烙印からの帰還者〜天上院家の末っ子は脳筋デッキしか勝たん〜 作:Eクラス
セカイは回る…
私は決してそれを忘れない…
私は決してアナタを許さない…
GX世界にも受験シーズンが到来する。
デュエルアカデミアの入学試験はニ通り存在する。
筆記試験と実技試験。
まず、筆記試験で全国各地から集まったデュエリストの学力、デュエルに必要な知識を測り、学園が決めた合格ラインを超えていなくてはならない。
人気を誇るデュエルアカデミアだからこそ、ただのお遊び気分、記念受験で挑むバカも多い。
そんな輩の大多数は出題されるカードテキストに何が書いているかわからず素人には回答できないようになっている。
逆を言えばデュエルモンスターズが好きなオタクなら楽勝。イージーな問題ばかりである。
そして、もう一つの実技試験も実はイージーモードであったりする。
ここ海馬ランドにある試験会場にてすでに試験が開始されていた。
(これが試験?物足りない…)
と思う優秀な生徒もいるだろう。
なんたって対戦相手の試験官のデッキは試験専用デッキだ。
レッグル攻撃力300を入れているような接待デュエルには微妙な顔になってしまう。
「受験番号2番のあの子、なかなかいいわね」
「ふむ。天使デッキか。明日香と気が合いそうだな」
「ええ、あとで声をかけてみるわ」
中学からのエスカレーター入学ではなく今年入学試験を受ける生徒なのだろう。
ここで言う受験番号2番ということは筆記試験で2番目の成績だということ。
天使コンボで試験官をボコった彼女とは良きライバル関係になれそうだ。
(あの子も私と同じ、なのね…)
一見クールそうに見える彼女、どこか寂しげそうでデュエルで気を紛らわしているみたいだ。
それは兄弟が2人も行方不明になってしまった彼女だからこそ人の機微に敏感に反応してしまったのかもしれない。
明日香も周りに心配かけまいと明るく振る舞おうとする。
「私も天使デッキを構築中だから何かアドバイスもらえるかしら?」
要するに放っておけないそんな気がした。
とまぁ、明日香の心配ごとはさておき、受験生たちが各々デュエルを繰り広げている何やら一際色めきあっている声がした。
それは明日香と共に見学にきていたジュンコとモモエであった。
「キャー何あの殿方イケメン過ぎますわー!」
「はしゃぎ過ぎよモモエ!でも間違いなく高身長イケメン!ほら!明日香さんも見てくださいよあのイケメンぶり!なんですかアレ?この地球上に存在しなかったタイプです!」
「どんなタイプよそれ…」
「あれですよあれ!巷でよくある異世界から帰ってきた俺TUEEE系男子ですわ!纏っているオーラがダンチですわぁー!」
「だからどんなタイプなのよそれ…」
中学からの付き合いだけど2人の感性がわからなくなる。
まぁ確かにムカつくほどにイケメンかもしれない。
なんか、こっちに気づいて手まで振ってくる自意識過剰サービス精神が過ぎるイケメンだこと。
なんだか癪に障る。
別にイケメンが嫌いなわけでもないし寂しさを紛らわすために恋人の1人でも作りたいわけでもない。
しかし明日香のお眼鏡に適う相手は中学の時は見つからなかった。
だから高校に入ってもあまり期待していない。
だからあのイケメンもそこら辺のただの受験生として処理するだろう。
今の明日香には兄弟たちとの絆であるデュエルモンスターズが全てなのだ。
そして、明日香の時は止まった。
確かにアレはイケメンだ。
まぁそれは当然である。
兄の天上院吹雪がイケメンでモテるように、もはや天上院家の血筋だろう。
ジュンコやモモエに限らずオベリスクブルーの女子生徒だけでなく今年受験の生徒たちもが色めきあっているほどだ。
当の本人は慣れっこなのか澄まし顔で、ただこっちに手を振ってくる。
やっほー姉さん久しぶりー!元気にしてたー?
なんて言っていたのかもしれない。
でも、それはありえない。
だって、彼は3年前に失踪したはず。
どれだけ探しても見つからなかった。
父が1億円の懸賞金を賭けても発見できなかったのだ。
痕跡も手がかりも一切なしだ。
だから、こんな所にいるはずがない。
生きているなら自分や家族に心配かけまいと連絡の一つくらい寄越したはずだ。
(あぁ、これはきっと夢ね…)
でも、見間違えるはずがない。
弟がこれからデュエルする?
え、デュエルアカデミアに受験するの?
明日香の止まっていた時間が再び動きだす。
「な、なんかいるーーー!?」
3年前に失踪していたはずの弟がなんかいた。
さて天上院真樹那の実技試験が始まる。
注目するのは明日香だけではない。
明日香と共に見学に来ていたアカデミア3年トップの実力を持つのカイザーこと丸藤亮。
エレベーター式で進学したオベリスクブルー学年トップと呼び声高い万丈目純。
受験番号1番のトップの成績を持つ三沢大地。
気弱な少年・丸藤翔。
遅れてやってきた受験生・遊城十代。
「すげーすげー!なんかめちゃくちゃ盛り上がってるな!あいつ只者じゃねーぜきっと!くぅ〜俺もあいつとデュエルしてみてー!」
「いや、君は遅刻したんでしょ?早く試験受けてきなよ」
「あっ、いっけねー忘れるとこだった!あぶねーあぶねー」
危うく自分の試験を忘れそうになるくらい、それほどまでに会場が熱気に包まれていた。
キャーキャーと色めき合う女子たちとは違って男子達は敵意剥き出しである。
リア充受験落ちろ!と天に祈りを捧げる者を出てくる始末。
でも、この異様さが正解だ。
普通じゃない。
同じ高校生には見えないもの。
だから、
「あなたの実力がどれほどのものか確かめさせてもらうわよ。受験番号5番の天上院真樹那…」
品定めする舞台としてはちょうどいい。
『『デュエル!』』
お互いデッキからカードを5枚ドロー。
デュエル開始である。
「私から先行でかまわないかね?」
「どうぞー」
試験官が先行。
真樹那は肩を竦めて先を促した。
GX世界なら先行取られても問題ないという判断だ。
「私のターン!ドロー!私はモンスターを裏側守備表示でセット!さらにカードを1枚伏せてターンエンド!」
(あらら?これだけ??)
相手(試験官)LP4000
手札4枚
▢▢①▢▢
▢▢②▢▢ ▢
▢ ▢▢▢▢▢
▢▢▢▢▢
手札5枚
自分(真樹那) LP4000
配置
①セットカード
②裏側守備表示
いくら相手が試験用デッキだからといっても手ぬるいプレイだ。
「なら、アンタのターンエンド時にオレはデッキの上から8枚裏側表示で除外して手札より【叢雲遠呂智】を特殊召喚」
「は?」
【機巧蛇-叢雲遠呂智】
星8
攻撃力2450
守備力2450
ざっくり効果: このカードが手札・墓地に存在する場合、自分のデッキの上からカード8枚を裏側表示で除外して発動できる。このカードを特殊召喚する。この効果は相手ターンでも発動できる。
このGX世界じゃちょいと反則級になるのかね。
会場はどよめいた。
「いや、凄いな。いきなり星8モンスターを先行相手ターンに出すのか彼は」
「くぅ〜カッケー!あんなのありかよ!」
「というか君、試験は?」
「あぁ、なんか『ちょいと待つノーネ。彼のデュエルが終わってからにするノーネ』だってさ!」
ギャラリー達は見たことのないカードに驚いていた。
相手(試験官)LP4000
手札4枚
▢▢①▢▢
▢▢②▢▢ ▢
▢ ▢▢③▢▢
▢▢▢▢▢
手札4枚
自分(真樹那) LP4000
配置
①セットカード
②裏側守備表示
③【機巧蛇-叢雲遠呂智】
「じゃ、オレのターンドロー」
手札
【クリッター】
【紅蓮魔獣ダ・イーザ】
【リミッター解除】
【ハーピィの羽箒】
【強欲で貪欲な壺】
(お、いいじゃん…)
手札事故多発デッキだからこんな所で運は使いたくないよなーと思いながらもこれからアカデミアで共にするライバル達に初日早々に手の内全部さらす必要もない。
「オレはハーピィの羽箒でフィールドカードを一掃する」
「なぬ?」
初手ハーピーの犯罪率は高い。
(おー、ミラフォね。ラッキー)
試験官がセットしていた罠カード【聖なるバリア -ミラーフォース-】は墓地に。
あとは裏側守備表示のモンスターのみ。
(この時代ならサイバーポットとか?)
「そんでもって【強欲で貪欲なカード】を発動。デッキ上から10枚裏側表示で除外してデッキから2枚カードをドローする」
引いた2枚のカード
【灰流うらら】
【溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム】
うーん、絶妙にハズレだ。
「明日香、君の弟は珍しいカードを使うんだな。除外したカードがキーポイントになるデッキか」
「え、えぇ……」
明日香は本当は何も知らない。あんなカード見たことない。弟の3年間を何も知らない。
その事実が彼女の心を暗くする。
除外ゾーンにいったカードは全部で18枚。
「そんじゃワンキル狙ってみますか」
「はっはっは、後攻ワンキルとは大きくでたな!やれるものならやってみなさい!」
「オレは【紅蓮魔獣ダ・イーザ】を召喚。コイツの攻撃力・守備力は除外ゾーンにあるカード枚数×400アップする」
「はぁあああ!?攻撃力7、7200だと!?そんなのありか!?」
流石の試験官もビックリおったまげー。
会場もざわめく。
相手(試験官)LP4000
手札4枚
▢▢▢▢▢
▢▢①▢▢ ▢
▢ ▢▢②③▢
▢▢▢▢▢
手札4枚
自分(真樹那) LP4000
配置
①裏側守備表示
②【機巧蛇-叢雲遠呂智】
③【紅蓮魔獣ダ・イーザ】
手札
【クリッター】
【リミッター解除】
【灰流うらら】
【溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム】
(うーん…ダ・イーザってまだそんなに認知ない?)
「すっげー!攻撃力7200が通常召喚で出てくるのかー!やべーやべー!」
若干1人テンションがおかしい受験生もいるが…
「オレはダ・イーザでその守備表示モンスターを攻撃する」
「はっはっは、それはプレイングミスだぞ受験生くん!守備貫通効果のある装備カードを装着し忘れたのかな?そのチートモンスターでダイレクトアタックしなければワンキルできないぞ!リバースカードオープン!これは人喰い虫だ!」
「あーそうくる?」
裏側守備表示モンスターが攻撃され表側にリバースした時に発動。フィールドの相手モンスターカードを一体破壊する。
「やはり接待デュエルだったな」
「なに?」
「どっち破壊します?叢雲?それともダ・イーザ?」
「それは勿論、私の脅威になるダ・イーザ……で……!?」
「お、勘がいいっスね。ようやく何か察してくれた?」
「あぁ、私は思っていた以上に君を侮っていたみたいだよ。手札にまだ何か隠し持ってるんだろ…?」
「ご名答〜。モモンガとか仲間呼んじゃう系だと長引きそうでめんどくさかったんだけど。だから接待デュエルありがとー」
「ふっ、生意気なヤツ」
試験官は諦めて叢雲を破壊した。
これは意味のない行為だとわかっていながらも、このデュエルに注目するアカデミアの生徒、及び受験生たちの勉強のために叢雲を選んだ。
そして、自分の嫌がるカードのジャンルを吐かせて叢雲の効果を使わせることで、ライバル達は真樹那のデッキを研究することになるだろう。
いつか真樹那も楽して勝てなくなってくるだろう。それを如何に対処するかもまた彼の成長のためだ。
それもまた試験官の務めであった。
「叢雲は墓地でもデッキの上から8枚除外でフィールドに復活する。オレはこのターンその効果をまだ使っていない」
デッキの枚数が8枚以上あるかぎり何度でも蘇る攻撃力2450の機械仕掛けのゾンビモンスター。
「でも、攻撃力2450っすよ。LP4000を削りきれないっす!」
「いいや、彼にはまだ奥の手があるみたいだ」
「くぅ〜あっちぃー!」
さて、フィナーレだ。
相手(試験官)LP4000
手札4枚
▢▢▢▢▢
▢▢▢▢▢ ▢
▢ ▢▢①②▢
▢▢▢▢▢
手札4枚
自分(真樹那) LP4000
①【機巧蛇-叢雲遠呂智】
②【紅蓮魔獣ダ・イーザ】
「オレは【叢雲遠呂智】でダイレクトアタック。そして、攻撃宣言時に手札より速攻魔法【リミッター解除】を発動。【叢雲遠呂智】は機械族。よって攻撃力は2倍になる。はい、おわりー」
攻撃力4900
瞬間的なものだが、もうそれだけでこのGX世界にとって脅威の数値だ。
丸腰の試験官はダイレクトアタックをもろに食らい片膝をついた。
試験官のLPは0になった。
真樹那の勝ちだ。
「本当に後攻ワンキルをするとは…私の負けだ。君のその実力なら合格間違いなしだろう」
「次デュエルする時は本気でよろしく。おつかれっしたー」
「あぁ、楽しみにしてるよ」
熱い握手を交わす。
何故か拍手喝采だった。
(あー恥ずぃー)
少し目立ち過ぎたかなと思う真樹那であった。
異世界帰りのオレTUEE系?当然だろ?
その武器を利用しないでどうする?
後攻ワンキルは十分なインパクトだろ?
(掴みはバッチリじゃん?)
全てはサプライズのため。
自分の姉を驚かせるため。
3年前に失踪したと思われた弟がひょっこり顔を出して入学試験受けていたらどう思うよ?
デュエルアカデミアに合格したらどうよ?
感極まって大号泣間違いなし。
ギャラリーがいる観客席の方へ戻る最中、同じ受験生の女子に声をかけられたがまた後でねとやんわりスルー。
オベリスクブルーの女子生徒もテキトーにあしらう。
悲しいかなケモ耳娘しか興味がない男だ。
そんなことよりも早く自分の姉の元へ行きたいのだ。
こんなにオレってシスコンだっけ?と思いつつもそりゃ家族と久しぶりに再開するのでテンション上がる。
「お前のデュエルすっげーな!なぁ俺とデュエルしてくれよ!俺、遊城十代ってんだ!よろしく!」
「俺は三沢大地。たぶんお互いラーイエローだろう。これからよろしくな」
「僕は丸藤翔っス。よろしくっス!」
「おーす、オレは天上院真樹那。真樹那でいいよ。よろしくー」
いい男っていうのは男にも好かれるもんだ。
十代たちに囲まれた。
いや、十代は早く試験受けてきた方がいいのだが。
「あー、ちょいとごめんな。他にも挨拶したい人がいるからまたあとで」
十代の後ろにもう見えている。
もう今にも泣きそうにこちらの様子を伺っている姉の姿がそこにあった。
「真樹…那…本当に真樹那、なの……?」
「やほー!姉さん久しぶり!」
そう言って明日香の前に立つ。
弟らしい無邪気な笑顔で。
3年ぶりの感動の再会だ。
十代達ギャラリーももらい泣きでハッピーエンドだ。
そんな計画だった…
「どう?ビックリしたでしょ?サプライズ〜」
「えぇそうね……」
ドッキリ大成功のはずだった…
「元気にしてた?」
「元気にしてた、ですって?そんなわけないでしょこの馬鹿真樹那!」
「えー……」
パン…と会場内に渇いた音が鳴る。
お姉ちゃんからビンタを食らった。
まぁ、ちょっと調子に乗りすぎたよな。
そして、
「ちょっとこっち来なさい」
「あでで!?姉さん、耳引っ張んないで…!!」
連行された…
To Be Continued…
十代
「うおっ、これが修羅場ってやつか。やっべー」
翔
「十代くん。先生が呼んでるよ、早く試験行って来なよ」