烙印からの帰還者〜天上院家の末っ子は脳筋デッキしか勝たん〜   作:Eクラス

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16 犬猿の仲?

 デュエルアカデミアのある島はけっこう広い。

 

 道を逸れて森に入ってしまえば下手したら迷子にもなる未開の土地。何人もの生徒たちが遭難したとかしなかったとか。

 

 真樹那の感想としてはサバイバルするには初心者にはうってつけの環境らしい。

 

 自然豊かで海、川、湖、山…もとい火山。

 

 いろんな環境下でサバイバルできてキャンプできるじゃんとテンション上がったものだ。

 

 無人島ではないので、最悪は寮に帰えればいいだけだし。

 

 そんな軽い気持ちで例の白いカード探しは島全土へと本格的に始まるのであった。

 

 今日は休日。

 

 授業はなく、三沢と共に寮を出たはずだがアイツは校舎裏にある火山の方へと足を運んでいた。

 

「うひょー見晴らしサイコーかい」

 

 絶景絶景と火山の頂上から見える景色を堪能して約10分。

 

「えぇ、綺麗ね…」

「…」

 

 何故か榊玲奈が隣にいた真樹那はイラっとしていた。

 

 たまたま目的が同じ方向にあったらしい。

 

 そんなバカな話があるはずもなく…

 

「ねー…オレのこと嫌いなんだろ?着いてくんじゃねー。邪魔すな」

「それはこっちのセリフ。ワタシのことはお構いなく。ワタシはワタシで例のカード探ししてるだけだし。ついでにアナタの処刑場を探してるだけよ」

「はいはい…」

 

 嫌味ったらしく笑顔でさらっと怖いこと言ってくる。

 

 真樹那としてはこんな所で不毛な言い争いをするつもりもなく。

 

 マスカレーナを襲ったかもしれない相手なんだ。

 

 相手にするのも馬鹿らしくテキトーにあしらうだけ。

 

 とっとと退散することにした。

 

「ちゃんと探したのかしら?」

「探したー」

「嘘おっしゃい。火口のギリギリまで行って調べなさいよ。うっかり突き落としてあげるから」

「ふざけんな!」

 

 こいつ。やっぱりオレを殺す気だ…などど、そんなことを思いながら真樹那は退散するのであった。

 

 いくら探してもないものはない。

 

 

 

 真樹那が次に訪れたのはどこかの遺跡跡。

 

 うる覚えになるが、この地下に三幻魔が封印されているんだっけ?

 

 あと、どこかの異世界に繋がっていたりする場所だ。あれだろ?三幻魔の影響で次元に揺らぎが発生しているとかそうでもないとか。

 

 真樹那はしゃがみ込んでは手のひらを地面に押し当てる。

 

 何かがいることはわかった。きっと三幻魔なのだろう。

 

 でも、これじゃない感。

 

 お目当てのディス・パテルくんじゃない気がする。

 

「こんな場所があったなんて知らなかったわ。でも、何も無さそうね。ほら、次の場所へ案内しなさいよ」

「う、うぜー…」

 

 その舐め腐った態度に真樹那の怒りメーター50%アップだ。

 

 ストーカーの如く跡を着いてくる榊玲奈を撒くために真樹那は木から崖、川を飛び越えて退散するのであった。

 

「なにかしらあれ?ターザン?」

(…)

 

 

 次に真樹那が訪れたのは、薄暗くじめっとした

井戸の底。正午だっていうのに、ここには太陽の光は微かにしか届かない。

 

 真樹那が指先に魔力を練って辺りを照らす。

 

 ここは噂通り、デュエルモンスターズのカードが捨てられていた。

 

 心のない者たちが捨てたデュエルモンスターズの墓場と云えばいいだろうか。

 

 無念の声で咽び泣く雑魚モンスター達が真樹那の周りにわらわらとやってくる。

 

「ねー、キミたち。ちょっと聞きたいことがあるんだけどー」

 

 事情を知っている真樹那は至って普通にいつものムカつく爽やかな笑顔で彼らに訊ねる。

 

『なぁなぁオレ達のことが見えてるのかよ!』

「まあねー。オレは真樹那。以後お見知りおきを…と、まぁそんなことよりも白いカードなんてヤバそうなカード見かけなかった?」

『白いカード?そんなものは見かけなかったなー。誰か見かけたヤツいるかー?』

『『『知らなーい』』』

 

 まぁないでしょーね…とわかっていたけど。

 

 ないものはない。

 

 そんな会話をしていると精霊たちが真樹那にまとわりついた。

 

「何してんの?」

『なぁなぁマキナの旦那ぁ。オレ達をここから出してくれよ〜』

「えー」

『めっちゃイヤそうな顔!?でも、お願いだー。オレ達兄弟だけでも頼むよ〜』

「うん。却下で」

『ひ、ひどい。ここまで血も涙もないニンゲンは初めて見ただ〜』

「いや血も涙もないのはここにキミたちを捨てた人間でしょ。あと、ここの仲間を見捨てようとしたキミたちもだ」

『『た、確かに!』』

「それにキミたちをここを連れ出すのはオレの役目じゃない…そうさな。きっといつかキミたちの元へ運命のヒトが現れるはずじゃよ」

『『え〜ほんとかよー!?』』

「おー、ほんとほんと。オレ嘘つかない」

 

 ワケあって万丈目がここに訪れてくる。

 

 今、ここから彼らを連れて帰ることはできなかった。

 

 代わりといってはあれだが、足元にバラバラに散らばっていたカードを丁寧に束ねて山積みにしておいた。

 

「まっ、気が向いたらまた顔出すから。何か変わったことがあったら教えて」

『マキナの旦那は白いカードを探してるんだよな?それ探したらいいのかぁ?』

「そーそー。けっこうヤバいカードだから近くにあったら一発でわかるはず。よろしくー」

 

 そう言って真樹那は退散する。

 

 ムカつくほどに清々しい笑顔で手を振り、井戸をカッコつけて登ろうとした時だった。

 

「異世界馬鹿野郎くんそこにいるのかしら?飛び降りるから待ってなさい」

「は?おまっ、バカ!!ちょ、待っ…!?」

 

 有無を言わさず。

 

 榊玲奈が井戸の中へ飛び込んできた。

 

 もちろん真樹那は顔面で榊玲奈をキャッチした。思いっきり顔面を踏んづけられて派手に転倒した。

 

 真樹那は榊玲奈の下敷き。

 

 顔面を強打した。

 

 顔面を圧迫の刑か何か…

 

『だ、大丈夫か〜?マキナの旦那ぁ?』

『もしかしてこのツンデレ系美少女がオラたちの運命のヒトなんじゃ!?』

「……いや、コイツはかまってちゃんのメンヘラ激重爆弾女だから」

「は?死にたいのかしら??」

 

(((こ、こえー)))

 

 まさに鬼の形相。

 

 カードの精霊たちは榊玲奈の気迫とただならぬ雰囲気に怖気付いてカードに引っ込んでいった。

 

 真樹那の怒りメーターは75%だ。

 

 

 

 

 次に2人が訪れたのは発電施設…

 

 井戸に置き去りにしようとしたけど自力で這い上がってきた榊玲奈に根負けしたわけだが。

 

 云うて、ないものはない。

 

 探せば探すだけ虚しい現実を突きつけられる。

 

 こんな所に隠すわけないじゃーんと笑われるのがオチである。

 

「おい、危ないからあんま近づくなよ?」

 

 鉄塔に触れようとする榊玲奈を注意する。

 

「あら?心配してくれるの?」

「うるせー。もうオマエ帰れ」

 

 榊玲奈相手だと真樹那はついつい口が悪くなる。

 

 このかまってちゃんメンヘラ激重爆弾女を見ていると苛々してしまう。

 

 それはひと言で嫌いだからという単純な話でもなかった。

 

 殺害宣言してくるほどの激重メンヘラ女だぜ?

 

 マスカレーナを襲った犯人かもしれない女でもある。

 

 ハラワタが煮えくり返りそうな断腸の思いというやつだ。

 

 それでも、この感情を抑えているのは優先すべきことがあるから我慢している。

 

 一刻も早く白いカードを探して被害を出さない。誰もが、姉さんにも知られることもなく試練を終わらすことだ。

 

 でも、この苛立ちの理由はそれだけじゃなかった…

 

(オレがオマエを心配しているだって?当たり前だろバカヤロウ)

 

 自分が試練を望まなかったら榊玲奈の父親は死なずに済んだ。

 

 自分が試練を望まなかったら榊玲奈は不幸にならなかった。

 

 そんな自責と後悔の念はいつまで経っても止むことはない。

 

 榊玲奈は明らかに復讐に囚われていて、見ているだけで危なっかしいし。

 

 あっちの世界…鉄獣戦線の仲間にもそんな奴がいた。

 

 だから榊玲奈と接触するとこの感情が溢れ出す。

 

 止められないから腹が立つ。

 

 ムカつく女だけど放っておけない。

 

 だから…

 

「ここにもなさそうね。何でないのかしら?」

「さてね」

「だったら次行くわよ。次。早く案内して」

「はいはい」

 

 このウザさも…もう怒る気力も無くなってしまう。

 

 真樹那の怒りメーターは25%まで減った。

 

 

 

 気が付けば夕暮れの空になっていた。

 

 次の場所は港になる。

 

 灯台やら倉庫やら探すべきポイントはそこそこあるだろう。

 

 榊玲奈へ気を遣いながらカード探しをするのはどっと疲れた。別に今日無理に探す必要なくね?と思えるほどに。

 

 見慣れたレッド寮から鉄橋を渡る。

 

 ちょうど中間地点で榊玲奈はふと足を止めた。

 

 ポケットから電子手帳を取り出す。

 

 今まで島中を探索して電波の届かないところにもいたから学園や友だちからの連絡も見逃していた。

 

「そう…」

 

 ため息が溢れる。

 

「アナタは、当然知らないわよね…」

「なにが?」

「昨日、廃寮に行ったじゃない?あれのせいで十代くんと翔くんが退学をかけた制裁タッグを受けることになったらしいわ」

「そうかい…」

「何故ワタシはお咎め無しなのかしら?ワタシもあの寮へ入ったわ。ワタシも罰されるべきよ?」

「成績優秀なオベリスクブルーだからじゃね?」

「納得のいかない話ね。でも、それじゃ筋が通らないわ。隼人くんもオシリスレッドよ?おかしいと思わない?」

「しらねー。これを決定させた人間が十代や翔のことが気に入らないから一枚噛んだんじゃない?ほら、クロノス先生辺りならやりそうじゃん」

「…」

 

 アニメ知識がある手前、テキトーに話を合わせる。

 

 それを聞いて榊玲奈は神妙な顔をした。

 

「今は例のカード探ししてる場合じゃなさそうね…」

「そうさな」

 

(そうだ。こいつはオレじゃなければ普通に他人のことを心配できる奴なんだよ…まだ周りが見えている)

 

 だから真樹那も調子が狂う。

 

 たぶん榊玲奈もそう思っている。

 

「十代くんは強いから問題なさそうな気がするけど翔くんが心配ね」

「ここが翔にとっての正念場だな」

「えぇ、そうね。ほら、行くわよ…」

「え、急になんなん?引っ張るな、よ…?」

 

 真樹那の手を取り来た道を引き返そうとした。

 

 どこに行くかはなんとなく察せるけども。

 

 真樹那が驚いたのは榊玲奈が自分の手を握ったことだ。

 

 普通嫌いなヤツの手を握れるか?

 

「今から校長先生の所へ直談判しに行くわよ」

「いや、気持ちはわかるけど…いやいや、そうじゃないじゃん」

「…何が言いたいのかしら?」

「オマエはこれが平気なのか?って話し」

 

 訝しがる榊玲奈に、自分の手を握っているとこを指差した。

 

 榊玲奈はそれがどうした?という顔をしている。

 

 普通、殺したいほどに父親の仇の手に触れたいと思う?

 

 否。否である。

 

 真樹那は榊玲奈の情緒がわからなくなる。

 

 正直怖いまである。

 

「アナタが女の子の手を握ったこともない童貞ならごめんなさい。でも、急いでるの。つべこべ言わずに着いてきて」

「ど、童貞ちゃうわ〜…」

 

 榊玲奈は有無を言わさず引っ張ろうとする。

 

 真樹那も童貞と煽られてついムキになる。

 

 傍から見ればお前ら仲良しかよと見られるシチュエーションだ。

 

 そんなシチュエーションはタイミング悪く誰かと出会して勘違いにまで発展してしまう。

 

 まぁ、お決まりというやつだ。。

 

「真樹那くん…榊さん…」

「「あ…」」

 

 例の制裁タッグデュエルの件で落ち込んでいる翔と出会した。

 

 1人だ。十代たちは近くにいない。

 

 港の方からとぼとぼと歩いてきたのだ。

 

 意気消沈している中で知った2人が自分のことなんか気にせず手を繋いでリア充している。

 

 もうそれはショックだろ。

 

 榊玲奈がバツが悪そうに手を離そうとするも、もう遅い。

 

「ははっ…ケンカするほど仲良いっていうよね…僕とアニキがたいへんだって時にさ……」

「うん。違うぞ。翔、キミは重大な勘違いをしているぞ」

「そんな震え声で言ったって説得力ないよ…!!」

「うんそうなんだけどさ!!」

「翔くん。アナタが制裁タッグデュエルを受けることになったことを知っているわ。でも、おかしな話よね。昨日の一件はワタシも同罪なのに、寧ろ翔くんは被害者なのにね。だから、異世界馬鹿野郎くんと校長先生の所に説得しに行こうとしていたところなのよ」

「そんな照れ隠しで気をつかわなくていいよ榊さん。僕のことなんかほっといてデートの続きを楽しんでよ…うわぁーーーん!!」

「ちゃんと人の話聞いてたかしら…!?」

「あちゃー…」

 

 翔は聞く耳持たずに泣いて走りだしてしまった。

 

 翌日、真樹那と榊玲奈が橋で手を繋いでいたという噂が学園中に広まったのは云うまでもなかった…

 

 To Be Continued…




もちろん噂は明日香の耳にも…
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