ヤニカス魔法少女   作:ヤニカス魔法少女って良いよね

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ノイジードール

 

 

 

「〈幻想弾・虚構(ファンタズムバレット)〉」

 

 

今日もまた1人の魔法少女が力を失う。下手人であるファンタズムバレットは元魔法少女となった少女に一瞥もくれることなく、タバコに火をつける。

 

 

「んじゃあ後処理よろー」

 

 

担いでいたスナイパーライフルを魔力に戻しながら、とことこと少女の元に向かう小人達に任せその場を去る。この小人はとある魔法少女の魔法で作られた、本人曰く『妖精』と言われる人形である。本当の殺しではなく魔法少女の力を消し去る魔法少女殺しの方では、魔力を奪った後残された者は魔法に関する記憶を失い気絶してしまう。なのでその後の処理を担う存在が必要だったため、こうして妖精達を借りているのだ。

 

 

「こりゃ好みじゃねえな。悪くねぇけど……うーん」

 

 

仕事終わりとは思えないほど軽いノリで新しく買ったタバコの評価をしているが微妙な様子。苦い顔をしながらビルを飛び降りると次の仕事を片付けに行った。

 

 

 

 

「「あっ」」

 

 

夕方、ファンタズムバレットの仕事が終わり、今日のキルスコアを振り返りながらエレベーターを待っていると開いたドアからブルーフレアが出てきた。

 

 

「よぉ、今から外出か?」

 

「こんばんはハズミさん。今日の買い出しを忘れてて……」

 

「んー丁度いいしオレも付き合うよ。子供だけにゃ危ないし」

 

 

ファンタズムバレットが連絡先を教えてからというものの、ブルーフレアは毎晩のように1日の練習成果を報告してくれるようになった事で仲直り、というほどではないが普通に会話するようになっていた。ファンタズムバレットは内心大人気なくて恥ずかしかったようだがそれ以上にブルーフレアが楽しそうに連絡してくるので気にしないことにしたのだった。

 

 

「ハズミさんの方が補導されそうな感じですよねー」

 

「はっ、オレがいつもどうやってタバコ買ってると思ってんだよ。〈幻想(ファンタズム)〉」

 

 

ファンタズムバレットはそう言って指を鳴らすと少し眩しい光が体を包み、スタイルのいい高身長の女性が現れた。

 

 

「え、えぇぇぇ!!ハズミさん!?もういっつも思いますけどなんでもありですよね!?」

 

「夢を見せるのも大人の役目ってね。まあ見た目だけで中身は変わってないんだけどな?なかなかイケてるだろ」

 

「はい!!」

 

(オレが25歳になったら〜、なんて妄想の具現化とか絶対に言えねー……だって25歳バージョンのオレとかオレですらわからねぇしこればっかりはもう仕方ない。公衆の面前で黒歴史晒してるってのが耐え難いけどタバコ買うためなら仕方ない!!)

 

 

自問自答で勝手に傷つきそうになっているがそこは大人、自分の中だけで抑えている。

 

スーパーについた2人はファンタズムバレットがカートを押しながら並んで歩いている。

 

 

「何買うんだ?」

 

「今日は夜ご飯が遅くなりそうなので簡単に作れる野菜炒めにしようかなって思ってます」

 

「料理できるのか、凄いな」

 

「お義母さんがあんまりしなかったので……」

 

「なるほどねぇ、オレもほとんどしないからなぁ。大抵はレトルトか冷凍か配達だし」

 

「えー、体に悪く……ないんですよね確か」

 

「そそ、なんたって魔法少女だからな」

 

 

会話をしながら自分が気になる商品を見ていると、突然携帯が鳴った。相手はどうやらソードマスターのようだ。

 

 

「わりぃ、電話してくる。入り口のあたりに居るよ」

 

「分かりました〜!!」

 

「もしもし?」

 

『やぁ、私だ』

 

 

仕事モードのソードマスターらしく、ファンタズムバレットも緊張感を持って用件を聞く。

 

 

『今日はご苦労様。相変わらず良い仕事をするね』

 

「用件は?」

 

『おや?なんか怒ってる?』

 

「人を待たせてるだけだ」

 

『あー……それはすまないね。実は第五席……ノイジードールがストライキを起こして……』

 

「…………は?」

 

 

第五席ノイジードール。ファンタズムバレットが仕事の後に世話になっている妖精達の作成者であり、ソードマスターとファンタズムバレットの同期だ。

 

 

『ま、待ってくれ。そんなにドスの効いた声を出さないで……』

 

「いや出るだろ。アイツが?ストライキ???誰に何されたんだ、言ってみろ。地の果てまで追っかけて2度と太陽拝めないようにしてやる」

 

『本当に待って!?違う違う!!いや……その『ハズミちゃんの声がするー、やっほー』……こら、声を出さないでくれ』

 

「あん?そこにいるのか?」

 

 

どうやらソードマスターマスターのすぐそばにいるらしい。スピーカーモードではないが声が聞こえてきた。

 

 

『そろそろ休ませないとバンシーを作るぞって脅されていてね……助けてくれないか?』

 

「うげっ、ガチじゃんノイジードール。はいはい、すぐ行きますよっと」

 

『ありがとう……うん、本当に助かる』

 

『なんだよー、2人してボクを迷惑な人みたいに』

 

「『実際迷惑かけてるだろう』」

 

 

ファンタズムバレットとソードマスターの声がハモった。ファンタズムバレットは電話を切るとブルーフレアの下に戻り、事情を伝えて先に別れたのだった。

 

 

「まあ大事ではなさそうだしたまには付き合ってやるか。〈跳躍弾(ジャンプ)〉」

 

 

魔法少女の姿に戻ったファンタズムバレットは、ため息をつきながらワープしてその場から消えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハズミちゃーん、おひさー」

 

「お前も元気そうで何よりだ」

 

 

円卓を囲んで3人が顔を合わせる。この3人が最後に揃ったのはいつか分からないほど前なので懐かしいという気分だろう。

 

 

「で、わざわざ呼びつけるようなことか」

 

「ファンタズムバレット、せっかくこうして集まれたのに」

 

「そうそう、ハズミちゃんったらそういうとこドライ〜」

 

「うぐ……悪かったよ。でもストライキとか言われたらそりゃ焦るだろ」

 

「ストライキはしてるよー、人形作り飽きちゃったー。それに最近仕事してばっかだしー」

 

「え」

 

 

ノイジードールの発言に耳を疑った。彼女の作る妖精のおかげでファンタズムバレットの仕事が捗っていたからだ。それが無くなるということは……

 

 

「オレに皺寄せがくるってことか……」

 

「ノイジードールの妖精に1番世話になってるのは君だからね。そういう意味でも、旧友との交流という意味でもファンタズムバレットが適任だと思ったんだ」

 

「3人で集まれて嬉しいよー。仕事の話は別だけどー」

 

 

むすーっと頬を膨らませているノイジードールだが、今は変身していないのでいい大人が子供っぽい仕草をしているだけだ。

 

 

「お前の世話になってる魔法少女がどれだけいると思ってんだ。それに休みは相応に貰ってるだろ、オレよりも。休めない事情でもあるのか?」

 

「………」

 

「パチンコだよ」

 

「は?」

 

「最近パチンコに目覚めたらしくてね。この子は高給取りだろう?使い道もないからと豪遊した結果……」

 

「はぁ…………終わってんな魔法少女」

 

「ヤニカスと酒カスには言われたくないよー」

 

「本当に終わってるなオレら!?」

 

 

どうやらソードマスターもやる事やってたらしい。ヤニカス、酒カス、パチンカス、魔法少女の中でも上に立つ存在達の趣味がこうであるとはまさか誰も思わないだろう。

 

 

「「「…………」」」

 

「一旦不毛な争いやめるか。誰も幸せにならねぇよこれ。あー、そんな雰囲気でもなくなってんだが、とりあえず話を纏めると、パチンカスになって時間がないからもっと休みをよこせと?」

 

「右手が疼く……あの脳汁をもう一度……」

 

「帰る」

 

「わー!!待って待って!!待ってよハズミぃ!!これ以上私のタスクを増やさないでよぉ!!お酒の量も増えちゃう!!」

 

「うるせぇ!?死ぬほどどうでもいいじゃねえか!!」

 

 

帰ると言って銃を足元に構え始めたファンタズムバレットを見てソードマスターが口調を崩して縋りついた。それに対してファンタズムバレットは振り解こうと頑張るが流石は近接最強だった元魔法少女、ソードマスターは全く離れない。

 

 

「チッ、仕方ねぇ。休み時間が欲しいんだよなぁノイジーガール?だったら選べや、1日の作業量を増やしてその分空いた日を休みにするのか、それとも1日の作業量を減らして毎日やって空き時間を休みにするのか」

 

「えー、仕事量減らせないの?」

 

「オレがテメェらの命令無視して気に食わない魔法少女全員殺し尽くしてきてやろうか?そうすれば妖精を使う魔法少女も減るだろうが」

 

「うげ、ハズミちゃんガチギレじゃん」

 

「落ち着きなさいよハズミ。出来るからって誇示するの、良くないわよ」

 

「…………」

 

 

ファンタズムバレットの怒りのボルテージがさらに上昇していく。この状況、一大事だと思って来てみればどうでもいいことを聞かされイラついてきた所に正論をぶつけられたのだ。

 

今現在、ファンタズムバレットの背中には無骨な見た目のガトリングがいつのまにか装備されていた。魔法はイメージが大事とは言ったが、いったい彼女は今どんなイメージをしているのだろうか。ソードマスターは生来の勘の良さでファンタズムバレットの怒りに気づき普通に震えていて聞けない。

 

 

「要は誰にも迷惑かけずノイジードールの仕事が減りゃいいんだろう?」

 

「え……まあーうん。そうだけどー」

 

「えっと……ハズミさん?一体何をするつもりで……?」

 

「おいノイジードール。1週間休めりゃ十分だな?」

 

「う、うん……ハズミちゃん?本当に何するのー?」

 

「1週間分、根絶やしにしてやるよ……デーモンの巣窟をよぉ!!」

 

「「え」」

 

「〈跳躍弾(ジャンプ)〉!!」

 

 

2人が止める間もなく怒りを滲ませた表情のファンタズムバレットの姿が掻き消える。背中のガトリングがもう一丁増えていた気がするが見間違いであって欲しい、これから何が起こるのかなんとなく想像ができた2人はやっちまったとお互いに顔を見合わせて笑うしかなかった。

 

 

「もしかして私たちー」

 

「デーモンなんか比じゃないとんでもない悪魔を世に放ってしまったんじゃ……」

 

 

 




日本でデーモンの反応がほぼ検知されなくなったことで一番被害を被ったのは、関係各所の魔法少女から問い合わせが多発した魔法少女協会……つまりソードマスターだった。

尚この間ノイジードールは、多忙を極めストレスでやつれたらしいソードマスターにパチンコに行かない様に監視の目を配置され純粋に休暇を堪能したらしい。

この騒動の下手人であるファンタズムバレットは魔力切れで数日寝込んだ。ブルーフレアがそれに気付き甲斐甲斐しく世話をしていたそうだがわざわざ語るほどのことではなく、実際にこの騒動で幸せになったのはノイジードールただ一人であるということで単体戦力によるデーモン蹂躙の良くない面を曝け出しただけという結論だ。


「なんというべきか……本当に不器用で頭が悪いな貴様は」

「うっせ。足りないオツムでできる最大限発揮してんだよこちとら」

「ふん、そんな貴様に良い知らせと良くない知らせの二つを持ってきてやったぞ」

「どっちでも良いから聞かせろ」

「良い知らせ、貴様の頑張りであちら側の男爵級デーモンが枯渇しかけている。悪い知らせ、急激に減ったデーモンの件について調査するため貴様らの言う七大罪の『嫉妬』がこちらで活動を始めるらしい」

「は?」

「頑張りすぎたなファンタズムバレット。過ぎたる力の弊害、先日吾輩が言った通りとなったようだ。貴様、そろそろ目をつけられてもおかしくないぞ?」
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