「そうか…エミまで…」
メイカ先輩は感情のこもっていない、乾いた声で呟く。
レイナ先輩の姿が見えないことに私は気づいた。
「レイナは…私が殺した…殺したんだ…」
エミカ先輩が少々、おかしな声調で呟いた。
何を言ってるんだ。エミカ先輩がレイナ先輩を殺す…?ありえない。
「エミカ。レイナは自ら望んで死んだんだ。
お前が気負う必要なんかはない。」
メイカ先輩は素っ気ないながらも優しく言う。
彼女もひどい傷を負っていた。
顔の左側は裂傷のせいで口裂け女のような顔になり、
破れかけた制服は赤く染まっていた。
「………でも…私が………」
エミカ先輩は言いかけて黙り込んでしまった。
「合流してすぐだが提案がある…」
メイカ先輩はゆっくりと、冷静に言い始めた。
「一つ、作戦がある。」
「成功すれば…この騒ぎはおさまる。
ヴィスワ学園の滅亡は避けられないと思うが…」
「もしかしてだが…」
「奴を殺すつもりか…?無茶だ!そんなこと!」
ルカ先輩が強い口調でメイカ先輩に食ってかかる。
「だったらこのまま奴に怯えて過ごすのか?
いつ死ぬかもわからず?」
「これ以上大切な人を失うかもしれないのに?」
「そんなの私はごめんだ。」
メイカ先輩も負けじと言う。
でも…あんたのせいで…皆んな傷つき、大切な人を失った。
あんたが…強いのに…!!1人で逃げたから…!!
「…………」
「…でも…アイツと戦うのか?」
「勿論。そうなるな。」
「当たり前か…」
「アヤとユキ、そしてマイカは連れて行かない方がいい筈だ。」
今更後輩達の心配ですか…?もう遅いですよ!!先輩!!
「私もそれには賛成だ。」
「何もできないかもしれないけど…私も連れて行ってください!!」
部屋の端で震えていたマイカが立ち上がって言う。
「マイカ、私達は必ず帰ってくる、
それまでこの部屋を守っていてくれ。」
「可愛いあんたらをこれ以上危険な目に遭わせたくないんだ。」
エミカ先輩がマイカの頭を撫でながら言った。
「アヤ。」
ルカ先輩が私を呼ぶ。
「何ですか…?」
ルカ先輩が私を強く抱きしめる。
「アヤ…もし私が帰って来なかったら…」
全く…あんたは…すぐに失敗を心配する。
「失敗した時の話なんてやめてください。」
「そっか…アヤらしいね。」
ルカ先輩は笑っていた。
「盾ってあるかな…?」
メイカ先輩の問いにこたえるようにマイカは言う。
「メイカ先輩の盾は私が持ってます。」
「これですね。」
マイカがメイカ先輩に盾を差し出す。
「ありがとう。」
先輩はマイカの頭を撫でていた。
マイカは少々不服な顔をしていたが、嫌では無いようだった。
出発前の先輩達との会話が終わり、先輩達は各々準備を終えた。
「それじゃあ…行ってくる。」
ギィィィィィ…バタン!!
古い扉が閉まった。
私は少しだけ…希望が持てた気がした。
だが、静かな、何も無い時間が流れ始め、私は暗い考えになっていく。
そんな淡い希望など無駄だ。そうさ。
希望なんて無いんだ。私は二人もの人を見捨てた。
……ははは……
「はははははは!!私は一体どうすればいいんだろうな!?
ユキ…!!私にはわかんねえよ!!こんな状況で、
結局私は責任を他人に押し付けるだろうな!!
そうでもしないと自分に生きる理由が分からないんだよ…
元々私には生きる理由なんか…
…………はぁ。なんで私は…ずっとこんなしょうもないことに
固執しているのだろうか…?先輩の帰りを待てばいい。
希望を持っていればいい。そう思っても自分の無価値さを
忘れることはできないからか。はぁ …私って…面倒な人間だな。」
自分自身を否定する言葉が流れるように声になる。
「何言ってるの…アヤ…もういつも明るいアヤは居ないの…?」
ユキは泣きそうな…虚しそうな声で呟いた。