人理修復を成し遂げたマスターはありふれた世界じゃ最強に決まっている   作:アイリエッタ・ゼロス

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ティオ・クラルスと魔物の進行

「あ、あいつは....!? 僕達を襲った竜だ!」

 黒竜を見ると、ウィルは怯えたような声でそう叫んだ。

 

「こいつが....」

 そう呟いていると、黒竜は俺達に向かってブレスを放ってきた。だが....

 

「La~」

 ティアマトの口から放たれた衝撃波によってブレスは綺麗に消え去った。

 

「目障りですね。アコーロン」

 ティアマトに続きモルガンがそう言って槍を掲げると、槍は杖に変わって黒竜から

 全ての魔力を奪った。黒竜は急な魔力の消滅により地面に落ちた。

 

「(さっすが....)」

「ん....? これは....」

 すると、魔力を吸収したモルガンはふとそう呟いた。

 

「どうした?」

「あの魔物から吸収した魔力に、洗脳の類の魔力があったので。まぁ三流以下のくだらない

 ものでしたが....」

「洗脳? じゃあなんだ、あの竜洗脳されてんのか」

「さぁ....私は興味ないので」

「....立香、あれ」

 俺がモルガンと話していると、メルトが黒竜の方を見てそう言った。俺も黒竜の方を見ると、

 黒竜は繭の様な物に包まれてどんどん大きさが小さくなっていった。そして人が入るぐらいの

 大きさになると、繭の様な物は霧散して黒髪金眼の女が現れた。

 

「人間、なわけないか....」

「あの人ってまさか....」

「竜人族....」

 すると、ユエがそう呟いた。

 

「竜人族? それって五百年くらい前に滅んだって本で読んだぞ」

「ん、そのはず....」

「....本人から聞くしかないか。白崎、あの女に回復魔法をかけてやってくれ」

「わかりました」

 俺は白崎に女に回復魔法をかけるように指示した。俺は念のため、女が暴れ始めても

 問題ないように白崎の隣に立って回復を見ていた。そして十分ぐらい経つと女は意識を

 取り戻した。

 

「こ、ここは....」

「先生! 目を覚ましました」

「そうか。さてと....起きて早々悪いが、お前は何者だ? 返答によっては、お前を消さなきゃ

 ならない」

 俺は女に目線を合わせてそう聞いた。

 

「わ、妾の名はティオ・クラルス。最後の竜人族クラルス族の一人じゃ」

「そうか。ならティオ・クラルス、何が目的で俺達を攻撃した?」

「それは....少々長くなるが構わんか?」

「あぁ」

 そう言うと、ティオ・クラルスを事の経緯を話し始めた。ティオ・クラルスはある目的のために

 竜人族の隠れ里を飛び出して来た。その目的とは異世界からの来訪者について調べるという

 ものだった。詳細は省かれたが、竜人族の中には魔力感知に優れた者がおり、数ヶ月前に

 大魔力の放出と何かがこの世界にやって来たことを感知したらしい。竜人族は表舞台には

 関わらないという種族の掟があるらしいのだが、流石にこの未知の来訪者の件を何も

 知らないまま放置するのは自分達にとっても不味いのではないかと議論の末、遂に調査の

 決定がなされた。ティオ・クラルスは、その調査の目的で集落から出てきたらしい。本来なら

 山脈を越えた後は人型で市井に紛れ込み、竜人族であることを秘匿して情報収集に励むつもり

 だったのだが、その前に一度しっかり休息をと思いこの一つ目の山脈と二つ目の山脈の

 中間辺りで休んでいたらしい。当然、周囲には魔物もいるので竜化によって黒竜状態になって

 休んでいたらしいのだが、その睡眠中に一人の黒いローブを頭からすっぽりと被った男によって

 洗脳と暗示などの闇系魔法を受けて思考と精神を蝕まれたそうだ。そしてローブの男からの

 目撃者は消せという命令を受けウィル達を襲ったらしい。

 

「恐ろしい男じゃった。闇系統の魔法に関しては天才と言っていいレベルじゃろうな。

 そんな男に丸一日かけて間断なく魔法を行使されたのじゃ。いくら妾と言えど、流石に

 耐えられんかった....」

「あの程度で天才ですか....」

「というか丸一日受けてて気づかないって....」

「....結構おバカ?」

「返す言葉がないのぉ....」

 サーヴァントの三人は呆れた表情をしながらそう言った。

 

「ちなみにその男は魔物を集めて大軍団を作っておる。妾が覚えている事で、その男は

 その魔物達を使って町を襲うそうじゃ」

「てことは魔人族か?」

「いや....魔人族ではなく人間じゃった。確か...."これで勇者を超えられる、俺は英雄だ"

 とか何とか言っておったな」

「なるほど....」

「(てことはコイツを洗脳したのはガキどもの誰かか....)」

「ふざけるな....」

 俺はその話を聞いてそう考えていた。すると、さっきまでビビっていたウィルがそう言った。

 

「操られていたから....ゲイルさんを、ナバルさんを、レントさんを、ワスリーさんを

 クルトさんを! 殺したのは仕方ないとでも言うつもりかっ!」

「....」

「大体、今の話だって本当かどうかなんてわからないだろう! 大方、死にたくなくて適当に

 でっち上げたに決まってる!」

「今話したのは真実じゃ。竜人族の誇りにかけて嘘偽りではない」

「(あーめんどくせ....どうやって黙らすかな....)」

 そんな事を考えていると、ユエがウィルの前に立った。

 

「きっと、嘘じゃない」

「っ、一体何の根拠があってそんな事を....」

「竜人族は高潔で清廉。私は皆よりずっと昔を生きた。竜人族の伝説も、より身近なもの。

 彼女は"己の誇りにかけて"と言った。なら、きっと嘘じゃない。それに....嘘つきの目が

 どういうものか私はよく知っている」

「....この時代にも竜人族のあり方を知る者がまだいたとは....いや、昔と言ったかの?」

「ん。私は吸血鬼族の生き残り。三百年前は、よく王族のあり方の見本に竜人族の話を

 聞かされた」

「何と....! 吸血鬼族の....しかも三百年前とは....なるほど、死んだと聞いていたが主が

 かつての吸血姫か。確か名は....」

「ユエ....それが私の名前。大切な人に貰った大切な名前。そう呼んで欲しい」

 二人の会話で、空気は少し穏やかなものになった。だが、ウィルは納得できないのか言葉が

 零れた。

 

「それでも、殺した事に変わりないじゃないですか....どうしようもなかったってわかっては

 いますけど....それでも! ゲイルさんは、この仕事が終わったらプロポーズするんだって....

 彼らの無念はどうすれば....」

「(テンプレな死亡フラグだな....そういや....)」

「南雲、あのロケットペンダント」

 俺はここに来る途中、女性の写真が入ったロケットペンダントを拾って南雲の宝物庫に

 入れたのを思い出した。

 

「これですか?」

「あぁ。おいウィル、これゲイルってやつの持ち物か」

 そう言って俺はウィルにペンダントを投げた。

 

「これ、僕のロケットじゃないですか! 失くしたと思ってたのに、拾ってくれてたんですね。

 ありがとうございます!」

「....お前の?」

「はい、ママの写真が入っているので間違いありません!」

「(....これ以上聞くのは止めとこ)」

 俺はどうにも面倒な予感がしたのでそれ以上は聞かなかった。そして、落ち着いたウィルは

 黒竜を殺すべきだと主張し始めた。

 

「水月殿! ここで彼女を見逃してまた操られたらどうするんですか!? これ以上被害を

 出さない為にもここでトドメを刺すべきです!」

「....テメェ、それただの建前だろ。本音はコイツを殺して復讐したいだろ?」

「っ! そ、それは....」

「見え見えなんだよ本音が。おい南雲」

「は、はい!」

「適当に一本剣を貸せ。失敗作何本か残ってただろ」

「わ、わかりました」

 俺は南雲にそう言って宝物庫から剣を一本出させた。そして剣を受け取るとウィルの目の前に

 突き刺した。

 

「殺したきゃ自分でやれ。テメェのくだらない復讐に付き合う気はない」

「ぼ、僕が....」

 ウィルは目の前に突き刺さった剣を見ながら震えていた。

 

「....何? 自分じゃできないから立香にやれって? ....甘ったれてんじゃないわよ」

 すると、ウィルの態度に腹が立ったのかメルトが殺気を出しながらそう言った。

 

「ひぃ!?」

「メルト、落ち着けって」

「立香、アナタもガツンと言いなさいよ」

「言ってどうにかなるなら言ってるって....」

 そう話していると、ここから遠く離れた場所から大量の魔物の気配を感じた。

 

「この気配....」

「結構な量ね」

「でも、弱いのばかり」

「寄せ集めといったところでしょうか....」

 三人も気配に気づいておりそう呟いた。

 

「水月先生! オルニスが魔物の大群を見つけました! その数、万は超えています!」

 すると、南雲も無人探査機からの情報が入ったのかそう叫んだ。その言葉に、三人以外の

 全員は緊迫した表情になった。

 

「万って....本当ですか南雲君!」

「えぇ....この方角、恐らくウルの方向です」

「は、早く町に知らせないと! 避難させて、王都から救援を呼んで....それから、それから....」

 畑山は慌てながら今後するべきことを口に出していた。そう言ってる畑山の後ろでは

 ガキどもが身体を震えさせていた。

 

「あの、水月殿達なら何とか出来るのでは....」

 すると、ウィル唐突にそんなことを言ってきた。その言葉を聞き、畑山とガキどもは

 俺達の方を見てきた。

 

「バカじゃないの? こんなに足手まとい抱えて戦えるわけないじゃない」

「同感ですね。それに遮蔽物が邪魔です」

「攻撃に巻き込まれても、文句言わない?」

 ウィルの発言に三人はそれぞれそう答えた。

 

「俺も三人に同意だ。もしもやるなら平地だな。ここじゃやりにくくて仕方ない。それに

 まずはウルに報告して避難の優先が先だろ」

「なら、僕達が町に戻って....」

「その間に殲滅しろってか? ....好き勝手言うのもいい加減にしろよテメェ」

 俺はあまりに好き勝手に言うウィルに殺気をぶつけてそう言った。

 

「この際だから一つ言っといてやる。冒険者達を殺したのは確かにティオ・クラルスだ。

 その事実は変わらねぇ。だがな、間接的にもテメェも冒険者達の死に関与してんだよ」

「ど、どうしてですか!?」

「イルワが言ってたが、テメェと行動を一緒にしてた冒険者達は実力者だったそうだな。そんな

 実力者の中に素人のテメェが混じったらどう考えても足を引っ張る。一緒にいた冒険者達も

 テメェを守るために普段の実力は出せてなかっただろうな。たらればの話だが、もしテメェが

 いなかったら冒険者達の一人か二人かは生きていたかもな」

「そ、それは....」

「ハッキリ言ってやる。テメェの好き勝手な発言や行動が人を殺すんだよ。いい加減、

 自分の実力を理解して現実を見やがれ」

「あぁ....あぁぁぁぁぁ!?」

 俺の言葉を聞き、ウィルは地面に座り込み泣き叫び始めた。

 

「はぁ....一先ず、町に戻るぞ。南雲、全員連れて町に向かえ。俺達は先に戻ってるぞ」

 そう言って、俺達は先にここから離れた。

 

 ~その頃~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい。使徒の一人が魔物の大群を動かし始めました。恐らく全滅するでしょうが、念のため

 私も介入してイレギュラーを確実に排除します」

「....なるほどね」

 

 

 

 

 

 

 

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