人理修復を成し遂げたマスターはありふれた世界じゃ最強に決まっている   作:アイリエッタ・ゼロス

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北の山脈の生き残り

 立香side

 

「(流石に四人で寝るには狭すぎたな....)」

 次の日の夜明け、起きた俺はそう思っていた。俺の横にはメルトとモルガンがおり、

 上にはティアマトがいた。俺はティアマトをベッドに移して部屋から出てパイセンの

 いる方に歩いて行った。

 

 ~~~~

 

「パイセン」

 パイセンの魔力を探し、俺は宿の外にいた。パイセンは宿の屋根の上で本を読んでいた。

 

「起きたのね後輩」

「えぇ。....パイセン、メルトにあのこと喋っただろ」

 俺はパイセンの隣に座りそう言った。

 

「えぇ、聞かれたからね」

「そんな当たり前みたいに言わないでくれません?」

「知ったこっちゃないわよ。黙っとけって言われたら少しは黙ってたわよ」

「....どうだか」はぁ

 パイセンの言葉を聞いて俺はため息が出た。

 

「パイセン、俺等行方不明者の捜索に向かうが....」

「あんた達で行きなさいよ。私は面倒だから行かないわよ」

「言うと思った....」

「それに、少し気になる事があるからね」

「気になる事?」

「えぇ。こっちで勝手に調べとくからあんたはあんたのやる事をやりなさい」

「....了解。じゃ、問題起こさないようにしてくださいよ」

 俺はそう言って屋根から飛び降りた。そして、自分の部屋に向かって三人を起こしに行った。

 

 ~~~~

 

「あの水月先生。この依頼が終わったら八重樫さんに会いにホルアドに寄り道していいですか?」

 三人を起こして四人と合流した俺は、町の出入り口に向かっている時に南雲にそう言われた。

 

「寄り道?」

「はい。香織が生きていることを八重樫さんにも教えたくて....」

「少し話すだけでいいんです。お願いします先生!」

「....まぁ別にいいぞ。ただし、ちゃんと依頼を終わらせてからな」

「っ! ありがとうございます!」

「んじゃ、さっさと終わらせるぞ」

「水月さん。アサシンさんは?」

「パイセンは別行動。何か気になる事があるんだと」

 そう話しながら町の出入り口に歩いていると、俺達は町の出入り口に着いた。そこには、

 何故かお呼びでない連中がいた。

 

「....何でお前等がここにいる?」

「私達も行きます。行方不明者の捜索ですよね? 人数は多いほうがいいです!」

 そこにいたのは畑山と畑山と一緒にいたガキども六人だった。

 

「行きたきゃ勝手にお前等で行け。一緒はごめんだ」

「ど、どうしてですか?」

「足の速さが違う、魔物が出た時に邪魔。テメェ等に合わせてると余計な時間がかかる」

「足の速さって....」

「南雲」

「はい」

 南雲が指輪を光らせると、魔法陣から車が現れた。車を見ると、七人は驚いた表情に変わった。

 

「ちなみに水月先生達は走ったら車よりも速いですよ」

「「「はぁ!?」」」

「じょ、冗談ですよね?」

「冗談じゃないですよ。本当に車と並走してきますよ」

「わかっただろ。そもそもお前等と俺等じゃステータスが違いすぎる。言っとくがお前等と

 南雲とでも天と地ほどの差はあるぞ。こっちもこれ以上余計なリスク背負う気ないんだよ。

 だからさっさとどけ」

 俺は少し語気を強めて言ったのだが、畑山はそれでも食い下がろうとしなかった。

 

「水月先生。私は教師としてどうしても南雲君と白崎さんからもっと詳しい話を聞かなければ

 なりません。だから、きちんと話す時間を貰えるまでは離れませんし逃げれば追いかけます。

 水月先生とって、それは面倒なことではないですか? 移動時間とか捜索の合間の時間で

 構いませんから時間を貰えませんか? それに、水月先生からも色々と聞きたいことが

 あります」

「....」

「我が夫。この者達、ここで消しましょうか?」

 すると、あまりのしつこさに鬱陶しいと思ったのかモルガンは槍を構えた。

 

「鬱陶しいのは分かるけどダメ。ここで殺すと面倒になる」

「....」

「先生。面倒だと思ってるのは百も承知ですが、一先ず連れて行きませんか?」

 俺がモルガンにそう言って止めると、白崎がそう言ってきた。

 

「....マジで言ってんのか?」

「ここで無駄に時間を使っても勿体ないですし....」

「....」

「私とハジメくんでどうにかするんで....」

「....わかった」

 俺もこれ以上ここで時間を使うのはもったいないと思ったため、仕方なく白崎の案を呑んだ。

 

「南雲。面倒だと思うがそいつら車に乗せろ。俺等は先に山に向かってる」

 そう言って、俺は自分の脚にルーンを描いた。

 

「じゃ、また後でな。三人とも行こう」

 俺は三人にそう言うと山の方に走り出した。

 

 ~~~~

 園部side

 

「ねぇ香織」

「何? 優花ちゃん」

 車で目的地に向かっている時、私は隣に座っている香織に声をかけた。

 

「あのさ....水月先生の事なんだけど。水月先生、何かあったの? 奈落に落ちる前って

 あんな感じじゃなかったと思うけど....」

「水月先生? 別に特に何もないけど....今の先生は素って感じかなぁ」

「あれが水月先生の....」

「私達はしばらく一緒にいたから慣れちゃったけど。まぁしばらく会って

 なかったらそうなるよね」

「そっか....」

「ていうか香織! あの美人な女の人達って....」

「あの人達は先生の仲間。言っておくけど絶対失礼がないようにしてね。

 特にペンギンパーカーの人には」

「そうだね。下手に悪口を言ったと思われたら水月先生本気で殺しに来るから。

 実際、この町に来る前に貴族の男を殺そうとしたからさ」

 香織の言葉に、運転していた南雲はそう言った。

 

「まぁ、水月先生は僕達と生きてきた環境が違うんだ。だから殺しにも戦闘にも

 詳しい。この世界に来た時にその片鱗は見えてたんだよ」

 その言葉を聞いて、私は先生が騎士を殺した時の事を思い出した。

 

「水月先生ってさ....一体何者なの? 二人は何か知ってるんでしょ」

「....私達の口からは言えないかな。言ったら絶対怒られるし....」

「そうだね....知りたいなら本人に聞いてみたらいいよ。まぁ、答えてくれるとは

 思わない方がいいけど....」

 二人は申し訳なさそうな表情でそう言ってきた。

 

「本人に聞く、か....」

「大丈夫だって優花! いざとなったら私達も一緒に行くから!」

「そうそう!」

「二人とも....ありがとう」

「(そうだ。私、水月先生にちゃんとお礼を言わないと....)」

 そう思いながらも、車は目的地に進んでいた。

 

 ~~~~

 

「はぁ、はぁ....」

「....そろそろ休憩にしようか」

 車を降りて山を登っていると南雲がそう言った。南雲や香織達は全く疲れた様子は

 なかったが私達はかなりを体力を使って疲れていたのでその提案はありがたかった。

 

「ハジメくん、ここからどうする?」

「そうだね....一先ず水月先生達と合流するのもありだと思うけど....」

 南雲と香織は近くの岩に座ると今後について相談を始めた。

 

「やっと着いたのね」

 すると、突然背後からそんな声が聞こえた。振り向くと、そこには水月先生の仲間の

 ペンギンパーカーの人がいた。

 

「メルトリリスさん!」

「何か見つけたの?」

「いえ....先生達の方がかなり体力を消耗していたので一度休憩を....」

「....だから立香が拒否したんじゃない」

 メルトリリスさんと呼ばれた人は呆れた様子で私達の事を見て来た。その人の眼は、とても

 冷たい眼をしており思わず身震いするほどだった。

 

「す、すいません....それよりも水月先生達は....」

「アルターエゴは下流、バーサーカーは上流の方を探してるわ。立香は私と反対の方向を

 探してるからあっちよ」

 そう言って現れた場所と反対の方を見ていた。

 

「こっちは特に何もなし。魔物が少しいたぐらいよ」

「そうですか....じゃあ....」

 そう話していると、突如ここから離れた上空に青黒い何かが現れた。

 

「な、何!?」

「あれは....」

「バーサーカーね。何か見つけたんじゃない? じゃなきゃわざわざ空に撃たないわよ。

 どうせ立香も向かうだろうし私は先に行くわよ」

 そう言うと、メルトリリスさんという人は青黒い何かが現れた方に向かって行った。

 

「僕達も行きましょう」

 南雲はそう言って立ち上がり後を追っていった。

 

 ~~~~

 

「水月先生!」

 南雲達の後についていくと、そこには水月先生と水月先生の仲間の女性が全員

 集まっていた。

 

「来たか。一応遺品らしき物は見つかったぞ」

 そう言って水月先生は地面に落ちている折れた剣や壊れた盾、破れた鞄を

 指差した。

 

「多分だが魔物の襲撃にでもあったんだろうな。少し周りを見たがあっちに

 戦闘の跡が続いている。もしも生きていたとしたらこの跡の先にいるだろうな」

「なるほど....この遺品らしき物はどうしますか?」

「お前の宝物庫に念のため入れておいてくれ。死んでたらそれが証拠品になる」

「分かりました」

 南雲はそう言うと、魔法陣の中に遺品と思われる物をしまっていった。それが

 終わると、水月先生達を先頭にして戦闘の跡がある道を歩き始めた。私達もそれに

 ついていくと、巨大な滝の前に着いた。

 

「....何かいるな」

 滝の前に着くと、水月先生は滝に向かってそう呟いた。そして、空中に何かの

 文字を描くとその文字を滝に向けて飛ばした。すると、一瞬にして滝全体は

 凍結した。

 

「嘘でしょ....」

「メルト、適当に通れるぐらい砕いてくれ」

「はいはい」

 そう言うと、メルトリリスさんという人は水の球の様な物を何処から出現させ

 凍った滝に向かって飛ばした。すると凍った滝の一部は粉々に砕け散った。

 

「マジか....」

「ただの水の球がどんな威力してんだよ!?」

「何か私....あんなの見たら全然なんだ....」

「(水月先生、本当に人なの....? それにメルトリリスさんっていう人も....)」

 この惨状を見て、全員驚いたり落ち込んだりしていた。私も二人のことを見ながら

 そう思っていた。

 

「さっさと行くぞ。時間経ったら崩れるぞ」

 水月先生はそう言うと、滝が砕けて現れた洞窟の中に入っていった。急いで

 ついていくと、そこには倒れている男の人がいた。

 

 〜〜〜〜

 立香side

 

「こいつが例の貴族か....?」

 俺は倒れている男を見ながらそう呟いた。俺は脈を測ってみると、男はまだ

 生きているのがわかった。

 

「まだ生きてるな....」

 俺は男の頭をグーで殴って無理やり男を起こした。

 

「ぐわっ!?」

「お前がウィル・クデタか。クデタ伯爵家三男の」

「いっ、えっ、き、君達は一体....どうしてここに....」

「いいから質問に答えろ。ウィル・クデタじゃないなら俺達はもう行く」

「は、はい! そうです! 私がウィル・クデタです! はい!」

 ウィルはどこか慌てたようにそう答えた。

 

「そうか。俺は水月 立香。フューレンのギルド支部長イルワからの依頼で

 捜索に来た」

「イルワさんが!? そうですか、あの人が....また借りができてしまったようだ....あの、

 あなたも有難うございます。イルワさんから依頼を受けるなんてよほどの凄腕なのですね」

「さぁな。それより、他の冒険者はどうした? 生きてるのはお前だけか?」

「そ、それは....」

 すると、ウィルはこれまでにあったことを話し始めた。五日前、同じように山の中を

 探索していた一行は大量の魔物に遭遇。五人いた冒険者のうち二人が殿を務め亡くなり、

 逃げた先にいた黒竜によって三人が亡くなった。そしてウィルは運よく滝壺に落ちこの洞窟に

 隠れていたらしい。そう話し終わるとウィルは地面に座り込み泣きながら叫び始めた。

 

「わ、わだじはさいでいだ。うぅ、みんなじんでしまったのに、何のやぐにもただない、

 ひっく、わたじだけ生き残っで....それを、ぐす....よろごんでる....わたじはっ!」

「めんどくさいですね....殴って黙らせましょうか我が夫」

「鬼か....」

「自業自得よ。実力も無いのに参加するからこんなことになるのよ。アナタしか人がいないって

 いうなら話は別だけど代わりがいるのに無理を言って参加してこの体たらく....ハッキリ言って

 バカとしか言いようがないわよ」

「もう一人鬼がいた....」

「(それもキレッキレの魔剣ジゼル....容赦ねぇー....)」

 俺は二人の発言に若干引きながらそんな事を考えていた。

 

「お、お二人とも! もう少し言い方ってものが....!」

「「でも事実でしょう?」」

「う....」

 畑山は二人にそう言ったが、二人はまるで気にした素振りを見せずそう言い返した。

 

「はいはい。取り敢えず泣くのは外に出てから好きなだけ泣いてくれ。こっちも仕事で

 来てるんだ。無駄に時間過ごして魔物の襲撃受けるのはごめんだ」

 俺はそう言ってウィルを立たせた。

 

「ま、死にたいならそこにいろ。数日もすれば衰弱死できるだろ。生きたいなら

 さっさと前に進め。悩んでる間に死ぬぞ」

 そう言って、俺は洞窟の入り口の方に歩き始めた。

 

「お前等とっとと行くぞ」

 俺は足を止めている全員に一言そう言って入り口の方に歩き続けた。他の連中も走るように

 俺達の後をついてきた。そして洞窟の入り口に着くと、そこにはとある魔物がいた。

 

「なーんか気配すると思ったら....竜かよ」

 その魔物とは、黒い鱗を纏った黒竜だった。

 

 

 

 

 

 

 

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