人理修復を成し遂げたマスターはありふれた世界じゃ最強に決まっている 作:アイリエッタ・ゼロス
「さて....」
『パイセン』
俺はウルに着くとパイセンに念話をした。
『帰ってきたの後輩』
すると、すぐにパイセンから返事は返ってきた。
『えぇ。まぁ面倒ごとが増えましたが....』
『何やってんのよ....』
『俺のせいじゃないっすよ。それよりもパイセン、今どこにいます?』
『町から少し離れた森の中よ』
『森?』
『えぇ。もう少ししたら戻るわ』
そう言って、パイセンとの念話は切れた。
「何て言ってたの?」
「森の中にいるんだと。もう少ししたら戻るって」
「何で森にいるのよ....」
「さぁ....それよりも、魔物の大群はどうしたものか....」
そう言いながら、俺はこの世界の地図を開いた。
「(魔物は大体この辺り....ウルに侵攻した後にある場所としてはフューレンがあるか....)」
「殲滅するしかなさそうだな....進行方向が俺達のルートと被る」
「ふむ....」
「なら、やる事は一つ」
「そうね」
「悪いな三人とも....みんなの力、俺に貸してくれ」
「当然です我が夫。私はおまえの妻でありサーヴァントですから」
「我が子の力になるのも母の務め。遠慮しなくてもいい」
「当然よ。私、アナタ以外の命令は聞く気がないもの」
「すまねぇな....よし、じゃあささっと作戦立てるか」
そう言って、南雲が戻ってくるまで俺達は作戦を立てた。
~~~~
「水月先生!」
三十分ほどして南雲達が戻ってきた。
「戻ったか」
「はい、何とか全員で....それよりも、これからどうしますか?」
「まぁ殲滅するしかねぇんだよな....魔物の大群のルート、ここ超えたらフューレンが
あるからな」
そう言いながら、俺は地図を見せた。
「でも、何か策はあるんですか?」
「まぁな」
「....後輩、お前本当に面倒なもの連れて来たわね」
南雲とそう話していると、背後からパイセンが現れた。
「パイセン! 調べもの終わったのか?」
「まぁね。それよりも後輩、あの大群の掃除するつもり? 相変わらずのお人好しね」
「やりたくてやるんじゃねぇって....パイセンも手伝ってくれるか?」
「嫌よ」
俺は一応パイセンにそう聞いたが即答された。
「ですよねー....まぁ期待してなかったからいいっすけど」
「それはそれでむかつくわね」
余計なことを言ったのか、俺はパイセンに脛を蹴られた。
「いってぇ....」
「余計なこと言うからよ」
「すんません....」
そう話していると、パイセンの前に畑山が立った。
「あの....貴方も水月先生のお仲間なんですよね?」
「さぁ、どうかしらね。で、それが何よ」
「という事は他の方と同じぐらい強いんですよね? お願いします! この町を守るために
力を....!」
「嫌よ」
畑山はそう言ってパイセンに頼み込んだが、パイセンはそう言って断った。
「ど、どうしてですか! このままでは、きっとこの美しい町が壊されるだけでなく、此処に
住んでるたくさんの人たちが苦しむ事になるんです!」
「それが何よ。私には関係のない事よ」
「そ、そんな....」
「あ、あなたはこの町の人が死んでも心が痛まないんですか!」
「えぇ。だって、私は人間が嫌いなのよ。正直、こうして無駄な会話をしてるだけでも
腹が立ってるんだけど」
パイセンはウィルを睨みつけながらそう言った。
「というか....そんなに戦力が欲しいならそいつら戦わせなさいよ。一応こいつ等の同郷の
連中なんでしょ。じゃあ少しは戦えるじゃない」
パイセンは畑山の後ろにいるガキどもを指差した。すると、ガキどもは全員目を逸らした。
「か、彼等を戦わせるわけには....」
「でも、私は戦わせてもいいと....勝手ね。これだから人間が嫌いなのよ。力があればそれを
使えって、用済みになったら迫害するくせに」
そう言ったパイセンからは赤いオーラが見えた。そのオーラを見て畑山とウィルとガキどもは
その場で地面に座り込んだ。
「後輩、コイツ殺してもいいわよね?」
そう言ってパイセンは両手に剣を出してそう聞いてきた。
「お気持ちは察するけど流石にやめてくれません? 殺すと後が面倒なんで....」
「じゃあ何か代わり寄越しなさい」
「無茶言わんでくれませんかね....」はぁ
そう話している時、俺はある事を思い出した。
「そういやパイセン、気になる事って何だったんだ?」
「あぁ....なら、話しするからちょっと来なさい」
そう言うと、パイセンは剣を消してどこかに歩き始めた。
「了解。メルト、バーサーカー、アルターエゴの三人は休んで体力回復しておいてくれ。
南雲、お前は魔物が来る方にデカい防壁を造っておけ。ユエ、白崎、シアの三人は町の連中に
状況説明しておけ」
「「わかりました」」
「ん」
「了解ですぅ!」
俺は指示を出すとパイセンの後について行った。
~~~~
パイセンについて行くと裏路地に着いた。
「まぁここで良いわね」
「....それで? パイセンの気になった事って何だったっんすか?」
「昨日の夜よ。酒を飲んでたらおまえが泊まってた宿を見ている修道服を着た女がいたのよ。
しかも無表情で明らかに人間じゃない人型の何かがね」
「何かわかったんすか?」
「えぇ。その女、この世界の神の手駒みたいよ。魔物の進軍を利用してイレギュラーを
殺すって言ってたわ」
「イレギュラーって....」
「まぁおまえでしょうね」
そう言ってパイセンは俺を指差した。
「どうやら目をつけられたみたいね」
「ま、遅かれ早かれそうなるとは思ってたけど....めんどくせぇな」
「で、どうすんのよ」
「そりゃ排除一択でしょ。敵なんすから。....パイセン頼んでもいいっすか? こっちも
こっちで大群の掃除あるんで....」
「....はぁ、言うと思ったわ」
パイセンは呆れたようにため息をついた。
「言っとくけど、貸し一よ」
「わかってますよ」
「なら良いわ。じゃ、おまえはおまえでしっかりやる事ね」
そう言うと、パイセンは霊体化してこの場から消えた。
「俺もあっちに着替えて準備するか....」
そう呟き、俺は宿の方に向かった。
~~~~
礼装を変えた俺は町の外に向かった。町の外には南雲が急ピッチで作った防壁がいくつか
立っていた。
「先生!」
すると、町の方から白崎が走ってきた。
「白崎」
「町のギルド長や町長の人達に伝えてきました。かなり騒然としましたが....」
「ご苦労さん。ユエとシアは?」
「二人はハジメくんの方を手伝ってます」
「そうか。まぁ順調に進んでるなら何よりだ」
「....それよりも先生、その服は?」
「今あるもう一つの戦闘用の服。一応攻撃性能はトップクラスの服だ」
「そうなんですね」
そう話していると、白崎の表情は不安そうな表情になっていった。
「どうした?」
「その....私達がいた世界の戦争も、こんな感じだったのかなって」
そう言って、白崎は町の方を見ていた。町の方で多くの人がパニックになっていた。
「急な襲撃の報告に想像もできないほどの敵の数....その現実を見ると、怖くなってしまって」
白崎はそう言いながら杖を握り締めた。
「こんなに怖いものなんですね、戦争って....」
「....ま、それが正常な人間の感覚だ。俺はもうその感覚を忘れちまったがな」
そう言いながら、俺は白崎の頭を撫でた。
「まぁ安心しとけ。こっちはそれなりに戦い慣れしてるのばかりだ。敵に
いたら俺も流石に焦るが、今回は有象無象の集まりだ。俺等は俺等でやるべきことをやるから、
白崎は白崎のできる事を全力でやれ。いいな?」
「っ、はい!」
「いい返事だ。....さて、少し南雲達の方を見に行くが一緒に来るか?」
「行きます!」
そう言って、俺と白崎は南雲達のもとに向かった。
「そう言えば先生、
「....敵でありながら、出会い方が違えば良き友人になれたかもしれない、タイマンで英霊に
勝ち、誰よりも人間の可能性を信じた男さ。....そして、自分の事を顧みない大馬鹿野郎さ」
~~~~
「水月先生!」
防壁の所に着くと、南雲が走ってきた。その後ろをユエとシアが追いかけていた。
「言われた通り防壁を造りましたが、これで良いですか?」
「あぁ。ご苦労さん。二人も手伝いご苦労さん」
そう言って、俺は防壁を見た。
「これなら大丈夫そうだ」
「リツカ、造ったはいいけどどうやって殲滅するの?」
「策があるって言ってましたけど....」
「あぁ。バーサーカーとアルターエゴの宝具で魔物どもを吹き飛ばす。俺とメルトは二人の
宝具の範囲外の魔物を殲滅。これが策だ」
「随分アバウトですね....」
「実力疑うわけじゃないけど....大丈夫なの? 相手、万を超えてる」
俺の策を聞いて二人は少し不安そうに聞いてきた。
「万超えてても有象無象の集まりだ。敵が隊列組めて戦術がある敵なら警戒するが、物量で
押し切ろうとする相手なら力技でやる方が楽だ」
「水月先生、僕達はその間どうしたら....」
「そうだな....」
「(そういやティオ・クラルス、黒いローブの男に操られたって言ってたな)」
俺はティオ・クラルスとの会話を思い出してそう考えた。
「南雲、それとシアでいいか。戦闘が始まったらティオ・クラルスが言ってた黒いローブの男を
探して捕まえろ。まぁ無理なら最悪殺してもいいぞ。何か情報持ってたりするかもしれねぇ」
「私は?」
「ユエは....そうだな、防壁を超えるぐらいの障壁を防壁の前に張っといてくれ。多分、
防壁単体じゃ宝具の余波でぶっ壊れるからな。白崎、出来たらお前もユエを手伝って障壁を
張っといてくれ。それと、南雲とシアが黒いローブの男を捕まえたら目と口と腕を魔法で
拘束しておいてくれ。何で洗脳してくるかわからないからな」
「わかった」
「わかりました」
「よし。じゃあお前等は戦闘始まるまで身体休めてろ。見張りは俺がしておく」
「いいんですか?」
「あぁ。お前等にとって初めての戦争だ。意外と心が落ち着いてないもんだ。今のうちに
心を落ち着けるついでに休んでおけ」
「わかりました」
俺がそう言うと、四人は町の方に歩いて行った。
「さて....」
俺は四人が町の方に行くのを見て防壁にあるはしごを使って防壁の上に立った。
「どう戦うかねぇ....」
俺は目の前に広がる平地を眺めながら今回の戦い方を考え始めた。
~~~~
「何一人で考え込んでるのよ」
しばらく考え込んでいると背後からそう声をかけられた。振り向くと、そこには第3再臨の姿の
メルトがいた。
「メルト....相変わらず、その姿は綺麗だな」
「当然よ。....それよりも、
「おっと....これは失礼した愛しきジゼル。
挙げたい気分だ」
「ふふふ、まぁ80点の回答ね」
「これは手厳しいな....」
そう言うと、メルトは俺の隣に座った。
「ユエ達は?」
「町に戻らせて休ませてる。意外と疲れてるだろうしな」
「そ」
メルトは一言そう言うと、俺に肩を寄せて来た。俺はその様子のメルトが可愛いと思ったので
黙って肩を抱いた。そしてしばらく静かにいちゃついていると誰かが近づいてくる気配を
感じた。だが敵意を感じなかったので俺とメルトは特に警戒せずに気配の方を見た。そこに
いたのはティオ・クラルスだった。
「ティオ・クラルス」
「ティオで構わんよ水月殿。....その、甘々空間形成中のところすまぬが少し良いかの?」
「何だ?」
「お主ら、この戦いが終わったらウィル坊を送り届けてまた旅に出るのじゃろ?」
「あぁ」
「ならば、その旅に妾も同行させてほしいんじゃ」
ティオからの話はかなり意外なものだった。
「何でまた....」
「お主らとともに行動した方が最も効率が良さそうと考えたからじゃ。お主達の邪魔には
ならんように自分の身は自分で守る。だから、考えてもらえぬかの?」
「....だって」
「んー....じゃあ今回の襲撃の時にユエの手伝いをしてやってくれ。その手伝いが出来たなら
同行を許す」
「本当か!」
「あぁ。ユエも随分気に入ってるみたいだからな。手伝いの内容はユエから聞いてくれ。
今は町の方にいる」
「そうか! 感謝するぞ!」
そう言うと、ティオは町の方に走っていった。
「よかったの?」
「ん? あぁ、実力はそれなりにあるし南雲達のサポート役に付けるには丁度いいだろ」
「ふーん」
メルトはもう興味がなくなったのか再び俺に肩を寄せて来た。
「頭、撫でなさい」
「わかったよ」
そうして、俺とメルトは束の間の時間を楽しんだ。