「今生存が判明してるのは…はぁ…
浅見レイナ親衛隊長、豊春エミカ修理隊長
満身創痍だけど…明穂メイカ行政官、
今別行動中の狐咲マイカ修理副隊長と
保坂エミ行政補佐官が今のところ連絡が取れてる。」
もうこの程度しか生存者がいない事に私は絶望した。
この学園はもし、あの化け物を殺す事が出来たとしても滅亡は避けられないだろう。
「ありがとう。ところで別行動の2人は何処に?」
私は責めて一つに固まった方がいい、そう考えマイカとエミと合流
しようとする。
「…待ってて。今座標を送る。」
「…ここは…分かった。すぐ行く。」
「待って!まだ奴が居」
私はユキの警告も聞かず、通話を切断し行動を開始した。
送られた座標は調印式会場からそう遠くない廃墟街だった。
急がねば、その内あの化け物は彼女達を見つけ出すだろう、
そしてミツキ先輩…調印式会場に居た生徒達と同じ運命を辿り…
そんな悪い想像等している暇などはない、早く動け!!
誰一人ともこれ以上ミツキ先輩達の様に奴に殺させてはならない。
そう決意した私はルカ先輩と共にユキから送られてきた座標の場所まで
奴の存在に注意しながら向かった。既に化け物が来てしまって居るのでは
既に彼女達は奴に…悪い想像が私の頭の中をこだまする。
8分間程歩いた頃、私達はユキから送られてきた座標…マイカとエミが居るはずの場所へ辿り着いた。
古びた5階建の廃墟ビルがその座標にはあった。
玄関にはバリケードと罠が何重にも敷かれ、簡易的に要塞化されていた
少なくとも、誰か生存者が居るようだ。私は少しだけ安心した。
私達は裏口を補強していた腐った板材を持ち込んでいたバールで
剥がし、古びて錆びた扉を蹴り開く。
「動くな!!誰だ…!!」
少々強張ったマイカの声が銃を向ける音と共に聞こえてきた。
「…アヤに…ルカ先輩…?どうしてここが…」
彼女は安心したのか、聞き慣れた可愛らしい声の調子に戻る。
「エミ。避難するよ。」
彼女は銃を下ろし、マイカは上の階に行きエミを呼びに行った。
足をひきずりながらエミが2階からゆっくりと降りてきた。
どうやら足の骨が折れてしまっているらしい。
「ユキに座標を教えてもら」
どうしてここに来たのか、どうやってここの位置を知ったのか、
私が話している最中だった。
「ホワ"ァァァァァァ!!」
奴の咆哮が建物の中に響き渡り、私を含めた4人は焦りを見せる。
何故なら、奴は建物の玄関の目と鼻の先まで近づいていたからだ。
「ここから逃げるんだ!!」
「化け物…早く逃げなきゃ!!」
これ以上あいつに友達を奪われたくない…私は玄関に視線を移す。
奴は玄関のバリケードを破壊し、逃げなければ数秒で捕まる位置
まで迫ってきていた。
「グオォォォォォォ!!」
ここは廃墟だ。奴の咆哮の振動で天井が崩れてもおかしく無かった。
エミは足が崩れた天井の瓦礫の下敷きになってしまい、独りでは
抜け出せなくなり動け無くなってしまったようだ。
私は彼女を先輩と同じ目に遭わせたくない、という思いから、
とっさに瓦礫で動けなくなった彼女に近づき、助けようとする。
「アヤ…!!待て!!お前まで死ぬぞ!!」
ルカ先輩が血相を変えてエミを助けようとした私を制する。
「エミを助けようとすれば…多分お前まで死ぬ…」
「見捨てろって言うの…?先輩?」
「ガルルルル…」
もう奴は下敷きになったエミの真後ろまで迫っていて、もう選択の余地
は残されていないと嫌でも知る事となった。
もう助けることはできないと…
私達はエミを見捨て、逃げると言う選択しか無かった。
生き残るにはそうするしか…助け出す事は、もう無理だった。
「待って!!」
許してくれ…
「お願い!!」
私だって助けたかった…
「見捨てないで!!」
………でも、私には助けられなかった…
「助けて!!」
何もできない私を恨んでくれ…
結局私は誰も助けられないんだ…!!
私は裏口を閉める瞬間、
一瞬見てしまった。エミが奴に
身体を掴まれ、握り潰される瞬間を…
重い古びた扉を閉め終わら無いうちに
「ああああああ!!」
彼女の甲高い最期の悲鳴がまた、脳裏に焼き付く。
ルカ先輩の顔を私は見る。
泣くは愚か、彼女は涙目ですら無く、悲痛さは微塵も無かった。
何故…なんで?なんで泣けないんですか…
「ルカ先輩!!悲しくないんですか!!」
私は怒りに任せ先輩の胸ぐらを掴む。
「私だって…!!辛い中頑張ってんだよ!!」
「アヤ…!!辛いのはお前だけじゃねえんだよ!」
「いい加減にしろ!!甘えんな!!」
先輩は私の腕を払い除け声を荒げる。
彼女は堪えていただろう涙を隠しもせず、ダムが決壊したように流していた。
…辛いのは私だけじゃない、当たり前だった。
私の辛さなど、甘い方だった。でも!!辛いものは辛いんだよ!
……………
見慣れた部室に戻ってきた。
マイカは今にも泣きそうだった。
もう…どうでもよくないかな…
はぁ…疲れた。
ギィィィィィ…
部室の古びた扉が唸りながら開き、
3人が入ってきた。
メイカ先輩とエミカ先輩、ユキだ…
「エミは…奴に…ぐすっ…殺された…」
ルカ先輩は後ろ姿のまま言った。
目の前でまた仲間を失った私は、自分の命を断つ事を
考え始めていた。