烙印からの帰還者〜天上院家の末っ子は脳筋デッキしか勝たん〜 作:Eクラス
真樹那は榊玲奈に引っ張られ校長室へやってきた。
もちろん十代と翔の制裁タッグの件へ直談判するためにだ。
やれることはやろう。
真樹那は神妙な面持ちでスッと机に手を伸ばした。
「校長先生。こちらのブツをお納めください。これに免じて2人の処罰を、せてめ晩飯抜きの刑にしてやってくれませんかね」
「真樹那くん。このようなモノは教育者として受け取れませんよ…」
「あーあ、残念です。これはトメさんに許可を貰って撮ったプライベート写真なのになー」
「ぐ、ぐぬぬ…」
ひらひらと見せびらかされる数枚の写真。
喉から手が出るほど欲しいだろうブツに目が泳いでいる。
教育者として、あるいは1人の男として校長の鮫島先生は葛藤した。
効果は抜群だ。
こんなこともあろうかと、いつかは校長先生に交渉を持ちかけることもあるだろうと事前に用意しておいたトメさん写真が効果を表した。
ニヤニヤする異世界馬鹿野郎。
オロオロする大の男。
そんな2人のやり取りを榊玲奈は冷めた目で見ていた。
「アナタのせいで翔くんはさらに窮地に追いやられそうね。引っ込んでなさい」
ため息混じりに真樹那の後頭部を叩く。
「鮫島校長。昨日、ワタシもこのバカもあの寮にいました。十代くんと翔くんを罰するというならワタシ達も処罰されるべきではないでしょうか?」
「すまないが、もうすでにサモン委員会で決まってしまったことでね。この件については私では本当にどうすることもできないのだよ。明日香くんや隼人くんにも言ったのだがね…あの2人の代わりになることも許されていないのだよ」
「そう、ですか…」
やはり駄目だった。
校長の肩書きを持ってしてもどうすることもできない権力が背後にあるのだろう。
「では、対戦相手が誰だかわかりませんか?ヒントだけでもいいんです」
「それも私にはわからない。力になってあげれなくてすまないね」
鮫島校長は首を振る。
何を言っても無駄なのだと悟った。
これには真樹那も榊玲奈も肩を竦めるしかない。
最悪の場合、真樹那は海馬コーポレーション副社長である木馬先生に土下座でもして2人の退学を白紙にしてもらおうと考えてはいるがそんなことも起きないのは知っている。
十代は当然として翔も強くなる。
それに翔が強くなるための通過儀礼でもある。
邪魔をしちゃいけない。
「わかりました。お忙しい中お時間取らせました。失礼します。行くわよ猿」
「ウキー…!?」
彼らは退出していく。
「あぁ、真樹那くんは待っておくれ!まだ話したいこたがある!」
「校長?トメさんの写真はあげないよ?」
「その話じゃなくて!」
榊玲奈だけ退出することになった。
一礼して退出していく彼女を見届けたあと、真樹那はトメさん写真をひらひらさせながら訊ねた。
「それで、オレだけに話しって何ですか?」
「あぁ。話というのは君が探している例のカードについてでね。私も大方のことは聞いているよ」
「あぁ、トメさんもあの話してくれたんかな」
「トメさんからも掲示板の件について連絡くれてね。我々が思っているよりことは事態は急は要すると私は睨んでいる」
「じゃあ校長先生がなんとかしてくださいよ〜」
「私ができることはするつもりだよ。だが、やはり君の協力が必要だ」
「まぁ初めからケリは自分でつけるって決めてるけど」
鮫島校長も例のカードの件に関して、このデュエルアカデミアのオーナーである海馬瀬戸から話は行き届いている。
烙印事件。クリスマス事件のことの顛末も。
榊玲奈のことも。
「今、私に何かできることはあるかね?」
「そうさなー。強いていうなら…」
鮫島校長に頼るのであればこれしかないだろう。
「三幻魔」
「どうしてそのことを…」
「異世界トレジャーハンターの情報網ってやつでーす。別に三幻魔を今すぐどうこうって話でもないけど。アレらを封印している地下へ行って例のカードが落ちてないか確認してきて欲しいっていうのが一つ目のお願いかなー。危険ならオレもボディーガード役として同行するし」
「…わかりました。それで、他にもお願いしたいことがあるのかね?」
「もしオレ1人でどうすることもできなかった時は三幻魔を使わせてよ。ほんと無茶言ってるのはわかってるけど、姉さんや皆んなを守るためにお願いします」
「わかりました。それも考えておきましょう…」
封印を解いてはいけない幻魔を利用しようとするのは本当に無茶苦茶なお願いである。
真樹那が白いカードを見つけるのが先か榊玲奈や他の生徒が見つけるのが先で取り返しのつかない事態になるかだ。
真樹那はいつになく真剣な顔をして頭を下げた。
鮫島校長にトメさんのプライベート写真をしっかりと渡して…
時刻はすっかり夜。
寮の晩御飯も早く食べないと没収されてしまう。
翔はまだ寮へ戻っていなかった。
制裁タッグデュエルの件について、本当にどうしたらいいのか、今から十代にどんな顔して会えばいいのかもわからなくて、アテもなくトボトボ歩いていた。
気付けばイエロー寮の前に立っていた。
無意識に助けを求めていたのかもしれない。
一度はラブレター事件で真樹那に助けてもらった。真樹那なら十代とは違う解決方法を考えてくれるかもしれない。
また助けてくれるかもしれない。
そう思ってしまった。
でも、また守られることになるのだが、それでお前はいいのか?という自問自答が生まれてしまった。
(ここはデュエルアカデミアだ。勝負の世界だ。それはわかっているけども…)
一瞬脳裏に過ぎるのは、先ほど夕刻の真樹那と榊玲奈が手を繋いでいるシーン…
なんだかムカーってしてきた。
翔は、真樹那に頼ることなく来た道を引き換えすことに、回れ右をした。
真樹那に頼らなくてもなんとかして見せる。
異世界帰りだかなんだか知らないけどチートみたいなカードでオレTUEEしている奴の力なんか借りるもんか…と勝手に半ギレ状態になる。
「僕だって異世界のカードがあれば苦労しないよ。真樹那くんだって強いカードがなくて僕の立場だったら明日香さんに泣きじゃくってみっともない姿を晒してたはずッス!!」
そうに違いない。そして、それをイメージにしてまた1人勝手にムカムカしてきた。
真樹那はズルい。
自分だけズルい。
僕にも強いカードがあれば。
異世界のカードでオレTUEEしたい。
「あーあ、僕もアニキや真樹那くんみたいに強くなりたいなー。神様お願いです。なんでも言うこと聞きます。いい子にします。だから、アニキにも真樹那くんにも誰にも負けない強いデッキをくださいっス!!」
それはないものねだりだ。
しかし、そんなお願いをされたからには神様も黙っちゃいないでしょ。
あぁ、天上院真樹那の脳筋キメラデッキを超える強さとなれば一体どれほどの試練が彼に必要だと言うのだろうか。
その試練は彼には耐え切れるだろうか?
それも、制裁タッグが始まる数日で乗り切れるとでも??
この融合召喚しか召喚方法がない世界でどのデッキなら天上院真樹那に勝てる?
どのデッキなら遊城十代と渡り合える??
丸藤翔に似合う試練は…
「ねぇ、キミ」
「え、誰!?」
翔は背後から声をかけられた。
振り返ると見慣れない生徒が目の前に立っていることに驚く。
フードを被ったオベリスクブルーの男子生徒。日本人の容姿をしていないことは確かだ。
こんな生徒いたっけ?と思うけど上級生なのかもしれない。翔が知らないだけなのかもしれない。
「キミ。マキナに用事があったんじゃないのかい?」
「えっと…」
「あぁ、キミはマキナの素行の悪さに嫌気が差して諦めて来た道を引き返したんだったね」
「いや、そうじゃなくて…」
翔が言いたかったのは「君は誰?」だ。
めっちゃ怪しい人物に声をかけられて、しかも行動まで読まれている。
それに真樹那の知り合い??
「キミ、制裁タッグデュエルのことで悩んでいるんだよね?もう学園中噂になってるよ」
「う、うん。でも、君には関係ないことだから」
「そうだね。ボクにはどうでもいいことだ。けど、強くなりたいというキミの気持ちが分かるだけに見過ごせなくてね。柄にもなくお節介をしようと思ってるんだ」
そう言ってオベリスクブルーの生徒は一枚のカードを翔に手渡した。
「あの、これは?」
「これはね白いカードと言ってね、これでキミは強くなれる。制裁タッグにも勝てるよ。お守り代わりに持ってなよ」
「…」
「ウソだと思ってるでしょ?怪しいもんね、わかるわかる。でも、明日にでも、まずはそうだね。オシリスレッドの勝てそうな相手とまずデュエルしてみな?それではっきりわかるよ。キミは強くなれる」
「えーと…ありがとう。君、名前は?」
「ボクの名前はー……まっ、教えてもいっか。ボクの名前はアルベル。このことはキミとボクだけの秘密。マキナには内緒だよ?」
そう言ってオベリスクブルーの生徒はブルー寮の方角へ帰って行った。
To Be Continued…
64:名無しの導化@異世界からの挑戦状
朗報!白いカードはある生徒の手に渡ったよ!やったね!おめでとう!