人理修復を成し遂げたマスターはありふれた世界じゃ最強に決まっている   作:アイリエッタ・ゼロス

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最奥の魔物

「吸血鬼で300歳か....」

「むっ....それはマナー違反」

 サソリをぶっ飛ばした俺達は移動し、新たな拠点で食事と休憩を取っていた。

 

「ユエちゃんってここから地上に出る道とか知ってる?」

「わからない....でも奈落の底にあるかも....」

「奈落の底?」

「ん....ここは反逆者が作った迷宮だから」

「反逆者? 誰だそれ」

「神代に神に挑んだ神の眷属のこと。....世界を滅ぼそうとしたと伝わってる」

「そ、それはまたおっかない....」

 ユエの言葉に南雲は若干引いていた。

 

「そこなら、地上への道があるかも....反逆者の住処があるとされてるから」

「なるほど....確かに上から下まで歩いて降りるは無いな。なら目標は決まったな」

「それよりも....三人はどうしてここに?」

「あー....」

「何というか....」

「まぁ色々あって....」

 そう言いながら、南雲と白崎はここに来るまでの経緯を話し始めた。そして話し終わると

 ユエは泣いていた。

 

「グスッ....ハジメつらい....」

「き、気にしないでいいよ。一人だったら辛かったけど、白崎さんに水月先生も一緒だったから。

 そこまで辛いとは思わなかったよ。それに、今は元の世界に帰るっていう願いもあるから」

「ハジメくん....」

「帰る....帰るの?」

「うん。故郷に帰りたいし、家族にも会いたい....」

「私も。まぁ結構姿は変わっちゃったけどね」

「羨ましい....私には、もう帰る場所がない....」

 二人の言葉を聞き、ユエはぽつりとそう呟いた。

 

「じゃあ、ユエちゃんも一緒に来る?」

 ユエの言葉を聞いた白崎はユエにそう言った。

 

「えっ?」

「一人ぼっちは寂しいもん。だったら私達と一緒に行こう。ね、ハジメくん」

「良いと思うけど....ユエはどうする? 吸血鬼みたいな人外はいないから少し窮屈かも

 しれないけど....」

「行く! 二人と一緒に!」

「じゃあ決まりだね! 一緒に頑張ろうねユエちゃん!」

「(やっぱ女同士、何か通じるものがあるのか....)」

 俺は白崎とユエの仲良さそうな様子を見てそう考えていた。

 

 ~~~~

 

「....まだ起きてるの?」

 あれから食事を取って白崎と南雲とユエは休むために眠りに就いた。それから少しすると、

 ユエが起き俺にそう聞いてきた。

 

「ん? あぁ。一応周囲の警戒をな」

「そう....疲れないの?」

「いや、疲れるぞ。でもまぁそこの二人とは鍛え方が違うんでな。これぐらいの疲れなら

 まだ余裕だ」

「そう....ほんとに人間?」

「どこからどう見ても人間だっての。それよりも寝なくて良いのか?」

「ううん....寝る。でも、その前に聞きたいことがある」

「聞きたいこと?」

「リツカの願いは何?」

 ユエから聞かれたのは意外なことだった。

 

「俺の願い?」

「二人が故郷に帰りたいって話してた時....何も言わなかったから。だから別の願いが

 あるのかって思って....」

「よく見てんな。....俺の願いねぇ。まぁお前になら言っても良いか。二人には言うなよ」

「わかった」

 俺はユエに念押ししてこう言った。

 

「....俺の願いは、恋人ともう一度会うことだ」

「恋人?」

「あぁ。....俺が唯一恋をした女。そいつに会うのが、俺の願いだ」

「そう....会えたらいいね」

「....あぁ」

「あ、それで思い出した」

 すると、ユエは何かを思い出したのかそう言った。

 

「ハジメが好きだけどカオリと付き合ってる....どうしたらいい?」

「....それは白崎に相談しろ。俺じゃどうにもならん」

「わかった....」

 そう言うとユエは横に寝転がり眠ってしまった。

 

「(こいつも苦労するな....)」

 そう思いながら、俺は南雲を見た。

 

 ~~~~

 

 ユエが仲間になり数日後、俺達は迷宮の最奥に着いた。ここに来るまでに恐竜の様な魔物に

 追われ、アルラウネの様な魔物に同士討ちをさせられそうになり、南雲が銃の強化をし、

 白崎とユエは二人でよく相談事をしているということがあった。

 

「さて、ようやく最後か....」

「うん....意外と長かった」

「多分、ここが最後の関門ですね....」

「必ず勝って先に進もう!」

「あぁ。じゃあ行くぞ」

 そう言って先に進み、扉から一番近い柱を超えた瞬間、巨大な魔法陣が現れた。その魔法陣から

 六つ首の巨大な蛇の魔物が現れた。

 

「コイツがボスか。南雲! 銃で奴の首を狙え! 白崎は回復と光魔法で妨害! ユエは白崎の

 サポート! クレス!」

『良いね良いね! 面白くなってきた! トゥルルルルル! "9"!』

「9って....ここに来てそれかよ!」

 俺は巨大な盾に姿を変えたクレスを持ってそう叫んだ。

 

「水月先生! 来ます!」

「文句言ってる暇はねぇか....!」

 俺は南雲の言葉に反応し、赤い首が放ってきた炎を盾で防いだ。そして、俺は攻撃を防ぎつつ

 前に進み、赤い首に向かって盾を振り下ろした。

 

「こいつも持ってけ!」

 更に盾の背後で描いていた氷のルーンを赤い首に飛ばした。赤い首は凍結し、そのまま

 ボロボロに砕け落ちた。

 

「まずは一本!」

 そう思ったのもつかの間、白い首が雄たけびを上げると崩れた筈の赤い首が復活した。

 

「回復あんのかよ....!」

「だったら白い首から....!」

 南雲は白い首に狙いを定め銃弾を放ったが、その銃弾は白い首の前に移動した黄色の首に

 よって全て防がれた。

 

「ちゃっかり連携取りやがって....!」

 俺は緑の首から飛んでくる風の刃と、青の首から飛んでくる氷塊を防ぎながらそう呟いた。

 すると....

 

「「いやぁぁぁぁ!?」」

 突然白崎とユエの悲鳴のような声が聞こえた。二人の方を見ると、二人は黒い首に睨まれ

 膝から崩れ落ちていた。その隙を逃さないの赤い首は、二人に向かって炎を放とうとしていた。

 

「チッ!」

 俺は風の刃と氷塊を放ってきた首に弾き返し二人の前に移動して盾で炎を防いだ。

 

「南雲! 二人を連れて岩陰に移動しろ!」

「はい!」

 俺の言葉に南雲すぐに反応し、二人を担いで近くの岩陰に隠れた。

 

「よし!」

 俺は光のルーンを六つ描き、六つ首の目に向かって飛ばした。ルーンは目の前で閃光弾の役割を

 果たし、一時的に全部の首から視界を奪った。その隙に、俺は南雲が隠れた岩陰に移動した。

 

「白崎さん! ユエ! しっかり!」

 そう言いながら、南雲は二人を抱きしめていた。

 

「ハジメくん....」

「白崎さん!」

「良かった....ハジメくん生きてる....」

「大丈夫、白崎さんを置いて死なないよ」

「うん....うん....!」

「ハジメ....それに二人も....」

 ハジメの行動と言葉もあってか、二人は正気を取り戻した。

 

「お前らあの黒い首に何された?」

「私は、あの首に睨まれた瞬間ハジメくんが死ぬ様子が見えて....」

「私はみんながいなくなって一人ぼっちに....」

「幻覚の類か....嫌らしい能力持ってんな....」

「でも、もう大丈夫....みんなの顔を見て安心した....」

「ならよし。....さて、問題はあいつをどう倒すかだ」

 俺は岩陰から魔物を見た。

 

「赤は炎、青は氷、緑は風、黄色は硬化、黒は幻覚、白は治療か....まずは白から潰さねぇと

 倒しきれねぇな」

「そうですね。なら、もうこれを使いましょう」

 そう言った南雲は巨大なレールガンを手に取った。

 

「下手に切り札で使うより、相手の厄介な部分を倒すのに使った方が有利になりそうです」

「良い案だ。なら、俺が盾でできるだけ奴に近づく。南雲は俺の背後についてきて射程に

 入ったら俺の背中を踏み台にして奴の白い首を潰せ。白崎は俺と南雲に回復魔法と奴の首を

 一本足止め、ユエは二~三本足止めしてくれ。黒い首は無視しろ。俺が注意を引く」

「わかりました」

「はい」

「うん」

 俺は三人に最善の指示を出し魔物の前に出た。

 

「行くぞ南雲!」

「はい!」

 俺はそう言って魔物に向かって走り出した。攻撃は飛んでくるが、盾で弾いたり受け流したり

 して攻撃を無効化していた。すると、攻撃してきた首のうち赤、青、緑の動きが止まった。

 三本の首にはユエの魔法と白崎の魔法で足止めされていた。残った黒い首と黄色の首は

 俺に嚙みつこうとしてきたが、盾を振り回して近づけさせなかった。

 

「(黒い首も目を合わせなきゃ問題ないか....)」

「今だ南雲!」

 そう言うと、南雲は俺の背中を踏み台にして空中に跳んだ。そしてレールガンを白い首に

 向かって放った。その一撃は白い首を守ろうと動いた黄色の首を貫通し、二本の首を

 消滅させた。

 

「よくやった! クレス!」

『トゥルルルルル! "1"!』

 俺はクレスのルーレットを回し、刀に変わったクレスを掴んだ。

 

「セイバー直伝....飛翔斬!」

 俺は一度居合の構えを取って刀を二度振ると、刀から高速で斬撃が放たれた。二本の

 斬撃は残っていた首を全て斬り落とし魔物の首は全て無くなった。俺は残った胴体にも

 とどめを刺そうと魔物に近づいたが....

 

「リツカ避けて!」

 突然背後からユエの叫び声が聞こえ、俺はすぐさま後方に跳んだ。すると、俺がいた場所には

 巨大な光弾が降り注いでいた。何事かと魔物を見ると、六つの首とは別の銀色の首が胴体から

 起き上がっていた。銀色の首は俺に狙いを定めると、俺に向かってレーザービームの様な物を

 放ってきた。

 

「甘いわ!」

 俺は刀を真っ直ぐ構え、レーザービームを真っ二つに受け流した。そして攻撃が終わった瞬間、

 俺は銀色の首の頭上に一瞬で移動した。

 

「テメェの弱点はそこだ!」

 俺は空中で回転しながら胴体の部分と銀色の首の部分の付け根に向かって刀を振り下ろした。

 その一撃は魔物に直撃し、銀色の首は落ち魔物の胴体部分も力が抜けたように地面に

 倒れ伏した。

 

「終わったか....」

 俺は念の為魔物を凍結させてクレスを消し近くの岩場に座った。

 

「水月先生!」

「先生!」

「リツカ!」

 魔物が凍ったのを見て三人は俺のいる所まで走ってきた。

 

「よくやった三人とも。流石に鍛えただけあってだいぶ強くなったな」

「水月先生のおかげですよ!」

「それよりも先生、回復しないと。"聖典"!」

 そう言うと周囲一帯が光に包まれ俺の体力は回復した。

 

「ありがとな白崎。....さて、じゃあ行くとしますか」

 そう言って、俺は最奥にある扉を見つめた。

 

 

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