人理修復を成し遂げたマスターはありふれた世界じゃ最強に決まっている 作:アイリエッタ・ゼロス
南雲side
「ふむ、これは君が作った物か」
「はい。....といっても、全然ですけどね」
水月先生の仲間がここに来た次の日、僕はエミヤさんと一緒に工房にいた。そして、
エミヤさんは僕の造った銃を見ながらそう言った。
「確かに粗削りだが、その割には良い出来だ。....君は戦うとしたら銃での遠距離攻撃
だけかね?」
「そうですね....前衛はほとんど水月先生に任せてたんで」
「そうか。なら、最低限近距離武器での戦闘も慣れた方が良いかもしれないな」
「えっ?」
エミヤさんの言葉に僕は首を傾げた。
「南雲少年、君は遠距離攻撃を得意とする者の決定的な弱点は何だと思う?」
「け、決定的な弱点ですか? ....うーん、弾切れで攻撃できないとかですか?」
「確かにそれもあるが....私の中での正解は近接攻撃に対応できないことだ」
「近接攻撃に対応....」
「当然遠距離攻撃は遠くの敵に有効な攻撃手段だ。だが、近接攻撃の相手になると距離を
詰められて思うような攻撃が出来なくなる。その隙をつかれて一瞬で敵にやられるという事は
実はかなり多い。今の君も同様だ。マスターが前衛に立ってくれるかもしれないが、もしも
突破された場合、君は何も出来ずに倒されてしまうだろう」
「それは....確かにそうですね....」
エミヤさんの言葉に、僕は納得せざるを得なかった。
「君の"錬成"というスキルは考えようによってはかなり強力だ。鉱石を使う関係上、銃以外の
武器も作ることが出来る。ならば、様々な武器の使い方を理解していればその時と場合に
合わせた戦闘方法を取ることが出来る。そうすれば、より生存確率を上げることが
出来るだろう」
「なるほど....」
「(やっぱり水月先生の仲間だけあって凄い....戦闘に関してプロフェッショナルって感じだ)」
エミヤさんの言葉には、僕は納得させられっぱなしだった。
「幸い、私はアーチャーだが近接攻撃にもそれなりに知識がある。南雲少年さえよければ
少し教えても構わないが....」
「っ! お願いします!」
「良いだろう。なら、まずは近接武器を作るところからだな。一つ作る際のアドバイスを
するなら、イメージを大事にしたまえ。イメージが破綻してしまうと本来作ろうとした物よりも
質が落ちてしまう」
「わかりました!」
そうして、僕はエミヤさんの指導を受けながら武器の作成と戦い方を教えてもらった。
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ユエside
「お前は魔法を使うと言っていたか....」
「うん」
「....確かに、一般人に比べれば相当な魔力量だな」
私はカドックと呼ばれた男と迷宮の中にいた。カドックは私を見ながら顎に手を置いて何かを
考えていた。
「取り敢えず、どんな魔法を使うか見せてもらっていいか?」
「わかった....」
そう言って、私は近くに来た魔物に手を向けた。
「"蒼天"」
そう呟くと、魔物は蒼い炎に包まれて灰になった。
「どう?」
「....威力は申し分ないな。だが、無駄が多い」
「無駄....?」
カドックの言葉に、私は少しムッとした。
「あぁ。今の敵にあれだけの魔法は、はっきり言って魔力の無駄だ。余計な魔力を使って
魔法を使い、使える回数を自分で減らしている。そんな戦い方をしていれば、長期戦闘を
行った時に真っ先にリタイアだ」
「....じゃあどうしたらいい」
「簡単なことだ。敵に応じて、魔力の量を抑えて魔法の範囲を狭めればいい」
「魔法の範囲?」
「あぁ。見ていろ」
カドックはそう言うと、空中に魔法陣を展開し近くにいた魔物に向かって魔法を放った。
魔法陣から出てきたのは氷の結晶だったが、そのサイズは小さく手で握れるぐらいの大きさ
だった。その氷の結晶は物凄いスピードで発射され魔物の頭と心臓を貫いた。
「今みたいに、あの小さな攻撃範囲でも魔物は倒せる。魔力量もあれだけの範囲の攻撃を
するよりも圧倒的に少ない。そのおかげで魔力の消費を抑えて戦える。それにバリアや
防御力の高い敵には今みたいな一点集中の攻撃が有効だ。お前がさっきやった広範囲の攻撃は
そういった敵に相性が悪い。まぁ、烏合の衆には有効だと思うが....」
「なるほど....」
「魔力の消費が抑えれば長時間の戦闘が可能だ。それに生存確率も上がる。後は前衛で
戦っている味方の邪魔にならずサポートができる」
「....」
「(癪だけど、理にかなってる....)」
カドックの言葉に私は納得せざるを得なかった。
「臨機応変に動き敵の弱点を見つけてそこを突く。魔力を無駄にせず効率的に戦うには
この方法が最適だ。まぁ大体、頭か心臓がほとんどの生物の弱点だがな」
「....わかった。なら、それを教えて」
「....わかった。まずは魔力の抑え方だな」
そう言って、カドックによる魔法講座が始まった。
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白崎side
「あまり私は人に教えるのは得意ではないですが、出来るだけの事はさせていただきます!」
「はい! お願いします!」
私はマシュさんと家の外にいた。
「と言っても、私が出来る事と言えば攻撃の避け方や受け流し方、受け身の取り方ですね」
「避け方と受け流しと受け身ですか?」
「はい。白崎さんに質問ですが、役割としてはヒーラーの様なものですよね?」
「はい」
「なら戦闘において白崎さんが大事にしないといけないことは何でしょうか?」
「大事にしないといけないことですか? それはもちろん戦っている仲間の傷を癒すことです」
「その通りです。ですが、もう一つ大事なものがあります」
マシュさんはそう言いながら人差し指を立てた。
「もう一つ?」
「それは白崎さんが倒されないことです」
「私が? 仲間じゃなくてですか?」
「はい! ヒーラーというのは最も敵に狙われやすいんです。それは何故かというと、回復役が
いると倒したはずの敵が復帰してしまうからです。どれだけ時間をかけて、魔力をかけて
倒したとしても回復役が回復させてしまえばそれまでの苦労が水の泡です。だからこそ、
そのような事態を防ぐために回復役というのは必然的に敵に狙われやすくなってしまうんです」
「な、なるほど....」
マシュさんの説明は私にも分かりやすく納得できるものだった。
「だからこそ、白崎さんは敵に倒されないよう自分の身を守る方法を覚えてもらいます。これは
仲間の命を守る事にも繋がりますから」
「仲間の命....」
「はい。....では、早速参ります!」
「っ!」
私はマシュさんが戦闘態勢を取ったのを見て杖を構えた。
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立香side
「あの三人、任せてよかったの?」
「あぁ。偶然適任が来たからな」
メルトと模擬戦をしながらそう話していた。
「ふーん....」
メルトはそっけない返事をしながらとんでもない速度で蹴りを放ってきた。俺は咄嗟に武器で
防御したが後方に吹っ飛ばされた。
「(相変わらず速すぎるな....!)」
俺は武器を構え直しメルトがいた場所を見たが、メルトの姿は既に消えていた。
「っ!」
「(後ろか!)」
殺気を感じ、防御態勢を取って俺は後方からの攻撃を受け止めた。
「へぇ、今のを止めるのね....」
「ギリギリだけどな....!」
俺は一撃入れようと武器を振り下ろしたがメルトは軽々と避け、俺に無数の連撃を放ってきた。
最初の数撃を防ぐことはできたが次第に追い詰められ、気づけば俺の顔の横にはメルトの
脚があった。
「....参った、降参だ」
俺は両手を上げそう言った。
「....ま、昔より腕は上がってるわね」
「そりゃどうも....」
「二人とも、ここにいたのか」
すると、突然目の前からエミヤが歩いてきた。
「エミヤ」
「夕食が出来た。全員戻ってきているから二人も早く戻ってきたまえ」
「わかった。続きはまた明日だな、メルト」
「そうね」
そう言いながら、俺とメルトはオスカーの家に向かって歩き出した。
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「何だこれ!? 滅茶苦茶美味い!?」
「相変わらず料理に関しては右に出る者がいないなエミヤ」
「そんなことはない。慣れれば誰でもこれぐらいはできるようになるさ」
「アンタが言うと嫌味にしか聞こえないわよ」
エミヤの作った夕食を食べ、南雲は感動していた。その様子を見て、白崎とユエは落ち込んだ
表情で食べていた。
「何だろう....美味しいけど、この負けた気分....」
「色々とへこむ....」
「あはは....」
「まぁ調理方法のレシピは書いておこう。マスター、適当に紙を借りるぞ」
「あぁ」
エミヤはそう言って二階に上がっていった。
「....まぁ、頑張れお前等」
俺は落ち込む二人にそう言いながらメルトにあーんをした。