ヤンデレな モンストキャラに 愛されて 作:Jack11@ハーメルン
この子すごい可愛い。いつも禁忌27でお世話になってます。
「〇〇!今日も遊びましょ♪」
「ポラリス…また怖い人達に怒られるよ?」
大きなお屋敷の柵の隙間からポラリスが顔を覗かせる。薄緑の三つ編みが元気そうに揺れた。
「いいわよ!だって〇〇のお話は面白いもの!今日はどんなお話をしてくれるのかしら?」
「そう言ってくれると嬉しいな…今日は、お父さんが旅した北の国で出会ったとある人のお話なんだけど…」
ポラリスが造った柵の穴から僕は引っ張られるように彼女の家の中に入っていった。
この街の巫者の一族であるポラリスは、大きな柵の奥から目を輝かせて僕のお話を聞いてくれる。普段はボディーガードが護衛についているそうだが、僕に会う時は内緒で抜け出しているらしい。
最近は家の中に入れてくれるようになったので、ボディーガードの皆さんとも顔を合わせることが増えた。みんな身長も身体も大きいけど、お菓子をくれたりで案外優しかった。
「そういえば…最近きたあの人は本当に大丈夫なの?」
「ええ!だってちゃんと伝えてきたもの!」
「そっか、それでね…」
僕のお父さんはこの国を旅した旅人だ。昔から僕はそういう話を聞いてきたし、幼い頃に旅についていったこともあった。
最近お父さんはこの街に拠点を置きながら旅資金を稼いでいる。僕もそのお手伝いをしたいのだが、お父さんが許してくれなかった。
「…そのお姉さんが凄い楽器の名人でね、フルートを凄い上手に吹いたんだって」
「この世界はそんなに広いのね…私も世界を旅しながら歩いてみたいわ!」
「僕も自分で旅をしてみたいな…ほら見てよ、世界にはこんな景色があるんだって」
本屋で見つけた写真集を床に広げる。北の国で撮られたオーロラが夜空に揺れている。ライトグリーン色の透明なヴェールがたなびく光景は、ポラリスの三つ編みが揺れる姿に似ていた。
「綺麗…」
「僕もお父さんと一緒に見てみたいなぁ」
「あら?その時は私も連れてってくれるわよね?」
キラキラと目を輝かせながら、僕を見てくる。
「そうだなぁ…ボディーガードの人達にも聞かないと…ってもうこんな時間!?そろそろお父さんが帰ってきちゃう!」
「そう…じゃあ、お見送りするわ!こっちよ!」
差し掛かった夕日を背にして、僕はポラリスに手を引かれながら御屋敷の階段を降りていった。
ーーーー
夕暮れ。少し冷たい風が路地を抜けていく。
(お父さんに心配かけてるかなぁ…)
……正直、もう少しここに滞在していたい。
僕が生まれてから暫くは街に滞在していたらしいが、中学生くらいになったときまた旅をしたくなったらしい。昔からお父さんの旅の話を聞くのは好きだったし、ついていかないという選択肢はなかった。
景色を目に捉えて、色んな人達と交流して、いい時間を過ごせたのは確かだ。でも、ポラリスほどに仲の良くなった人達はいなかった。
つまるところ、初めて出来た友人と離れ離れになりたくないだけなのだ。
(お父さんのお店は…ここらへん、かな?)
その瞬間、肩に冷たい感触がした。
ーーーー
私は『ラゴ』から世界を守らなくちゃいけない。それは、私の一族にしかできないことらしい。
そんな重要な役目があって、それに反対する人からは命を狙われて。護衛がいくらいても、私が外に出ることはあまりなかった。
「…ねぇ、そこのあなた、私に面白いお話をしてくれない?」
たから、柵の向こうに居る誰かさんに声を掛けた。きっと娘の子なら面白いお話をしてくれるだろう。
「えっ…ぼ、僕?」
「そうよ。だってずっとこの御屋敷の中にいるんだもの、外の世界のお話が聞きたいわ!」
「…それじゃ、これは僕がお父さんとここに来るまでに体験したことなんだけど…」
彼のしてくれたお話は、私にとって未知の世界の話だった。
美しい花園で見た小さな羽の影。旅の途中で立ち寄った雪国の温泉。氷で作られた天然の芸術。
心躍る旅路に、私は耳を傾けていた。この子のお話ならもっと聞いていたいし、もっと彼と仲良くなりたいし、それに…。
一緒に旅をして、彼の隣でその景色を見ることができるならどれだけ幸せなのだろう。
それを想像するだけで、胸が暖かくなる。誰かが彼の隣にいるのを想像すると、胸が苦しくなる。
家の本で読んだことがある。恋。きっと、私は彼に恋してる。はやくこの思いを伝えなきゃ。誰かに、〇〇を…盗られる前に。
なのに。今日、彼は顔を見せなかった。
…急に彼が来なくなった。嫌な予感がして、普段は読まないはずの新聞をテーブルから抜き取った。
「…え、そ…それって、どういうことよ!?」
新聞の一面を飾る大きな見出し。
【高校生が行方不明。『ラゴ』の新たな被害者か?】
見たことある顔。聞いたことのある名前。そして、『ラゴ』の文字。
私が彼と仲良くしていたから、彼を巻き込んでしまった。私のせいで、彼が死んでしまう。どうしよう、胸が痛い。なにもやる気がおきない。私への怒りしか、ない。
「バカバカバカバカバカ……!」
「なんで、なんで〇〇が狙われなきゃいけないの!?だって、だって…!〇〇は私にお話をしてくれてただけじゃない!」
憎い。
私が。彼を刺した狂信者達が。全てが。
そうだ。
こんな組織、なくたって…誰も困らないわ。
ーーーー
「…〇〇っ!」
奴らの組織の地下室に、見慣れた影と顔。私は手に持っていた銃を投げ捨てて彼を抱きしめた。
「わっ!?ぽ、ポラリス!?なんでここに!?」
「もう大丈夫よ…だって、狂信者達は全員私がやっつけたから」
「…!?」
驚いた表情。
なんで、素直に喜んでくれないの。私は、貴方のためにやったのに。この後すっごく怒られるってわかってて、貴方のために動いたのに。
また、なにか、やらかしてしまったのだろうか。
「…お願い、私とずっと一緒にいて、もう、巻き込ませないから、お願い…捨てないでください隣にいさせてください離れないでください私の出来ることならなんでもするかれ私に色んなお話を聞かせてください」
「お、落ち着いてポラリス!」
暖かい。頭を、彼が撫でてくれてる。私のせいで巻き込んでしまったから、嬉しくなる権利なんてないはすわなのに。嬉しくなってしまう。
「取り敢えず、ポラリスが無事でよかった…ほら、一緒に怒られにいこっか」
彼は、笑いながら立ち上がろうとする。
「………なんで?なんで彼も怒られなきゃいけないの?怒られるのは私一人で十分なのに」
「…怒ってくれるのは、それだけ人を気にかけてくれるっていう裏返しなんだよ…まぁ、そうじゃないときだってあるけど」
「…そうだったのね」
…とうしても、それには納得がいかなかった。
ーーーー
自室で、彼のことを思いながら祈る。これ以上彼に災いが起こらないように。もう一度、彼と仲良くなれるように。そして、この恋が成就するように。
彼を守るにはどうすればいいのか。きっと、ボディーガードでも足りないくらい。
それに、彼との時間をつくるにはどうすればいいのか。一生、隣にいるために。
…彼が旅に出てしまえば、それまで。
……なら、旅に出せないようにしちゃえばいい。
「…そっか、彼がこうやって街をぶらつくからいけないのね。私の近くにいれば時間だって無限に作れるし…ボディーガードで…最悪、私の手で守れるじゃない♪」
「早速、手続きをしなきゃ」
ーーーーー
痛い。痛い。足の感覚がない。横で、誰かの声と熱を感じる。手のひらを、握られているのだろうか。
「…ほら、起きなさい…〇〇、今、救急車を呼んだわよ」
「…ポラ…リス?」
薄緑の前髪が、額に張り付いている。凄く汗をあいてるみたいだった。
「ええ、眼の前で衝突事故が起こってね…にしても、貴方の意識があるだけでも幸運よ」
「…そっ、か……」
目がショボショボする。良く分からないが、どこからか血と、燃えるガソリンの匂いがした。
「ほら…もうすぐ救急車くるんだから、意識は失わないでちょうだい」
「分かってる…って」
その後、足は使えなくなった。火傷と車の破片が突き刺さって神経が切れたらしい。お父さんは即死だった。身寄りはなくなったが、ポラリスが僕を引き取ってくれるそうだ。
「ありがとう、ポラリス。迷惑掛けちゃったかな」
「全然そんなことないわ。むしろ、なんでも頼ってくれていいわよ…私にできることなら、なんでも」
僕を元気づけようと、そう言ってくれた。
車椅子がカタカタと音を立てる。自分での操作は慣れてきたが、それでも恋人が車椅子を押してくれる時間が、僕は好きだ。
「…そうだ、今度…街の外の景色を見に行きましょ!あの時話してくれた景色を、〇〇とみたいわ!」
「だね…だとしたら、カメラ買っていきたいな」
この幸せな時間が、ずっと続けばいいのに。
ーー
これで、これで、いい。
もう一生、〇〇は私から離れられない。ずっと、ず〜〜〜〜っと、一緒。
嬉しい。心の中が熱くて、暖かくて、幸せ。
恋人にもなってくれた。私の全てを愛して、愛して、愛してちょうだい。
でも、そうだ。一つ、忘れてたことがあったわね。
彼のお父さんに、巻き込んじゃってごめんなさいと言わなくちゃ。