烙印からの帰還者〜天上院家の末っ子は脳筋デッキしか勝たん〜   作:Eクラス

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「いちかばちかのカウンター」


09 やあ兄弟

 タッグデュエルから一夜明けーーーーー。

 

 明日香と榊玲奈はわなわなと身を震わせていた。

 

 理由は頭につけているケモ耳である。

 

 タッグデュエルに負けた女子4人は1週間ケモ耳学園生活を送らなければならない罰ゲームだ。

 

 今朝方、松田女史から渡されたソレを頭に装着して羞恥に耐えていた。

 

 それだけで屈辱的な何かが込み上げてくる。

 

 周りの視線が痛い。

 

 授業中も先生から「シニョーラ達、ソレ何でスーノ?イメチェンなノーネ?」とケモ耳のこと指摘されて教室内はくすくす笑いで耐えなかった。

 

 恥ずかしかった。

 

 逃げ出したかった。

 

 しかし罰ゲームは罰ゲームだ。

 

 で、1番の問題なのは欲望のままに罰ゲームを決めた真樹那本人が明日香達の姿を一目見て満足して授業中以外は忽然と行方をくらませるのだ。

 

 イジられるのはごめんだが、もっと何かこうあるだろうという不満があった。

 

(何よアイツ、これで終わり?姉さんをこんな風に弄ぶなんてイイ度胸してるじゃない)

(圧殺圧殺圧殺圧殺ッ!!)

(うへー、皆んなに見られて恥ずかしー…あ、でも、癖になりそうかも。というかモモエはすでに堕ちたわ)

(あぁ、真樹那さんにもっと弄ばれたいですわぁ…)

 

 1人、すでに妄想にふけていた。

 

「明日香はネコ耳、榊はパンダ耳、ジュンコはイヌ耳でモモエはウサ耳だな!」

「皆んな似合ってるッスねカワイイ〜」

「よっ!明日香たち!そのケモ耳似合ってるぜ!」

「「は?何か言ったかしら?」」

「「い、いえ、何も言っておりません!!」」

 

 女王と女帝の圧と云えばイイだろうか。

 

「ねぇ十代。真樹那を探して来てくれない?」

「ねぇ十代くん。ワタシね、趣味でキックボクシングしているの。サンドバッグ…スパーリング相手を探しているわ。異世界馬鹿野郎くんを連れてきてくれなかったら十代くんをフルボッコするかも?」

「オ、オッケーわかったぜ…!!」

 

 身の危険を感じた十代はNOとは言えなかった。

 

「アンタも一緒に行くのよ!」

「真樹那さまを見つけられなかったら玲奈お姉さまのサンドバッグになってもらいますわよ?」

「えぇぇえええなんでボクも…!?」

 

 とんだとばっちりだと翔は思う。

 

 しかし、榊玲奈はウォーミングアップを始めてシャドーボクシングを見せつける。

 

(お、女ってこえ〜……)

(お、女って怖いッス…)

 

 2人は逃げるように真樹那を探しに行った。

 

「あれはアテにならないから私たちも探しに行きましょう」

「「はーい」」

(どうせあのバカは白いカード探してるのでしょうけど…)

 

 今日も鬼ごっこが始まる。

 

 

 

 

 ケモ耳女子たちを放置した当の本人はある人物に呼び止められた。

 

 吹き抜けのある廊下辺り。階段にたむろしていたオベリスクブルーの男子3人組みが行く手を遮った。

 

「やあ兄弟」

 

 そうやって馴れ馴れしく真樹那を呼び止めたのは真ん中にいる男・万丈目純だ。

 

 もちろん、真樹那と兄弟のはずがない。

 

 苗字が違う。血のつながりがあるわけでもない。

 

 ただ似ているところがあるというなら同じ末っ子。

 

 境遇は違うけど。

 

 万丈目は厳しく育てられ、真樹那は甘やかされ育てられたわけだが。

 

 真樹那は馴れ馴れしく万丈目に呼ばれて気分を害することはなかった。

 

 この頃の万丈目は天狗で良いやつではない。

 

 でも、万丈目に「兄弟」認定されたことで真樹那の中で万丈目の評価が決まった。

 

 ただ喧嘩をふっかけられるだけなら返り討ちにしていた。

 

 でも、違った。

 

 この万丈目は面白い奴だ。

 

 だから真樹那も万丈目にこう返事をした。

 

「やあ兄弟」

 

 まるで久しぶりに会う兄弟かのような軽いノリの挨拶。

 

 万丈目の付き人2人はそのやり取りに驚いた。

 

 え、万丈目さんって兄弟が他にいたのか?

 

 そんなわけないのだが。

 

「くっくっく、俺が言った手前ではあるが『兄弟』と呼び返したのはなかなかだったぞ。さすがは天上院くんの弟なだけはある。なかなかおもしろい男だ」

「オレもオベリスクブルーの学年トップに『兄弟』なんて呼ばれるんなんて光栄だね。まっ、以後よろしくー」

「あぁ、こちらこそ是非とも仲良くしてくれ。ところで、天上院くんの頭に付けていたネコ耳についてなのだが。アレは兄弟の仕業かい?」

「もちろん!いいでしょ姉さんのネコ耳!」

「あぁ、いつもの可憐で凛々しい天上院くんも素敵だが恥らう可愛らしい姿の彼女もまた素敵だ。兄弟には感謝しかない」

「あすにゃんと呼んでやってくれ」

「あすにゃん…あぁ、なんて可愛らしい響きなんだ」

「サイコーだろ?」

「あぁ!」

 

 馬鹿たちは強く握手を交わした。

 

「それで兄弟。一つ頼まれごとをしてもいい?実は姉さんに追われていて困っているんだ」

「羨ましい悩みじゃないか兄弟」

「でもオレは用事あってこれから温泉施設へ行かなくちゃならなくてね。そこで兄弟には姉さん達の足止めをしてもらいたい。もちろんコレで」

 

 真樹那は自分のデッキを取り出して指差す。

 

 デュエルアカデミアが何の学校かわかっているよな?と。

 

「なるほどそれは名案だな兄弟。そういう頼みならいくらでも引き受けようじゃないか」

「話が早くて助かるよ兄弟。くれぐれも温泉施設には来させないでくれよ?」

「温泉施設だな?兄弟。心得た」

「じゃ、姉さんたちの足止めよろしくー」

 

 そう言って真樹那は退散した。

 

 ちょうど同じくして明日香たちが姿を現した。

 

「あれ?今、真樹那の声がしたと思ったのだけど…万丈目くん。私の弟を見かけなかった?」

「やぁ天上院くん。今日もご機嫌麗しゅう…兄弟なら今さっき温泉施設へ行くと言っていたよ」

((え、万丈目さん、それ言っちゃ駄目なやつ))

(バカかキサマら。兄弟が本当に温泉施設に用事あるならわざわざ2回も念を押して言う必要もないだろ。アレはブラフだ。だからワザと俺様も天上院くんに伝えたんだ。ここまで言えばわかるよな?)

((さっき兄弟になったばかりなのに意思疎通し過ぎやしませんか?))

 

 基本、馬鹿だが紙一重で天才の成せる読みだ。

 

 もし、万が一足止め失敗したとしても校舎から離れた施設への誘導ができれば作戦成功だ。

 

 あとを追いかけて、そこでまた足止めしたらいい。

 

「そう。教えてくれてありがと。というか兄弟って?」

「それはボクと君の弟くんだけの秘密なのさ。それよりも待ちたまえよ天上院くん。兄弟の居場所は教えはしたがあとを追いたければこのボクを倒してからにしてくれ。思う存分デュエルを楽しもうじゃないか。あ、あすにゃん!!」

「「「あ、あすにゃん…!?」」」

 

 明日香の顔が引き攣った。

 

「おい、お前たちもデュエルディスクを構えろ!兄弟のためにもここを通すんじゃないぞ!」

「「は、はい!」」

「そう。いろいろ察したわ。あの子にいろいろ吹き込まれたのね可哀想に…覚悟なさい。行くわよ!ジュンコ!モモエ!」

「「はい!」」

 

 明日香たちもデュエルディスクを構え、万丈目グループと衝突した。

 

 一つ、言わせてもらうが、廊下でトリプルデュエルしたらあかん…

 

 

 

 

 さて、兄弟が明日香の足止めに奮闘している間に真樹那は校内探索もとい白いカードを探しいていた。

 

 もちろん、温泉施設など行ってない。

 

 正直に言うと精霊も使っての探索も成果がないのだからもう校内にはないのかもしれない。

 

 あの独特なデスピアンの臭気すらしない。

 

 天上ケモ耳隊の中でも結論は出ていた。

 

 校内にはない。

 

 今、真樹那がいる場所は購買部である。

 

「真樹那ちゃん、何か探し物かい?」

「んー?いや、ただの冷やかしだよー。でも、ちょっと小腹空いたかも」

「それならドローパンでも買いなさいよ」

「おー、いいね。買いまーす」

 

 入学早々に購買部のトメさんとダチになった真樹那。

 

 何かを探している素振りは見せていないはずだが、歴戦のおばちゃんにはバレていた。

 

 平静を装うためにドローパンを買った。

 

(そういえば、そろそろ試験期間だったっけ?十代と兄弟がデュエルするんだよな?ということは、新弾のパックも入荷されるはず…)

 

 もしかしたらその時に白いカードが紛れている?なんてことも可能性としてあるだろう。

 

 無差別に悲劇を振り撒くには筋書きとしてありえる。

 

 警戒するに越したことはなかった。

 

 それにそうなると一番に被害を受けるのは購買部だ…

 

(ふざるな、そんな悲劇は絶対に阻止する)

 

 まぁ、もしもの話だ。

 

 しかし、あまりに思い詰めていたのかトメさんを心配させてしまった。

 

 フードコートでドローパンを食べる素振りすらしないのだから。

 

「真樹那ちゃん…真樹那ちゃんのお兄さん、吹雪ちゃんもドローパンが好きだったのよぉ」

「へー、やっぱり兄弟って似るんかね?姉さんもドローパン好きだし」

「そうかもねぇ。お兄さんのこと諦めないでね。いつか、必ず見つかるさね。ドローパン食べて元気出しなよ」

「あっはっは、オレってそんなに元気なかった?というかトメさん、それは勘違いだよ。オレも兄さんは必ず戻ってくるって信じてる」

「そうなのかい?てっきり探しもの=お兄さんだと思ったじゃないか」

 

 トメさんは真樹那が相談に乗って欲しいものだと思っていたらしい。

 

「違う違う。兄さんは必ず帰ってくる。これは確信なんだ。なんたってこのオレが3年間異世界を生き抜いて帰ってきたんだから。なら天上院家の長男もきっと帰ってくるさ」

「そういうもんかい?」

「うん。まぁ、帰ってきてくれないと困る。オレも、姉さんも」

 

 そう言って真樹那はドローパンの包み紙を破いてがっついた。

 

 ドローパンの中身はメンチカツだった。

 

「うめー!」

「もう一個食べるかい?」

「おかわりー!」

「毎度ありー!」

 

 もう2、3個おかわりした。

 

「真樹那ちゃんの探し物が吹雪ちゃんでなかったら、もしかしてアレかね?私も今日仕入れたばかりの噂なんだけどさ」

「んー?」

「白いカードって知ってる?」

「……」

 

 なんだそれ…

 

「ぜーんぜん、知らなーい」

 

 誰だよそんなクソみたいな噂を流したのは…

 

 To Be Continued…




一方その頃

明日香
「はぁはぁ…これで私たちの3度目の勝ちね。流石に、そろそろ…そこを通してもらうわよ…っ!!」

万丈目
「ぜぇぜぇ…まだだ!まだ終わっていない!僕は諦めていないぞぉー!あすにゃん!」

明日香
「あ、あすにゃんはやめなさい!」
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