ヤンデレな モンストキャラに 愛されて   作:Jack11@ハーメルン

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…持ってないと口調がわかんないよね。


写真部のメモリー先輩は貴方と恋人になりたい。

「おはようございます、メモリー先輩」

「おはよう、〇〇」

 

2人しかいない教室で彼女は今日もカメラのレンズを拭いていた。

空き教室の棚には次の時期に育てる花の苗が、光を浴びて芽を出そうと躍起になっている。

 

「じゃあ、今日も活動を始めましょう」

 

 

 

ーーメモリー先輩。僕が来るまで1人しかいなかった『写真部』で活動している3年生。

 

桜の咲いた入学式で、皆が体育館から出て教室に戻っていく時、僕はきちんと手入れのされたデイジーが咲いているのを見た。

 

「一体誰がこんなに綺麗に手入れをしているのだろう」

入学式も終わってすぐ。授業もなく、生徒は同じ学校に来た友達と帰るなかで僕は疑問を抱えたまま家に帰らずに校内をぶらついていた。そもそも親が共働きで家にいないのだから、学校の方が暇を潰せる。

 

 

ふと、朝見た花壇が目に入る。色とりどりのデイジーが太陽を浴びて踊っている。雫に濡れた花弁は嬉しそうに葉を揺らした。

 

「…貴方、お花に興味があるの?」

「わっ!?だ、誰ですかっ!?」

 

気配すらなかった背中から突然声がして、驚いた僕はバッと背中を振り向いた。

 

 

 

日本人離れした紫色の髪と、身体に掛けたカメラ。手に持ったジョウロには、水が入ったいた。

 

「えっと…貴女は…?」

「それより、お花に水をあげたいの。話なら後で聞く」

「ご、ごめんなさい…」

 

僕は花壇から少し離れてその様子を見る。少し穏やかな表情になった彼女は、何事もなかったように水やりを再開した。

 

 

「それで、名前は?」

ジョウロを横に置いた彼女が僕の横に座る。その礼儀正しさに、一瞬息を呑んだ。

「あ、1年4組の〇〇と言います…えと、それで…」

「……メモリー」

「メモリー、先輩?これ、先輩が1人で育てたんですか?」

「…」

 

コクリ、と。彼女は頷いていた。

 

…正直、凄い努力だと思った。こんなに花へと熱意を込められることが、純粋に羨ましかった。

「…そうなんですね。僕、凄い綺麗だと思いますよ」

「…ありがと」

少し嬉しそうに、彼女は微笑んだように見えた。

「にしても、他にお世話する園芸部員とかっていないんですか?」

 

それにしても、こんなに花が咲いているのだから1人では大変なのではないだろうか。

「…?私、園芸部じゃない。写真部で、この花壇を借りてるだけ」

「写真部?」

「そう。私が育てたお花を撮るためだけの部活」

 

 

「…あの。僕も写真撮っていいですか?」

「…好きにして」

 

集中してカメラのファインダーを覗く彼女を見て、僕もスマホのカメラを構える。後で親父にカメラを譲ってもらえるか聞いてみてもいいかもしれない。

 

 

 

 

パシャリと、シャッター音が鳴った。

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

あの日は、いつも通りお花に水をあげていた。

 

……私が幼い時に死んでいった父親は、お花の大好きな人だったと聞いた。遺伝だろうか、私もそう言うものが昔から好きだった。

 

道端に咲く名も知らぬ花の健気さ。秋風に揺られる金木犀の美しさと秋の香り。名の通り、高貴で白い花弁を付けたエーデルワイズの純真さ。

 

そうやって見たお花を、私はカメラで捉えていった。祖父から貰ったカメラを、大事そうに持ち歩いていた。

 

【……このカメラで、人を撮ってはいけない】

このカメラを見つけた時、そう何度も何度も繰り返し教えられた。一応言いつけ通りにはしているが、最近になってようやく何故だろうと違和感を覚えた。どうして、人だけなのか。それだけが私には分からなかった。

 

だから、このカメラにはお花の写真だけが収められている。

 

「…綺麗」

私が植えたデイジーが、水をもらって元気になっていく。葉面についた水滴が日光反射しキラキラと瞬いた。

 

 

それをしゃがんで見ている人がいる。

 

「…貴方、お花に興味があるの?」

「わっ!?だ、誰ですかっ!?」

 

そこに、彼がいた。

 

ーーーーーー

 

 

「それで、今度の3連休なんですけど…こことかはどうです?」

部活動…基本的にはメモリー先輩が賞などを取ってるおかげなのか、この手の部活にしては珍しく部費がある。

 

その部費をつかって、僕たちは少し遠い所まで写真を撮りに行く事にしていた。

「…あ、ここ」

「ん?メモリー先輩が興味を持つなんて珍しいですね」

 

それぞれの気になった景色を幾つか抜き出していた時、メモリー先輩が指さしたマップをみる。

 

「ここ…ですか?」

そこは、特に変哲もない街の一角。しかし、最近は再開発も進んでいるのか観光地やオシャレカフェなどでも有名な地域だった。実際、観光マップでもそのあたりが紹介されている。

 

「うん。ここ、お祖父ちゃんが住んでた。あと、綺麗な花畑が近くにある」

「え、そうなんですか?もしかして、隠れ穴場スポット、ってやつですかね」

 

「多分、そう…ねえ〇〇。私、ここ行きたい」

「もちろん、メモリー先輩が率先してこういうの決めたの初めてですし、僕も興味があります」

 

こうして、僕達は旅行の計画を立てる事になったのだが……

 

「え、ほんとですか?流石にその…アレといいますか…」

「別に、安い民泊を借りるよりはいいと思う」

「そうですけど…!だからと言ってメモリー先輩の実家でお泊まりって…!!」

 

なんと、旅費の関係でメモリー先輩のご実家にお邪魔することになった。

 

「私のお家からなら花畑も近いし、少し調べたいこともある」

「…はあ…まぁいいですけど…部屋は別にして下さいね」

 

久しぶりに意欲を見せてくれたのもあって、僕は仕方なくそれを承諾した。

 

 

ーーーーーーー

 

 

最初は、『お花を好きと言ってくれる人』くらいの認識だった。でも、私のやることを手伝ってくれて、私の花を褒めてくれて、私に優しくしてくれて、私と一緒に写真を撮るのにも付き合ってくれた。

そして、私が個人的に観に行きたい景色にも一緒に着いてきてくれた。

 

 

【ねえねえお嬢ちゃん、1人?折角ならさ〜一緒に遊ばない?】

「別に…」

【そんな事言わずにさ〜、別に変な事はしないから安心してよ〜】

【そうそう!お嬢ちゃんは心配しなくていいって】

私が少し早く駅に着いて待っていると、私は所謂ナンパに巻き込まれた。水を買いに少し離れてしまったからいつ〇〇が来るかも分からないので、早く向かわなければいけない。

 

「行かなきゃいけないとこがあるんです…」

【え〜?じゃあ俺たちがそこまで連れてってあげるよ】

【少し遠いだろうし、車用意するよ】

「やめてください…!」

 

少し、語彙を強めに断る。

【いいって、人の好意の無下にするのは…】

 

怖い。気持ちわるい。助けて。

 

「ごめん、離れてもらえますか?僕達、急いでるんです」

「え…」

不意に、引っ張られる手。横で、〇〇が私の手を握ってくれていた。

 

暖かい。落ち着く。気持ち良い。

 

【あ?誰ですか?】

「それはこちらのセリフです、で。僕ですか?」

 

 

「メモリーの彼氏です」

「!?」

 

今、彼はなんて言った?

 

彼氏、彼氏、彼氏。

 

心の中が、熱を持って、満たされていく。

【っち、あ〜そうでしたか〜ご迷惑おかけしました〜】

【…じゃあ、俺達はこれで…】

 

 

 

その言葉を聞くと、不機嫌そうに男達は去っていった。

彼に引っ張られるようにしてその場を立ち去る。少し奥まったところで彼は足を止めた。

「えっと…〇〇?」

「あ〜…遅かったんで何かあったのかと見に来たらこうなってたんです。あと、急に彼氏だとか言っちゃってごめんなさい」

「…ううん、気にしてない」

 

 

嬉しい。これが、恋だろうか。

こんなにも、胸がポカポカして、暖かくなるものなのだろうか。

 

 

電車に乗って、長い道のりを揺られていく。

 

(このカメラ…お祖父ちゃんのお家なら、可能性が…)

このカメラで人を撮ってはいけない理由が知りたくて、もしかしたら蔵に残ってるかもしれないと思って、私はここに行こうと言っただけだ。なのに、〇〇はそれを受け入れてくれた。

 

 

(〇〇は、私の事、どう思ってるのかな)

 

そんな考えが電車の揺れに合わせて沈んでは浮かんでいた。

 

ーーーーーーーーー

 

 

「凄い綺麗ですね…これが先輩の言っていた花畑ですか?」

「…うん」

…温室庭園。季節問わず様々な花が咲くその場所には、この時期に咲くはずのないエーデルワイスが咲き誇っていた。

 

そこに行くまでの道もツツジの咲いた低木で彩られ、足から伝わる石畳の音がこの空間全体の調和とコントラストを司って、この部屋全体が一体感のある空間になっていた。

 

「…僕も写真を撮らないと」

 

持ってきたカメラを調節して、様々な角度から、様々な被写体の表情を読み解くように、シャターを切る。

 

パシャリ。

 

パシャリ。

 

 

一枚一枚、丁寧に気持ちを込めて。

メモリー先輩をチラッと見ると、少し笑顔を浮かべているように見えた。

 

「どうですか?」

「…うん。やっぱり、良い景色だな」

「…ですね」

 

咲いたエーデルワイスが小さく揺れた。花の香りが肺の中に満たされていって、心が落ち着く。やはり、自然はいいものだ。

 

 

「ねえ、〇〇、写真、撮ってもいいかな?」

「…?いいですよ」

別のカメラを構えて先輩が僕の方を向く。先輩の笑顔とファインダーが僕を捉える。

 

「はい、ちーず」

 

パシャリ。

 

「…どう?」

「…やっぱり、先輩は凄いですね。僕ももっと写真の練習しないと」

「…そうだ、もう少し自然なのも撮りたい」

 

屈んで花を愛でている写真。その場で立って歩いている写真。ベンチに座って遠くに咲く花を眺めている写真。被写体としていろんな写真を撮ってもらった。

「…凄いですね…あの、僕も先輩のこと、撮ってもいいですか?」

「…構わないけど」

 

 

先輩が、エーデルワイスを背景に立つ。

「…ピース」

「ふふふ、先輩がやると面白いですね。はい、チーズ!」

 

パシャリ。

 

 

写真の中の彼女は、小さく微笑みを浮かべていた。

 

ーーーー

 

 

「うわ…ここ、すげえ…」

簡単な観光や夕食の後、僕は先輩に連れられてメモリー先輩の実家に荷物を置きにきた、が……実家の大きさに、僕は言葉を失った。

 

先輩の叔父は旅館の経営者なのだろう。壁には花の写真が額縁に入れられ丁寧に飾られていて、庭に植えられた庭園は現代のデザインを取り入れながら日本風の景色を保っている。ロビーだけ見ても、ここの経営者のこだわりが見て取れた。

 

「…お部屋、チェックインできたから行こう」

「うえっ、あ、はい!」

 

呼ばれた声に過剰に反応しながら、僕は先輩の後ろを歩いた。

 

 

ーー

 

「……ここだ」

皆が寝静まった夜に、私は外にある蔵の鍵を持ち出して、開けた。埃臭さが鼻に付くけど、それは気にしてられない。懐中電灯をつけるとその中には物が雑多に置かれていることが分かった。

 

元々旅館に飾ってあったと思われる鏡に私の寝巻き姿が映る。使われなくなったかびんは、現代では合わないセンスの模様がつけられていた。その中に、一冊の本がある。

 

「…さて、この効果?とかって残ってるのかな?」

表紙に型番だけが書いてあるアルバム。その型番は、私の持っていたカメラの型番と一致していた。

 

(…え?)

そこに並ぶのは、沢山の悲しみが写真という形で保存されていた。悲観的な感情を切り取って、沢山の人の顔と感情がこのアルバムに保管していた。

 

 

そして、最後の一枚は。

 

私のお父さんが、嬉しそうに生まれた私を抱いている写真。

 

 

(…この、カメラは)

私は、理解してしまった。

このカメラは、人の記憶を写真に移し替えるものなのだ。

 

ーーーーーーーー

 

「…遅い」

あの後、私は何も言わずに蔵を出て、体調不良と嘘をついてまで帰って来てしまった。

そして、私はカメラを持って帰ってきてしまった。あれから触るのに躊躇いが出来たが、それでも花を撮ることは辞めなかった。

 

 

 

そして今日、私はそれが安置された部室で〇〇のことを待っていた。

植え替えた鉢に花が咲いた。あの花壇にも植え替えた花が咲き誇っていた。それなのに、心が踊らない。きっと、これは私が彼に惚れたからなのだろうか。

 

 

「…遅れてすいません」

「…ようやく来た」

 

 

 

…ふんわりと漂う、彼の匂い。この匂いに囚われてから、どれだけ経っただろうか。

 

ーーーそこに混ざる、しかもハッキリと分かるほどに濃い誰かの匂い。

 

 

最悪の思考が頭をよぎる。

…嘘だ。

そんなわけ、ない。

 

…〇〇に、恋人が、なんて。

 

「それで、何で遅れたの?」

「あ〜…ちょっと恋人に絡まれて…」

 

嫌だ。

嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。

 

心の中で、頭の中で、〇〇の言葉を拒否しそうになる。そんなのありえないと脳内で自己完結しそうになる。

 

なんで、なんで。

私も〇〇のことが好きだったのに。私は〇〇と同じ趣味を持ってて、それで話もして、〇〇だって楽しそうにしてたのに。〇〇だって、私といて楽しかった、はず、なの、に……

 

怖かった。本当に〇〇は私といて楽しかったか?本当に〇〇は私がいて迷惑だったのか?〇〇に、嫌な思いをさせていたのか?

 

 

「私といて、楽しかった?」

「…え!突然どうし「…答えて」…楽しかったですよ。先輩と写真の話をするのは楽しかったですし」

「そう…なら」

 

もっと私といて欲しい。もっと私とお話しして欲しい。もっと私を愛して欲しい。もっと私と…

この欲望にもっと早く気づけていたら。このカメラに移し替えれたらどれだけ楽だろうか。

 

いつの間にか、手にはカメラが握られていた。

記憶を、移し替える。そうすれば、〇〇から彼女の記憶が、消える。

このシャッターを押せば、きっと。でも、それをしたら、ダメだ。

 

「活動ですか?じゃあ、カメラを用意してきます」

 

「…そうだ。彼女さんに写真は見せたの?」

 

ーーふと。最後の確認とでも言うように言葉が出た。

 

「はい!彼女にも褒めてもらえて、今度旅行とかにも行きたいねって話をしまして。本当に先輩のおかげです」

 

ーーああ、私は。〇〇と秘密さえも作れないのか。

 

 

「…ごめん」

 

 

パシャリ。

 

パシャリ。

 

パシャリ。

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

「…大丈夫?ぼ〜っとしてたけど、私のこと分かる?」

教室にいる彼に、声を掛ける。

 

「そう、貴方の大好きな恋人のメモリー」

…ごめん、と。心の中で呟く。

貴方が悪いんだよ、と。責任転嫁なのは知っていて、そう思ってしまう。

 

「その様子だと、まだちゃんと理解できてない…かな」

どんな顔でそれを言えばいいのかわからないなりに、そう言った。

 

「取り敢えず、私のお家に戻りましょ」

手を引いて、歩く。足取りは重いどころか、羽のように軽くて。

 

ーーもう、戻れないところまで堕ちていることを知った。

 

「……後で、あの子の写真も」

 

ーーここまで来たら、底まで堕ちていくしかないことも同時に理解した。

 

 

「ねえ、〇〇。ちょっと、いい?」

 

「これからも、私と一緒にいてくれる?」

 

「そっか。ありがと」

 

 

ふと、目に入った人がいる。彼女は、こちらに走ってくる。

【〇〇、私も撮影付いていっていいかな?】

「お、××。メモリー先輩もいいですよね?」

「…別に、着いてきてもいい」

 

前に出た2人を、背中から見る。

「…」

 

 

ーーーそして、私はカメラを構えた。

 

 

 

 

パシャリ。

 

 

ーー貴女に恨みはないの。

 

でも。

 

〇〇との生活を邪魔するかもしれないから。

 

 

………自分勝手でごめんなさい。

 

 

 

 

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