人理修復を成し遂げたマスターはありふれた世界じゃ最強に決まっている   作:アイリエッタ・ゼロス

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目覚めと秘めていた想い

「ここは....」

「南雲くん!」

「....目が覚めたか南雲」

 奈落に落ちて大体一日後、南雲が目を覚ました。

 

「白崎さん、それに水月先生も....ここは....」

「奈落の底だ。落ちてお前は意識を失ってたんだよ。....大体一日ぐらいか」

「そうだったんですか....それよりも、どうして白崎さんがここに....」

「そ、それは....」

「お前を助けるために飛び降りたんだよ。俺より早くな。怪我を治したのも白崎だ。

 礼言っとけ」

「そうなんだ....ありがとう、白崎さん」

「ううん! 南雲くんが目を覚まして本当に良かった....」

 そう言いながら、白崎は涙を流していた。

 

「さて、感動の復活に水を差すようで悪いが....今後についての真面目な話だ」

 俺はそう言って二人を見た。

 

「現状俺達がいるのは大迷宮の下層。一応ここで取れる選択肢は一つ。迷宮を進んで

 出口を見つける。それだけだ」

「そうですよね....」

「だがそれにはいくつか問題点がある。一つ目に食料。周辺を探したが食えそうな物が

 一切無い。唯一食料となりそうなのは魔物の肉だけだ」

「魔物の肉、ですか....」

 南雲はその意味が分かったのか複雑な表情をした。

 

「あの先生、食料は魔物の肉があるんじゃ....」

「白崎さん、魔物の肉は人間に対して毒なんだ。図書館の本で読んだんだけどただの人間が

 食べると身体が崩れてしまうんだ」

「身体が....!?」

「あぁ。だからどうにかして食料を調達する必要がある。水に関して俺の魔術でどうにか

 なるから心配するな。まぁそんな美味い水じゃないが....そして二つ目、拠点が無い。

 今はこんな道の端っこにいるが拠点が無いと色々と問題がある。休むにしても道の真ん中で

 休んでたら魔物の餌食だ。そして三つ目だが....お前達二人だ」

「えっ?」

「僕達、ですか?」

「あぁ。この階層にいる魔物に、お前達は勝てない」

「「っ!?」」

 俺の言葉に二人は表情をこわばらせた。

 

「そもそも二人とも戦闘職と程遠いっていうのもある。だが、それ以前にここの魔物は

 上にいた連中とは格が違う。動きも早いし一撃もデカい。お前らが戦えば確実に死ぬ」

「「....」」

「だから、ここからお前達が選択しろ。ここで俺が出口を見つけるまで隠れているか、

 死ぬのを覚悟で俺と進むか」

「待つか、進むかですか?」

「あぁ。俺はお前達の意見を尊重する。....お前達は一度死にかけた。当然再び死ぬような

 目に合うのは嫌だと思う。だから、ここで隠れててもいい。でももし、その恐怖を

 乗り越えて進むって言うのなら俺はそれを尊重する」

「....なら、僕は進みます」

 すると、南雲は拳を握り締めてそう言った。

 

「ここで待っていても何も変わらない。なら、進んで少しでも希望のある方に行きます」

「私も....希望がある方に行きたいです」

「そうか....わかった。なら俺は二人の意見を尊重する」

 そう言って、俺は二人にルーンを描いた鉱石の入った袋を渡した。

 

「これを持っておけ」

「先生、これは....」

「俺の魔法を保存した鉱石だ。二人が寝ている間に周辺の鉱石を回収して作っておいた。

 もしも戦うってなったらそれを使え」

「ありがとうございます水月先生」

「ありがとうございます」

「よし、じゃあ進むとするか。二人とも、こっからは警戒を怠るなよ」

「「はい!」」

 

 ~~~~

 

「にしても、まさか南雲の錬成がここで生きるとはな....」

「僕もビックリですよ....」

「これで拠点の問題は解決したってことで良さそうですね」

 二日後、あれからしばらく歩き続けた俺達は南雲が壁を錬成して作った穴の中にいた。

 何度か南雲が錬成したことにより、穴の中は三人が寝転がれるほどの広さの拠点に

 変わっていた。

 

「あぁ。だがやっぱり問題は....」

「食料ですよね....」

「マジでどうしたもんか....」

 現状、四日何も食わずの状況が続いていた。俺は過去にこう言った飢餓状態を体験したことが

 あるため耐性がついているが、二人にとってはかなり深刻的な問題になっていた。

 

「....少し外で何かないか見てくる。二人は身体を休めていろ」

 そう言って、俺は南雲が作った拠点から出て入口にルーンを描いた。

 

「(これで魔物からの侵入や接近は防げるな)」

 そう思いながら、俺は周辺の探索を始めた。すると、一際目立つ鉱石が目に入った。その鉱石は

 美しい青色をしており、先端部分からは水の様な物が滴っていた。

 

「(あの鉱石、かなりの魔力量だ)」

 俺は直感的にそう思った。

 

「(一先ず回収したいが....)」

「周りの魔物を狩ってからだな....」

 俺は自分の周囲に集まってきた魔物を見てそう思った。

 

「クレス」

『おうおう! トゥルルルルル! "2"!』

「2か....普段だったらはずれっていうとこだが、今回は当たりだな」

『うるせぇ! 俺にはずれなんてねぇんだよ!』

 そう言いながら、クレスは巨大な鎌に姿を変えた。俺は鎌を真横に真っ直ぐ構え、一つ息を

 吐いた。すると、突然周囲を霧が覆い始めた。その霧に警戒して後退した魔物もいたが、逆に

 興奮してこちらに襲い掛かってくる魔物もいた。俺はその魔物の攻撃が当たる前に真横に

 一回転、鎌を振るった。すると、周囲にいた魔物の動きは全て静止し、次の瞬間魔物の身体は

 真っ二つに切断された。それと同時に周囲の壁も斬れ、この空間に地響きが起こった。

 

「ふぅ....」

「(やっぱ数倒すには相性良いが、味方がいると使いづらい武器だな....)」

 そう思いながら俺は鎌を肩に担ぎ、目的の鉱石がある場所に向かった。

 

「やっぱり他の鉱石とはレベルの違う魔力量だな....」

 そう呟きながら、俺は周りの岩を砕いて鉱石を引き抜いた。

 

「(....気になるのはこの水だな)」

 俺は滴り落ちて水たまりになった水に触れてそう考えた。

 

「(臭いは、毒らしい臭いはしない....)」

 俺は臭いを嗅いで手に付いた水を口に含んだ。

 

「(毒らしい味もしない....)」

 そう思っていると、どこか体力が回復したような感じがした。

 

「(この感じ....まさかこの水のおかげか?)」

 俺はそう考え、魔物を探し殺さない程度にダメージを与えてこの水をぶっかけた。すると、

 魔物に与えた傷は無くなり、体力も回復したのかさっきよりも俊敏な動きになった。

 

「(ビンゴ....! これがあれば白崎が魔力切れを起こしてもどうにかなる。そうなると、後は

 あそこの水も回収しないとな)」

 そう思い、俺は南雲達がいる拠点に戻った。

 

「おーいお前等。良い物見つけ....」

 そう言いながら拠点に入ると、南雲と白崎はお互いに抱きしめあっていた。

 

「「あ....」」

「....悪い、邪魔したな」

 俺は二人に気を遣い、そう言って拠点から出ようとした。

 

「ま、待ってください先生!」

「こ、これには深いわけが....!」

 

 ~数十分前~

 

 白崎side

 

「....少し外で何かないか見てくる。二人は身体を休めていろ」

 そう言って、水月先生は拠点の外に出て行った。そして、拠点には私と南雲くんが残っていた。

 すると、南雲くんは私にこう言ってきた。

 

「ねぇ白崎さん。少し聞きたいことがあるんだけど、良いかな?」

「聞きたいこと?」

「うん。....白崎さん、僕を助けるために奈落に落ちたって水月先生は言ってたよね? あんな

 高さから落ちたら死ぬかもしれないのに、どうして僕を助けようとしてくれたの?」

「約束したでしょ。南雲くんは私が守るって」

「....どうして」

「えっ?」

「どうして白崎さんはそんなに僕によくしてくれるの? ....僕は無能だ。水月先生や白崎さんが

 いなかったら何も出来ずに死んでいる。今も二人に寄生しているようなもんだ。僕は、結局

 誰かの足を引っ張らないといけない弱い人間だ....」

「っ、そんな事ない!」

 南雲くんの卑下した言葉に、私は思わずそう叫んだ。

 

「南雲くんは弱い人間じゃない....! 私は、南雲くんが誰よりも強くて優しい人だって

 思ってる。....南雲くん、中学の時に不良に土下座したこと覚えてる?」

「っ!? どうしてそれを....」

 私の言葉に南雲くんは驚いた表情をした。

 

「実はあの時、私も近くにいたの。でも、私は怖くて何もできなかった....だけど南雲くんは

 おばあちゃんと小さな男の子のために土下座をして....弱くても自分より強い人に立ち向かえる

 あの勇気を見て、私はそう思ったんだよ」

「白崎さん....」

「だから、私の中で一番強い人は南雲くんなんだ。....勇気を持って行動に移すことができる、

 人の痛みが理解できて寄り添える、そんな優しくてかっこいい姿を見て私は南雲くんの事が

 好きになったんだよ」

 私は南雲くんの両手を握りながらそう言った。

 

「そんなに僕の事を思ってくれる人がいるなんて、白崎さんが初めてだよ....」

 南雲くんはそう言いながら目から涙がこぼれた。

 

「....正直、最初は白崎さんの事が迷惑だって思ってたんだ。一人でいたいのに変に世話を

 焼こうとしてくるから....でも、そのうち楽しくなってたんだ。白崎さんと話すのが」

「南雲くん....」

「それで、いつからだったか忘れちゃったけど....僕は白崎さんの事が好きになってんだ。

 でも、僕なんかじゃ白崎さんに釣り合わないって思ってその気持ちから目を背けていたんだ」

「そうだったんだね....じゃあ、お互い気づかないだけで両想いだったんだね私達」

 私はそう言いながら、涙を流していた。

 

「だね....」

「だったら....南雲くん、私とお付き合いしてくれますか?」

「....僕なんかで、白崎さんは本当に良いの?」

「僕なんかなんて言わないで。....私は、南雲くんが良いの」

「....ありがとう。....こんな僕で良ければ、よろしくお願いします」

「っ! 南雲くん!」

 私は南雲くんからの言葉の嬉しさに南雲くんに抱き着いてしまった。

 

「し、白崎さん!?」

「嬉しい....! これからよろしくね、ハジメくん!」

「こ、こちらこそよろしく....」

「おーいお前等。良い物見つけ....」

 そうして抱きしめあっていると、水月先生が帰ってきた。

 

「「あ....」」

「....悪い、邪魔したな」

 水月先生は私たちの様子を見て少し考えると、拠点から出ていこうとした。

 

「ま、待ってください先生!」

「こ、これには深いわけが....!」

 私とハジメくんは急いで水月先生を止めに向かった。

 

 

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