TRANSFORMERS Blue_Archive   作:H2O(hojo)

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アストロトレインとかいうシュポガキお気に入りのオモチャ


非常事態

「…あちらはどのように…」

 

「戒厳令が…しかし、連邦生徒会は…」

 

「…ヴァルキューレは…」

 

「ジェネラルからの連絡…あとは…」

 

“・・・”

 

カイザーに捕まり昏睡してしまった先生は、ようやく目を覚まし始める。周りにいるカイザー兵は、何やら計画を進めているようで口々に今後にことを話し合っていた。

 

(シッテムの箱が見当たらない…。持っていかれてしまったのだろうか)

 

「…まだ待機中だ。あの箱、ハッキングどころか電源すら入らないと聞いた。本社のデータセンターが接続を試みたところ、8社がシャットダウンしたらしい。残された手段は、あの先生だけか」

 

パァン!!パァン!!

 

「…あ?今、銃声が聞こえなかったか?」

 

「銃声?」

 

先生は手元を探すと、シッテムの箱が無いことに気付く。彼の見張りの話ではシッテムの箱はカイザーによって解析しようとしているようだが、電源すら入らず8社がシャットダウンしたとのことである。彼がそんなことを話していると、どこからともなく銃声が聞こえ始める。

 

パァン!!パァン!!

 

「おい、上だ!」

 

ダッダッダッダッダッダッ…!!パァン!!パァン!!

 

「はぁ…はぁ…。ご無事ですか?先生」

 

“(この声は…)”

 

「ご無事で何よりです。ここを見つけるのにかなり苦労しましたが…謎の手紙の手がかりで何とか辿りつけました」

 

“カンナ…!?”

 

見張り役は銃声が上から聞こえることに気付くと、その場を離れて上の階へと向かう。そしてその隙を突いて先生が拘束されている場に現れたのは、傷だらけになったカンナであった。

 

「…ああ。私のような三流悪党のことを、覚えていてくださりましたか。今開けますので少々お待ちを…ゴホッ、ゴホッ。…くっ」

 

“カンナ、その傷は…”

 

「これは…大したものではありません、お気になさらず」

 

ガラガラガラ…!!

 

「はぁ、ふぅ…さあ、お手をどうぞ」

 

“ありがとう”

 

カンナは先生が自分の名前を覚えていたことに驚き、彼の入っている檻を開けようとする。先生はカンナの傷つきように驚きつつも、彼女に手を引かれ檻を出るのであった。

 

「聞きたいことは色々あるかと思いますが、まずはここから出るのが最優先です。私の後に続いてください」

 

タッタッタッタッ…

 

 

 

 

 

ヴァルキューレ第3分校・1階

 

「なっ、何だ!?」 「ぐはっ!?」

 

パァン!!パァン!!パァン!!

 

「こいつらは、ヴァルキューレの生徒に変装したPMC兵です…ゴホッ、ゴホッ」

 

“そうだね。私もさっき知ったところ…ここは…?”

 

「D.U.に位置した、ヴァルキューレ第3分校です。予算の都合で新入生合宿に使われていた建物ですが…。いつの間にか、カイザーの手に渡っていたようです」

 

“カイザー”

 

檻の中を出た先生はカンナと共にこの場を脱出しようと試みる。先生が移送されたのは元々ヴァルキューレが新入生合宿のために使っていた建物であり、それがいつの間にかカイザーの手に渡ってしまっていたようである。

 

「おそらく、ヴァルキューレ内部に協力者がいるのでしょう。カイザーがどこまでヴァルキューレに魔の手を伸ばしているのか、私にも分かりかねますが…原因の一端は、私のような堕落した警察が居たからでもありましょう」

 

“…カンナ”

 

ピッ!!

 

「…信号を送ったので、あとは裏門に向かうだけです。封鎖されたD.U.から脱出できるルートをご用意しました」

 

“封鎖…脱出…?一体何があったの?”

 

「…行きましょう」

 

カンナはカイザーがここにいる理由に自分と同じように、カイザーと裏で繋がっている存在するだろうと自嘲気味に推測する。カンナは封鎖されたD.U.から脱出するルートを用意したと言って、先生を連れて裏門へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

ヴァルキューレ第3分校・某所

 

「これは…ここで落ち合う予定でしたが、もう警備が強化されていますね…」

 

「誰だ!!」 「こっちだ、撃て!!」

 

ズダダダダダダダダダダダ!!

 

「くっ…!先生、危険です!」

 

ガサッ!!ズダダダダダダダ!!

 

“カンナ!!”

 

カンナと先生が裏門の近くに来ると、カイザーPMC兵が何人かうろついた。2人は彼らに見つかって発砲されるが、カンナが先生を庇ったことにより事なき得た。

 

ズダダダダダダダダダダダ!!

 

「ぐはっ!?」 「援軍が、まだ…いたとは…」

 

バタン!!

 

「先生!大丈夫ですか!?」

 

「うう…らしくない事しちゃった、どうしてこんなことに…」

 

“キリノ!フブキ!!生活安全局、来てくれたんだ!”

 

先生とカンナが絶体絶命のピンチに陥るなか、ちょうどそのタイミングでキリノとフブキが現れカイザーPMC兵を倒す。生活安全局の援軍を見た先生は、嬉しそうに喜ぶのであった。

 

「はぁ…はぁ…なんとか、間に合ったか。バリケードを手配して正解だったな」

 

「み、見ました!?本官の完璧でパーフェクトな射撃…あれ、カンナ公安局長!?」

 

「あちゃー、だいぶ痛そうだね…大丈夫?」

 

「気にするな。お前らの荷物になるつもりは無い。退路でも確保しておけ」

 

フブキとキリノがこの場に現れたのを見て、カンナは安堵する。生活安全局の2人はカンナが傷だらけのことに気付き心配するが、2人は気にするなと言って退路を確保するよう命令した。

 

「分かりました!では先生、本官とフブキの後に続いてください!」

 

「敵にはまだバレてないみたいだし、狂犬…いや、カンナ局長も気を付けてついてきてね」

 

 

 

 

 

その後

 

「すごい警戒態勢です…うぅ」

 

「はぁ…はぁ…ちょっと、まて…」

 

「キリノ、局長がちょっと辛そう。少しスピードを落とそう」

 

「あっ、し、失礼しました!」

 

彼女たちは先生を連れて裏門に向かおうとするものの、先ほどの騒ぎで警備がさらに強化されており、カイザーPMCが警戒を強めていた。さらにはカンナの怪我が思ったより酷いようで、中々前に進むことも難しい状況であった。

 

「休憩しよっか。あっちの建物に入ろう」

 

「はい、行きましょう」

 

 

 

 

 

「ここなら安全かと」

 

「でも時間が無いね。休んだらすぐに移動しないと」

 

「ここは…はぁ…はぁ…」

 

「カンナ局長…」

 

カンナたちが入ったのはヴァルキューレの生徒が射撃の練習をする射撃場であった。カンナの傷は酷いようで、ここに辿り着くのもやっとであった。

 

「何で似合わないことなんかしたのさ。公安局長らしく取り調べでもしてればよかったのに…わざわざこんなとこまで来てさぁ…」

 

「責任を、転嫁するわけにはいかなかった…」

 

「・・・」

 

「ま、そんな事だろうとは思ったけど」

 

フブキはカンナがらしくないことをしていることを疑問に思い、本人にその理由を問う。カンナはいつぞやの責任を自分で取るために、先生を救うため単身カイザーが守る第3校舎へと向かったのである。

 

「利害関係が複雑に絡み合った、この状況下で…部下に、規律を無視してついてこいと…言えるわけがないだろう」

 

“私がいない間に、一体何があったの?”

 

「・・・」

 

「それは…」

 

「…6時間前、カイザーPMCが連邦生徒会を襲撃しました」

 

カンナはこの事を部下に命じることはせず、単身先生を助けに向かう必要があったと打ち明ける。先生はどうやら自分が昏睡している間に何かあったことを察したようで、それを彼女たちに尋ねると、カンナはカイザーPMCが連邦生徒会を襲撃したという驚愕の事実を明かした。

 

「カイザーPMCを指揮する高位指揮官…通称“ジェネラル”は行政委員会を解散させ、サンクトゥムタワーを掌握。D.U.全域に戒厳令を敷きました」

 

「D.U.を行き来する交通網・通信網は全て遮断され、ヴァルキューレを含む他の機関も行政権を失い、命令を待っている状態となり…現在のD.U.の治安は、戒厳令を通じてPMCが掌握しています」

 

「私が、こうして先生を連れだしてカイザーPMCに敵対している今の状態は、組織の命令に背いているも同然という事です」

 

「生活安全局の生徒は治安維持の組織ではないため、“偶然鉢合わせた上官の命令に従った”と言えば、責任を問われることはないでしょう」

 

カンナは先生にこれまでD.U.で起きたカイザーPMCの凶行を語る。D.U.はカイザーによって占領されて戒厳令まで出されており、カンナたちは現状の行政権を持っているカイザーに背いてまで先生を助けにきたのである。

 

「ほ、本官はそんなこと気にしません!正義のためには、この程度…」

 

「お前らが居なくなったら、キヴォトスの交通整理は?生活に困った市民はどうなる?各々が持つ能力や立場が異なる以上、負うべき責任もまた、違う。私の任務にお前らを巻き込んだことは…後で改めて詫びさせてくれ」

 

「…ま、私はマスタードーナッツのグレーズド・ドーナッツをひと箱で十分かな」

 

「ドーナッツなら好きなだけ持っていくといい。公安局のオフィスに山ほどある」

 

「じょ、冗談で言ったのに…本当にくれる約束をしてくれるなんて…」

 

それ故にカンナはキリノとフブキを自分の行動に巻き込んでしまったことを謝罪し、詫びを入れると述べる。フブキはカンナの言葉に冗談で有名店のドーナッツひと箱を所望すると、彼女は好きなだけ持っていけと言ってフブキを驚かせた。

 

「本題に戻ります。先生が行方不明になってからの事ですが…行政官が“非常対策委員会”を設立。各自治区の代表を招集したことは既にご存じだと思います。そこに先生も出席される予定でした。しかし直後…シャーレから出発したはずの先生の行方が分からなくなり…」

 

 

 

 

 

連邦生徒会・オフィス

 

「どうですか?」

 

「ダメ。どこにも見当たらない」

 

「・・・」 「リン先輩」

 

「…分かりました。モモカは引き続き先生の行方を追ってください。手段は問いません。必ず、見つけてください」

 

「分かった~。やってみるね…」

 

時は遡り、非常対策委員会の開催が迫るなか先生が訪れない状況に、流石のリンも焦りの表情を浮かべる。彼女はモモカに先生をどんな手を使ってでも探すよう指示した。

 

「非常対策委員会の招集を取りやめる事はできませんので、予定通り進めます」

 

「先輩…防衛室のカヤさんとも、連絡が取れません…。アビドスは急用で欠席とのことです。ミレニアムのリオさんからも返事は無く…シャーレの先生が出席すると聞いて招集に応じた方もいるというのに…このままでは…」

 

「・・・」

 

こうして先生不在のまま非常対策委員会は開催されるのであった。

 

 

 

 

 

「…以上が、キヴォトス全域に出現した、超高濃度エネルギー体現象の全貌です。アビドス砂漠、D.U.近郊の廃墟化した遊園地、ミレニアム郊外の閉鎖地域、トリニティとゲヘナの境界付近、ミレニアム近郊の新しい都市…そしてD.U.サンクトゥムタワー。この現象を解明するためには、各自治区の協力が必要不可欠です。何卒ご協力のほど、よろしくお願いいたします」

 

「その前に一つ。先生はどちらにいらっしゃるのでしょうか?“シャーレ”も、この非常対策委員会に参加すると伺ったのですが」

 

「そ、それは…」

 

「本件以上に急を要する案件で、“シャーレ”と話し合わなくてはなりません」

 

「そうだ。何故先生がいない?私は先生にキヴォトスに迫ってる事態を伝えるべく馳せ参じたのだ。でなければ我々も、トリニティのティーパーティーもわざわざ仇敵と顔を合わすなどということはせぬ」

 

リンは連邦生徒会が発見した、超高濃度エネルギー体現象について説明し集まった代表者たちに協力を求める。しかし、先生がいつまでたっても現れないことを怪しく思ったサクラコが、リンに先生の所在を問う。さらにはウルトラマグナスも口を開き、先生がいればこそ、ゲヘナやディセプティコンとの委員会に参加したのだと主張した。

 

「急を要する案件…サクラコさん、それはどのような?」

 

「それは…ここでお話するには、少し…」

 

「シスターフッドは、まだ何か私たちに隠し立てしている事があるというのですか!」

 

「ミネ殿…誠に申し訳ないが、此度の案件はシスターフッドの秘匿情報の中でも殊更重大なものゆえ、この場での公開はご勘弁願いたい」

 

「・・・。来るべき時が来れば隠している情報を公開していただきます」

 

そして急を要する案件とサクラコが述べたのに、ミネが反応しシスターフッドの隠匿体質を彼女が批判するとウルトラマグナスがそれを謝罪する。ウルトラマグナスにそう言われたミネは、仕方なく留飲を下げるのであった。

 

「やれやれ…ティーパーティーとやらは味方同士で言い争いかね?」

 

「まったくだ。ろくに統率も取れないとはな」

 

「年がら年中スタースクリームが反乱している貴様らディセプティコンが言えたことか…!!」

 

「「・・・」」

 

「だ、黙るなよ…そこは言い返すところだろう、普通は…」

 

そんな有様を見たサウンドウェーブとショックウェーブが、ティーパーティーを統率もろくに取れていない組織だとバカにする。だが、ディセプティコンの年中反抗期野郎であるスタースクリームのことをウルトラマグナスに指摘されると、2人は黙ってしまい彼は拍子抜けしてしまった。

 

「私たちも、先生に伝えたいことがある。本件と密接に関係することだ」

 

「あの子、寝てるけど大丈夫?セイアちゃんが発言してるのに、眠くなるなんてことある?」

 

「会議中に起こしてくれるコグマンもいないしな」

 

「い、今はちゃんと起きれるし…多分」

 

「はぁ…ミカさん、ホットロ…おっとロディマス・プライム。会議中に私語なんてみっともないですよ」

 

そしてセイアも先生と今回の件で話があるようで、彼と接触したかったようだ。セイアが話しているのに目の前のマコトが寝ているのをミカが指摘すると、ロディマスは彼女がセイアの話に眠くなりコグマンに起こしてもらったことを指摘する。そんな会話を続ける2人を、ナギサはみっともないと言って注意するのであった。

 

「マコト先輩、起きてください…今、みんな先輩に注目してます…」

 

「キキキッ…寝ているわけではない。子守歌未満の騒ぎが不愉快だっただけだ」

 

「ねえ~、これいつ終わるの?イブキ、朝ごはん食べてないし、お腹すいた…」

 

(まぁ…寝たふりするだけで、変な癇癪を起さないだけマシですね。メガトロン様が出席しているのが効いている)

 

「ZZZ…」

 

一方ゲヘナの万魔殿はマコトが寝たふりをしており、皆の注目を集めていた。イブキはお腹が空いたと言って不機嫌になり、サツキにいたっては本当に寝ている始末であった。

 

「へえ、子守歌…?じゃあ、私がもっと深い眠りに…」

 

「ミカ、座るんだ」

 

「あははっ、これは椅子を引こうとしただけ☆」

 

「やれやれ…」

 

そしてミカはマコトの言った子守歌という言葉に反応して、席を立ち上がろうとする。だがそれをロディマスに窘められ、彼女は椅子を引こうとしただけという言い訳をして座った。

 

「お待ちください、まだお返事を聞けておりません。先生はどちらにいらっしゃるのですか?」

 

「聞いても無駄だ。どうせ連邦生徒会が匿っているんだろう!つまり、この会は意味が無いってことだ!これは連邦生徒会の陰謀だ!この程度の目論見も見抜けず、学園の頂点に君臨する者と言えるのか?キキキッ」

 

「ああもう、先輩はまたメガトロン様に撃ち落とされたいんですか…?」

 

「次はドリラーの餌にするぞ、お前」

 

「・・・」

 

話が脱線したのを感じ取ったサクラコは再び先生の所在について問うと、マコトが連邦生徒会が匿っているという陰謀を叫び始める。騒ぐマコトにイロハはエデン条約の時のお仕置きの話をすると、ショックウェーブが今度はドリラーの餌にすると述べ、彼女は大人しくなるのであった。

 

「皆さん…静かに願います。先生の行方は、私たちも現在探している最中です」

 

「「・・・!!」」

 

「行方を捜している…?先生が姿を消したということでしょうか?」

 

「ならば、これ以上の議論は無意味だ。ディセプティコン、万魔殿、ゲヘナ学園へ帰還するぞ」

 

「えっ?ま、待ってください…!」

 

先生の所在を問われたリンは渋々、捜索中であることを一同に明かす。それを聞いて今までこの会議の趨勢を黙って見守っていたオプティマスとメガトロンも反応を見せる。そしてメガトロンは先生が居ない会議は無意味と言ってディセプティコンと万魔殿に帰還の命令を出し、イロハを困惑させた。

 

「ロディマス、マグナス。彼女たちを一度トリニティに送り届けるのだ。この危機的状況での先生の不在は、何かしらの悪意ある者の行動が裏にありそうだ」

 

「「はっ!!」」

 

「…たしかにこの状況、不審な点が少なくありません」

 

「そうですね。私たちの方でも分析しましょうか、セイアさん、ミカさん」

 

「…これは、どうにも協力できる状況ではなさそうだね」

 

オプティマスのほうも、先生の不在を受けてティーパーティーたちをトリニティに送り届けるようロディマスとウルトラマグナスに命じる。ミネやサクラコ、ティーパーティーの面々もこの会議の状況を見て、オプティマスの提案通りトリニティへ帰ることを決めた。

 

「どうやらただならぬ状況のようだな、リン」

 

「はい…」

 

「我々オートボットでも先生の所在を捜すよう、命令を出す。だから君たちはこの超高濃度エネルギー体について注力したまえ」

 

「ありがとうございます…。助かります」

 

「ユニクロンが関わっているとも限らないが、やはり用心するに越したことは無いだろう」

 

オプティマスは先生の不在を公開したリンを心配して、声をかける。彼は彼女のためにオートボットに先生捜索を命じると述べ、リンの負担を軽くするのであった。

 

「待て!プリンが無いじゃないかプリンが!おいらがわざわざこんな所まで出向いたというのに!」

 

「会長、学園から緊急連絡が」

 

「…なにっ、クーデターだと!?オイラが席を外している間に!」

 

「それで…どうしましょうチェリノ会長?」

 

「今度は“真冬の乾布摩擦連盟”?そんな連盟なんてあったか…?まぁいい!トモエ、ブリッツウィングを呼べ!!帰るぞ!クーデターの鎮圧だ!」

 

ゲヘナとトリニティの首脳陣が帰路につく中、レッドウインター連邦学園の会長であるチェリノは、プリンが出ないことをごねていた。だがその時レッドウィンターからクーデターの連絡が入り、彼女は大慌てで本拠地へと帰還をしなければならなかった。

 

 

 

 

 

「…はぁ、なかなかそう簡単にはいきませんね…」

 

「これ、いつまでやるの…?」

 

「…次の会議はどちらの学園でしょう?」

 

「はい、次は…」

 

アユムはまともに話し合いにすらならない会議に、ため息をつく。リンは会議を進めるべく、次に待っている学園を呼ぶよう、生徒会の人間に指示する。

 

「…次は無いわ」

 

「!!」

 

「ざ、財務室長…!」

 

「アオイ…」

 

次の会議に備える一同の前に現れたのは財務室長であるアオイであった。彼女を見たアユムとモモカは明らかに狼狽えており、これから始まるリンへの糾弾を恐れていた。

 

「防衛室長が行方不明になったの。この“非常対策委員会”によって、誰よりも権限を侵害される者が…よりにもよってこのタイミングで」

 

「それは…」

 

「そして、シャーレの先生まで行方不明に。ねえ…偶然にしては出来過ぎていると思わない?」

 

「・・・」

 

アオイはリンの前に立つと、防衛室長であるカヤが行方不明になったことを指摘する。そして続けざまに先生がいなくなったこともあげ、偶然にしては出来過ぎであると述べた。

 

「SRTの解体後に生まれた空白を、PMCで埋め合わせようとしたことも確認したわ。無記名で取引されていたけど、帳簿から追跡すればすぐに分かる。私設企業に連邦生徒会を分け与える計画…これがあなたの狙いなのかしら?」

 

「・・・」

 

「リン行政官…あなたが裏で糸を引いていたの?どこから、あなたの計画だったのかしら。SRTの解散?シャーレの樹立?それとも…連邦生徒会長の失踪?」

 

「私は…」

 

「ごめんなさい、リン先輩。ここまでにしましょう」

 

さらにアオイはSRTの解体やカイザーPMCへの癒着を指摘して、リンが連邦生徒会を乗っ取ろうとしているという疑念を述べていく。そして最後に彼女は懐から紙を取り出し、それをリンへと突き付けた。

 

「そ、それは…」

 

「あなたの不信任決議案よ。行政委員会の過半数である6人が、リン行政官の不信任に同意したわ」

 

「…!」

 

「こっちは正式に発効された命令書。先輩の行政命令は、再信任投票があるまで、すべて停止される事になる」

 

アオイがリンに突き付けたのは、彼女の不信任決議案の命令書であった。どうやらリンの行動を不審に思っているのはアオイだけでなく、行政委員会の過半数は不信任決議案に同意してしまったのである。

 

「リン先輩の不信任決議案が可決…?おやおや、これは穏やかじゃないねぇ…」

 

「そ、そんな…リン先輩は行政官であると同時に、生徒会長代行なんですよ…!リン先輩の権限が停止されたら…」

 

「連邦生徒会は麻痺するでしょう…生徒会長が失踪した直後のように」

 

「…あなたの暴走を止めるためには、仕方ないじゃない。少なくとも、先生や防衛室長を見つけるまではこうするしかないわ」

 

リンへの不信任決議案が可決されたというアオイの言葉に、モモカとアユムとリン本人は渋い顔をする。リンの行政権が剥奪されてしまうと、誰もキヴォトスの行政を担う者がいなくなりキヴォトスは混乱に陥るのである。しかし、アオイはリンの暴走を止めるためには仕方ないと言って、不信任決議案を取り下げるつもりは毛頭ないようである。

 

「…詳細はまた明日話しましょう。室長全員を招集するつもりなので。今日はもう休んでください、リン先輩。…明日は長い一日になるでしょうから」

 

「・・・」

 

「そこの行政官も、ぼうっとしてないで動きなさい!」

 

「…はっ、はい!」

 

「い、行くよ…!」

 

アオイはリンに今日はもう休むよう促すと、この事態を呑み込めず突っ立っている他の行政官たちに動くよう指示する。彼女に指示を出された行政官たちは、ようやく我に返りその場を後にするのであった。

 

「モモカ、アユム。あなた達も帰りなさい。これは行政命令よ」

 

「…そ、そんな」 「うー…ええっと…」

 

「…私でしたら大丈夫です。2人を巻き込んでしまってごめんなさい」

 

「あの…で、では…明日は早く来ますからね、先輩…!」

 

「はぁ…本当、この雰囲気しんどいなぁ…」

 

そしてアオイは未だその場に居座っているモモカとアユムにも自室へ戻るよう、行政命令だと言って促す。2人はリンの様子が気になるようで、その場で彼女の様子を伺うがリンが大丈夫だと言ったのを聞いて渋々自室へと戻るのであった。

 

「…また明日、改めて話しましょう。アオイ」

 

「・・・」

 

 

 

 

 

同日・夜

 

ザッザッザッ…

 

「…!?な、何者ですか…!」

 

「これはこれは。思ったよりとんとん拍子に進んだな。こんなにガラガラの連邦生徒会だなんて。最悪、あの“狐”との遭遇も想定していたのだが…まあ、それでも結果に影響は無かっただろうが」

 

ジャキ!!

 

「ここにいるのは、行政官1人か?」

 

「…!あなた達は…カイザーコーポレーション…!?」

 

「よりによって首席行政官とはな…」

 

カイザープレジデントの指示を受けたジェネラル率いる部隊は、連邦生徒会を襲撃しあっさりリンの元へとたどり着く。まさか彼らが直接襲ってくるとは思っていなかったリンは、カイザーPMCの登場に驚いていた。

 

「ああ、無駄な抵抗はよせ。通信網と警報装置は全て処理済みだ」

 

「…っ!」

 

「これより、連邦生徒会の全権限は、我々カイザーコーポレーションが引き継がせてもらおう」

 

ピッ!!

 

「サンクトゥムタワーの方はどうだ?」

 

“コントロール確保しました!”

 

カイザーPMCの襲撃に際し自前の銃で何とか応戦しようとするリンに対し、ジェネラルは通信網と警報装置は全て処理したと彼女に告げ無意味であることを理解させる。そして、連邦生徒会の全権限をカイザーが引き継ぐと宣言し、サンクトゥムタワーのコントロール確保の通信を受けていた。

 

「いいだろう、プレジデントに繋げろ」

 

“コホン。首尾は上々だな。こちらの通信確認も終わった。だが、権限掌握には少々時間が掛かりそうだ。まずは、D.U.全域に戒厳令を公布するとしよう”

 

「これよりD.U.を行き来する全ての通信・交通・物流はシャットダウンされる。それと同時に、行政機関も全て停止だ。トランスフォーマーなどに侵入されては敵わんからな」

 

「くっ…!!」

 

「外部からはこのD.U.で何が起きたか分からないように…」

 

サンクトゥムタワーの確保を確認したジェネラルはプレジデントと通信を繋ぎ、次の指示を仰ぐ。プレジデントはサンクトゥムタワーの権限掌握に時間がかかるので、D.U.に戒厳令を公布するよう命じると、ジェネラルはD.U.の行政を全て停止するよう指示した。

 

「カイザーコーポレーション、一体何を企んでいるのですか?」

 

“サンクトゥムタワーを掌握するのだよ”

 

「…!」

 

“…超古代兵器が手に入ったものでね。サンクトゥムタワーの力が必要になった、というわけさ。これでキヴォトスは、カイザーコーポレーションの支配下になる。ゲマトリアでも、連邦生徒会でも、オートボットでもディセプティコンでもない…我々が学園都市の主となるのだ”

 

「…!」

 

連邦生徒会に乗り込んできたカイザーPMCに対し、リンは何を企んでいるのかを問う。それにプレジデントはサンクトゥムタワーの掌握と答え、超古代兵器の存在を仄めかしてリンを驚かせた。

 

“君らもこれでよかったんじゃないかね?「学園都市」よりは「企業都市」の方が響きが良いだろう。クックックッ…”

 

 

 

 

 

そして現在・ヴァルキューレ警察学校第3分校

 

“カイザーコーポレーションが…”

 

「室長は散り散りになり、連邦生徒会は事実上解散、連絡も途絶えました…。今のサンクトゥムタワーの様子は誰にも分からない状態です。戒厳令がD.U.に公布されているためトランスフォーマーが現状入り込むのは不可能です。ウチのバリケードは元々D.U.にいたので例外ですが…それでもディセプティコンと通信をすれば探知されてしまうでしょう」

 

「うぅっ…こんな状況で、出勤できないなんてあんまりです…」

 

「うわぁ…面倒な事になってる…」

 

カンナの説明を聞いた先生は、連邦生徒会がカイザーコーポレーションによって襲撃されていたことに驚いていた。現在D.U.は戒厳令が敷かれているため援軍を呼ぶこともできず、トランスフォーマーも戦力として期待できない状況に一同の顔は暗くなっていた。

 

「おい、ドアが開いてるぞ!」 「調べろ!」

 

「ゲッ…PMCの奴らがこっちに来る。急がないと」

 

「い、行きましょう!」

 

「…くっ」

 

そして彼女たちをさらに絶望される事態が起こる。カイザーPMCが自分たちの隠れている場所のドアが開いていることに気付き、こちらに向かってきたのである。一同はこの場から離れようとするものの、カンナの傷が深く動けないようだ。

 

“カンナ、傷が…”

 

バタン!!

 

「…私はここまでです、先生」

 

“・・・!?”

 

「ど、どうしてそんなことを…!」

 

「ちょっと、なに言ってんの!?」

 

先生はカンナの傷を心配するものの、彼女は限界が来たようでその場で倒れてしまった。そして、カンナは自分はここまでだと告げると、3人は驚いていた。

 

「ふっ…ここは変わっていませんね…新入生合宿の時の姿そのものだ…。あの頃の私は、正義の味方であろうと夢を見ていたものですが…どうやら、変わってしまったのは私だけのようです。生活安全局には…世話になったな」

 

「カンナ局長…」

 

「ちょ、ちょっと…こういう雰囲気、嫌なんだけど」

 

「この建物を出て少し進むとバリケードがカモフラージュして待機しています。彼と一緒に“子ウサギ公園”に向かってください」

 

カンナの自分たちが隠れていた場所を見渡して新入生だった頃を思い出し、現在の自身の変わりようを自嘲する。そして彼女は生活安全局の2人にお礼を述べ、建物を出てバリケードに乗るよう指示を出した。

 

「…っと、忘れるところでした。こちら、押収されていた先生の所持品の…タブレットPCとスマートフォンです、どうぞ」

 

“シッテムの箱…これをどうやって?”

 

「私の元に届いた謎の手紙に…先生の居場所と所持品の押収場所も諸々記載されておりまして…。誰がやったのかは知りませんが、先生は優秀なお仲間をお持ちのようですね」

 

“(まったく心当たりがない…一体誰なのだろうか…?)”

 

そしてカンナはカイザーによって押収されていたシッテムの箱とスマホも取り返していたようで、それを先生に渡す。先生はそれをどうやって取り返したのか疑問だったようだが、カンナ曰く彼女の元に先生の居場所とシッテムの箱がある場所が書いてある手紙がいつの間にか届いたという。

 

「現在…カイザーコーポレーションは連邦生徒会を襲撃し、サンクトゥムタワーの行政制御権を奪取しました…。このままでは、この都市は…かつてないほどの混乱に陥るでしょう。これが現実だと妥協し、腐敗しきった警官の私にできる、最大限の抵抗でした…先生の教えがなかったら…私はまた、踏み出せずに終わっていたでしょう」

 

“カンナ…”

 

「先生。ヴァルキューレの者が皆、私のような人間というわけではありません。今もなお、正義のために闘う人が…まだまだいるはず。この2人のように…」

 

「・・・」 「・・・」

 

さらにカンナは先生の教えのお陰でここまで踏み出すことができたといって、彼に感謝を述べる。そしてキリノやフブキのように正義のために闘うヴァルキューレの生徒たちがいるといって、先生に彼女たちのことを頼るよう促した。

 

“そんな事はない。カンナだって、立派な警官だよ。ちゃんと自分の信念に従って、諦めずに行動しているからね”

 

「・・・」

 

“それに、これがあればもう大丈夫。なんとかなると思う”

 

「・・・?」 「先生…?」 「ん?それ、大事な物なの?」

 

自分を卑下するカンナに対し先生は、カンナは自分の信念に従って行動している立派な警官だと声を掛ける。そしてシッテムの箱を取り戻したので、先生は彼女たちに何とかなると答えるが、彼女たちはピンと来ていなさそうであった。

 

“…我々は望む、七つの嘆きを。…我々は覚えている、ジェリコの古則を。”

 

シュイン!!

 

「先生!!うわぁぁああん!!!」

 

“アロナ…”

 

「ご無事でしたか!?心配したんですよ!急に電源も消えてしまって、本当にビックリして…!しかも今、大変なことになっていて…!」

 

“うん、知っているよ。アロナが無事でよかった”

 

「ぐすっ…はい。私は大丈夫です、先生…」

 

先生はジェリコの古則の一節を唱えるとシッテムの箱の電源が入り、先生の意識が箱の中へと入る。シッテムの箱の中ではアロナが心配して抱き着いており、先生との再会を涙して喜んでいた。

 

“それじゃあもう一度、指揮を始めよっか”

 

サンクトゥムタワーの行政制御権を取り戻す戦いが、今始まるのであった。




カンナが割とすぐ助けに来てくれたのは密かにBメガが彼女に場所を伝えたためです。メガちゃんも先生が今死ぬと困る。
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