人理修復を成し遂げたマスターはありふれた世界じゃ最強に決まっている   作:アイリエッタ・ゼロス

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ジゼルととある魔術王の話

 声の感じからして男だった。

 

「立香の友人ですって? その割にはカルデアでは聞いたことのない声ね」

「それはそうだろうね。ボクは、君がカルデアに来る前に死んだからね」

「っ....そう」

「(私が来る前ってことは、かなり古いサーヴァントね....)」

 私と立香はそれなりに長い関係だ。その私よりも長い関係なのはマシュや赤い弓兵や

 ダ・ヴィンチといった古参のメンバーだけである。

 

「それで、そのサーヴァントが私に何の用かしら?」

「そうだね。手短に話そう。時間もあまりないみたいだからね」

「時間?」

「こっちの話さ。....今から君を立香君のもとに転移させる」

「っ!?」

 その言葉を聞き、私は驚きを隠せなかった。

 

「....驚いているようだね」

「当然よ! 私の攻撃でも宝具でもこの空間は破れなかった! あなたにはそれができるとでも

 言うの!」

「あぁ、出来るとも。だからこそ、ボクは君の前にいる」

「....何が目的よ」

 男のあまりにも自分に都合の良い言葉に私はそう聞かざるを得なかった。

 

「目的か....」

「あまりにも都合が良すぎるわ....疑わないというのが無理な話ね」

「それもそうか....なら、話しておくよ。....ボクの目的は、立香君に幸せになってもらう事だ」

「....はい?」

 男の言葉に私は変な声が出た。

 

「言っておくが冗談じゃないよ。これでもボクは本気さ」

「それにどうして私が関係して....」

「君が必要なんだよ、立香君が幸せになるためには....」

 男は随分真剣な声色でそう言ってきた。

 

「彼は、君の死を乗り越えて人理修復を成し遂げた。だが、彼の心にはぽっかり穴が

 開いたままだった。そんな彼が望んだのはたった一つのささやかな願い、君に会いたいって

 いう願いだった」

「私に....」

「あぁ。彼はただその願いを支えにして歩みを止めなかった。そして世界を、人理を救った。

 だけど、彼の願いは叶わなかった。これじゃあ彼の物語はバッドエンドでしかない....ボクは、

 そんなバッドエンドは認めたくなくてね。ここまで苦労して戦った彼が報われない、そんな

 結末をボクは変えたいんだよ。だから、ボクは君の前に現れた」

「そう....あなたの目的は分かったわ。その理由も。....それを聞いておいてなんだけど、

 私は立香のもとに行けないわ」

 私は男の目的も、その理由も理解できた。

 

「....それはどうしてだい?」

「私は彼を傷つけた元凶よ。それに彼の前で死んだのはこれで二回目。そんな馬鹿な私を

 彼はもう愛していないわ....彼の周りには魅力的なサーヴァントが沢山いる。きっと彼も、

 馬鹿な私を忘れて他の子達と....」

「本当に、そう思っているのかい?」

「っ....えぇ」

「じゃあ、どうして君は泣いているんだい?」

「えっ....」

 男にそう言われ、私は水面を見た。水面には私が映っており、私の目からは涙がこぼれていた。

 

「何で....どうして....」

「今の言葉が、君の本音じゃないからだろう? ....君だって、彼に会いたいんだろう?」

「っ、知ったようなこと言わないで!」

 私は思わず脚から斬撃を飛ばした。だが、その斬撃は男に当たることなく男の横を

 通り過ぎた。

 

「止めておきたまえ。君の攻撃は、僕には当たらない」

「うるさいっ!」

 私は頭に血が上り男に攻撃を仕掛けた。だが、私の攻撃は男に一切当たらなかった。

 

「何で....! 何で私の攻撃が!」

「今の君の攻撃は単調すぎる。いくら速くても、どこに攻撃が来るか予想がつく」

「このっ!」

 私が再び攻撃すると、男は私の蹴りを片手で抑えた。

 

「なっ!?」

「いい加減にしたまえ!」

 そう言うと、男は私のおでこにデコピンをしてきた。

 

「いっ!?」

 私はあまりの痛さに尻もちをついた。

 

「....もう、自分を偽る必要はないんじゃないかい?」

「うるさいわね....! そんなの、アンタに言われなくてもわかってるのよ!」

 私はそう言いながら脚を抱えた。

 

「えぇそうよ! 立香のもとに戻れるならすぐに戻りたいわよ! でも怖いのよ! 彼に

 否定されてしまうのが! 彼が優しいといっても限度はある....私のあの時の行動は彼の限度を

 きっと超えてしまっている....彼に目の前で否定されてしまうかと考えると、戻れないのよ....」

「....否定されてしまうくらいならここにいたい、か」

「えぇ....」

「....なら聞くが、立香君はそう簡単に君を見限る男かい?」

 男の言葉に、私は頭を上げた。

 

「彼は相当のお人好しで諦めが悪い男だ。君もそれは知っているだろう?」

「そうね....」

「君以外にも彼が好きだというサーヴァントは少なくない。だが、彼は君を選んだ。記憶が

 無くても、思い出が無くなってても彼は必死に君に気持ちを伝え続けた。どれだけ君が

 否定しても」

「そう、ね....」

「そうしてようやく思いが通じ合った君を、彼が否定すると思うのかい?」

「それ、は....」

「....これは勝手な推測だが、きっと彼は泣きながら喜ぶんじゃないかい? 君との再会を」

 その言葉を聞き私は何も言えなくなった。すると、突然私の足元に魔法陣が現れた。

 

「これは....」

「メルトリリス、これが最後のチャンスだ。立香君のもとに行くか、それともここに

 残るか。君が好きな方を選んで欲しい。もし、彼のもとに行くというのならボクは全力で

 バックアップをする」

「私は....」

 

 ~~~~

 

『メルト』

 

 ~~~~

 

 その時、私の頭には立香の声が響いた。

 

「っ、お願い! 私を、彼のもとに行かせて!」

「....その言葉を待ってたよ」

 男はそう言うと、私の足元に広がる魔法陣に新たに魔法陣を重ねた。

 

「一つ、立香君に伝言を頼めないかい?」

「伝言....えぇ、わかったわ」

「....どうか、君の幸せを追い求めてほしい。誰かのための幸せじゃなく、君自身の幸せを」

「....必ず伝えるわ」

「....ありがとう」

「お礼を言うのはこっちよ。....ありがとう。この私直々にお礼なのだから、光栄に思いなさい」

「あぁ。....やはり、弱っている君よりもこっちの方が君らしいね」

 男は笑いながらそう言った。そう話しているうちに、私の身体は光に包まれた。

 

「ねぇ、最期に教えて。あなたは一体誰だったの?」

 私は目の前の男にそう聞いた。すると、男はフードを取った。

 

「....そうだな。どちらで名乗るべきか....」

 男は少し考えると、笑顔でこう言った。

 

「ボクはロマニ・アーキマン。みんなからはドクターと呼ばれていた人間だよ」

 その時、男の顔が別の顔に変わったように見えた。

 

「あなた....」

「立香君を頼んだよ、メルトリリス」

 その言葉を最後に、私の姿はここから消滅した。

 

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