人理修復を成し遂げたマスターはありふれた世界じゃ最強に決まっている 作:アイリエッタ・ゼロス
とある場所にて
「おのれ....! どこのどいつだ! 私が作り出した結界を破壊しくだらぬ悪ふざけを
仕掛けた奴は!」
ある男がそんな事を叫んでいた。
「しゅ、主よ....恐らくイレギュラーが起こしたものかと....」
「ただの駒の分際で....! 私の遊戯を邪魔するつもりか! 今すぐ排除しろ!」
「はっ!」
~~~~
立香side
「悪いなお前等。面倒ごと増やしちまって」
運転をしながら俺は南雲達にそう言った。
「良いですよ水月先生。同じ立場だったら僕もそうしてたと思いますし....」
「あれは相手が悪い。リツカのせいじゃない....」
「そうですよ」
「そうか? まぁお前等が言うならそういう事にしとくか....」
そう話していると、腕に着けている通信機が鳴った。
『あぁー、こちらダ・ヴィンチちゃん、こちらダヴィンチちゃん』
「こちら立香。どうしたダ・ヴィンチちゃん」
『そろそろ次のメンバーを送っても良いかい? 今にも暴れ出しそうな勢いなんだよ....』
「暴れ出すって....どんなメンバー構成になったんだよ。今、次の町に向かって車を
走らせてる。町に着いたらこっちから連絡するからその時に送ってくれ」
『了解した。出来るだけ急いでくれよ?』
そう言うと、ダ・ヴィンチちゃんからの通信は切れた。
「誰が来るのかしらね?」
「さぁ....暴れるっていうぐらいだから嫌な予感はしてるけど....」
「暴れるサーヴァントの人達もいるんですか?」
「えぇ。立香への愛が重い連中や、戦闘狂の連中ね。まぁ今回は前者でしょうね」
そんな事を話しながら、俺は何人かが頭の中に思い浮かんだ。
「一波乱ありそうだな....メルト、喧嘩はほどほどにしてくれよ?」
「相手の出方次第ね」
「はぁ....」
「(胃がキリキリしてきた....)」
~~~~
「こちら立香。ダ・ヴィンチちゃん、目的の町に到着した。送ってくれても大丈夫だ」
『了解した!』
町に着き、俺はダ・ヴィンチちゃんに通信を繋いでそう言った。
「さて、誰が来ることやら....」
そう呟くと、俺達の目の前に魔法陣が現れた。そして魔法陣の光が収まると三人の
サーヴァントがいた。
「....久しいですね、我が夫」
「会いたかったぞ、我が子」
「....元気そうね、後輩」
「こりゃまたすごいメンバーで....」
現れたのはモルガン、ティアマト、パイセンだった。
「一先ず我が夫、そこに正座しなさい。説教です」
「わたしもモルガンと同じです。母は怒っています!」
「ですよね....」
俺は大人しくその場で正座した。
「お前等、先に少し町を見て回っといてくれ。時間がかかりそうだ」
「そうね。アナタ達、立香はほっときなさい。首突っ込むと面倒よ」
そう言って、誰よりも早くメルトがどこかに行ってしまった。
「メ、メルトリリスさん!」
「本当に大丈夫なんですか!? 槍持ってる人、凄い殺気出てますけど!?」
南雲と白崎は心配そうにそう言いながらメルトの後を追っていった。
「さて、まずは何から説教をしましょうか」
「(いくつかあんの!?)」
~二時間後~
「....まぁ、こんなものでしょう」
「ちゃんと反省した?」
「はい、それはもう....」
俺は二人から一時間ずつみっちりと説教された。
「(戻ったらこの説教がいくつあるんだろうか....)」
「終わったのね」
俺がそう思っていると、背後からパイセンが現れた。
「パイセン」
「後輩、歯食いしばりなさい」
「え、ちょ....!」
パイセンはそう言うと、俺の顔面をグーで殴ってきた。避けようと思ったが正座で足が
痺れており、俺はパイセンのグーパンチをノーガードで食らった。
「グハッ!?」
俺は吹っ飛ばされ、1kmぐらい離れた場所にある木に背中をぶつけた。
「いってぇな....!」
「当たり前でしょ。結構本気で殴ったから」
「アンタは俺を殺す気か!?」
「こんぐらいでおまえは死なないでしょうが。ま、これで勝手に死んだ分はチャラにしてやるわ」
そう言いながら、パイセンは俺の頬を掴み顔を近づけてきた。
「....暴走は、してないみたいね」
「まぁそうっすね....」
「....後輩。二度とあんな事するんじゃないわよ。次やったら私がおまえを殺すわ」
そう言ったパイセンの眼は、異聞帯で対峙した時の眼と同じだった。
「....へい。すんませんっした....」
「....反省してるなら、今回は許してあげるわ。言っとくけど、次は無いわよ」
そう言うと、パイセンは俺から離れ歩き出した。
「....さっさとメルトリリスと合流するわよ」
「っ! 了解」
~~~~
「随分長かったわね。....それにその顔」
「説教二時間に鉄拳制裁のフルコースだった....」
メルトと合流して俺はメルトにそう言った。
「あっそ....」
「だ、大丈夫ですか先生....? 魔法使いましょうか?」
「まぁ大丈夫とは言えんが....俺がやらかしたから仕方ねぇ。あ、魔法は使わなくていいぞ。
治すともう一発殴られそう」
「よくわかってるわね」
「(冗談で言ったんだけど....)」
俺はそう思いながらパイセンの顔を見た。
「....何よ」
「いえ....お前等に紹介しとく。今回来たアサシン、バーサーカー、アルターエゴだ」
「我が子、この子達が?」
「あぁ。一応俺の生徒」
「そうか」
「す、水月先生? 我が子って....」
「我が子は我が子。わたしはこの子のお母さん」
「リツカのお母さん?」
「いやそれはその....本当というか嘘というか....」
「我が夫、何故このアルターエゴがいるのです。おまえは私の夫でしょう。浮気ですか?」
「あら、いつ立香がアナタのものになったのかしら? 相変わらず勝手なこと言ってるわね
この暴走女王は」
「....口の減らない白鳥が」
「あら、私とやる気?」
ただ紹介をしたかっただけのに、いつの間にかこの場はしっちゃかめっちゃかになっていた。
「あーあ....私知ーらない」
「パイセン! 頼むから少し手伝ってくれ!」
~数分後~
「我が夫の頼みです。一先ずは止めておきましょう」
「まぁ、立香の頼みだから聞いてあげるわ」
「そ、そうか....」
「我が子、喧嘩止めて偉い。いい子いい子」
二人をどうにか説得した俺はティアマトに頭を撫でられていた。
「だ、大丈夫ですか?」
「まぁな....」
シアの言葉に俺はそう返した。
「さっきアルターエゴが母って言ってたが、一応本当は本当だ。ただ、俺を産んではいない」
一先ず落ち着いたので、俺はさっきの質問に答えた。
「....どういうことですか?」
「簡単に言えば、アルターエゴは全ての生命体の母なんだ。もっとわかりやすく言えば神様だ」
「か、神様!?」
「そう。母凄い」
「神様が仲間って....」
「レベルが違いすぎる....」
俺の言葉に四人は若干引いていた。
「じゃ、じゃあバーサーカーさんのあの発言は....?」
「あれは....夫じゃないんだがそう呼ばれてる」
「あぁ....なるほど....」
白崎は何かを察したのかそう言った。
「じゃあ、アサシンさんは....」
「この人は....」
パイセンの顔を見ると、余計なことは言うなという表情だった。
「一応、カルデアの先輩だったからパイセンって呼んでる。パイセンも俺のこと後輩って
呼んでるからな」
俺は言っても問題なさそうな部分だけ言った。
「へぇー、そうなんですね」
「あぁ。さて、そろそろ宿に行くか」
そう言って、俺は立ち上がって泊まる宿に向かった。
~~~~
園部side
「はぁ、今日も手掛かりはなしですか....清水君、一体どこに行ってしまったんですか....」
町のレストランの中で愛ちゃん先生はそう呟いた。現在、私達はウルという町にいた。そこで
私達は行方不明になったクラスメイトの清水を捜索していた。
あのオルクスでの惨劇が起きてから私達のクラスは二つに分かれた。一つは戦争のために
迷宮で力を付けるチーム、もう一つは愛ちゃん先生の遠征の護衛チーム。過半数は迷宮で
力を付けるチームだが、私は護衛チームの方にいた。その理由は、戦う事が怖くなって
しまったからだ。あのオルクスで私は一度死にかけた。トラップが発動し、骸骨の魔物の
攻撃を受けていれば私は間違いなく死んでいた。だが、水月先生のおかげでどうにか
死ななくて済んだ。だが、今でも時折あの時の事がフラッシュバックしてしまうように
なってしまった。そして、私は戦闘訓練に参加できなくなってしまった。だが何もしないと
いうわけにもいかなかったため愛ちゃん先生の護衛に立候補して護衛チームに参加する
ことになった。私以外にも何人か護衛チームにおり、清水もその一人だった。だが、
行方不明になって既に二週間が経っていた。
「愛子、あまり気を落とすな。まだ何も分かっていないんだ。無事という可能性は十分にある。
お前が信じなくてどうするんだ」
そして護衛には私達以外にも教会の神殿騎士もいた。恐らくハニートラップ目的なのだろうが、
逆に愛ちゃん先生に惚れている残念な連中だ。
「そうですよ愛ちゃん先生。清水君の部屋だって荒らされた様子はなかったんです。自分で
何処かに行った可能性だって高いんですよ? 悪い方にばかり考えないでください」
「....そうですよね。悩んでばかりいても解決しません。清水君は優秀な魔法使いです。
きっと大丈夫。今は、無事を信じて出来ることをしましょう」
「その意気だ愛子!」
「取り敢えずは、本日の晩御飯です! お腹いっぱい食べて、明日に備えましょう!」
そう言って、私達は今日の晩御飯を食べ始めた。そうして賑やかになっているとレストランの
オーナーさんがやって来た。
「皆様、本日のお食事はいかがですか? 何かございましたら、どうぞ遠慮なくお申し
付けください」
「オーナーさん。いえ、今日もとてもおいしいですよ。毎日癒されてます」
「そうですか。それは何よりです。何よりなのですが....」
すると、突然オーナーさんの表情は悪くなった。
「どうかしたんですか?」
「実は、大変申し訳ないのですが....香辛料を使った料理は今日限りとなります」
「えっ!? そうなんですか!?」
「はい....申し訳ございません。何分、材料が切れまして....いつもならこのような事が
ないように在庫を確保しているのですが....ここ一ヶ月ほど北山脈が不穏ということで採取に
行くものが激減しております。つい先日も調査に来た高ランク冒険者の一行が行方不明と
なりまして....ますます採取に行く者がいなくなりました。当店にも次にいつ入荷するか
わかりかねる状況なのです....」
「その不穏というのは....?」
「何でも魔物の群れを見たとか....北山脈は山を越えなければ比較的安全な場所です。山を
一つ越えるごとに強力な魔物がいるようですが、わざわざ山を越えてまでこちらには来ません。
ですが、何人かの者がいるはずのない山向こうの魔物の群れを見たのだとか....」
「それは、心配ですね....」
その会話に少し空気は暗くなったが、オーナーさんは表情を変えてこう言った。
「ですが、その異変ももしかするともう直ぐ収まるかもしれませんよ」
「どういうことですか?」
「実は今日、新規のお客様が宿泊にいらしたのですが、何でも先の冒険者方の捜索のため
北山脈へ行かれるらしいのです。フューレンのギルド支部長様の指名依頼らしく、相当な
実力者のようですね。もしかしたら、異変の原因も突き止めてくれるやもしれません」
「指名依頼....」
「(てことは結構凄い人なんじゃ....)」
私はゲームの知識でしかないが、上の人からの指名を受けるというのは相当凄い人なんじゃ
ないかと思った。
「おや、噂をすれば。彼等ですよ。騎士様、彼等は明朝にはここを出るそうなので、もし
お話になるのでしたら、今のうちがよろしいかと」
オーナーさんがそう言った方向からは話し声が聞こえてきた。声の数は多く、かなりの
大所帯だった。
「酒はあるみたいね。後輩、おまえも付き合いなさい」
「えー....パイセン俺と飲むと深酒するじゃないっすか....」
「そうだ。飲みすぎよくない」
「あまり夫を困らせないでください」
「そうよ。てかアナタは立香の妻じゃないのにいつまで夫って呼ぶ気?」
「....今日は控えるわよ」
「どうだか....」
「米なんていつぶりだろう....」
「そうだねぇ....地球にいた時は当たり前だったけど」
「ハジメとカオリの故郷じゃ当たり前にあるものなんだ....」
「二人の故郷の味ですかぁ....楽しみですねユエさん!」
声の数は九つで、ほとんどが女性の声だった。だが、その声のうち三つは聞いたことが
ある声だった。
「(男の声に地球って....それに女の声も....)」
神殿騎士以外のここにいる全員も会話や声を聞いて気付いたようだった。
「....南雲君? それに白崎さん?」
「水月先生....?」
すると愛ちゃん先生は部屋を囲っていたカーテンを勢いよく開いた。
「南雲君! 白崎さん!」
カーテンを開けた先にいたのは七人の女性と二人の男だった。
「「....先生?」」
「うわっ....めんどい予感....」
先生と言った二人はあの時奈落に落ちた南雲と香織だった。だが、二人の容姿は落ちた時と
違い、髪の色が変わっていたり身長が伸びていた。そしてもう一人、嫌そうな表情をした人は
私を助けてくれた水月先生だった。
「後輩、誰このちっこいの?」
「....こいつ等の担任」
眼鏡をかけた美人な女性が水月先生にそう聞くと水月先生はめんどくさそうにそう言った。
「だ、誰がちっこいですか! そ、それよりも南雲君に白崎さんに水月先生! 三人とも
生きていたんですね....」
「まぁ何とかって感じですけど....」
「先生のおかげでどうにか....」
二人はそう言いながら水月先生の方を見ていた。
「はぁ....取り敢えずお前等、適当にあしらってくれ」
「「えぇ....」」
水月先生はそう言うと、二人に任せて先に席に行こうとした。
「待ってください! 水月先生! どうして生きていたのならみんなのもとに戻らなかったん
ですか! それにその格好にそこにいる女性達は何者なんですか! 答えてもらいますよ!」
すると愛ちゃん先生はそう叫んで水月先生の前に立った。
「めんどくせぇ....」
「我が夫、始末しましょうか?」
「バカね。店内を血祭りにしたら面倒よ。私が溶かすわ」
すると、水月先生の傍に立っていた女性の二人からとんでもない殺気が出た。その殺気に
私達全員は身体が動かなくなり、愛ちゃん先生に至ってはその場でへたり込んだ。
「止めろ二人とも。無駄に殺そうとするな。後が面倒だ」
「「....」」
水月先生がそう言うと、二人から出ていた殺気は消えた。
「....話があるなら後にしてくれ。こっちも腹減ってるんだよ」
水月先生はそう言うと愛ちゃん先生の隣を歩いて席に座った。他の人達も水月先生の
後に続き席に座った。
「(あの人達、一体何者なの....? それに水月先生も....)」