人理修復を成し遂げたマスターはありふれた世界じゃ最強に決まっている 作:アイリエッタ・ゼロス
あれから数日後、南雲の特訓をしながら俺達は迷宮を進んでいた。二人は新たな
技能を身に着け南雲は銃による遠距離攻撃と投擲武器、白崎は回復と南雲に
作ってもらったマスケット銃を使って魔物を倒していた。そして俺は相変わらず
ルーン魔術とクレスの武器で魔物を倒していた。ちなみにステータスは一切変わっていない。
「だいぶ進んだが上がる階段は見当たらねぇな」
「そうですね。ずっと下ってばっかりで....」
「あぁ。にしても....」
「ここのフロア、今までとは違いますね」
俺達がいたのは謎の扉があるフロアだった。扉の横にはサイクロプスの様なものが壁に
埋まっていた。
「あぁ。二人とも警戒しろ」
そう言いながら、俺は二人より前を歩きながら扉の前に立った。
「準備は良いな?」
「はい」
「いつでも」
「OK」
そう言って、俺は扉を開けるために持ち手に触れた。だが、押しても引いても扉が開く
気配はなかった。
「こんにゃろ....!」
俺は力尽くで開けようと戦斧に変わったクレスは扉に振り下ろした。扉は斬り裂かれ
どうにか開いたのだが、次の瞬間埋まっていたサイクロプスの様なものが雄たけびを上げて
動き出した。
「やっぱ力尽くは駄目だよな....」
「言ってる場合ですか!」
「わかってる。二人で一体行けるか?」
「大丈夫です!」
「先生は右をお願いします!」
「言うようになりやがって....!」
俺はそう呟き、右にいたサイクロプスの様な魔物に向かって走り出した。魔物は俺に
向かって腕を振り下ろそうとしてきたが....
「遅っ!?」
魔物の一撃は簡単に避けられ、俺は魔物の頭上に跳んだ。そして、そのまま目玉に向かって
戦斧を振り下ろした。戦斧の一撃は魔物を真っ二つにし、魔物は地面に倒れ伏した。
「(思ったよりも拍子抜けだな....南雲達の方は....)」
俺がそう思い南雲達の方を見ると、魔物は目玉と関節を撃ち抜かれていた。
「(教えた通りの場所に狙えてるな。心配は無用か....)」
「お前等! 進むぞ!」
そう言って俺は斬り裂いた扉を外して中の部屋に進んだ。そしてしばらく進むと、部屋の中に
謎の立方体の石があった。その意思を見た瞬間、俺は何かの気配を感じた。
「お前等、少し止まれ」
「(何かいる....)」
俺は戦斧を構えながら立方体の石に近づいて行った。そして石の前まで着くと気配の正体が
わかった。
「....人間?」
「(いや違う。人間にしては気配や魔力の感じが違う....)」
石には金髪の女の子が生えていた。正確には生えていたというより封印されていたと
言った方が良さそうだった。
「先生、この子は....」
「人間、ではなさそうですよね....」
俺がそう考えているといつの間にか二人が背後にいた。
「あぁ....」
「....誰?」
「「「喋った!?」」」
すると、突然女の子が俺達の方を見てそう言ってきた。
「お前、何者だ?」
俺は咄嗟に戦斧を女の子に向けた。
「ちょ、ちょっと先生!?」
「急に向けたら危ないです!」
「そうは言うがな....こんな迷宮の奥深くに、それも魔物が門番してるってことは相当の
何かだ。お前等の命を守るためにも、警戒しなきゃいけねぇんだよ....」
「ま、待って....! 私、悪くない....! 私裏切られて封印されただけ....!」
女の子は泣きそうな表情でそう訴えてきた。
「....先生、さすがに可哀そうですし武器下ろしてあげませんか?」
「話だけでも聞いてあげませんか? 何だかこの子、嘘ついてるようには見えないです....」
「....変な真似をした瞬間、すぐに殺すからな」
そう呟いて、俺は武器を下ろした。すると、白崎と南雲が女の子の目線に合わせるように
しゃがんで話しかけた。
「あなた、何者なの?」
「私、先祖返りの吸血鬼....すごい力持ってて国の皆のために頑張った。でも....ある日家臣の皆、
お前はもう必要ないって....おじ様....これからは自分が王だって....私、それでもよかった....
でも私、すごい力あるから危険だって....殺せないから....封印するって....それで、ここに....」
「君、何処かの国の王族だったの?」
「うん....」
「....不死身だから殺せないってのはどういう意味だ?」
俺は今の会話を聞いて不思議に思ったことを聞いた。
「....勝手に治る。怪我してもすぐ治る。首落とされてもその内に治る。魔力があればだけど....」
「じゃあすごい力ってのはその事?」
「他にも....魔力、直接操れる。陣もいらない....」
「マジで怪物じゃねぇか....」
「先生....女の子に言うことじゃないですよ」
俺の言葉に白崎はジトっとした目で見てきてそう言った。
「悪かったて....」
「(言わないがお前も十分化け物だぞ....)」
俺は口には出さなかったがそう思った。
「お願い....役に立つから....私を助けて....」
「水月先生、この子助けてあげませんか....?」
「敵意もないみたいですし、それにこんな所で一人ぼっちは....」
「....はぁ。お前等でしっかり面倒見れるか?」
「っ! はい!」
「しっかり面倒見ます!」
「わかった....」
俺は二人の熱意に呆れ、石の前に立った。
「武器を向けた俺は信じられねぇかもしれねぇが、今は信じろ。俺が今からやる事に静かに、
絶対動くなよ」
「わかった....」
「よし....」
俺はそう言って、女の子の身体に当たらないギリギリの部分に戦斧を振り下ろした。その一撃で
石には小さなひびが入った。
「相当な硬さだな....だが、壊せねぇほどではねぇな!」
俺はひびの入った場所に向かって連続で戦斧を叩き込んだ。そして五分ほど叩き込み続けると
石全体に大きな亀裂が走った。
「ラスト!」
そして最後の一撃を振り下ろすと、石は木っ端みじんに割れ封印は解かれた。
「白崎、回復。南雲、服貸してやれ」
「わかりました!」
「はい」
「はぁ....こんな深くにあった割には随分脆い封印だな。封印するならちゃんとしとけよ」
そう呟きながら、俺は戦斧を消した。
「ありがとう....」
すると、女の子は俺に礼を言ってきた。
「礼ならそっちの二人に言え」
「二人もありがとう。名前、なに?」
「南雲 ハジメ」
「白崎 香織。ハジメくんの恋人だよ!」
「水月 立香。一応この二人の保護者代理だ。お前の名前は?」
「....名前、付けて」
「へっ?」
「前の名前いらない」
「....だとよ」
そう言って俺は二人の方を見た。
「僕等に振るんですか!?」
「お前等で面倒見るんだろ? 保護者の最初の仕事だ」
「えぇ....うーん、じゃあユエっていうのはどうかな?」
「ユエ....うん、気に入った。今日からユエ」
「決まりだな。....さて、そろそろ行くか」
そう言って進もうとした時、突然この空間が揺れた。そして、ユエがいた場所の天井から
サソリの様な魔物が現れた。
「新手か....随分しつこいな。いい加減鬱陶しいぞ!」
俺はそう叫び、空中に氷のルーンを描いた。そのルーンをサソリの様な魔物に飛ばすと、
魔物の腕と脚は凍結した。
「さて、ちょっと俺の憂さ晴らしに付き合ってくれよ....」
俺は指を鳴らしながらゆっくりと魔物に近づいた。そして、強化した素手と脚で魔物を
殴りつけた。
「うわぁ、バイオレンス....」
「....あれ、本当に人?」
「多分....」
そんな言葉が背後から聞こえていたが、俺は気にせずただひたすら魔物を殴り続けていた。