烙印からの帰還者〜天上院家の末っ子は脳筋デッキしか勝たん〜 作:Eクラス
GX専用脳筋デッキにしては頑張った…
今は使われていない特待生寮。
もちろんインフラはストップしている。電気は行き届いていない。暗闇のダンジョンはちっぽけな懐中電灯と月明かりだけを頼りに進んでいくしかない。
じめっと云うよりねっとりした不快な空気が十代たちの肌を撫でて歓迎する…
「アニキ〜もうムリっすぅ。帰ろうよ〜」
「何行ってんだ翔…今入ったばっかりだろ?」
「でも、十代。今ならまだ引き返せれるんだな。絶対何かいるんだな〜」
「確かに。隼人くんの言う通り、ワタシたち誰かに見られてる感じがするわ…」
「「ひぃ、やっぱり〜」」
(…)
たぶん。それは真樹那が潜入させたマスカレーナのことだろう。
「俺たち以外にも誰かいるのか?おもしれーじゃん。そいつの正体も暴いてやろうぜ!」
「いや全然おもしろがっちゃ駄目なやつっス!」
「そうなんだなぁ。そういうのはだいたい呪われてあの世に連れていかれるのがオチなんだなー」
「触らぬ神になんとやらね…でも、ワタシも気になるわ」
「だろ?」
何も知らない十代たち。正体暴いてやるぜ派と暴かないでそっとしとこうよ派に分かれてしまった。
だからといって二手に別れて探索する案は却下されたがな。
確実に自分たち以外に誰かいる。
そんな疑念に囚われつつ、十代たちの探索は続いた。
とある部屋では千年アイテムの絵を発見した。
闇のデュエルを研究していたらしい。
ふと、榊玲奈は写真立てがあることに気がついた。
『10JOIN』とサインされているイケメンはふと誰かの面影があった。
「ねぇ、この人が明日香さんのお兄さんじゃない?」
「ほんとだ。真樹那に似ているようで似てないな」
「あのバカと同じにしちゃ失礼よ。まぁ、中身があのバカみたいな感じじゃないことだけを祈るわ」
「うへー辛辣ー」
まぁ、天上院吹雪がどんな人物かは会ってからのお楽しみということで。
あまり期待しないでおこうと思う榊玲奈であった。
「で、何してんだ?」
「こういうのって写真の裏とかに手がかりがあったりするものよ」
「ふーん?」
榊玲奈は、額縁から写真を取り外して裏返してみた。
もしかしたら、お目当てのブツが紛れ込んでいるかもしれないという淡い期待もあった。
「何もなかったな」
「ハズレね。他を当たりましょう」
もちろんそんな簡単な話でもない。
榊玲奈は肩を竦めて写真を懐にしまった。明日香に渡すためにだ。
十代に渡して明日香とくっつけてあのバカを孤立させようかとも考えたけども、やっぱりやめた。
そんなことをしなくても期限がくれば…
(…)
「なぁ、十代…ちょっとマズいことになったんだな」
「どうした隼人?」
「翔がいなくなったんだな…というか逸れた」
「は?嘘だろ??」
辺りを見渡す。
懐中電灯で周りを照らしても近くにいるのは榊玲奈と隼人だけだった。
「翔くん。もしかして、異世界に飛ばされちゃった?」
「マジかよ翔!?」
「いやそんな話があってたまるか、なんだなぁ…」
「冗談よ?とりあえず翔くんを探しましょ?本当にワタシ達以外の誰かがいたら大変だわ」
「あぁ。由々しき事態なんだな」
「おーい、翔ー!!どこだー?出てこーい!!」
十代たちのミッションが追加された。
(…)
「えぇ。わかってる…まったく世話が焼けるわね」
数分前には一緒にいた。
なら、まだ近くにいるはず。
「アニキー?隼人ー?玲n…榊さーん?」
十代たちと逸れた翔は気がついた時にはひとりぼっちになっていた。
探せば探すほど自分がどこにいるのかもわからなくなる。
「なんだろここ…」
明かりのついた部屋だった。
階段を降りるとなると地下になる。
さらに部屋の続きには洞窟や鉱山のような地下通路が伸びていた。
絶対に怪しい。
怪しいといえば何でここの部屋だけ明かりがあるのだろうかと考えるべきだった。
インフラは終わっていて電気がつくはずもない部屋にだ。
この明かりは蝋燭の灯火だった。
誰かがつけたのだ。
この場にいない十代でも隼人でも榊玲奈でもない他の誰か…
地下通路に気を取られてわからなかった。
たった一瞬のことだ。しかし、判断するのが遅かった。
背後に誰かいた。
「こんばんは、ボクちゃん」
そいつは黒ずくめの大柄な男だった。
そいつは何故か衣服がボロボロだった。何者かとの壮絶な戦いがあったのだろうか。
お尻が痛いのだろうか?お尻を押さえている。
「だ、誰だ…うわー!?」
ぺかーと光った謎の光を浴びて翔の意識は途絶えた。
「今の悲鳴!?翔だ!!」
「あっちの方からしたんだなー!」
(…)
十代たちは翔の悲鳴がした方向へ走り出した。
翔と同じく洞窟の通路に繋がる部屋にたどり着く。
通路の奥からは怪しい男の笑い声がした。
「待ってろよ翔!」
躊躇はしなかった。
隼人が尻込みする。これが普通の感性だと榊玲奈も思う。
でも、十代は何の躊躇いなく走り出した。
長い通路を超えた先には空洞の広場があった。
陰気臭い闘技場のような闇の儀式でも使われていたかのような異様な空間だ。
一同は闇のデュエルの研究も眉唾物ではないと思えるくらいだ。
そして、この場に似合う黒ずくめの大男の姿と、棺桶に横たわる翔の姿があった。
(…)
「誰だお前は!翔を返せ!」
「フハハハ、ようこそ遊城十代。我が名はタイタン。貴様には悪いがこれから闇のデュエルによって消えてもらう」
「なんだと?」
「あいつ、十代のこと知ってるんだな」
「えぇ、妙な話ね…」
「闇のデュエルだって?おもしれーじゃねぇか。受けてたってやるよ!俺が勝ったら翔を返してもらうからな!」
「あぁ、その時は好きにするがいい」
(そう。ここはそういう場所なのね…)
「それよりも一個だけ聞いてもいーか?」
「何だ?」
「お前…ケツいてーんか?大丈夫か?うんこか?トイレは済ませたか?」
「フハハハ!敵に情けをかけるとは生ぬるい奴め!私はプロだ!どんな状況でも仕事をこなす!だから大丈夫だ!ちょっとまだ痛いだけだぁ!それよりも始めるぞぅ!闇のデュエルをぉ!!」
辺りから白い霧が立ち込める。
お尻を抑えたタイタンが十代たちの前に立ち塞がった。
(彼等がデュエルに夢中になっている間に白いカード探したいわね…)
(…)
(えぇ、そろそろ頃合いかしら。邪魔者には退場してもらいましょうか)
こんな状況下で舌舐めずりをした榊玲奈を誰も知る由はない。
十代vsタイタンの闇のデュエルが始まった。
(マスターちゃん。マスターちゃん。ちょっとまずいことになってるよ。翔ちゃんが人質になって十代ちゃんが闇のデュエル始めちゃった!)
特待生寮に潜入していたマスカレーナは通路の出入り口付近からそっと顔を覗かせていた。
(加勢に行った方がいいのかなー?なんだかヤバそうな雰囲気なんだけど)
(あー、いや。ここは十代に任せよう。本当にヤバくなったら加勢する感じでよろ)
(こういう時ってマスターちゃんってほんとドライというか薄情ね。なんで?キライになっていい?)
(んー、そう?)
痛い話し、前世のアニメの知識とは言えない真樹那。
十代には十代の物語がある。これは十代の戦いだ。経験値を積んでレベルアップしてもらいたい。それは妨害してはならない。
だから嫌いにならいで。
(オレは十代を信じてるしオレを信じて。いざとなったらキミに頼むんだ。信頼してるよマスカレーナ)
(ふーん?信頼してくれてる割には明日香ちゃんに挨拶させてくれないよね?ヒドくない?ケモ耳隊も抜けていい?)
(ダメ。無条件でリンク召喚するのキツいんだから我慢して)
(ちょこっと召喚して挨拶するだけでもいいのに…リンク召喚してくれたらご奉仕いっぱいしちゃうのにな〜)
(おーけー採用。あとで姉さんに紹介しよう!)
(うふ。ちょr…じゃなかった。マスターちゃん大好き)
マスターちゃんはちょろかった。
闇のデュエルは十代が優勢か…
しかし、
ジュウダイノミギウデガ…
ジュウダイクンノヒダリアシガ…
闇のデュエルはLPが減れば体が闇で削れていく。
呑気な会話はマスカレーナもしていられない。
(本当に大丈夫なの?十代ちゃんのカラダがみるみる消えていくんだけど…)
(大丈夫。マスカレーナから見て十代のカラダはどう見えてる?)
(えっと…胴体とクビが……)
(でも、他の2人はなんて言った?)
(あ、あれ?右腕とか左足とか…どういうこと!?ワタシから見たら全然普通にあるわ!)
(そういうことでしょ。見る人によって見え方が違うんだから何かしらのカラクリがある。例えば、手品や一種の催眠術とか)
(でも、曰く付きのアイテム持ってるけど?)
(そいつが本物の千年アイテムを持っていたらの話しだけど)
まぁ、百歩譲っても世界線が違っていてもありえないと断言する真樹那であった。
もし、仮に千年パズルを持っていたらうちの社長が黙っていないだろうし。
そんな言い訳が通用する。
だから今は十代が勝つことを信じて様子を見るしかなかった。
歯がゆい気持ちは真樹那も一緒だ。
手出し不要。
して、ふと感じる視線に気づくマスカレーナであった。
(あ、れ…?なんで、あの子こっちを……!?)
真樹那との会話、十代とタイタンの闇のデュエルに気を取られ、反応に遅れた。
榊玲奈に見られている。
視線があった。
目が合った。
ありえない話しではない。
精霊の姿を見える人間が真樹那以外にいてもおかしくない。
そう確信した瞬間だった。
マスカレーナの視界が、何かの衝撃と共にブレた。
(カハッ…!?つぅー……ッこ、これは!?)
理解の追いつかない衝撃と痛みが全身に走る。
(は?どうしたマスk………??)
自分が背後にいる何者かに腕を掴まれて振り回されたという事実。
勢い余って壁に殴りつけられ頭も強打した。
真樹那の声が聞き取れないくらいに意識が朦朧としていた。
血塗れになっている自分がわからない。
(こん、な…怪物がいたのに…気付かなかったなんて…)
警戒はしていたが油断していた。
(…)
巨体の怪物。
この通路はさぞかし窮屈だろう。
そいつは白かった。
天使のような翼が生えていた。
顔はよくわからない。
顔はよく見えない。
ヒトの形をしているがヒトではない何か。
(う、し……??)
そんな風に見えたのだから怪物と呼ばざるを得ない。
意識が朦朧とする。敵の姿を完全に目に焼き付けることさえできない。
情報が追いつかない。
でも、一つわかることがある。
霊体化している精霊の自分に触れられる存在。
体格差は絶望的だ。攻撃力も。身長差によってマスカレーナは宙ぶらりんに持ち上げられそのまま投げつけられた。
来た道を逆行する。
十代たちから遠ざかっていく。
何回もバウンドして転げ回る。
(…)
今も十代はタイタンと戦っている。
闇のデュエルを行っている。
真樹那は手品か何かだろうというけど心配するものはする。
そんな最中に突如出現した白い怪物…
(すこ、し…でも、じ、、、か、んを……)
この異変は真樹那も気づいたはずだ。
だから、戦闘特化の精霊を応援に寄越してくれるはずだ。
だから、少しでも時間を稼がなくてはならない。
だから…この、異変を十代たちに悟らせたくない。
(…)
(そう…狙いはあくまでワタシ……なのね)
ドシン、ドシン…と一歩一歩が重たい。
地響きのような振動が伝わる。こちらに近づいてくるのがわかる。
もう立ち上がる力も残っていない。
足に力が入らない。
振り回された腕は奇跡的にくっついてはいるが使い物にならない。
抵抗する力も残っていない。
それでも歯を食いしばって、血反吐を吐いて這いつくばってでも、あの広場から少しでも白い怪物を遠ざけたい。
気付けば通路の入り口まで戻っていた。
蝋燭の灯りが痛々しいマスカレーナを暖かく包み込む。
ここが彼女の限界。
終着点だった。
(ご、めん…マスターちゃ、ん……)
ふと見上げた天井。
白い怪物が覗き込むようにこちらを睨んでいた。
とても怖い形相で。
そして…
(圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺圧殺…ッ!!)
まるで誰かを代弁する怒りの声。
白い怪物は大きな足を振り上げる。
踏み潰すために。
圧殺するために。
マスカレーナの意識はそこでブラックアウトした。
To Be Continued…
何か思いついたら書きまーす