ヤンデレな モンストキャラに 愛されて 作:Jack11@ハーメルン
「おー!帰って来たのか〜?〇〇が会いに来てくれてワタツミお姉ちゃんは嬉しいぞ〜♪」
きめ細やかな手で頭をわしゃわしゃされて、昔を思い出して少し恥ずかしくなる。
「ちょっ、ワタツミ…!」
「えー、昔みたいに『ワタツミお姉ちゃん』って呼んでくれてもいんだよ〜」
「恥ずかしいんだから言わないでくれ…!」
俺はとある理由があって実家まで帰ってきたのだが…俺が玄関を開けた瞬間に「待ってたよ〜!」って勢いでワタツミが抱きついてきた。
家が近所にあり昔から良く遊んでいたが、就職のために上京して以来声しか聞いていなかった。この温かみを感じるのもいつぶりだろうか……いやいや、そんなこと考えちゃいけない。俺には…
「ん?〇〇、なに考えてるの?」
「あ〜、取り敢えず荷物置かせてくれ。腕がつらい」
「そっか、じゃあ2階に運んでおくねー!」
「はぁ…何時までも元気だな、アイツは…さて、お袋に挨拶しないと」
6歳のころに両親を船の事故で失った俺は叔父母に引き取られて生活していた。その祖父母も子供の遊びに付き合える歳ではなく、自然と比較的年齢が近かったワタツミとよく遊ぶようになっていた。
「久しぶり、お袋。元気だった?」
【ああ…〇〇かい?よく帰って来たねぇ…お腹空いてるだろ】
「大丈夫だって、俺も準備出来るからさ。腰痛いんだろ?」
【あぁ…でも、最近はワタツミちゃんがいてくれて本当に感謝してるよ…】
【あ、このお菓子、〇〇好きだったでしょ?買ってきたから、後でワタツミちゃんと一緒に食べなさいな。ワタツミちゃん、『〇〇が帰ってくるー!』って嬉しそうにしとったからねぇ…】
「お袋…」
ワタツミの世話焼きな部分が移ったのだろうか、それとも歳をとって柔らかくなったのか。前よりも柔らかい笑顔を浮かべるお袋につられて、俺も微笑を浮かべた。
ーーーーーー
〇〇との出会いはふとしたことだった。
私が海から上がってこの街の神社を目指そうとしたとき、昔とは街の構造が変化しており迷ってしまったことがあった。
「どーしたの?まいご?どこだっておれがつれてってあげる!」
自信満々な笑顔で手を引っ張ってくれた。
頭を捻りながら坂を登り、一緒に何段もある階段を歩いた。
「せっかくここにきたし、かみさまにおいのりしようかな」
【この子が、もうまいごになりませんように】
嬉しかった。こんな見ず知らずの人に声を掛けて、連れてきてくれて、神の前で他人の事を心からお願いできるのだ。
キュン、と。
心臓が跳ねた。これが恋だと気づくのに時間は掛からなかった。
でも。私の家は海で、あの子の家は陸。
初めは、彼の姿を水晶玉で覗くだけで良かった。彼の名前が〇〇だということ。ああ見えて酸っぱいものが大の苦手だということ。二重跳びが出来るようにたくさん裏で努力しているということ。
暫くして、見てるだけじゃ物足りなくなった。
もっと近場でみたい。あのときのように、熱を、声を、笑顔を、私に向けて欲しい。
もっと、〇〇が知りたい。
だから私は、魔女に頼んで周りの人の記憶を操作して貰った。【元々、ワタツミは〇〇と隣近所で仲が良いお姉ちゃんだった】。なんて都合のいい記憶なのだろう。鱗の1枚2枚、彼のためなら安いものだった。
そうやって、私は〇〇と仲の良かった近所のお姉ちゃんとして振る舞い始めた。
それを、誰も疑わなかった。
ーーーーーーーーーーーー
「あ“〜っ…長旅の疲れが取れる取れる…」
あれやこれやでワタツミが風呂を沸かしてくれたので、飛行機をに乗って疲れてた俺はそのまま風呂に入った。
……てかなんでワタツミって毎回温度調節完璧なんだろうな…
あ〜…極楽極楽…
「〇〇、外にタオルとか化粧水とか置いとくからねー」
「お、ありがとな」
…昔っからだが、ワタツミはお節介をよく焼くやつだった。
一緒に遊ぶときはペットボトルを一本多く持ってきたり、毎度の如く駄菓子を買ってくれたり、俺が迷子になったときににはひょっこりと現れて家まで連れてきてくれた。
……後でワタツミには色々感謝しないとなぁ。
あとでなにか欲しいものとか聞くか。
さて、身体洗って出るか…そしたら、夕飯の手伝いしないとな。
ーーーー
「〇〇、外にタオルとか化粧水とか置いとくからねー」
「お、ありがとな」
……えへへ。褒められちゃった。
ガラガラと脱衣所のドアを開けて、ついでに洗濯機の中身から下着を取り出して、何食わぬ顔でその場を後にーーーーー
しようとして、やめた。
まだ〇〇はこの家で過ごすはず。こんなことをしたら「お姉ちゃん」じゃなくなっちゃう。
だから、持っていきはしない。
す〜〜〜…っ、はぁ…………♡
(…〇〇の匂いだぁ…♡)
これで、十分。
だって、いつかお嫁さんにしてもらうんだもん。
そしたら、いつでもできるから。
ーーーーーー
「なぁワタツミ」
「〇〇?どうかした?」
「ほら、前から結構世話焼いてもらったしなにか俺からも出来ないかな〜って」
食後、部屋にゲームカセットを持ってきたタイミングでそんなことを聞いてくる。
ーー〇〇が欲しいと言ったら、〇〇はどう思うのかな。
ーーずっと一緒に暮らして、ずっとお世話させて欲しい。
「……〇〇、とか?」
「……あ〜〜…」
その言葉に、困ったような反応を浮かべる彼。
やってしまった。嫌われないよね?引かれないよね?
私の表情は?ちゃんとお姉ちゃんの顔になってるよね?
「あ、じゃあ、添い寝したいな!〇〇、大きくなってからさせてくれなくなったじゃん!」
必死に取り繕って、良さげなお願いをもう一つ。
「まー…それくらいならいいか。ただ変なことはするなよ?」
「…!やったー!」
なんとか受け入れられたそのお願いに、私は内心で胸を撫で下ろした。
「んじゃ、布団用意するか」
ーーーー
そのままゲームをやって、盛り上がる山場が過ぎた辺りのテンションに合わせて瞳が落ちてくる。
「もうそろそろ寝よっか、〇〇もこれ以上は辛そうだし」
「負けっぱなのは気に食わないけど、もうこんな時間だしな…じゃ、おやすみ。ワタツミ」
「…うん、おやすみ〇〇」
電気を消して、畳に敷いた布団に入って……横に〇〇がいるのに、眠れる訳がない。
この距離だからこそ、感じる吐息と熱。心臓の鼓動が、私にも伝わってきそうだ。
(う、ぅ…///心臓バクバクいってるの、バレてないよね!?)
チラッと横を向くと、〇〇の背中が見える。私より一回りも二回りもある身長。
(これ…眠れるかなぁ…?)
恥ずかしすぎて死んでしまいそう。嬉しすぎて壊れてしまいそう。
ふと。眼前になにかが見える。
〇〇の携帯。
(…そうだ、一回見てみようかな)
後ろにある現実から落ち着けるために思考をずらす。
電源ボタンを押して…………
「え」
見て、しまった。
ーーーーーーーーーーーー
「んぁ…あ、ワタツミ?どこいった?」
朝起きるとワタツミはいなかった。多分先に起きて下にいるか家に帰ったのだろう。
「お袋、ワタツミ見たか?」
【いや、見てないねぇ…多分、家の方にいるんじゃないかい?】
「そっか……なぁ、お袋」
(そろそろ、本題に入らないと)
そもそも、今回の帰省の目的はそれなのだ。
早めに済ませても特に影響はない。
下で朝ごはんを食べているお袋の前に座る。
「お袋、そういや実家に帰ってきた理由なんだけどさ」
【なにかあったのかい?】
「まぁ、顔見せなきゃってものあるんだけどさ。俺……会社の同期と結婚することになりました」
きっぱりと。そして礼儀正しく。
【あらあら!おめでたいわねー!】
「うん、そのことをスマホで連絡するのもあれだし。日程は決まってるから、リモートでも結婚式見てて欲しいなって」
【勿論よ〜、可愛い一人息子の結婚式だもの】
「…そっか、ありがとなお袋。後でワタツミにも伝えないと」
……涙が出そうだ。
お袋を安心させられたこと。これからの将来への不安が薄れたこと。
なにより、子供を持つ責任とその幸福があった。
ーーー
…涙が出そうになった。
〇〇が別の女と結婚しようとしていたことが。これからの将来〇〇ともっと親密になれなくなることが。
なにより、名前も知らない女と〇〇がまぐわって子を持つという事実が。
「…〇〇、結婚するの…?」
ーーもう、止められない。
「やだやだやだやだ!!!名前も知らない女よりワタツミお姉ちゃんの方が〇〇のこと良く知ってるもん!そんな女よりワタツミお姉ちゃんの方が〇〇を愛せるし、ずっと好きでいられるし、それに、それに……っ!」
涙が溢れる。
これは、私が『お姉ちゃん』に固執したせいだ。
あの魔女の約束通りに、私はどこまでいっても『仲の良いお姉ちゃん』だったのだ。
「…そうだ、ここに繋ぎ止めておけば…」
良くない思考が、漏れ出す。
『お姉ちゃん』なら、耐えていた。そんなんじゃ、〇〇は心から幸せにはならないって。
『お姉ちゃん』なら、涙を堪えて〇〇を送り出して、結婚式を祝うのが一番だって。
でも、もう私はお姉ちゃんじゃいられない。
だから
いいよね?
これは、〇〇が私の好意に気づいてくれなかったからだもん。
これは、〇〇とずっと一緒に居たいっていう神様のエゴだもん。
「…待っててね、〇〇」
ーーーーーー
「んお?ワタツミここにいたのか、家行ってもいなかったから心配したんだぞ?」
ーー〇〇は、本当に優しい。
「〇〇、結婚するんだってね、聞いたよ」
「お、そうか。それについてなんだけど……」
「言うの、遅くなっちゃったな。ねぇ〇〇」
ーー私も、貴方のことが大好きでした。
ーーごめんな、もう結婚する人がいるんだ。
わかり切ってた言葉を交わし合う。
それなのに、まだ私の心は燃えている。
不思議。かつて神がこんなにも人を愛したことが、一体何回あったのかな。
「…なぁ、俺の結婚式、来てくれるか?」
「…ふふっ、せっかくの門出だし、行きたいけど…」
ーー行かない、でも。行けない、でもない。
行かせない。
「ごめんね、〇〇。これじゃお姉ちゃん失格かな?」
〇〇を連れて海に入っていく。
〇〇は私を止めようとするけど、もう遅い。
陸で苦しそうに呼吸をしている〇〇を見て、胸が痛くなった。
海中で呼吸が出来ることに驚いている〇〇を見て、嬉しさを全身で表現する。
ーーーー〇〇。
海の底で。
お姉ちゃんと一緒に。
暮らさない?
ずーーーーーーっと。
ーーーーーー
おはよう、〇〇。
はら、ご飯だよ。私が食べさせてあげる。
……悲しくても、ご飯は食べないと生きていけないよ?
ーー先日、結婚詐欺を行っていたとして、□□会社の女性が逮捕されました。
ほら、お姉ちゃんがいてくれてよかったよね?
あのままだったら〇〇、詐欺に合ってたんだよ?
ほら、泣かないの。抱きついてあげるから。暖かい?なら良かった。
ねぇ、〇〇。
ワタツミお姉ちゃんがいればいいよね?そうじゃなくても、お姉ちゃんが〇〇の女の代わりにいっぱい…それこそ、なんでもシてあげるよ?
そっか、お姉ちゃんを選んでくれるんだ。ありがとう、〇〇。
魔女にお願いをした。
〇〇の彼女についての記憶を【結婚詐欺をした】と世間に知らしめるために。
魔女は、どこか恐ろしいものを見るような目でこちらを見て、ついには対価を要求しなかった。
(〇〇には、絶対教えてあげないけど)
ーーだって、今の〇〇には私が必要で。
ーー今のお姉ちゃんには〇〇が必要だから。
それで、いいの。
pixivでも投稿してあるのでリスエスト作品とか気になったひとはpixivもチェックだ!