人理修復を成し遂げたマスターはありふれた世界じゃ最強に決まっている 作:アイリエッタ・ゼロス
ダ・ヴィンチside
「....なるほど、これが原因か」
「えぇ」
シオンとともに、私は立香君のいる世界を観測していた。
「このトータスという世界にバリアの様な物が張られています。恐らく、その影響で
レイシフトの際にバラバラになったのかと」
「さて、じゃあどうしたものか....」
「バリアを破壊するのが良さそうですが....どうやって破壊するかですね」
「ストーム・ボーダーごとレイシフトして破壊できればいいが、現状は無理だ。調整にも
時間はかかるしそれを行う機械が出来ていない」
「なら宝具ですかね?」
「トータスに行ってからか? それも一つの案だが、行くサーヴァントによって出来る者と
出来ない者がいるな。まぁそこはサーヴァント次第で....一先ず、次のレイシフトでは
今回のズレを基にして再計算を行ってレイシフトを行う事にしよう」
「わかりました」
そう言って、私は職員達に今後の予定について説明を行った。
~それから数日後~
? side
「ほっほー、これが例の機械ですね」
深夜、誰もいないのを確認してわたしは例のレイシフトの機械の前にいた。
「わざわざご丁寧に向こうの世界の情報まで残してくれているとは、危機感が薄いですねぇ」
そう呟きながら、わたしは機械に繋がれたパソコンをハッキングして情報を見た。
「ふむふむ、なるほどなるほど。この程度ならちょちょいのちょいでハッキングできそう
ですねぇ! SE.RA.PHの時に比べれば楽勝楽勝! さぁて、どう遊びましょうかねぇ....」
そんなことを呟きながら、私はこっそりレイシフトの機械を動かしてセンパイのいる世界に
向かった。当然、他のサーヴァント達にはバレないようにしっかりと情報の書き換えをして。
だが、わたしは一つだけ見落としていた。
「....」
一人のサーヴァントが私の事を見ていた事に....
~三人が落ちてから数日後~
リリアーナside
「参りましたね....」
私は雫の部屋で一人そう呟いた。オルクス大迷宮での遠征が終わり、王宮は大騒ぎになった。
理由として南雲さんと香織、そして水月様が迷宮の奈落に落ちたからだ。正確には南雲さんが
落ち、香織と水月様は助けに行ったそうだがそれでも三人が落ちたという事実は変わらない。
その事実に王宮は騒然となった。無能と言われていた南雲さんが落ちたという事に嘲笑して
いる者、水月様が落ちたという事をあざ笑っている者もいたが、香織が落ちたと知ると話が
変わった。香織の魔力量は勇者一行の中でもトップクラスだった。それに何より治療師と
しての力も確かだった。そんな彼女の損失はかなりの痛手となった。更に、勇者一行は
かなり機能を失っていた。恐らく目の前で人が死ぬのを見たからだろう。ほとんどの人達は
遠征に行く前よりもかなり覇気が無くなってた。だが、そんな中でも天之河さんだけは違った。
「みんな! きっと香織は生きている! だからもう一度迷宮に行こう! 今度は勝てるはずだ!
俺達には力がある! だからきっと香織を救えるはずだ!」
そう言って、天之河さんはみんなを鼓舞していた。だが、私をそれを聞いてこう思った。
「(どうして香織だけなのでしょうね....)」
彼の言葉には南雲さんや水月様の名前は無かった。意識してたのか、それとも無意識なのかは
分からないが、私は彼の言葉にあまりにも都合がよすぎると思った。
「(オルクス大迷宮の奈落に落ちた。それはすなわち落ちた階層よりも危険な魔物が大量に
いる場所にいるという事。更に落ちたといった事実がある以上、落下の際に死ぬといった事が
あるかもしれない。そこで三人のうち誰かが生きているというのは奇跡に等しい。おそらく
あの三人で生きられるのは、水月様でしょうね....)」
南雲さん、香織は非戦闘職、対して水月様の天職は謎。だが、その実力の片鱗を私は以前の
模擬戦で見ていた。そして、メルドからの報告でもベヒモスを倒したのは水月様だというのを
聞いた。
「(天之河さんにとっては、二人は死んでもどうでもいい、いや都合が良いと言った方が
良いのでしょうかね....)」
そして、私は天之河さんに不信感を持つようになった。そして、何よりも心配だったのは
雫の事だった。雫は迷宮から戻ってきてから一度も目を覚まさず眠り続けていた。そんな雫が
心配だった私は時間がある際には雫の部屋に来て様子を見ていた。
「....ん」
「っ、雫!」
そんなこの数日間の事を思い返していると、眠っていた雫の目が開いた。
「リリアーナ....?」
「そうです! 少し待っていてください! 今使用人を....!」
「ま、待って....今は誰も呼ばないで」
そう言いながら、雫は身体を起こした。
「まだ動かない方が....!」
「大丈夫....それよりも、ここは王宮?」
「そうです」
「そう....いつの間にか帰ってきていたのね....それよりも、香織は....」
「っ....」
雫の言葉に私は何も言えず、目を逸らしてしまった。
「....見つかってないのね」
「....申し訳ありません」
「リリアーナが謝る事じゃないわ....」
そう言いながら、雫は窓の外を見ていた。その時の雫は、何処か諦めと落ち着きが混じった
表情をしていた。
「雫....? どうかしたんですか?」
「いえ....南雲君と水月先生も見つかってないの?」
「....はい」
「そう。なら50:50って言ったところかしらね....」
「....どういう意味ですか?」
「香織が生きている確率。....水月先生が一緒なら、もしかしたらと思ってね」
雫は外を見ながらそう言った。
「....随分、信頼されているんですね」
「信頼というよりも、希望に縋りたいだけなのかもしれないわ。水月先生ほどの実力なら
もしかしたらと....」
「希望に縋る、ですか....」
「(あなた達に対する、私達の思いと一緒....いや、それは雫に失礼ですね)」
雫の言葉を聞き、私はそう思った。
「....リリアーナ、少しだけ一人にしてくれる?」
「....わかりました」
そう言って、私は部屋の外に出た。そして少しすると、部屋の中からは雫の泣く声が聞こえた。
「....私は、どうすればいいのでしょうか。水月様」
その言葉に、答えが返ってくることは無かった。