烙印からの帰還者〜天上院家の末っ子は脳筋デッキしか勝たん〜 作:Eクラス
姉・天上院明日香を驚かすサプライズは失敗に終わる。
まさかビンタされるとは思ってもみなかった。
連行された。
会場の外は出れなかったから人気の少ない通路の奥に真樹那は追い込まれるのであった。
「で?」
仁王立ちして、どういうことか説明しろと言っている。
納得できなかたっらどうなるかわかっているよな?というお姉ちゃんの圧が強い。
「連絡もせずに今までどこで何してたのよ?」
「えー、話せば長くなるのですが、ちょっと異世界を冒険してきまして…」
「は?」
「ほ、ほんとだよー」
う、うそじゃないよー。
姉に嘘はつけない。
もちろん睨まれた。
「何よそれ…」
「わー泣かないで」
「私がどれだけ心配したと思ってるのよ!」
「う、うん…」
「何がサプライズよ!この際はっきり言うけど昔からあなたのサプライズ下手なのよ!」
「まじかー」
全然嬉しくもないサプライズをされて癇に障ったというか、3年ぶりの再開も台無しになってしまった。
明日香の感情が爆発する。
「私は真樹那が生きてくれていただけで良かった!サプライズなんかいらないわよ!それなのになんなのよ!異世界を冒険してきましたですって?どこまでふざけてるの?異世界帰りにしては余裕よね?傷だらけでボロボロでもなくデュエルアカデミアに入試受けるぐらいに余裕あるのよね?ぜっんぜん説得力ないじゃない!準備期間あるくらいなら連絡よこしなさいよ!なんでしなかったの?3年間も心配している人がいることもわからなかった?林間学校で最後に逸れた私がどんな思いでアナタを心配していたかわからない?喧嘩しちゃって謝ることもできずにどんな気持ちだったかわかる?何度あの場所を探したか知ってるの?私だけじゃない!兄さんはアナタを探すと言って一年前に行方不明だし父さんはアナタを探すために懸賞金を出したけど見つからずネタにされるし世間の風当たりは冷たいし母さんはアナタのこと心配し過ぎて過労で倒れて入院してしまったしいろんな人がアナタの心配してくれたわ!そんな人たちの気持ちを考えたことあるの?あるならサプライズなんかせず連絡の一つくらいよこしなさいよ!アナタのサプライズは独りよがりなの!それから!ちょいとモテるからってヘラヘラしてんじゃないわよ!何?俺モテますアピールしてるのもなんだか感に障るのよ!弟のモテてるところなんて見たくないってのこの異世界馬鹿野郎!」
「い、異世界馬鹿…野郎…」
3年間分の感情が爆発した。
要するに相手の気持ちを考えないエゴ丸出し一方的なサプライズに明日香はぶち切れてしまった。
辛い時にテンション高い奴からウェーイされたらウザいだろ?
戸惑うだろ?
流石に空気読めない男とかうんこだ。
「ごめんってオレが悪かったよ姉さん。だからもう許してよ。機嫌直して?ね?」
「は?謝ったって駄目よ。その程度で許されると思ってるの?そんなはずがないでしょ?」
「も、もちろんその通りでございます。この失った3年間の兄弟の時間を取り戻すべく誠心誠意尽くす所存であります。あ、もちろん兄さんや父さん母さんもね」
「そんなの当たり前よ。誠心誠意尽くすと言うなら私の言うことは何でも聞く。それが最低ラインだから」
「ま、まじんがー…」
しれっと条件を盛り込んでくる姉。
一瞬ご褒美なんじゃ?と頭によぎったが真面目な姉のことだ真樹那が役得するような命令はしてこないだろう。
それが涙と鼻水を啜りながらなのだから断れない。
理不尽な命令がないことだけを願うしかなかった。
「で?もう一度聞くけど真樹那はどこに何を行ってたのかしら?本当のことを吐きなさい」
「……………い、異世界です」
「そう。あなたの耳と脳みそはその異世界に置いてきたのね。可哀想に」
「いやいやいや…」
精霊を召喚して見せて証明してもよかったのだが、心配してこっそり付いてきた野次馬達に見られるのは機密情報漏洩の危険があるためここではできない。
そのせいで明日香は納得できず、この減らず口とアイアンクローの要領で片手でほっぺたをがっちり鷲掴みする。
マヌケ顔の真樹那の出来上がりだ。
側からはじゃれあいにしか見えないやり取りを見てことの成り行きを見ていた野次馬たちもホッと胸を撫で下ろす。
でも、そんなやり取りを気に入らないと思う者も少なからずいるのだ。
「彼、案外本当に異世界から帰ってきたかもしれないわよ。天上院明日香さん」
「アナタは確か天使デッキを使っていた受験生の…」
「えぇ、榊玲奈っていうの。以後お見知り置きを」
銀髪のショートヘアにスタイルは明日香に引けを劣らず長身。モデルさん?と見間違えるほどの容姿端麗。
とても勝気というかその鋭い目つきは狙った獲物を逃さないとでも言うかのように真樹那を捉えていた。
榊。
その苗字には真樹那も反応せざるを得なかった。
「榊…ってまさか…」
「あら?ちゃんと父のこと覚えてくれてたのね嬉しい。てっきりただのモブAくらいの存在価値で忘れ去られたと思っていたわ。じゃあもうこれ以上の説明は不要ね」
そう言って真樹那をビンタした。
明日香がビンタした逆の頬にだ。
パンと渇いた音がした。
流石にこれには明日香も驚く。
兄弟の感動の再会とかどうでもよく空気も読まないのだから。
反対に、真樹那は少しビックリするも、ビンタされたことを受け入れる。
殺意さえ僅かに感じた。
舌を噛んで血が出るほどに強烈だった。
「これは挨拶代わりよ天上院真樹那くん。アナタの尻拭いで父は命をかけた。だから、ワタシはアナタを許さない。宣戦布告ってやつよ異世界馬鹿野郎」
そう。
12月24日、悲しい事件があった。
後に呼ばれるクリスマス事件。
決して目を背けることができない事件があったのだ……
さて、最愛の姉との感動の出会いを果たし、十代たちと友達になり、父の仇を取ると言わんばかりの銀髪少女との邂逅があって、入学試験は幕を閉じた。
真樹那も無事合格。
明日香に銀髪少女との関係を問い詰められるも後日説明すると頭を下げるしかなかった。
納得のいかない明日香は当然両親に真樹那を発見したことを報告→両親発狂→真樹那がお世話になっている海馬コーポレーションへカチコミ→まぁ何やかんやあって真樹那はデュエルアカデミアに入学した。
両親にはこれ以上心配かけたくないという思いから異世界のことは説明していない。意識不明の状態でデュエルアカデミアで倒れていたところを海馬コーポレーションに救助されたということになっている。嘘は言っていない。
母がデュエルアカデミアに入学させるのを最後まで猛反対してきた。その理由は兄・吹雪が一年前に失踪した理由もあったりする。
まぁ、真樹那もそれは予想できていたからサプライズで試験当日まで黙っていたわけだが。
どれだけ末っ子として真樹那が甘やかされて生きてきたことを垣間見ることになるがそれもまた別のお話し。
「デュエルアカデミアに入学おめでとう」
入学式当日。
校長先生からの長ったらしい挨拶の中、真樹那はずっと視線を感じていた。
1人2人ではない。
いくつもの視線があった。
その中でも1人は疑心暗鬼の姉のジト目、1人は敵意殺意を隠さない銀髪少女の目であった。
十代にお前モテモテだなと言われた時は貴様を火曜サスペンスドラマ並みにドロ沼に叩き落としてやろうかと考えるほどである。
まぁ、そんなこんなで特に何事もなく入学式も終了する。
真樹那はラーイエローの生徒として学園生活をスタートした。
「やはりお互いラーイエローだったな。よろしく天上院くん」
「俺はオシリスレッドだったぜ真樹那!なーなー今からデュエルしようぜ!」
「僕もオシリスレッドだったっス」
「おー、みんなよろしくー。十代、今ちょい立て込んでるからまた今度で!三沢もまたあとで!」
「いろいろと大変そうだなアイツも」
後ろの方から聞こえる天上院・姉の声。
そして、姉から逃げる弟。
話はまだ終わってないから待ちなさい!と…でも、話は終わったと言ってラーイエロー寮まで逃げ切る作戦なのだ。
「誰か!私の弟を捕まえてくれたらデュエルの相手してあげるわ!」
「はぁ!?」
「「「「うひょーマジかよ?明日香さんとデュエルできるのか!サイコーかよ!それ捕まえろ!!」」」」
「なーなー俺が真樹那捕まえたら真樹那とデュエルさせてくれるのか?」
「え、えぇ、好きにしたらいいわ」
お姉ちゃんの一声で男子生徒たちは愚か女子生徒までもが真樹那を追いかけ始めた。
天上院明日香なんて恐ろしい子!
そして、十代たちも。
「ふむ。面白くなってきたな…!!」
「あ、アニキ、三沢くん待ってよー」
こうして、波瀾万丈の学園生活が始まる。
まぁ、異世界帰りのオレTUEE系男子は簡単には捕まらないけど。
To Be Continued…
榊玲奈というオリキャラのモデルは、
デュエルリンクスのアカデミアの生徒(オベリスクブルー)モブ子だったりする。
※リミッター解除からの攻撃力2倍の計算さえもまともにできねぇ…
誤字修正してくださった方ありがとうございますm(_ _)m