烙印からの帰還者〜天上院家の末っ子は脳筋デッキしか勝たん〜 作:Eクラス
明朝。
汽笛の音。薄暗く霧が立ち込める灯台に2人の生徒が佇んでいた。
お互いに見ている方角は同じく海へ向いている。
地平線の彼方。
まっすぐ前を向いていた。
「ずっと暗闇だった夜が明けていく。待ち望んでいた明日が訪れる。真樹那が帰ってきたあの日からそう思えるようになったの」
「あぁ、明けない夜はない」
「えぇ、そうね」
天上院明日香と藤丸亮の2人。
別に密会とか逢瀬でもなく学園内の噂ではベストカップルだとか云われているが、そういう関係でもなく。
カイザーこと藤丸亮が兄・天上院吹雪の親友であり、だから兄の失踪を、そして弟の行方を、何か情報を探してもらっていた。
「人の気も知らないであの子はふらっと帰ってきた。だから、兄さんもいつかきっと…」
「あぁ。吹雪を信じて待とう」
それは奇跡だった。
弟の真樹那が異世界から帰ってきた。
本人はへらへらした態度でケモ耳バンザイの異世界馬鹿野郎だが、嬉しいニュースである。
なら、兄だっていつかきっとその内ひょっこりと現れるかもしれない。
そんな気がしてならない。
「明日香も顔が随分と明るくなってきたな」
「そう…かしら?」
「あぁ、彼のおかげだな」
「もう大変なのよ?あの子ったら兄さんに似てお調子者なんだから」
「ふっ、それは大変だな」
「えぇ、兄さんが帰ってきたらもっと賑やかで手がつけられなくなるわ。きっと」
明日香は肩を竦める。
そして、想像する。
たぶん明日香は兄弟2人に振り回されるのだろう。
いいや、明日香だけじゃない。仲良くなった十代や翔たち皆んなだ。
そんな未来を想像することが今はできる。
明日香の瞳に希望の色があった。
「そういえば、実技試験でもとんでもないデュエルをしたそうだな彼。俺はまた見れなくて残念だよ」
真樹那vs三沢のデュエルのことだろう。
あのデュエルの噂は学年全土に広がっていた。
「そうなのよ。LP30000はデタラメすぎよまったく」
「LP30000はデタラメだな。そんなことされたら俺でも勝てん」
「あら?カイザーの異名を持つあなたでも?」
「さあな。だが…いつか、彼ともデュエルしてみたいものだ」
「ならあの子に挑戦してみる?」
「ふっ、俺が挑戦する側か。おもしろい」
「えぇ。なんたって対戦相手は私の自慢の弟ですもの。あなたでも簡単には勝たせてもらえないわよ?」
明日香はハニカんだ。
たぶん、こんな少女のような顔を見せるのは本当の兄のように慕った亮にしか見せない太陽のような笑顔だった。
そう。
明けない夜なんてないのさ。
To Be Continued…