人理修復を成し遂げたマスターはありふれた世界じゃ最強に決まっている   作:アイリエッタ・ゼロス

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異世界と戦争の意味

「(ここは....)」

 魔法陣の光が収まると俺は巨大な広間のような場所にいた。周囲を見ると俺以外にも

 教室にいた生徒と畑山先生がいた。そして俺達の周りを囲むように宗教団体の服を着た

 人間が数十人いた。

 

「(確実に面倒に巻き込まれたな....)」

 俺は内心そう思いながら舌打ちをした。すると、一番年を取った老人が前に出た。

 

「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、

 聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。

 以後、宜しくお願い致しますぞ」

 

 ~~~~

 

「(胡散臭いジジイ....それはメイドも周りにいる騎士も同じか。まぁあれぐらいの

 騎士なら無力化できるな)」

 そんなことを思いながら俺は椅子に深く座っていた。俺達はさっきいた場所から移動し

 大広間のような所にいた。そして、俺達はジジイからの話を聞いていた。

 この世界には人間族、魔人族、亜人族がおり人間族と魔人族の間で数百年単位で戦争を

 行っているらしい。戦争は拮抗していたが魔人族が魔物を使役したことによって人間族は

 かなり不利になったらしい。その不利を脱却するためにこの世界のエヒトとかいう神は

 俺達を召喚したらしい。

 

「(あほらし....召喚する前にこの世界の連中に力与えろよ)」

 そんなことを考えていると机の叩く音が聞こえた。音は隣から聞こえたので、机を

 叩いたのは畑山先生だった。

 

「ふざけないで下さい! 結局この子達に戦争させようって事ですよね! そんなの許しません! 

 ええ、先生は絶対に許しませんよ! 私達を早く帰して下さい! きっと、ご家族も

 心配しているはずです! あなた達のしていることはただの誘拐ですよ!」

「(ま、当然の反応だわな....)」

 俺が呑気にそんなことを考えているとジジイはこう言った。

 

「お気持ちはお察ししますが....あなた方の帰還は現状では不可能です」

「ふ、不可能って....どういうことですか!」

「あなた方を召喚したのはエヒト様です。我々人間に異世界に干渉するような魔法は

 使えませんのでな、あなた方が帰還できるかどうかもエヒト様の御意思次第ということです」

「(無能の神かよ....)」

 俺はジジイの言葉を聞いてため息が出た。すると、その言葉を聞いた生徒達はパニックに

 なったかのように騒ぎ始めた。すると一人の生徒が机をたたき立ち上がった。その生徒は

 確か....

 

「(あま、天之河だったか....)」

「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ。

 だから....俺は戦おうと思う。この世界は危機に瀕しているんだ。無視することなんて俺には

 できない! それに人類を救えば元の世界に帰してくれるかもしれない....」

「そうですな....エヒト様も救世主様の願いを無下にはしますまい」

「イシュタルさん、俺達には大きな力があるんですよね?」

「ええ。ざっと、この世界の者と比べると数倍から数十倍の力を持っていると

 考えていいでしょう」

「なら大丈夫。俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!」

「(....アイツアホだな。完全にジジイの手のひらの上で踊らされて....)」

 俺は強く宣言した天之河を冷めた目で見ていた。

 

「(数倍数十倍でどうにかなるんだったら大した差じゃない....人間一人の力なんて大体

 見当がつく。その倍程度の力なんてたかが知れている。それに....)」

「戦争の恐ろしさも悲しさも知らないガキが....」

 俺は一人、小さな声でそう呟いた。そんなことを考えている間に、生徒達のほとんどは

 天之河の言葉に賛同していた。それを畑山先生はどうにか止めようとしていた。が、どうにも

 止めようとする言葉は生徒達に届いていないようだった。すると畑山先生は俺の方を見て

 こう言ってきた。

 

「す、水月先生! 水月先生からもどうにか皆を止めてください! このままじゃ....!」

「....俺流のやり方で良いんだったら一言言いますけど。それでもいいですか?」

「お願いします!」

「はぁ....わかりましたよ....」

 そう言って、俺は目の前にあるティーカップを叩き割った。

 

 ~~~~

 南雲side

 

 皆が天之河君の言葉に賛同する中、突然何かが割れる音が聞こえた。音に驚き皆が音の方を

 見ると、水月先生がティーカップを叩き割っていた。そして椅子から立ち上がった瞬間、

 水月先生から言葉にできないほどの恐怖を感じた。

 

「おいガキども。お前等戦争に参加するってマジで言ってんのか?」

 水月先生は睨みつけるような目で僕たちの方を見ていた。

 

「あ、当たり前です! この世界の人達が困っているんですよ! 助けるのは当然です!」

「ほぉ....なら、賛同した奴ら全員人殺しの覚悟があるって事だな?」

 そう言った瞬間、皆の表情が固まった。

 

「な、何を言ってるんですか先生! 人殺しなんてそんな事....!」

「学校の授業で習わなかったのか? 百年戦争、世界大戦....その戦争でどれだけの人間が

 死んだ?」

「そ、それは....」

「戦争ってのは敵との殺し合いだ。相手にも家族や、愛する人間だっているかもしれない。

 そんな敵をお前らは殺せるんだな?」

「そ、そんな事はさせない!」

「じゃあどうやって戦争を止めるつもりだ」

「それは、話し合って....」

「話し合いでどうにもならねぇから戦争が起きんだよ」

 そう言いながら水月先生は歩き出した。

 

「そもそも戦争に参加するって言ったお前もバカだが、後先考えずに賛同したお前らも

 相当のバカだぞ」

「なっ!? 皆を侮辱するのか!」

「事実を言っただけだ。自分の意見はなく他人に流されて物事を決める。言っとくが、

 碌な死に方はしねぇぞ」

「水月先生! いい加減に....!」

「そもそも論、この戦争に参加する必要性を俺は感じない」

 水月先生は突然とんでもないことを言った。

 

「ど、どういう事ですか! この世界の人達は困って....!」

「知ったこっちゃねぇ。戦争を始めたのはこの世界の人間だ。なら、この世界の人間が

 終わらせるのが筋ってもんだ。それに戦争に勝ったところで元の世界に帰れる保証もねぇ」

「で、でもそれはこの世界の神様が....!」

「無下にしないって言っただけだ。返す保証なんてどこにもない。それに....俺はエヒトと

 やらを無能にしか思わないがな」

 そう言った瞬間、周囲にいた騎士達が武器に手をかけた。

 

「貴様! エヒト神を侮辱するか!」

「あぁ。自分が生んだ人間の戦争に手を貸さない。人間がヤバくなったら異世界の人間を

 戦争に駆り出して元居た世界にすぐに返せない。これを無能と言わずして何と言う」

「き、貴様ァ!」

 すると騎士の人達五人が武器を構えて水月先生の方に向かっていった。

 

「見とけよお前等。これが戦争では当たり前になるっていう事だ」

 そう言うと、水月先生は騎士の人達の攻撃を躱し始めた。そして一瞬の隙を見て騎士の

 腕を蹴り飛ばした。それと同時に、騎士の持っていた槍は空中に吹き飛ばされた。その槍を

 水月先生は掴むと、槍で騎士の攻撃を捌き始めた。そして....

 

「ガハッ....!」

 水月先生の持つ槍は騎士の心臓を貫いた。心臓を貫かれた騎士は地面に倒れ、血の海が

 広がり始めた。その様子に皆は悲鳴を上げ、水月先生に向かっていた騎士達は化け物を

 見るような目で腰を抜かしていた。そして、生徒の中には今起きた状況に追いつけず

 吐いている人もいた。

 

「(ほ、本当に殺した....)」

 僕はそう思いながら水月先生の方を見ていた。すると、水月先生は身体から槍を抜き

 肩に担いだ。

 

「これが戦争では当たり前になるって事だ」

「す、水月先生....! あなたはなんて事を!」

 そう叫びながら天之河君が水月先生に向かっていくと、水月先生は天之河君の首に槍の

 先を向けた。

 

「なんて事、ねぇ....言っとくが、今のが皆にやらせようとしていた事だ。良かったな、

 現実を知れて」

 その言葉に天之河君は腰を抜かしてその場に座り込んだ。その様子を見て、水月先生は

 イシュタルの方に向かっていた。

 

「ま、これが現実なわけだ。....さて、じゃあ取引をしようか」

「....取引ですと?」

「あぁ。一つ、この世界にいる間こいつ等の衣食住の保証。二つ、戦争は志願制。改めて

 聞いてやりたい奴らにやらせろ。三つ、この世界で生きるための最低限の知識をこいつ等に

 教えろ。....まぁこんなところか」

「....取引を無視するというのなら?」

「ここにいる全員を殺す」

 その言葉に、この空間にいる人間全員が固まった。

 

「わ、わかりました! その取引、謹んでお受けしましょう」

 イシュタルは慌てたように水月先生にそう言った。

 

「わかったなら良い」

 そう言って、水月先生は持っていた槍を地面に放り投げた。

 

「はぁ....つっかれた」

 そんな事を呟きながら水月先生は椅子の背もたれにもたれかかっていた。

 

「(水月先生、あなたは一体何者なんですか....)」

 

 

 

檜山はどうなるか

  • 原作通り
  • 早死に
  • 生かすが地獄を見る
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