人理修復を成し遂げたマスターはありふれた世界じゃ最強に決まっている 作:アイリエッタ・ゼロス
? side
「ほうほう....随分文明レベルの低い世界ですねぇ」
センパイがいるとされる世界にレイシフトしたわたしは町中を歩きながらそう呟いた。
「(しかし想定よりも随分ズレましたねぇ。城に向かってレイシフトを設定したはずが
町中になるとは。恐らくあのへんてこなバリアのせいですねぇ)」
「まずはバリアの破壊と行きましょうか」
そう呟き、わたしは出店の商品を一つパクリ城の方に歩き出した。
~~~~
「警備もちょろいですねぇ....霊体化したら一瞬で入れるなんて」
城に入ったわたしはあのバリアと似たような魔力を感じた場所にいた。そこには、バリアを
発生させていると思われる何かがあった。
「これですね。さて、どれぐらいの物か....」
わたしは何かに触れ、ハッキングを開始した。
「えぇ....何ですかこれ。面白くもない」
数分後、何かのシステムを完全に掌握したわたしはそう呟いた。ハッキリ言って、この何かには
一切のプロテクトが施されていなかった。
「(誰もこれには気づかずハッキングされないとでも思っていたんでしょうか? 随分と
傲慢なことで....)」
「こういう相手には、嫌がらせをしたくなりますねぇ....!」
私は笑みを浮かべ、これとリンクしている物も同時にハッキングをした。
「さて、完全に破壊するのは面白くないですね! こういうのはチャンスを与えてミスったら
罰ゲームがあるのが面白いですねぇ!」
そして、私はこの何かを元に戻すシステムを組み込んだ。ただしとんでもなく解除が
めんどくさく、わたしの思考回路を理解していないと元に戻せないシステムだが....
「さて罰ゲームは....一回目は小指がタンスの角に当たったような痛みにしましょうか!
それで二回目は爪の間に針が刺さったような痛みで、三回目は頭の中に黒板を爪でひっかく
音を聞かせて....!」
そうして、わたしは50個ほどの罰ゲームをシステムに組み込んだ。
「ま、一先ずはこれぐらいで良いでしょう! さて、ついでにこの世界の神にも嫌がらせを....」
わたしは何かを経由してこの世界の神に対していくつかのデバフをかけた。
「ま、こんなところですね! さてさて、じゃあ会いに行くとしますか! あのバカップルに!」
そう呟き、わたしはこの場から霊体化で離れた。
~~~~
雫side
「....」
私は一人、刀身に付いた血を振り払って目の前で死んでいる魔物を見ていた。目の前で
死んでいるのは香織が奈落に落ちた原因になったベヒモスだった。
「(....あの時、私にこの力があれば)」
私は血が出そうなぐらい拳を握り締めていた。
「やったな雫! この力があれば香織を救うことが出来る! ....きっと、南雲と水月先生も
浮かばれるな」
「....随分、都合が良いわね」
近づいてきてそう言った光輝の言葉に私はそう返した。
「えっ?」
「どうして香織だけは生きている、そう思ったの?」
「それは....香織は治療師だ。落ちた時に怪我をしても魔法で回復できる。それにステータスも
かなり高い。だが南雲のステータスはたかが知れている。それに水月先生もステータスは
見れなかったが訓練を真面目にしていないのなら大したことは無いだろう。だから、二人は
落ちた時の衝撃で....」
「....呆れた。そんな確証もない理由なのね」
「どういう意味だ?」
「そのままの意味よ。そんな自分勝手な妄想と理屈で....あの三人で生き残ってるのなら
どう考えても水月先生が生きている確率が高いでしょ」
「っ! どうしてだ!」
「ベヒモスを一人で倒すほどの腕、光輝を圧倒するほどの実力。明らかに戦力としては
私達よりも格上よ。なのに死んだと思うなら、香織も死んでるわよ」
「「「っ!」」」
私のその言葉には、光輝以外のクラスメイトも驚いたような表情をしていた。
「雫! 縁起でもないことを言うんじゃない!」
「私は状況や可能性を鑑みて言っただけよ。先生よりも弱い香織が生きていれるとは、私は
思わないわ」
「どうしたんだ雫! 君はそんなことを言う奴じゃ....!」
「私だって香織には生きていて欲しいわ。でも、現実は甘くない。この世界に来た時、先生が
騎士を殺したのを見たでしょ。それを見て私は思ったのよ。....人って、あんなに簡単に
死んでしまうんだって」
「っ....!」
「それと、一つ思ったんだけど....光輝は南雲君と先生には死んでいて欲しいの?」
「なっ!?」
光輝の表情は一瞬にしてひきつった。
「香織の生存だけ考えて二人は死んだものとして考える。そう思うのは変かしら?」
「そ、そんなことは....!」
「じゃあさっきの発言は? ....目障りだったんじゃないの、あの二人が。まぁ当然よね、
自分の言う事を信じない人間なんて今まであなたの周りにもいなかったもの。あなたにとって、
あの二人は自分にとって敵だとでも思ってたんでしょ。だから、死んでいた方が都合が良い」
「何だと!」
「お、おい光輝! 落ち着け!」
掴みかかってきそうだった光輝を、龍太郎は羽交い絞めで止めていた。
「雫も言い過ぎだ! 光輝がそんな事思って....」
「....どうかしらね。南雲君が落ちた原因を探さない時点で死んでもよかったとでも思われても
仕方がないと思うわよ」
そう言いながら、私は後方にいたクラスメイトを見た。クラスメイトは私の視線に気づくと
全員目を逸らした。
「雫....お前、一体どうしたんだよ....お前らしくねぇぞ」
「龍太郎、あなたが私の何を知ってるのよ....もう、私は光輝のご都合解釈に付き合うのは
疲れたのよ。悪いけれど、もう私はあなたの事を見てられないわ」
そう言って、私は光輝の横を通り過ぎた。