが悪い。

 

ファンタズムバレットが戻ると、ブルーフレアは律儀に待っていた。

 

 

「先に食べててもよかったのに」

 

「人のお家でそこまで好きに出来ないです」

 

「そりゃそうか」

 

「「いただきます」」

 

「わりぃな。こういう時は手料理の一つでも作るのがそれっぽいんだけどねぇ」

 

「いえ、お世話になりっぱなしなので。こうやって人とご飯食べるのも久しぶりですし、結構嬉しいです」

 

「そりゃよかったよ」

 

 

お互い魔法少女なので、魔法少女関係の話題を話しながら食事を進めていく。主にファンタズムバレットがブルーフレアの知らないことを解説するという内容だがそれでも2人は楽しそうに話をしていた。

 

 

「ごちそうさまでした」

 

「はいよー」

 

「片付け手伝います!!」

 

「んー……うん、頼もうかな」

 

 

ごく僅かな洗い物しかないが、ブルーフレアに何かさせておかないと世話になりっぱなしという状態が続くのでそれも彼女にとってよくないのではないかと考えたファンタズムバレットは素直に洗い物を任せることにした。

 

 

「そういえば、25歳って言ってましたけど……この前はタバコ燃やしちゃってごめんなさい。そのまさか大人の人だと思わなくて」

 

「気にしてねぇよ。そりゃこんなちんちくりんがタバコ吸ってりゃ誰だって止めるよ。こうやってお偉いさんにたくさん貰えたしな」

 

 

そういってカートンの箱を見せつけるが、吸わない。

 

 

「あの、私に気にせず吸ってください」

 

「大人にゃ大人のプライドってもんがあってな。愛煙家の肩身はこういう時とんでもなく狭いんだよ」

 

「はぁ……?」

 

 

ブルーフレアにはよく分からなかったが、とりあえず吸わないというのは分かったためそれ以上は何を言わなかった。

 

 

「オレはお前さんの寝床を用意してくるから、洗い物が終わったらテレビつけてもいいし好きにくつろいでおいてくれ。トイレは廊下の左側なー」

 

「あ、ちょっ……」

 

 

返事を聞くことなくファンタズムバレットは別の部屋に移動をする。ブルーフレアはもう自分の反論を聞かないというのを理解したので素直に言葉に甘えることにしたようだ。

 

作戦勝ちをしたファンタズムバレットはほとんど使うことのない来客用の布団をだし、軽く消臭剤を振りかける。この程度のことに一々魔力は使わないし今日はいつもより多めに使用しているので節約だ。

 

ついでに家中に消臭剤を振りかけておく。嫌がる人は残り香だけでも気にしてしまうからだ。

 

 

(魔力に目覚める奴の多くは、心の内で起こる激情をトリガーにしてる。ブルーフレアもおそらくそのタイプなんだろうってのはわかるが……どうやって聞いたもんかな。身辺調査はオレの分野じゃねえし態々()()()に頼むほどのことでもねぇ。オレからブルーフレアに聞くのは論外として……ゆっくりあの子の心を解きほぐして自分から話してくれるのを待つしかないか)

 

 

「ハズミさーん、洗い物終わりましたー」

 

「ありがとな。助かる」

 

「……はいっ!!」

 

 

(……ん?)

 

 

〜〜♪

 

「お、風呂が貯まったな。タオルは新しいのあるし入ってきていいぞ。着替えはわりぃけどオレので我慢してくれ」

 

「あ、はい。いただきます」

 

「遠慮しなくなって何よりだ」

 

 

ブルーフレアに風呂場のものを一通り説明してファンタズムバレットはベランダに出る。

 

 

「んー、なんか違和感あるんだよなー……ふぅ」

 

 

室内だと風呂上がりのブルーフレアにタバコの匂いに気づかれるかもしれないのでベランダでタバコを吸い始める。風呂まで溜めたので早くには出てこないはず、今のうちに出来るだけの量を吸っておこうと考えたらしい。

 

 

(ぶっちゃけ、オレがあの子に肩入れする理由はない。たまたまあの日助けたのが右も左も分からない新人で今日たまたま助けたのもそいつだった。運命的なくらい偶然が続いただけの話だ。最悪魔法少女協会の孤児院にでも送っとけばなんとでもなるはず)

 

「……()()()()()()()()()()()()()

 

 

それはファンタズムバレットにとっての誓いの言葉。今は亡き戦友からの別れの言葉でもあった。

 

 

「カナタ……オレは」

 

「あのー……お風呂上がりました。次どうぞ…?」

 

「ッ!!あ、ああ……鏡とドライヤーはそこな。じゃあオレも入ってくる」

 

「はい!!大人しくしてます」

 

「充電器も好きに使っていいしテレビもつけていいからな。あとオレちょっと風呂長いから」

 

「ちなみにどれくらいです?」

 

「んー1時間半くらい」

 

 

いつのまにかかなり時間が経っていたらしい、吸っていたはずのタバコは吸い終わり無意識のうちに消してしまったようだ。時計を見ると20分以上経っており流石にぼうっとし過ぎたのかもしれないと思い始めた。

 

風呂上がりで火照った顔のブルーフレアに声をかけてファンタズムバレットも風呂に入る。変身状態なので体は清潔に保たれているが故に本来は入る必要もない。しかしやはり日本人、気分的にも毎日風呂に入りたい。だからこそ、すぐに入れるように一人暮らしをしていてもこまめに風呂掃除をしていたファンタズムバレットであった。

 

尚ファンタズムバレットは風呂中でも変身を解かない。

 

 

「やべっ、ねみぃ……」

 

 

その後、風呂で寝落ちて溺れかけるというトラブルがあったものの魔法少女の無駄な身体能力が呼吸量すら底上げしているらしく無事だった。

 

ブルーフレアに告げた程度の時間が経っていたので出ることにし、さっと体を拭いて魔法で衣装を纏い直すと、髪だけ乾かしていないという便利な状態になった。

 

 

「風呂上がったぞー……お?」

 

 

タオルを首にかけてリビングに行くと、ソファの上でうずくまって寝息を立てているブルーフレアの姿があった。

 

湯冷めさせないためにブルーフレアを用意した布団まで運びしっかりと毛布とかけてやると、意を決したようにファンタズムバレットは呟いた。

 

「ありゃ、寝てるか、あー……やっべ、オレ終わってるわ。〈オブザーバー(観測弾・夢見)〉」

 

 

ファンタズムバレットとして幻想を操るからこそ成せる技。《夢幻》名を持つからにはと、1次覚醒者のときに必死に練習した魔法の銃弾である。新人で知識不足だったころ、そもそもデーモンが眠るのか?という謎があった時代に必死に編み出した黒歴史の一つだ。

その効果は名前の通り他者の夢を覗き見るというもの。ファンタズムバレットでは他者を眠らせることはできないため他の魔法少女の力を借りなければいけないが、それが()()相手だと無類の効果を発揮する。

 

魔法弾を2発、見たい夢の主と自分に打ち込むことでその夢をリンクさせるのだ。デメリットとして自分も眠りに落ちてしまうが、大抵の人なら眠るような時間帯のため何も問題はない。近づいていないと効果が発揮されないので仕方なくファンタズムバレットはブルーフレアが寝ている隣に入り込んだ。

 

 

「ごめんなブルーフレア。もっとオレが善性の人間だったら何もなかったんだろうけど……おやすみ」

 

 

そしてファンタズムバレットはブルーフレアの頭を撫でながら眠りに落ちたのだった。

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