人理修復を成し遂げたマスターはありふれた世界じゃ最強に決まっている 作:アイリエッタ・ゼロス
香織side
「う、ん....」
日の日差しが当たり、私は眠りから覚めた。目を開くと、私の目の前には裸のハジメくんと
裸でハジメくんの左腕に抱き着いたユエちゃんがいた。
「(あぁそうか....昨日の夜....)」
あの後、私達は三人で愛し合った。そして、私はハジメくんに女にしてもらった。
「(普段は優しいのに、シテる時は少し乱暴になるなんて....ますます惚れちゃったなぁ。
私Mなのかなぁ....)」
そう思いながら私はハジメくんの身体に抱き着いた。
「次もいっぱい愛してね、ハジメくん」
そう呟き、私は再び眠ってしまった。
~~~~
『立香....あなたは生きて。生きて、必ず未来を掴んでみせなさい』
「嫌だ....待て! 待ってくれ!」
『どうやら私はここまでのようね....ごめんなさい、またあなたの心に、私は深い傷を
残してしまう....』
「離せ! 離せマシュ!」
『アナタ達、後の事は頼んだわ....マスターを、立香をお願いね」
「行くな....! 頼む! 行かないでくれ!」
『....さようなら、私の愛しいアルブレヒト』
~~~~
立香side
「メルト!」
俺は何もない空中に手を伸ばしそう叫んだ。すると、俺はバランスを崩し何かから落ちた。
「いっつ....」
何から落ちたのかを見てみると、俺が落ちたのはソファからだった。
「夢か....」
俺は自分がいる場所を見て、今の光景が夢だと分かった。
「....久しぶりに見たな、今の夢」
そう呟きながら、俺は身体を起こしリビングを見た。リビングには誰もおらず、三人も
まだ起きていないようだった。
「....夜か。ほぼ丸一日寝てたな」
俺は天井を見上げ、月が出ているのを見て夜だと判断した。そして俺は台所に向かって
湯を沸かそうとした。すると....
「あ、リツカ。起きたんだ」
二階から顔を出したユエがそう言ってきた。
「ユエか。おはよう、いやおそようか。何してんだ?」
「ハジメの工房での作業見てる。カオリも一緒」
「そうか。俺も飲み物作ったら向かう」
そう言った俺はコーヒーと似たような飲み物を淹れて二階に向かった。二階では南雲は工房の
椅子に座って作業をしており、白崎はその手伝いをしていた。
「あ、先生! おはようございます」
「おはようございます水月先生」
「おう。おはようさん。何やってんだ? てかここは....」
「開かなかった部屋です。でも、あの指輪を使ったら開いたんです」
「そしたらここは工房で、今はここにある鉱石を生成魔法で加工しているんです」
「そうか」
そう言いながら、俺は机の上にある鉱石や南雲が作ったと思われる武器を見た。
「こんだけあったら色々作れそうだな」
「そうですね。僕も作りたい武器は色々思いついてるので」
「....そういや、もう一つの部屋は何だったんだ?」
「書斎でした。かなり色々な資料がありましたよ」
「わかった。俺は少しそっちの方を見てくる」
そう言って、俺はもう一つの部屋に向かった。部屋には大量の本や資料が置かれており、
オスカーが書いたと思われる手記もあった。手記を見ると、"解放者"の仲間との思い出や
他の六人の迷宮に関することが書かれていた。
「....なるほど。良い情報が手に入った」
俺はそう呟き他の資料や本を見た。すると、オスカーが作ったと思われる発明品の設計図や、
ここと地上を繋ぐ魔法陣の起動方法が書かれた資料を見つけた。
「(指輪で起動するのか....)」
「リツカ、ご飯できた」
そう考えていると、ユエが部屋に入ってきて俺にそう言った。
「そうか、すぐ行く」
俺は資料を元に戻し一階に向かった。一階には既に二人もおり食器を並べていた。
「これ白崎が作ったのか?」
俺はテーブルにある料理を見てそう聞いた。
「そうです。....て言っても先生みたいに凝った物じゃないですけど」
「いや助かる。てか悪いな、二食も作らなくて」
「....あれ? 水月先生気づいてなかったんですか」
俺の言葉に南雲は不思議そうにそう言った。
「何がだ?」
「水月先生、丸二日眠っていたんですよ。今はここに来て三日目です」
「....マジ?」
俺は南雲の言葉に驚いてそう聞いた。
「マジです。揺すってもご飯の匂いがしても全然目を覚まさなかったんです」
「マジか....」
「先生、ずっと戦って私達のサポートしてくれてましたから....疲れが溜まってたんですよ」
「そう、か....」
「(確かに、カルデアじゃ守ってもらってばっかりだったな....)」
俺はそう思いながら何も描かれていない右手の甲を見た。
「さ、取り敢えずご飯を食べましょ先生」
「....あぁ。じゃ、いただきます」
~~~~
「なぁ、今後の事だがどうする?」
食事も終わり、全員がくつろいでいる時に俺はそう聞いた。
「その事なんですが....昨日香織とユエと話し合ったんです。それで、ここにはかなりの
素材や情報がある。だから一度、ここで力を付けてから地上に戻ろうって」
「早く戻れるのに越したことはありませんけど....」
「神が相手なら準備も大事....」
「なるほど....なら、俺と同意見だな。俺もここで力を付けるのは賛成だ。出来るだけ
回収できるものは回収して作れるものは作って力は付けれるだけ付ける。それで良いか?」
「はい」
「わかりました」
「うん」
「じゃあ決まりだ。洗い物は今日は俺がやっとくから三人は好きにしててくれ」
そう言って、俺は台所の方に向かった。
~その日の夜~
「ここにするか....」
三人が寝静まったのを見計らって、俺は一人家の外に出て滝の前にいた。俺の手には
自分の血が入った器と、家の中にあった筆があった。そして、俺は滝の前にある地面に
魔法陣を描き始めた。しばらく描き続けていると、突然背後から気配を感じた。俺は咄嗟に
身構えたが、背後にいた人物を見て力が抜けた。
「何だユエか....」
「こんな所で何してるの?」
「....まぁちょっとな。お前は? 寝てたんじゃないのか?」
「喉が渇いてリビングに行ったらリツカがいなかったから....扉開いてたから外にいると
思ってここに着いた....」
「....そうか」
俺はそう言うと、再び魔法陣の続きを描き始めた。すると、ユエは俺の隣に来て魔法陣を
見ていた。
「これ、何の魔法陣? 初めて見る....」
「これは召喚術の魔法陣。....俺がいた世界のな」
「ハジメ達の世界にも、魔法あるの?」
「っ....!」
「(しまった....余計なことを言った)」
俺はそう思い筆が止まってしまった。
「....リツカ?」
「....なぁユエ。今から話すこと、南雲と白崎には黙っててくれるか? あの二人にも、いつかは
話すから」
「え....う、うん....」
「そうか....なら、話すな。俺、実は南雲と白崎の世界の人間じゃないんだ」
「....どういう事?」
ユエは俺の突然の言葉に目が点になっていた。
「簡単に言えば異世界転生者。俺は南雲達の世界とは別の世界で死んで南雲達の世界に
やってきた。そして、今回の転移で今ここにいる」
「....それ、証明できるの?」
「俺が使った魔法、
存在しないし
ほとんどない」
「....確かに、ハジメ達もリツカの動きや魔法に驚いてた。....嘘もついてなさそうだし、
その言葉信じる。でも、どうして話したの?」
「まぁ口が滑ったってのもあるが....今からする事は、俺が前の世界で何度もやってきた事
だからだ」
そう言いながら、俺は筆を走らせた。
「この召喚術は、ある特定の人物達を召喚する魔法陣だ」
「特定の人物....?」
「あぁ。英霊と呼ばれる、過去に大きな活躍や名を残した偉人と呼ばれる人物達を呼ぶ魔法陣。
そして俺はその英霊達と契約する魔術師、マスターと呼ばれる人間だ」
「っ! リツカの天職....」
「あぁ。どういう縁か、この世界では天職になった」
俺は魔法陣を完成させ、魔法陣の中心にネックレスを置いた。そして、俺は魔法陣から少し
距離のある場所に立った。
「ユエ、お前も下がってくれ」
「わかった....じゃあ、今からその英霊っていう人を召喚するの?」
「あぁ、って言いたいとこだが成功するかはわからん。かなりの魔力が必要だからな。ここで
失敗したら、俺の夢は永遠に叶わない....」
「夢って....もしかして今から召喚するのって....」
「あぁ。俺の恋人だよ」
「....できるの?」
「さぁな。でも、藁にも縋る思いなんだよこっちも。例え記憶が無くなっていても、俺の事を
覚えていなかったとしても、俺はもう一度会いたいんだ。自分勝手な理由かもしれないけどな」
「リツカ....」
「....さて、始めるとするか。ここからは静かにしてくれ」
そう言って、俺は右腕を前に突き出した。
「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、
王国に至る三叉路は循環せよ―――」
~~~~
? side
「....ここに来て、どれくらいの時間が経ったのかしらね」
人一人いない海の上を、私は自慢のヒールで滑っていた。あの時、最期を迎えた私は気づけば
謎の空間にいた。何度か脱出も試みたが出口も見当たらず、私は一人この空間で踊り、
泳ぎ続けていた。
「....立香は、未来を掴めたのかしら」
この空間に来てから、私が考えているのは彼の事ばかりだった。彼は誰よりも優しい。
こんな化け物でもある私を一途に愛し、死んでも守ると言ってくれた。そんな彼の前で私は
死んだ。
「(これで立香の前で死ぬのは二度目....また、立香の心に大きな傷を残してしまった)」
「やっぱり、私の愛は誰かを傷つけるだけなのね....」
私は柄にもないことを呟きながら空に浮かぶ月に手を伸ばした。そんな時、突然砂浜の方から
誰かの足音が聞こえた。私は咄嗟に戦闘態勢を取って足音の方を見た。すると、そこには
ローブを纏いフードを被った人型の何かがいた。
「(この魔力....サーヴァント、それもキャスターで桁違いの魔力量)」
「....初めましてだね、快楽のアルターエゴ・メルトリリス」
そう思いながら警戒していると、向こうから私に話しかけてきた。
「私を知ってるのね。....あなたは一体何者かしら?」
「そうだね....君のマスター、水月 立香の友人とでも言っておこうかな」