人理修復を成し遂げたマスターはありふれた世界じゃ最強に決まっている 作:アイリエッタ・ゼロス
立香side
「にしても旦那はん、あら説得というよりも恫喝やったなぁ」
「失礼だな....手を出さなかっただけマシだろ」
そう言いながら、俺は酒吞ちゃんの盃に酒を注いだ。フェアベルゲンを出た俺達は大樹の
近くに拠点を作りそれぞれの時間を過ごしていた。
「そら確かに。ここから十日間どうするの?」
「南雲はハウリア族に戦うすべを教えたいって言ってたな。他の亜人族に対抗するためにって。
まぁ教えることで学ぶこともあるだろ。白崎とユエはシアと何かやるんだと」
「じゃあ旦那はんは?」
「アニキとロビンと模擬戦だな。勘を取り戻すにはちょうどいい相手だしな」
「あら、うちは?」
「酒吞ちゃんは....まぁ、その....」
「(あれを思い出すから抵抗感が....)」
俺は酒を飲みながら酒吞ちゃんから目を逸らした。
「うちだけ除け者? 寂しいわぁ」
「いや除け者にしてるわけじゃ....」
「ふふふ、冗談やって。....まぁでも」
酒吞ちゃんは笑いながら俺の膝の上に乗ってきた。
「夜の相手、なんてどない? 旦那はんのお願いなら、どんなプレイでもしてあげるで?」
「止めとくよ。まだ死にたくないし。それに、そういうのはメルトだけって決めてる」
「はぁ~....旦那はんの女泣かせ。ほんま、メルトはんが羨ましいわ。こないなイイ男を
捕まえて」
「そうでしょ?」
すると、突然背後からそんな声が聞こえた。振り向くと、そこにはメルトがいた。メルトは
良い笑顔で、その笑顔が明らかに怒っている時のものだと俺は悟った。
「(やべ、終わった....)」
「でも、私がいない所ですぐに女を誑かせて....ホント、私を嫉妬させるのが上手ね」
「あんまり嫉妬深いと嫌われてまうでメルトはん」
「余計なお世話よ! というかそこどきなさい! そこは私の席よ!」
「別にメルトはんだけの席やないやんなぁ旦那はん」
酒吞ちゃんはそう言いながら俺の顎を撫でてきた。そして俺に顔を近づけてくると、突然
酒吞ちゃんは俺の膝の上から跳び少し離れた所に着地した。そして俺の顔の前にはメルトの
脚があった。
「(あぶねぇ....ギリギリセーフ)」
「この酒飲み鬼....調子に乗ってんじゃないわよ」
「怖いわぁ....白鳥いうよりも蛇やなぁ」
「っ! ぶっ飛ばす!」
「ふふふ、楽しなってきたなぁ!」
そう言って、二人はそこそこマジな喧嘩を始めてしまった。
「(逃げるか....ここにいたら死ぬ)」
俺は現実から目を逸らしてこの場から離れた。
~~~~
逃げた先には偶然にもアニキがいた。
「アニキ」
「マスターか。何だ? 酒吞童子と飲んでたんじゃないのか?」
「それがメルトと喧嘩始めて....音聞こえるだろ?」
「....おぉおぉ、やってんなぁ。で、逃げてきたと」
「流石に近くにいたら死ぬ」
「ま、そりゃそう思うわな」
そう言いながら、アニキは立ち上がり槍を構えた。
「どうだ? 暇なら久々に、オレが稽古つけてやろうか? 見たところ、腕が鈍ってんだろ?」
「....気づいてたのか」
「まぁな。あの鬼師匠じゃなくても気づくぞ」
「....そうか。なら、少し付き合ってくれアニキ」
そう言って、俺は手元にクレスを出した。
「(師匠に会ったら今のチクっとこ)」
~数日後~
南雲side
「(何やってるんだろう....)」
ハウリア族に戦闘訓練をしている休憩中、僕は何かを作っているアーチャーさんを見ていた。
「オレに何か用ですか?」
すると、アーチャーさんは手元を見ながらそう言った。
「き、気づいてたんですか....」
「そりゃそんなにじっと見られれば。で、何ですか?」
「いえその....何をしてるのかと思って....」
「ただの装備作りですよ。オレは正面戦闘は苦手なんで、こうしてトラップを作ってるんです」
そう言いながら、アーチャーさんは作った物を見せてくれた。
「....すごい器用ですね」
「こんなの、回数こなせば誰にでもできますよ」
「(誰にでもは無理でしょ....)」
そう思いながら見ていると、アーチャーさんが手を止めた。
「俺の罠、そんなに興味があります?」
「えぇまぁ....英雄が作ってるってだけで気になりますよ」
「....変わり者ですねぇオタクも」
アーチャーさんはそう言うと、僕の前に素材を置いた。
「ま、教えるのは無理っすけど見て盗むぐらいならお好きにどうぞ」
「っ! ありがとうございます!」
僕はアーチャーさんにそう言ってアーチャーさんの手元を見ながら罠を作ってみた。
~また数日後~
白崎side
「えらい頑張ってるなぁ」
「酒吞さん」
ユエちゃんとシアちゃんが戦っているのを見ていると酒吞さんが現れた。
「もう動いても大丈夫なんですか?」
「そやね。怪我、治してくれておおきに」
「いえ。それよりもどうしたんですか?」
「暇やったから見にきたんよ。あの兎の子、えらい頑張ってるなぁ」
「....そうですね」
そう話していると、二人の戦いが終わった。結果はユエちゃんの勝ちだった。
「二人とも、今回復するね」
私はそう言って二人に回復魔法をかけた。
「うぅぅぅ~~! また負けました....」
「そう簡単に勝たせてあげない」
「途中まで良かったけどなぁ。....あ、せや」
酒吞さんは何か思いついたのか手を合わせ、二人が戦っていた場所に立った。
「うちが一戦やったげる。丁度暇を持て余してるさかい」
「え....」
「良いんですか?」
「....シア、本気?」
酒吞さんの言葉に乗ろうとしているシアちゃんに、ユエちゃんは少し引き気味だった。正直、
酒吞さんの強さを深くは知らないが、先生からメルトさんと喧嘩したというのを聞いて
相当な実力者だという事は分かった。
「ええよ」
「じゃあお願いします! てやぁぁ!」
そうして、シアちゃんは酒吞さんに向かって行ったが....
「....参りました」
三分も経たない内にシアちゃんはボコボコにされていた。
「動きは悪ないなぁ。ただ、武器に頼りすぎ。せっかく身体能力高いんやし、もうちょい
身体を使った物理攻撃を学び」
「ふぁい....」
「....せっかくやし、ちょっと動きをおせてあげる。回復したらすぐに、な」
「ちょ、ちょっと休憩を....」
「ダーメ」
「ひぃぃぃぃ!?」
「(鬼だ....)」
笑顔の酒吞さんを見て私はそう思った。