絶望しかない世界と死   作:アルカンテナ

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2話 ユキside

「待って!!その周辺にはまだ奴が!!」

そう私が警告している最中に、すぐ行動し、突っ走る彼女は

通話を切って、準備を始めてしまったようだ。

でもいつも通りに行動出来る彼女はきっと大丈夫、何故かそう思えた。

彼女達に遅れを取らないよう、私達もこの場所を動かなくては。

「メイカ先輩…見えますか…?」

私は彼女の前で手を振り、視力の有無を確認する。

「…左目は見えない…。大丈夫、右目は見えるから。」

彼女は静かに言う。

この人は我慢強すぎると思う。親友を失い、左目も失ったのに

諦めようとしていない。私であれば既に諦めているだろう。

彼女は死んでもおかしくないような斬撃を喰らったと言うのに、

左目を失明して顔に大きな裂傷を負ったのみで命に別状は無かったのは

不幸中の幸いだったかも知れないが、かなりの苦痛である事に

変わりは無いだろう。

彼女は痛みに顔を歪ませながら、ゆっくりと立ち上がった。

立ち上がった彼女の隣に横たわるレイナ先輩に目を向ける。

レイナ先輩は化け物に胴体を強く握られた為、外傷はあまり無いが、

上半身の中身はグチャグチャになってしまっているだろう。

彼女は長くても、数時間の命だろう…

「…もう……してくれ」

レイナ先輩が何かを泣きそうな声で呟く。

「先輩…今なんて言いました…?」

私は聞きたく無い、そう思いながら聞き返す。

「もう…私を…殺してくれ…」

「もう…私は長くは生きられないし…

「もう…これ以上…苦しみたくないんだ…」

「もう…楽にしてくれ…」

先輩は銃を差し出しながら懇願する。

もう、彼女は生きようと言う思いは無いようだ。

「レイナ…!!まだ…まだ希望はある筈だ…!!だから…」

エミカ先輩は彼女を説得しようと、必死になる。」

「エミカ…もう私は限界だ。

こんな世界…こんな状況で生きる理由など無い…だから…」

………

「殺して。」

乾いた一言がこの路地裏に響いた。

「責めて…私が…嫌だ…でも…

レイナがそれを望んでいるなら…」

エミカ先輩は渡された銃をレイナ先輩に突きつける。

「やっぱり嫌だ…私には…出来ない…!」

「……そうか。」

レイナ先輩は彼女の持った銃へと手を伸ばす。

「レイナ…?何して…まさか…やめろ!!」

エミカ先輩が静止する間もなく、彼女は引き金に指を掛けた。

ズダァァン!!

ビチャッ…

鮮やかな赤に染まった液体が飛び散る。

「嫌あああ!!レイナぁぁぁぁ!!」

エミカ先輩はそう叫ぶ。

エミカ先輩はレイナ先輩のヘアピンを遺体から取り、握りしめていた。

「なんで…なんでこんなことに…」

エミカ先輩は今の不幸を嘆き、悲しみ、苛立っていた。

「…行こう…レイナの分まで…生きなきゃ。」

メイカ先輩がそう言い、エミカ先輩は

ゆっくりと立ち上がった。

「レイナが…!!レイナが!!」

「…エミカ…辛いのは分かる。でも…今出来ることをやらなきゃ。」

メイカ先輩がエミカを諭す。

「メイカ…!!あんたには親友が死ぬ辛さが!!この辛さが!!

 わからないんだろうな!」

エミカ先輩は唯一の親友を失った悲しみをメイカ先輩にぶつける。

「そうだね…エミカの辛さは私にはわからないよ…」

「でも…今死んだってレイナの為にならない…」

「…あんたはそういう人だったな。自称「死神」さんよ!」

「………そうだな。私は死神さ。知ってんなら黙れよ。」

メイカ先輩は少々殺気立ち始めていた、当たり前だ。

変えのない存在を殺されたことをまた掘り返されているから…

…聞かされている私まで辛い。彼女達の苦しみからすれば、

私の苦しみなどまだ楽ではあると思うが。

私達はアヤ達が居る広報委員会の部室へ向かう。

ヴィスワ学園の自治区はもぬけの殻となっていた。

あんな化け物が徘徊していれば当たり前か。

誰も寄り付きはしないだろう。

………

部室の古びた扉のノブに手を掛ける。

ギィィィィィ…

扉が音を立てて開く。

虚な目をし、頭を抱え、髪の毛を掴みながら何かをずっと呟くアヤと、

一切、顔を見せようとしないルカ先輩に、今にも泣き出してしまいそう

なマイカがそこには居た。

エミが居ないことを私が疑問に思い、聞こうとした直後だった。

「エミは…奴に…ぐすっ…殺された…」

ルカ先輩は涙声ながらに伝えた。

私は名簿の「保坂エミ」と書かれた場所にバツをつけた。

 

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